クロトリマゾール(イミダゾール系 抗真菌薬)・・・2つの作用機序は頻出
イミダゾール系の中では頻出。再発膣カンジダにもOTC化
クロトリマゾールは、いわゆる「水虫・たむし」の治療に用いられるイミダゾール系抗真菌薬です。
数あるイミダゾール系抗真菌薬の中でも、世界で一番最初に開発された成分です。また、イミダゾール系の特徴として、白癬菌(水虫)以外にも、カンジダ菌や癜風(でんぷう)菌にも効果が期待でき幅広い用途で用いられています。
クロトリマゾールを初めとするイミダゾール系の抗真菌薬は、1970年代半ばに登場し、その高い抗菌活性から現在でも使用されている成分です。その抗菌の作用機序は大きく分けて2つあります。
①真菌の細胞膜成分:エルゴステロールの生合成阻害
真菌特有の細胞膜成分であるエルゴステロールの生合成過程を阻害する働きがあり、これによって細胞膜の機能を低下、死滅させます。
このエルゴステロールは真菌には共通して存在しますが、ヒトの体には存在しないため、ヒトには無害とされています。
②直接的な細胞膜への直接作用
真菌の細胞膜に直接作用し、膜流動性を高めることで、細胞内環境に悪影響を及ぼします。また、細胞外からの栄養の取り込みも阻害します。
この①,②の作用の働きにより、真菌類(白癬菌、カンジダ等)を抑える効果を発揮します。なお、②の直接的な作用は、薬が高濃度の時に発揮すると言われています。
このような特徴を持つイミダゾール系抗真菌薬ですが、クロトリマゾール以外にも、ミコナゾール塩酸塩、オキシコナゾール硝酸塩など、様々な成分が開発され、外用では目立った副作用もなく、暫く水虫の外用薬治療の主役でした。
その後、1990年代に、皮膚貯留性が高く1日1回で使用可能な、ブテナフィン塩酸塩やテルビナフィン塩酸塩が登場すると、「水虫の外用治療薬」としての存在感は徐々に小さくなっていきます。(イミダゾール系では1日2~3回使用タイプが多い。)
しかしながら、カンジダ菌などの水虫(白癬菌)以外の真菌類の治療では、まだまだ使用されています。
医療用医薬品としては「エンペシド」(1976年発売)で知られ、白癬菌(水虫)向けにクリームや液剤の他、膣カンジダ治療用の膣錠もあります。
一般用医薬品では、「ピロエース」ブランドに用いられており、抗生物質・抗真菌薬であるピロールニトリンと組み合わせて用いられています。
用法として1日2~3回使用する必要があるのが、現在主流の水虫薬に比べて販売しづらい点になります。
また、2011年にはOTC化の用途範囲が広がり、再発膣カンジダ治療薬「エンペシドL」(佐藤製薬)も発売されています。(H31.5現在、第一類医薬品)
なお、「ピロエース石鹸」という医薬部外品扱いの石鹸がありますが、クロトリマゾールを含んでいませんので、注意して下さい。あくまで殺菌剤(トリクロカルバン、クレゾール)を含んだ石鹸です。
登録販売者試験では、第3章において必ず1問は、抗真菌薬に関する出題があると思って良いでしょう。
その中でもクロトリマゾールは出題率は高めです。時間がない方でも、クロトリマゾールは押さえておいて下さい。
イミダゾール系抗真菌薬・クロトリマゾールに関する記述は以下の通り。
「オキシコナゾール硝酸塩、ネチコナゾール塩酸塩、ビホナゾール、スルコナゾール硝酸塩、エコナゾール硝酸塩、クロトリマゾール、ミコナゾール硝酸塩、チオコナゾール等は、イミダゾール系の抗真菌薬と呼ばれ、皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の透過性を変化させることにより、その増殖を抑える。」
⇒作用機序が2つ記載されているは、イミダゾール系の大きな特徴であり、試験でも頻出です。
「皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり」は、冒頭に述べた作用①に該当します。「細胞膜の透過性を変化させることにより」は、作用②に該当します。
「副作用としてかぶれ、腫れ、刺激感等が現れることがある。あるイミダゾール系成分が配合されたみずむし薬でかぶれたことがある人は、他のイミダゾール系成分が配合された製品も避けるべきである。」
⇒この内容については第5章で問われることがあります。
(参考資料)
・「エンペシドクリーム1%」インタビューフォーム