ヘパリン類似物質(保湿成分・血行促進成分)
医療用では超有名な保湿剤。一般薬では尿素に比べると製品数は少ない。
ヘパリン類似物質は、皮膚用外用薬として、乾燥肌などに保湿目的に使用されたり、患部の血行促進に用いられる成分です。
ところで、「ヘパリン類似物質」という言葉に、どんな薬なんだろう?と疑問に感じる方も多いでしょう。
詳しく知る必要はありませんが、これは、健康なブタの気管軟骨等から抽出されたムコ多糖類の多硫酸エステルが使用されています。構造的には、多くの親水基(水分子を保持しやすい)を持ち、保湿作用が高いといった特徴があります。
(医療用ヘパリンは抗凝固剤として透析時等に使用されたりしますが、ヘパリン類似物質とは異なります。)
歴史は古く、元はドイツで発売された医薬品で、日本では1950年代から医療用成分として使用されており、「ヒルドイド」の商品名で良く知られています。
当初は、主に打撲やしもやけ部位の血行促進、瘢痕形成の改善(傷口の修復をきれいにする)等に用いられていました。
その後、高い保湿能を持つことがわかり、1990年代以降は、いわゆる「保湿剤」として知られるようになり、現在でも代表的な保湿成分として、大変よく使用されています。
その為、アトピー等で皮膚科通院歴が長い方では、知らない人はいない、と言っても過言ではないでしょう。
また、現在はジェネリック医薬品も普及しつつあり、ヘパリン類似物質の名称がそのまま使用されています。
一般用医薬品としては、「保湿剤」としての知名度・製品数は、まだまだ尿素を使用した製品には及びませんが、このヘパリン類似物質を使用した製品も、いつくか販売されています。
従来から知られている製品にはノバルティス社の「HPクリーム」があります。
パッケージには、「保湿・抗炎症・血行促進作用」の効能が大きく記載されていますが、ホームページを見ると、ほぼ「保湿」を目的とした購入者を主なターゲットにした製品です。
一方、小林製薬の「アットノン」は、「保湿」よりも「血行促進」「瘢痕形成の改善」をメインにしたマーケティングが行われた製品です。
おそらく、ネーミングはキズ跡(アット)が、無くなる(ノン)からきていると思われますが、以前テレビCMでも見かけたことがる人も多いでしょう。もちろんこの製品も、保湿剤としても使用できます。
これまで、一般用医薬品としての認知度は低かった「ヘパリン類似物質」ですが、医療用「ヒルドイドソフト」の美容目的での保険処方が問題になりだした2018年頃から、多くの新商品が発売されています。今後、OTC販売に携わる上では、ぜひ知っておきたい分野ですね。
登録販売者試験では、それほど出題頻度は高くありません。
手引では、外用薬において血行促進成分として登場しますが、他にも「ヘパリン類似物質については、抗炎症作用や保湿作用も期待される。」と書かれいます。
その効果の他に、「血液凝固を抑える働きがあるため、出血しやすい人、出血が止まりにくい人、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑症など)の診断を受けた人では、使用を避ける必要がある。」という注意点が出題される場合があります。
↓「してはいけないこと」に記載されています。