毒薬と劇薬の違い(登録販売者試験)
第4章薬事関係法規・制度 において、毒薬・劇薬の違い・表示方法等については必ず出題されると思って良いでしょう。
まず毒薬・劇薬について、他の一般薬との違いは、「薬効が期待される量と、中毒の恐れがある摂取量が、接近しており安全域がせまい」ために、他の医薬品とは区別するために用いられる区分名称です。(一般に、動物実験での過量投与で調べられます。なお、同じ薬効成分でも、1錠当たりの含有量が多い規格や、剤形の違い(粉薬など)によっても、劇薬に指定されることもあります。)
特に毒薬は注意が必要で、その危険度は、毒薬>>>>劇薬>一般薬といったイメージを持つと良いでしょう。
なお、一般用医薬品で、毒薬もしくは劇薬に指定されている製品はありません。(後述のとおり、市販薬では要指導医薬品で劇薬指定のものがある)
次に、医療用医薬品においては、「調剤薬局」を例にとり考えてみます。
いわゆる一般的な「調剤薬局」では、1000種類程度の医薬品を在庫している所はザラにありますが、そのうち1~2割程度ぐらい「劇薬」であることは珍しくありません。
一応保管等は区別されますが、良く使用される降圧薬や消炎鎮痛薬なども「劇薬」扱いのものがあり、存在自体、それ程珍しいものではありません。一方、「毒薬」は、せいぜい1~2種類あるか無いかと言ったところでしょうか。
なお、通常の使用量で起こる副作用のリスクとは、考えが異なりますので、区別して理解する必要があります。
次に、試験で良く出題される、毒薬・劇薬を収める直接の容器又は被包への表示方法は、手引きでの説明は文章のみで理解しづらいですが、視覚的に覚える方が記憶が定着しやすいでしょう。
毒薬の記載:黒地に白枠、白字をもって、当該医薬品の品名及び「毒」の文字が記載
ある毒薬指定薬品(医療用)の外箱への表示例
なお、直接の容器又は被包ではなく、写真は外箱への記載ですが、表示方法は同じです。
劇薬の記載:白地に赤枠、赤字をもって、当該医薬品の品名及び「劇」の文字が記載
ある劇薬指定薬品(医療用)の外箱への表示例
他にも毒薬、劇薬関連で良く出題されるポイントは以下の通りです。
①毒薬又は劇薬を、14歳未満の者その他安全な取扱いに不安のある者に交付することは禁止
⇒年齢が変更されて正誤を問われる出題が良くあります。また、年齢に関わらず安全な取扱いに不安のある者にも交付できません。
(なお、(毒薬・劇薬ではなく)毒物・劇物については18歳未満への交付が禁止となっています。)
②毒薬又は劇薬を、一般の生活者に対して販売又は譲渡する際には、当該医薬品を譲り受ける者から、品名、数量、使用目的、譲渡年月日、譲受人の氏名、住所及び職業が記入され、署名又は記名押印された文書の交付を受けなければならない
⇒特に、「職業」は正誤を問われると迷いやすいところです。理由はわかりませんが、かつて業務用で使う消毒剤などがあったためかもしれません。
⇒「文書の交付」に関する知識として、かつて「バポナ殺虫プレート」(ジクロルボス)が劇薬指定の一般用医薬品として知られていました。特に夏場の虫が湧く時期に良く売れる商品ですが、薬局で販売する際に、署名等の文書の交付(というか必要事項を記入してもらう)が日常的に行われていました。
しかし、2012年5月末に「劇薬指定」から解除され販売の手間が減ることになりました。但し、それ以降は第一類医薬品の扱いで販売されていますので、薬局での販売記録の保管は必要となっています。
③毒薬又は劇薬は、要指導医薬品に該当することはあるが、現在のところ、毒薬又は劇薬で、一般用医薬品のものはない(令和3年までは、手引きでは以下の表現でした:一般用医薬品で毒薬又は劇薬に該当するものはなく、要指導医薬品で毒薬又は劇薬に該当するものは一部に限られている。)
⇒平成26年の薬事法改正で登場した「要指導医薬品」には、主に医療用医薬品から転用されたスイッチOTC医薬品が該当しますが、劇薬指定の市販薬も要指導医薬品とされました。なお、2025.1現在、厚生労働省のホームページに記載されてる劇薬指定の要指導医薬品としては4種類記載されていますが、実際に今も販売されていそうなのは勃起障害改善薬(ガラナポーン等)の一部のみです。また、毒薬として、現在販売されているものはありません。
④「その薬局又は店舗におけるその薬局又は店舗以外の場所にいる者に対する一般用医薬品又は薬局製造販売医薬品(毒薬及び劇薬であるものを除く。)の販売又は授与」を「特定販売」という(規則第1条第2項第3号)。
⇒出題は稀ですが、過去に出題されたことがあります。
⑤「(毒薬・劇薬は)他の物と区別して貯蔵、陳列しなければならず、特に毒薬を貯蔵、陳列する場所については、かぎを施さなければならないとされている。」
→毒薬の保管は、「かぎ」が必要です。
(補足)
登録販売者試験では取り上げられませんが、医薬用外の毒物・劇物の、容器及び被包への表示は、毒物及び劇物取締法により
医薬用外劇物:白地に赤色文字を表示
医薬用外毒物:赤字に白色文字を表示(黒ではない!)
なお、化学工場から出入りし、危険物を運んでいるトラック等の前後部に掲げられているマークは
であり、白枠はありあせん。
これは毒物もしくは劇物を運搬している車両に掲げる必要があります。(毒物及び劇物取締法)
なお、具体的には、塩酸や、水酸化ナトリウム、無機シアン化合物等があります。