ビタミンB12(シアノコバラミン、メチルコバラミンの違い)
傷ついた末梢神経を修復する働き 悪性貧血の知識も押さえておく
ビタミンB12は、1948年貧血に関連するビタミンの1種として発見されました。
分子内にコバルトを含むことから、コバラミンと呼ばれる事もあります。また、水溶性ビタミンに分類されます。
赤血球の生成に関与することから、当初は「貧血向けのビタミン」として知られることになります。その後、末梢神経の修復にも関与し、腰痛や肩こり、首の痛みに伴うしびれ等の神経痛を和らげる作用も注目され、「末梢神経のビタミン」とも呼ばれます。
この作用は末梢神経の構成成分(タンパク質・リン脂質など)の体内での生成を助け、傷ついた末梢神経を修復する為と考えられています。
ビタミンB12は、大きくわけて4種類の誘導体(基本的構造がほぼ同じもの)に分けられます。
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン
アデノシルコバラミン(DBCC)、メチルコバラミン(メコバラミン)
シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミンは、そのままでは生体内で活性がないことがわかっています。
医薬品として投与された場合は、生体内で活性型(補酵素型)のメチルコバラミン、アデノシルコバラミンに変換されて、薬効を示すと考えられています。(しかし、これらが「体内のどこで、どの程度代謝され活性型になり、どの程度薬効を表す」かを示す明確なデータは見つけられませんでした。)
アデノシルコバラミン、メチルコバラミンは活性型であり、そのまま体内で働きます。
医薬品の成分としては、特にシアノコバラミン、メチルコバラミン(メコバラミン)が用いられています。
医療用医薬品では、サンコバ点眼液(シアノコバラミン)や、メチコバール(メコバラミン)などが代表例です。特にメコバラミン製剤は、坐骨神経痛等のしびれの症状緩和で大変良く処方されていました。(現在は治療薬の選択肢が増え、以前ほど使用されていません)
一般用医薬品では、まずシアノコバラミンを含む製品としてソフトサンティアひとみストレッチ(点眼薬)や、アリナミンEX、新キューピーコーワi などのビタミン剤があります。
また、メチルコバラミンを含む製品としては、アクテージSN錠、ナボリンSなどのビタミン剤があります。
↓アクテージSN錠
ビタミンB12を含むビタミン剤では、「肩こり、腰痛、神経痛、手足のしびれ(しびれ感)」への効能を持ち、点眼薬では、ピント調節筋のコリをほぐす効果が期待されます。
なお、化学的にはメチルコバラミン(メコバラミン)は光により分解され、ヒドロキソコバラミンなどに変化してまいます。その為、遮光での保管が必要になり、容器やシートも遮光タイプになっています。
一方で、シアノコバラミンは光に対して安定的であり、例えばサンコバ点眼液は、特に遮光保存は必要ありません。
(ビタミンB12は赤い色をしているのも特徴です。)
登録販売者試験におけるビタミン類に関する内容は、まずまず出題されています。
ビタミン類は、その効能や効果も漠然としており、知識が定着しづらく苦手意識をもつ方が多いですが、特にビタミンB群はB1,B2,B6,B12と、種類も多く大変です。
問題作成の手引き(令和6年度)でも、多岐にわたり登場しますが、特に覚えておきたいのが貧血用薬の分野で登場する、ビタミン欠乏性貧血との関連についてです。
「貧血は、その原因によりビタミン欠乏性貧血、鉄欠乏性貧血等に分類される」
「(ビタミン欠乏性貧血について)特に、ビタミンB12が不足して生じる巨赤芽球貧血は悪性貧血と呼ばれている。ビタミンB12は、胃腺から出る粘液に含まれる、内因子と呼ばれるタンパク質と結合することで、小腸から吸収されやすくなるので、胃粘膜の異常によりビタミンB12が不足する。」
⇒やや理解しづらいこれらの知識は、胃癌患者さんにおける悪性貧血リスクを知っていると理解しやすいです。
胃癌により胃を切除している方では、ビタミンB12の吸収を助ける内因子が不足しているため、健常人よりもビタミンB12が不足がちになります。その為、ビタミンB12製剤が処方され、毎日服用している方がいます。身近に胃癌で手術をしたことがある方がいれば、是非一度聞いてみて下さい。
他にも、滋養強壮保健薬の分野における記載内容は
「ビタミンB12は、赤血球の形成を助け、また、神経機能を正常に保つために重要な栄養素である。」
「シアノコバラミン、ヒドロキソコバラミン塩酸塩等として、ビタミン主薬製剤、貧血用薬等に配合されている。」
眼科用薬の分野では
「ビタミンB12(シアノコバラミン等) 目の調節機能を助ける作用を期待して用いられる。」
それ以外にも、婦人用薬、眠気を防ぐ薬の分野でも登場します。但し、他のビタミン類に比べると、記載内容は少な目です。
また、なぜか活性型(補酵素型)のメチルコバラミン(メコバラミン)についての記載はありません。
(参考資料)
・メチコバール注射液 インタビューフォーム
・ハイコバールカプセル インタビューフォーム