H26 富山県(北陸・東海)第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識(問11-20)

第1章のラスト4問は、薬害の歴史から、サリドマイド訴訟・スモン訴訟・HIV訴訟・CJD訴訟の4つについて、各1題ずつ出題されている。
最初は難しく感じるかもしれないが、試験の手引きに書かれている内容のポイントを押さえていれば、十分正解できる。
試験本番では短期記憶を活かし、直前まで手引きに目を通して、試験開始後、優先して解いても良い。


問 11
小児の医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 小児が医薬品を使用する場合においては、保健衛生上のリスク等に関して、成人と別に考える必要がある。

b 小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が短く、服用した医薬品の吸収率が相対的に低い。

c 小児は、血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすい。

d 医薬品によっては、形状等が小児向けに作られていないため小児に対して使用しないことなどの注意を促している場合もある。

    a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正

b 誤り。小児の腸の長さに関する出題は頻出。小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い
c 正しい。血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しやすいと一般に言われている。
d 正しい。小児、特に乳児は、錠剤、カプセル剤等をそのまま飲み下させることが難しいことが多い。このため、5歳未満の幼児に使用される錠剤やカプセル剤などの医薬品では、服用時に喉につかえやすいので注意するよう添付文書に記載されている。

正答・・・3

問 12
乳幼児の医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 5歳未満の幼児に使用される錠剤やカプセル剤などの医薬品では、服用時に喉につかえやすいので注意するよう添付文書に記載されている。

b 乳児は、基本的には医師の診療を受けることよりも、乳児向けの用法用量が設定されている一般用医薬品による対処が優先される。

c 一般に乳幼児は、容態が変化した場合に、自分の体調を適切に伝えることが難しいため、医薬品を使用した後は、保護者等が乳幼児の状態をよく観察することが重要である。

d 乳幼児が誤って薬を大量に飲み込んだなどの誤飲・誤用事故の場合には、通常の使用状況から著しく異なるため、想定しがたい事態につながるおそれがある。

  a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正

b 誤り。乳児向けの用法用量が設定されている医薬品であっても、乳児は医薬品の影響を受けやすく、また、状態が急変しやすく、一般用医薬品の使用の適否が見極めにくいため、基本的には医師の診療を受けることが優先され、一般用医薬品による対処は最小限(夜間等、医師の診療を受けることが困難な場合)にとどめるのが望ましい。

正答・・・2

問 13
妊婦・授乳婦が医薬品を使用する上で注意すべき事項に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 一般用医薬品の成分の一部が、乳汁中に移行することはない。

b 妊婦は、体の変調や不調を起こしやすいため、一般用医薬品を使用することにより、症状の緩和等を図ろうとする場合もあるが、一般用医薬品による対処が適当かどうかを含めて慎重に考慮されるべきである。

c 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)がある。

d 一般用医薬品には、流産や早産を誘発するおそれがあるものはない。

1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)

a 誤り。代表例としてセンノシドセンナ、ダイオウ等の便秘薬は、乳汁中に移行し、乳児が下痢を起こした報告があり、授乳中は服用を控える。
b 正しい。常識的に考えれば良い
c 正しい。但し、血液-胎盤関門によって、どの程度医薬品の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多い。
d 誤り。一般用医薬品でも便秘薬のように、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。

正答・・・2

問 14
プラセボ効果(偽薬効果)に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果という。

b 医薬品を使用したときにもたらされる反応や変化には、プラセボ効果によるものは含まれない。

c プラセボ効果によってもたらされる反応や変化には、不都合なもの(副作用)はない。

d プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることがある。

1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)

