マーキュロクロム(殺菌消毒成分)・・・赤チン(画像あり)

かつては家庭用常備薬「赤チン」として知られた

製造中止に伴い、令和4年手引き改定で削除されましたが記事はそのまま残しておきます(2022.5)。

マーキュロクロムは有機水銀化合物で、かつて「赤チン」として知られた殺菌消毒成分です。
(ヨウチン、ヨードチンキはヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたものなので混同しないように。赤チンはヨウチンと区別するために名付けられた。赤チン(マーキュロクロム)はヨウチン比べては皮膚刺激が少なく使いやすい特徴がありました。)

今の若い世代の方は、「赤チン」といっても知らない方が多いですが、団塊ジュニアより上の世代なら、実際に使ったことがある方も多いでしょう。

昭和40年代までは、家庭常備薬として広く用いられており、数多くのメーカーから販売されていました。
塗ると赤いギラギラした色が残るのが特徴的で、かつては擦り傷などに塗っている子供が沢山いました。

しかし、公害問題が大きく叫ばれるようになった昭和40年代後半、製造過程で水銀を含んだ排水を生じることから日本国内での製造が行われなくなりました。(ちなみに英語で水銀はmercury)

そして、同時期に発売されたベンゼトニウム塩化物を主成分とする「マキロン」の登場もあり、家庭常備薬としての地位も奪われることになります。(その後マキロンも、治癒過程における安易な消毒のデメリットが叫ばれるようになり、さらにキズパワーパット等を用いた浸潤療法の普及もあり、存在感が低下することになりますが。)

しかしながら、現在でも数社販売を続けており、購入可能なことは知っておきましょう。(今でも、使い慣れた高齢者が指名買いされることがあります。)
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中規模なドラックストアでは在庫していない所が多いですが、大規模な店舗や昔ながらの薬局には、現在でも店頭販売しているところがあります。また第二類医薬品扱いなので、ネット通販でも安価に購入することも可能です。(2019.5月末で日本薬局方から削除されます。但し一社のみ2020年末まで販売を継続する見込みあり。文末追記も参照を)

しかしながら、既に市販薬としての役割は終えた市販消毒薬ですので、敢えて販売者側から提案するような製品ではありません。

このように、販売機会も限られた消毒薬ですので、試験でもそれ程出題されません。
出題の手引き(H30.3)の記載内容は以下の通り

「一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。有機水銀の一種であるが、皮膚浸透性が低く、通常の使用において水銀中毒を生じることはない。ただし、口の周りや口が触れる部位(乳頭等)への使用は避ける必要がある。」

「ヨードチンキと混合すると不溶性沈殿を生じて殺菌作用が低下するため、ヨードチンキと同時に使用しないこととされている。」

平成27年度九州・沖縄地区の問題(問87)では、「有機水銀」のところを、「有機クロム」「クロム中毒」でひっかける問題が登場しました。(マーキュロクロムの名称は外国での販売名が由来で、クロムを含むわけではない。)

(2019.5追記)
2016.6公布された「水銀による環境の汚染の防止に関する法律」により、電池や温度計に用いられる水銀含有製品とともに、マーキュロクロム液も2020年末までに製造禁止になることが決まりました。
また、厚生労働省(H29.12.1 薬生発1201 第3号)より「マーキュロクロム」「マーキュロクロム液」は日本薬局方からの削除が通達され、経過処置期間が切れる2019年5月末で日本薬局方から削除されます。

これにより、殆どの販売メーカーは製造を中止するそうです。おそらく問題作成の手引きからも、そのうち削除されるでしょう。

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