医薬品の心理的価格設定
消費者の評価にもとづいて決定される価格の特別なものに、心理学的価格というものがあります。おもに名声価格、慣習価格、端数価格があり、医薬品の価格設定の際にも、知識があると役立ちます。
名声価格(prestige price)
消費者がその商品の品質や性能にこだわりがあり、しかもその客観的評価が難しいときに設定される傾向があります。つまり「高い=品質が良い(はず)」という心理的効果も反映したものです。
化粧品、貴金属類、高級車などでもよく見られます。一般にOTC医薬品については、高級品購入よりこだわりは小さく、やや意味合いは異なりますが、同様な傾向がみられるようです。むしろ「価格のバロメーター機能」と言うほうが相応しいかもしれません。また、「高い」ことによる「プラシーボ効果」としての側面も見逃せません。
慣習価格(customary price)
比較的長期にわたり価格が安定していて、その安心感・信頼感から、消費者サイドでも慣習的に受け入れている価格。一番の好例は缶ジュース等の飲料。他にチョコレート、ガム等が挙げられます。
慣習価格が存在する場合、価格を下げても売り上げはあまり増えず、品質を改善する方が賢明といわれています。また慣習価格より高い価格を設定することはリスクを伴います。
缶コーヒーを例にとると、慣習価格の存在の観点から、1缶50円や300円の商品よりも、130円で、香り・味わいを改良した商品の開発の方が望ましいと考えられます。
医薬品に関しては、通常必要がなければ購入しませんので、慣習価格を意識しながら購入する消費者は少ないでしょう。しかし、「医者に風邪や花粉症でかかると、薬代も合わせて自己負担〇〇〇円ぐらい?」という印象があれば、それが慣習価格に近いものになるかもしれません。
端数価格(odd price)
100円や30000円といった価格ではなく、98円や29800円という端数の価格をつけ、消費者に価格を最大限引き下げているという心理的な印象を与える価格設定。
この端数価格は、特にスーパーマーケットやディスカウントストアで多用されています。
かつての伝統的な薬店での提案販売が衰退し、今や陳列棚から自分で選ぶ時代です。その為、廉価なプライベートブランド商品のラインナップの存在や、端数価格による心理的効果が見逃せない時代になりました。
このように心理学的価格は、消費者の購入状況や需要供給バランスを考察する際に、重要な知識の一つになります。