H26 富山県(北陸・東海)第3章 主な医薬品とその作用 (問41-50)

問42(痔疾患薬)、問45(鼻炎内服薬)、問46(点鼻薬)はやや難問。

問 41
痔及び痔疾用薬に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 痔疾用薬のうち坐剤及び注入軟膏は外用薬なので、その成分が直腸粘膜で吸収されて循環血液中に入ることはない。

b 直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、直腸粘膜にできた内痔核は自覚症状が少ない。

c 内用痔疾用薬は、比較的緩和な抗炎症作用、血行改善作用を目的とする成分のほか、瀉下・整腸成分等が配合されたもので、外用痔疾用薬と併せて用いると効果的なものである。

d 痔による肛門部の創傷の治癒を促す効果を期待して、クロタミトンのような組織修復成分が用いられることがある。

1(a、c) 2(b、c) 3(b、d) 4(a、d)

痔疾患用薬に関する問題。

a 誤り。
b 正しい。腸粘膜と皮膚の境目となる歯状線より上部の、直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼ぶ。直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、自覚症状が少ないことが特徴である。
c 正しい。手引きどおりの記述である。具体的には乙字湯、芎帰膠艾湯、さらにビタミンEが配合されたものなどがある。
d 誤り。クロタミトンは局所刺激成分にも分類され、局所への穏やかな刺激によって痒みを抑える効果を期待して、熱感刺激を生じさせる。また、冷感刺激を生じさせるメントール、カンフル、ハッカ油も使われる。組織修復成分としてはアラントイン等が用いられる。

正答・・・2

問 42
痔疾用薬に配合される成分に関する記述のうち、正しいものはどれか。

1 酸化亜鉛は、粘膜表面に不溶性の膜を形成することによる、粘膜の保護・止血を目的として配合されている場合がある。

2 シコンは、マメ科のエンジュの 蕾を基原とする生薬で、主に止血効果を期待して用いられる。

3 カルバゾクロムは、痔疾患に伴う局所の感染を防止することを目的として配合される殺菌消毒成分である。

4 アラントインは、局所への穏やかな刺激によって痒みを抑える効果を期待して配合されている場合がある。

痔疾用薬に関する深い知識が求められる難問。

a 正しい。酸化亜鉛は収斂保護止血成分に分類される。粘膜表面に不溶性の膜を形成することによる、粘膜の保護・止血する。
b 誤り。 シコン(紫根)は、ムラサキ科のムラサキの根を基原とする生薬で、新陳代謝促進、殺菌、抗炎症等の作用を期待して用いられる。「紫雲膏」の成分として有名
c 誤り。 カルバゾクロムは、毛細血管を補強、強化して出血を抑える働きがあるとされ、止血効果を期待して配合される。
d 誤り。 アラントインは痔肛門部の創傷の治癒を促す効果が期待される。アラントインは他にも胃薬、目薬等でも登場する頻出医薬品である。

正答・・・1

問 43
泌尿器用薬に配合される生薬成分に関する記述について、( )の中に入れるべき字句はどれか。なお、( )内にはどちらも同じ字句が入る。
( )は、経口的に摂取した後、尿中に排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。
日本薬局方収載の( )は、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものにも用いられる。

1 ジオウ
2 シンイ
3 モクツウ
4 サンザシ
5 ウワウルシ

泌尿器用薬でウワウルシは度々出題されている生薬。ある程度市販の漢方薬に触れたことがあれば、聞いたことがある人もいるでしょう。煎じ用の葉が販売されている。
ウワウルシは、ツツジ科のクマコケモモの葉を基原とする生薬で、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。

出題のとおり、経口的に摂取した後、尿中に排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。また、H26手引きの改訂により、「利尿作用」も追記され、今後出題の可能性があります。

正答・・・5

問 44
婦人薬に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 適用部位で吸収されたエチニルエストラジオールは、循環血液中に移行することはない。

b 妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって、胎児の先天性異常の発生が報告されており、妊婦又は妊娠していると思われる女性は、使用を避ける必要がある。

c 猪苓湯は、女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤である。

d 女性ホルモン成分は、長期連用により血栓症を生じるおそれがあり、また、乳癌や脳卒中などの発生確率が高まる可能性もあるため、定期的な検診を受けるなどの対応が必要である。

    a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正

婦人薬に関する問題。

a 誤り。
b 正しい。 妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されている。
c 誤り。 猪苓湯は排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿に用いられる。
d 正しい。

