製品ライフサイクル(具体例)・・製品にも寿命がある。
製品には、生き物と同様に寿命があります。
この寿命のことを製品ライフサイクル、もしくはプロダクトライフサイクルを呼びます。
売上高・利益の変化、ライバル企業の影響と、それに対するマーケティング戦略の観点から、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4ステージに分けられます。
導入期・・認知度を高めていく。
製品の認知度も低く、需要も不足している段階です。需要を生み出すため顧客に向けた積極的なマーケティング活動が行われます。多額の販促活動費も必要なため、まだまだ利益も発生しづらい段階です。ライバル企業もまだ多くありません。
なお、この時期にいち早く新製品を購入する人たちを、イノベーター(革新者)、アーリーアダプター(初期採用者)と呼ぶことがあります。
イノベーター(革新者)とは、新しいもの好きで冒険心が強く、興味があるとすぐに買う人たち。アーリーアダプター(初期採用者)とは、常に流行に敏感で、積極的な情報収集を行い、周囲への影響力も大きい層です。オピニオンリーダーと呼ばれることもあります。
成長期・・市場浸透を図り、シェア拡大
消費者に製品の情報が広まっていきます。そして市場拡大に伴い、ライバル企業も増えていきます。この段階では自社のシェアを拡大するため、ライバル企業・ライバル製品との差別化が重視されます。
成熟期・・シェア・利益を最大化・維持へ
市場の大きな拡大が見込めない段階です。また、競争に敗れた企業が少しづつ撤退していく時期です。
この段階では、自社の利益をいかに大きくするかが重要です。そのため、効率的な大量生産の実施など、規模の経済性が求められます。
また、既存の製品・サービスに、新たな機能を追加することで、あらたな市場を開拓できる場合もあります。
衰退期・・撤退も検討
市場が縮小の段階に入り、売上高、利益、ライバル企業ともに減少していきます。
その為、この段階では事業の撤退を検討することになります。一方で、不採算であっても、社会的責務や保守的な顧客との関係性維持のため、最小限の活動が行われることもあります
具体例・・PHSの場合
身近な例として、移動体通信電話「PHS」で考えてみましょう。
(専門外のため、素人の単なる個人的記憶・見解で書いている点、ご了承ください。)
著者がちょうど大学生だった90年代中頃から、その存在を知るようになりました。この頃が導入期でしょう。当初は、持っている人もクラスに一人いれば良いぐらいでした。当時は加入者を増やすためか、端末料金は殆どタダ同然だったと思います。
その後、サービス提供企業も増え、テレビCMもどんどん流れるようになります。この頃が成長期でしょう。利用料金も割とリーズナブルだった為、それまで若者を中心に普及していた「ポケベル」に代わり、PHS利用者が増えていきます。
次に、より通信エリアが広い携帯電話サービスが、個人向けにもじわじわと普及してきます。これにより、早くも90年代後半には個人向けPHS加入・利用者は頭打ちになりました。このあたりが成熟期でしょうか。
その後、携帯電話も主要三社での競争が増々激しくなります。その為、PHSの料金面でのメリットも薄れていき、存在感はどんどん減速していきました。ここまで来ると衰退期です。
そして、2008年には大手通信事業会社もサービスから撤退。これはもう衰退末期です。その後は医療機関やオフィス向けの利用等に縮小し、沖縄以外の一般利用者向けのサービスは終了してしまいました。
このようにPHSの製品ライフサイクルは、導入期から衰退期、そして大手事業者の撤退まで、ざっと15年ぐらいだったでしょうか。
特に、IT分野や電子機器の分野は、技術進歩が速く、消費者ニーズの変化も激しい為、ますます製品ライフサイクルは短くなる傾向にあります。
OTC医薬品の場合は?
しかし、この製品ライフサイクルの考え方は、OTC医薬品には当てはめにくい考え方です。
その原因は、医薬品のとてつもない「製品寿命の長さ」にあります。
これは医薬品の成分としても、商品としても、両方当てはまります。
例えば、成分として考えた場合、アスピリンは100年以上の歴史を持ちながら、現在でも普通に使われています。
また、製品として考えた場合、「バファリン」、「正露丸」や「オロナインH軟膏」など、誰でも知るロングセラー商品も多数存在します。
その理由としては、①使用実績の重要性、②ライバルの出現機会が少ない点、③企業の広告宣伝努力、などが挙げられます。
OTC医薬品の場合、もちろん効果も大事ですが、安全性の方がより重視されますので、使用実績の長さは強みになります。消費者も、過去に使用経験のあるものをリピートする傾向があります。
また、そう簡単に新しい医薬品成分は追加されない為、「ライバル」の登場が少ない点も影響しています。登場しても、消費者が移行するまで、ある程度時間を要します。
例えば、頭痛薬では「ロキソニン」がシェアを伸ばしていますが、まだまだ既存製品のニーズ・愛着も根強くあります。
その為、認知度が確立した製品は、広告宣伝も駆使し、成熟期を維持することで、安定的な利益を生み出します。
なお、医薬品以外に製品寿命が長い例としては、「コカコーラ」が大変有名です。
まとめ
このように、製品ライフサイクルは、その製品の寿命を考える際に利用される考え方です。
売上高・利益の変化、ライバルの影響と、それに対するマーケティング戦略の観点から、「導入期」「成長期」「成熟期」「衰退期」の4ステージに分けて、製品寿命を捉えることができます。