プラセボ効果もほぼ毎年出題される頻出問題である。

医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。
プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられている。

a 正しい。
b 誤り。
c 誤り。
d 分かりずらいが、正しい文章。

正答・・・4

問 15
医薬品の品質に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 光(紫外線)は、医薬品の配合成分の品質には影響を及ぼさない。

b 一般用医薬品は、家庭における常備薬として購入されることも多いことから、外箱等に記載されている使用期限から十分な余裕をもって販売等がなされることが重要である。

c 医薬品は、適切な保管・陳列をすれば、経時変化による品質の劣化はない。

d 医薬品の配合成分には、高温や多湿によって品質の劣化を起こしやすいものがある。

    a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤

常識的知識で答えられるレベルの問題。

正答・・・4

問 16
セルフメディケーションと一般用医薬品に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a セルフメディケーションの主役は、一般用医薬品の販売等に従事する専門家である。

b 一般用医薬品の販売等に従事する専門家は、激しい腹痛があるなど、症状が重いときでも、まず、一般用医薬品を使用して症状の緩和を図るよう勧める必要がある。

c 一般用医薬品の利用のほか、食事と栄養のバランス、睡眠・休養、運動、禁煙等の生活習慣の改善を含めた健康維持・増進全般について「セルフメディケーション」という場合もある。

d 一般用医薬品を、一定期間使用しても症状の改善がみられないときには、医療機関を受診して医師の診療を受けることが望ましい。

  a b c d
1 誤 誤 正 正
2 正 誤 誤 正
3 正 正 誤 誤
4 正 正 正 誤
5 誤 正 正 正

a 誤り。セルフメディケーションの主役は一般の生活者であり、一般用医薬品の販売等に従事する専門家においては、購入者等に対して常に科学的な根拠に基づいた正確な情報提供を行い、セルフメディケーションを適切に支援していくことが期待されている。
b 誤り。常識的におかしいとわかるはず。
c 正しい。
d 正しい。

正答・・・1

問 17
スモンに関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a スモンはその症状として、初期には腹部の膨満感から激しい腹痛を伴う下痢を生じ、次第に下半身の痺しびれや脱力、歩行困難等が現れる。

b スモン訴訟を契機として、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設された。

c スモン訴訟は、国及び製薬企業を被告として提訴されたものであり、和解が成立した例はない。

d スモン患者に対しては、治療研究施設の整備、治療法の開発調査研究の推進、重症患者に対する介護事業等が講じられている。

1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)

スモン訴訟に関する問題。手引における記載内容は以下のとおり

スモン訴訟は、整腸剤として販売されていたキノホルム製剤を使用したことにより、亜急性脊髄視神経症(英名Subacute Myelo-Optico-Neuropathy の頭文字をとってスモンと呼ばれる。)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。

スモンはその症状として、初期には腹部の膨満感から激しい腹痛を伴う下痢を生じ、次第に下半身の痺れや脱力、歩行困難等が現れる。麻痺は上半身にも拡がる場合があり、ときに視覚障害から失明に至ることもある。

キノホルム製剤は、1924年から整腸剤として販売されていたが、1958年頃から消化器症状を伴う特異な神経症状が報告されるようになり、米国では1960年にアメーバ赤痢に使用が制限された。我が国では、1970年8月になって、スモンの原因はキノホルムであるとの説が発表され、同年9月に販売が停止された。

1971年5月に国及び製薬企業を被告として提訴された。被告である国は、スモン患者の早期救済のためには、和解による解決が望ましいとの基本方針に立って、1977年10月に東京地裁において和解が成立して以来、各地の地裁及び高裁において和解が勧められ、1979年9月に全面和解が成立した。

正答・・・4

問 18
サリドマイドに関する記述のうち、誤っているものはどれか。

1 サリドマイド訴訟は、サリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟である。

2 サリドマイドは催眠鎮静剤や胃腸薬に配合されていた。

3 日本では、1961年12月に西ドイツ(当時)の企業からの勧告を受け、かつ翌年になってからもその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置も同年9月であるなど、対応の遅さが問題視されていた。

4 サリドマイドの光学異性体のうち、R体には有害作用がないことから、R体のサリドマイドを分離して製剤化すると催奇形性を避けることができる。

サリトマイド訴訟に関する問題。手引きの記載内容は以下の通り
催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。1963年6月に製薬企業を被告として、さらに翌年12月には国及び製薬企業を被告として提訴され、1974年10月に和解が成立した。