正答・・・3

問 45
次の表は、ある鼻炎用内服薬に配合されている成分の一部である。この医薬品に含まれる成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 医療機関でパーキンソン病の治療を受け、セレギリン塩酸塩が処方されている人は、プソイドエフェドリン塩酸塩が配合された鼻炎用内服薬の使用を避ける必要がある。

b グリチルリチン酸二カリウムは、皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として配合される。

c フェニレフリン塩酸塩は、鼻腔内の刺激を伝達する副交感神経系の働きを抑えることにより、鼻汁分泌やくしゃみを抑えることを目的として配合される。

d ベラドンナ総アルカロイドは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑えることを目的として配合される。

1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)

鼻炎用内服薬に関する問題。

a 正しい。手引きには「パーキンソン病の治療のため医療機関でセレギリン塩酸塩等のモノアミン酸化酵素阻害剤が処方されて治療を受けている人が、プソイドエフェドリン塩酸塩が配合された鼻炎用内服薬を使用した場合、体内でのプソイドエフェドリンの代謝が妨げられて、副作用が現れやすくなるおそれが高く、使用を避ける必要がある」と書かれている。

セレギリン塩酸塩(エフピー)医療用の薬を扱ったことがなければ、難解な内容だが、セレギニン塩酸塩は「エフピー」の商品名で知られ、MAO阻害薬に分類される有名なパーキンソン病治療薬。
これに関する出題は、たまに出題されているので押さえておく。
b 正しい。鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として、グリチルリチン酸二カリウムが配合されている場合がある。
c 誤り。 交感神経系を刺激して鼻粘膜を通っている血管を収縮させることにより、鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として、ナファゾリン塩酸塩、フェニレフリン塩酸塩、テトラヒドロゾリン塩酸塩等のアドレナリン作動成分が用いられる
d 誤り。 ベラドンナ総アルカロイドは、くしゃみ・鼻水を抑える抗コリン成分である。ベラドンナはナス科の草本で、その葉や根に、副交感神経系の働きを抑える作用を示すアルカロイドを含む。

正答・・・1

問 46
鼻に用いる薬に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 蓄膿症などの慢性のものは、一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲となっていない。

b 鼻粘膜が腫れてポリープ(鼻茸)となっている場合には、一般用医薬品のスプレー式鼻炎用点鼻薬の使用が適当である。

c クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える作用を示し、通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合される。

d セチルピリジニウム塩化物は、鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑えることを目的として配合される局所麻酔成分である。
    a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 正 誤 正 正

点鼻薬に関する出題。

a 正しい。「慢性」ときたら、基本的に一般用医薬品の対象外である。
b 誤り。これは常識に判断できる。
c 正しい。クロモグリク酸ナトリウムは抗ヒスタミン成分であるクロルフェニラミンマレイン酸などと組み合わせて使われる事が多い。

d 誤り。セチルピリジニウム塩化物は、点鼻薬にもちいられる殺菌消毒成分。他にもベンザルコニウム塩化物ベンゼトニウム塩化物も殺菌消毒成分として用いられる。

正答・・・3(2018/8/26訂正)

問 47
点眼薬に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

1 コンタクトレンズをしたままでの点眼は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズに関わらず、添付文書に使用可能と記載されていない限り行わないべきである。

2 点眼の際に容器の先端が眼瞼(まぶた)や 睫毛(まつげ)に触れると、雑菌が薬液に混入して汚染を生じる原因となるため、触れないように注意しながら1滴ずつ正確に点眼する。

3 点眼薬は通常、一度に何滴も点眼しても効果が増すわけではなく、むしろ鼻粘膜や喉から吸収されて、副作用を起こしやすくなる。

4 点眼後は、数秒間、眼瞼(まぶた)を閉じて、薬液を結膜嚢内に行き渡らせる。その際、目尻を強く押さえると、薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされている。

常識で正答できるサービス問題。

1 正しい。
2 正しい。1滴の薬液の量は約50μL であるのに対して、結膜嚢の容積は30μL 程度とされており、通常1滴で十分とされている。
3 正しい。
4 誤り。押えるのは眼尻ではなく、目頭。手引きには「点眼後は、数秒間、眼瞼(まぶた)を閉じて、薬液を結膜嚢内に行き渡らせる。その際、目頭を押さえると、薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされる。」と書かれている。

