アメリカ人経営学者コトラーは、製品カテゴリーとブランド名を、それぞれ「既存」と「新規」の軸にマトリックスをつくり、ブランド戦略を検討する際の4つの方法を提示しました。

4つのブランド戦略

ライン拡張戦略

すでに成功・浸透したブランド名を使って、既存製品の製品ラインを広げることを言います。特定の製品カテゴリーにデザインや機能の一部などを変えた新製品を導入することを言います。

後半改めて触れますが、「OTC医薬品」では良く用いられる方法です。他にも飲料メーカーで良く行われています。
(「コカコーラ」と「コカコーラ・ゼロ」、「おーいお茶」と「おーいお茶・濃い茶」など)

この場合の注意点として、自社製品同士の共食い現象(カニバリゼーション)が起きるリスクに配慮する必要があります。

マルチブランド戦略

同一カテゴリーで、新たなブランドを投入することを言います。

ブランドの数を増やすことにより、販売店において、より多くの陳列スペースを確保できたり、ブランドスイッチしてしまう消費者を、さらに自社ブランド品に囲い込むことができる、といったメリットがあります。
また、この場合もデメリットとして共食い現象(カニバリゼーション)に配慮する必要があります。

代表的な例としては、ネスレのミネラルウォーター製品群が有名です。「ヴィッテル」「コントレックス」「ペリエ」など複数のブランド商品を持っています。

他に、アパレルメーカーでも良く行われる手法です。

低価格ブランドとして人気を博している「GU」は、「ユニクロ」が手掛けているのは良く知られいますが、(多少価格帯・ターゲット層が異なりますが)どちらも同じカジュアルな衣料品カデゴリーと考えると、マルチブランド戦略になります。

同様な例に、スペイン系アパレルメーカー「ZARA」の低価格ブランド「Bershuka」(ベルシュカ)があります。
(BershukaはZARAに比べると、日本での知名度・店舗数は劣りますが、渋谷の緑色の店舗を見たことがある人は多いでしょう。乃木坂46の「夏のFree&Easy」のPV撮影でも使用されました。)

ブランド拡張戦略

すでに成功・浸透したブランド名を使い、新製品を異なるカテゴリーに投入したり、異業種参入の際に用いたりすることを言います。

異業種への使用例として、セブン銀行、ソニー銀行、トヨタホームなどがあります。

ただし、あるカテゴリーでブランドの信頼性が低下した場合に、他のブランドに悪影響を及ぼす可能性があります。
(例えば、労働環境問題により、飲食店チェーンが手掛けた介護事業のイメージが低下した。)

新ブランド戦略

新たなブランド名を新たな製品カテゴリーに導入することです。ただし、他のブランド戦略よりもコストが増したり、経営資源が分散化しやすいといったデメリットがあります。

 

OTC医薬品のライン拡張戦略

OTC医薬品では、ライン拡張戦略が良く行われています。

「パブロン」、「エスタック」、「ベンザブロック」など、大手医薬品メーカーの手掛ける総合感冒薬は、語尾に「エース」「ファイン」「ゴールド」「プラス」などの単語や、英数字(DX,S,IPなど)をつけることで、様々な新製品が投入されています。

メリットとして、確立したブランドイメージが消費者に安心感・信頼感を与えやすく、販促活動も効果的に行うことができます。また、更なるブランドイメージアップも期待できます。

デメリットとしては、個々の製品の特徴がわかりづらくなったり、ブランド内の選択肢があまりに増えすぎると、逆に選択のストレスを与える傾向が知られています。(マーケティング用語で「選択肢過多」と言われる。)他に、共食い現象が起きる可能性もあります。

また、医薬品ならではの、薬学的観点からの注意点があります。

それは、「同一ブランドでも、含有成分の共通性がまったくないケース」があることです。

例えば「バファリン」ブランドで考えてみます。

「バファリン」と言えば、アスピリンが主成分である紺色の箱の「バファリンA」が一番知られています。
そのブランド力を活かす形でライン拡張がなされ、現在、解熱鎮痛薬のカテゴリーの中で様々なバファリンブランド製品が存在します。

一方で、主成分の解熱鎮痛成分に統一性がありません。

・バファリンA・・・・・・アスピリン
・バファリンプレミアム・・イブプロフェンアセトアミノフェン
・小児用バファリン・・・・アセトアミノフェン

特に、解熱鎮痛薬は、各成分における年齢制限も意識する必要があり、製品知識を十分理解して販売する必要があります。