漢方薬の「しばり表現」とは(具体例)

しばり表現を省いた広告は認められていない。
生薬個別の作用の説明も不適当

(この記事は、あくまで試験対策のものであることご了承ください)
第4章 薬事関連法規・制度 「医薬品適正広告基準」において、漢方薬の「しばり表現」に関する記載があります。

出題の手引き(H27.4)の記載内容は以下のとおりです。(良く出題されるポイントは赤字に。)

漢方処方製剤等では、使用する人の体質等を限定した上で特定の症状等に対する改善を目的として、効能効果に一定の前提条件(いわゆる「しばり表現」)が付されていることが多いが、そうしたしばり表現を省いて広告することは原則として認められていない。なお、漢方処方製剤の効能効果は、配合されている個々の生薬成分が相互に作用しているため、それらの成生薬の作用を個別に挙げて説明することも不適当である。」

但し、この「しばり表現」、初めて聞いた人、漢方薬なんて飲んだことがない人は、「何?」という感想だと思います。

これを具体的に理解するには、一般用医薬品の漢方薬の「効能効果」を確認するのが一番です。

例えば、だれでも知っている、市販されている「防風通聖散」の効能効果は以下のように書かれています。

「体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの次の諸症:高血圧や肥満に伴う動悸・肩こり・のぼせ・むくみ・便秘、蓄膿症(副鼻腔炎)、湿疹・皮膚炎、ふきでもの(にきび)、肥満症 」

この中で、使用する人の体質等を限定した表現「体力充実して、腹部に皮下脂肪が多く、便秘がちなものの・・・」が、しばり表現と呼ばれるものです。

「体質等を限定した・・」というと堅苦しいですが、より砕けた表現で言うと「こうゆう人には、より効果的な漢方ですよ」的なものと、捉えれば十分です。(古来からの、中国や日本における医学の伝承の中で培われた経験則のようなものでしょう。)

以前良く見かけた防風通聖散のテレビCMでは15秒間のどこかで、このしばり表現が登場しています。

また、市販されている「葛根湯」の効能効果は以下の通りです。

「体力中等度以上のものの次の諸症:感冒の初期(汗をかいていないもの)、鼻かぜ、鼻炎、頭痛、肩こり、筋肉痛、手や肩の痛み」

この場合のしばり表現は「体力中等度以上のものの・・・」になります。

他にも、高齢者向けの感冒薬として知られる「参蘇飲(じんそいん)」は

体力虚弱で、胃腸が弱いものの次の諸症:感冒、せき」となっており、体力の弱い方向けであるのがわかります。

最後に、試験対策に「個々の漢方製剤のしばり表現を憶える必要かあるか?」について

個人的には、余裕がなければ「体力中程度以下の~」「体力虚弱で~」など、「体力」に関するしばり表現まで、憶える必要はないと考えます。
理由は、暗記作業を混乱させるだけでなく、あまり解答選択に役立たないからです。むしろ、各漢方薬で固有のキーワードを憶えるべきです。(半夏厚朴湯の「のどのつかえ感」など)
(2020.7追記:2018年頃から、その漢方薬に特徴的なキーワードを敢えて抜いて問題が作成されている例が散見され、しばり表現の、「体力~」を憶えていた方が有効な場合も増えつつあります。例えば桂枝茯苓丸など)

実際、本格的な漢方治療ではない、OTCの漢方薬販売においては、しばり表現を意識するよりも、代表的な適応を幅広く知っている方が役立ちます。

(補足)
OTC医薬品協会が作成している「OTC医薬品等の適正広告ガイドライン」2015年度には、効能効果等のしばりの表現について以下のように書かれています。
http://www.jsmi.jp/advertisement/guideline.html

①効能効果等のしばりの表現について
承認された効能効果等に一定の条件、いわゆるしばりの表現が付されているOTC 医薬品等の広告を行う際は、原則としてしばり表現を省略することなく正確に付記又は付言すること。
この場合、しばり部分とその他の部分について、同等の広告効果が期待できるような方法により広告を行うこと。なお、紙面が狭い場合でも同様とする。

②効能効果等のしばり表現の省略について
テレビ、ラジオにおける効能効果等のしばり表現は、漢方製剤等のように比較的長い場合に限り省略できるものとするが、その場合は必ず「この○○○は、体質、症状に合わせてお飲みください。」等の注意喚起の旨を付記又は付言するものとする。

②の「しばり表現の省略」からわかる通り、省略できる場合もあるようです。

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