正答・・・4

問 48
点眼薬に配合される成分に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせはどれか。なお、同じ記号の( )内には同じ字句が入る。

結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的として、( a )が用いられる。同様の効果を期待して、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルアルコール(部分鹸化物)が配合されている場合もある。

( b )は、添加物として用いられることがあり、( a )と結合することにより、その( c )を高める。

a                                                  b                          c
1 ネオスチグミンメチル硫酸塩   スルファメトキサゾール      粘稠性
2 コンドロイチン硫酸ナトリウム    ヒアルロン酸ナトリウム     流動性
3 ネオスチグミンメチル硫酸塩       スルファメトキサゾール     流動性
4 コンドロイチン硫酸ナトリウム      ヒアルロン酸ナトリウム     粘稠性
5 ネオスチグミンメチル硫酸塩       ヒアルロン酸ナトリウム     粘稠性

点眼薬に関する問題。

a 点眼液では頻出のコンドロイチン硫酸ナトリウム に関する内容。結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的に使用される。
b、c 市販薬では、ヒアルロン酸ナトリウムは有効成分としてではなく添加物(粘稠化剤)として用いられる。コンドロイチン硫酸ナトリウムと結合することにより、その粘稠性を高める。

なお、ネオスチグミンメチル硫酸塩はピント調節機能改善成分、スルファメトキサゾールは抗菌成分(サルファ剤)であり、こちらも頻出である。

正答・・・4

問 49
きず口等の殺菌消毒成分に関する記述について、正しいものの組み合わせはどれか。

a アクリノールは、黄色の色素で、黄色ブドウ球菌などの一般細菌類の一部に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。比較的刺激性が低く、衣類等に付着すると黄色く着色し、脱色しにくくなることがある。

b マーキュロクロムは、ヨウ素及びヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたもので、皮膚刺激性が強く、粘膜(口唇等)や目の周りへの使用は避ける必要がある。また、化膿している部位では、かえって症状を悪化させるおそれがある。

c エタノール(消毒用エタノール)は、手指・皮膚の消毒、器具類の消毒のほか、創傷面の殺菌・消毒にも用いられることがある。皮膚刺激性が強いため、患部表面を軽く清拭するにとどめ、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することは避けるべきとされている。

d オキシドールは、連鎖球菌などの一般細菌類の一部に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。有機水銀の一種であるが、皮膚浸透性が低く、通常の使用において水銀中毒を生じることはない。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)

きず口等の殺菌消毒成分に関する問題。幅広い知識が求められている。

a 正しい。 アクリノールに関する内容。

b 誤り。これはマーキュロクロム(いわゆる赤チン)ではなくヨードチンキに関する内容。

c 正しい。 エタノールに関する内容。
d  誤り。前半の文章はオキシドール(過酸化水素)に関する記述だが、後半はマーキュロクロムに関する内容。オキシドール(過酸化水素)の化学式がH2 であることを知っていれば、水銀(Hg)が出てきた時点で間違いと気付ける。

正答・・・2

問 50
ステロイド性抗炎症成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a ステロイド性抗炎症成分をコルチゾンに換算して1g又は1mL中 0.025mgを超えて含有する製品では、特に長期連用を避ける必要がある。

b 末梢組織の免疫機能を向上させる作用を示し、細菌、真菌、ウイルス等による皮膚感染を防止する効果が期待される。

c ステロイド性抗炎症成分は、副腎皮質ホルモンの持つ抗炎症作用に着目し、それと共通する化学構造を持つよう人工的に合成された化合物である。

d 外皮用薬で用いられるステロイド性抗炎症成分は、体の一部に生じた湿疹、皮膚炎等の一時的な皮膚症状(ほてり・腫れ・痒み等)の緩和を目的とするものである。

    a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正

ステロイド性抗炎症成分に関する問題。
aの数値を憶えていなくても、b、c、dがやさしい記述なので難しくない。

a 正しい。「ステロイド性抗炎症成分をコルチゾンに換算して1g又は1mL中0.025mgを超えて含有する製品では、特に長期連用を避ける必要がある。」(手引きより)
b 誤り。ステロイドには末梢組織の免疫機能を低下させる作用があり、細菌、真菌、ウイルス等による皮膚感染(にきび、白癬菌(水虫)、ヘルペス等)には使用しない。一般用医薬品販売時においても重要知識である。
c 正しい。
d 正しい。

正答・・・2

 

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