サリドマイドは催眠鎮静成分として承認された(その鎮静作用を目的として、胃腸薬にも配合された)が、副作用として血管新生xを妨げる作用もあった。妊娠している女性が摂取した場合、サリドマイドは血液-胎盤関門を通過して胎児に移行する。胎児はその成長の過程で、諸器官の形成のため細胞分裂が活発に行われるが、血管新生が妨げられると細胞分裂が正常に行われず、器官が十分に成長しないことから、四肢欠損、視聴覚等の感覚器や心肺機能の障害等の先天異常が発生する。

なお、血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体のうち、一方の異性体(S体)のみが有する作用であり、もう一方の異性体(R体)にはなく、また、鎮静作用はR体のみが有するとされている。
サリドマイドが摂取されると、R体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。

サリドマイド製剤は、1957年に西ドイツ(当時)で販売が開始され、我が国では1958年1月から販売されていた。1961年11月、西ドイツのレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発し、西ドイツでは製品が回収されるに至った。一方、我が国では、同年12月に西ドイツ企業から勧告が届いており、かつ翌年になってからもその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視されていた。

サリドマイドによる薬害事件は、我が国のみならず世界的にも問題となったため、WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。

正答・・・4

問 19
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a CJD訴訟は、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
b CJDの原因は、細菌感染によるものではなく、ウイルス感染によるものである。
c CJD訴訟は、国、輸入販売業者及び製造業者を被告として提訴された。
d CJD訴訟を契機として、医薬品副作用被害救済制度が創設された。

    a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正

CJD訴訟に関する問題。手引きの記載内容は以下の通り

脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。CJDは、細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種であるプリオンが原因とされ、プリオンが脳の組織に感染し、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。

ヒト乾燥硬膜の原料が採取された段階でプリオンに汚染されている場合があり、プリオン不活化のための十分な化学的処理が行われないまま製品として流通し、脳外科手術で移植された患者にCJDが発生した。

国、輸入販売業者及び製造業者を被告として、1996年11月に大津地裁、1997年9月に東京地裁で提訴された。大津地裁、東京地裁は2001年11月に和解勧告を行い、2002年3月に両地裁で和解が成立した。

本訴訟の和解に際して、国(厚生労働大臣)は、生物由来の医薬品等によるHIVやCJDの感染被害が多発したことにかんがみ、こうした医薬品等の安全性を確保するため必要な規制の強化を行うとともに、生物由来の医薬品等による被害の救済制度を早期に創設できるよう努めることを誓約し、2002年に行われた薬事法改正に伴い、生物由来製品の安全対策強化、独立行政法人医薬品医療機器総合機構による生物由来製品による感染等被害救済制度の創設等がなされた。

これらのほか、CJD患者の入院対策・在宅対策の充実、CJDの診断・治療法の研究開発、CJDに関する正しい知識の普及・啓発、患者家族・遺族に対する相談事業等に対する支援、CJD症例情報の把握、ヒト乾燥硬膜の移植の有無を確認するための患者診療録の長期保存等の措置が講じられるようになった。

正答・・・4

問 20
第1欄の記述は医薬品の副作用等による健康被害の再発防止に向けた取組みに関するものである。( )の中に入れるべき字句は第2欄のどれか。

第1欄
( )訴訟を契機として、医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(当時)との連携による承認審査体制の充実、製薬企業に対し従来の副作用報告に加えて感染症報告の義務づけ、緊急に必要とされる医薬品を迅速に供給するための「緊急輸入」制度の創設等を内容とする改正薬事法が1996年に成立し、翌年4月に施行された。

第2欄
1 サリドマイド
2 スモン
3 ヒト免疫不全ウイルス(HIV)
4 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
5 スティーブンス・ジョンソン症候群

正答・・・3

 

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