H26 富山県(北陸・東海)第3章 主な医薬品とその作用 (問21-30)

問22、29、30は難問(特に問30)

問 21
かぜ及びかぜ薬に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 「かぜ」(感冒)の症状は、くしゃみ、鼻汁・鼻閉(鼻づまり)、咽喉頭痛、咳、痰等の呼吸器症状と、発熱、頭痛、関節痛、全身倦怠感等の全身症状が、組み合わさって現れる。

b かぜの約8割はウイルス(ライノウイルス、コロナウイルス、アデノウイルスなど)の感染が原因であるが、それ以外に細菌の感染や、まれに冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因による場合もある。

c かぜ薬は、かぜの諸症状の緩和のほか、ウイルスの増殖抑制や排除を図るものである。

d 発熱、咳、鼻水など症状がはっきりしているかぜであっても、別の症状の発現予防のため総合感冒薬を選択することが基本である。

    a b c d
1 誤 誤 正 正
2 正 誤 誤 正
3 正 正 誤 誤
4 正 正 正 誤
5 誤 正 正 正

かぜ薬に関する問題。常識的感覚で解けるサービス問題。

a 正しい。
b 正しい。「かぜの8割はウイルス性で、抗生物質が効かない」という話は耳にしたことがある人も多いはず。
c 誤り。ウイルスを抑える働きはない。
d 誤り。市販のかぜ薬は、あくまで対症療法であり、根本治療や予防の効果を期待するものではない。

正答・・・3

問 22
かぜ薬の成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a クロペラスチン塩酸塩は、体内での起炎物質の産生を抑制することで炎症の発生を抑え、腫れを和らげる。

b ジメモルファンリン酸塩は、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする。

c リゾチーム塩酸塩は、炎症を生じた鼻粘膜や喉の組織の修復に寄与するほか、痰の粘り気を弱め、また、気道粘膜の線毛運動を促進して痰の排出を容易にする作用を示す。

d セミアルカリプロティナーゼは、タンパク質分解酵素で、体内で産生される炎症物質(起炎性ポリペプチド)を分解する作用がある。

1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)

かぜ薬の成分に関する問題。リゾチーム塩酸塩以外はマイナーな成分であり難問である。

a 誤り。クロペラスチンは、中枢神経系に作用して咳を抑える成分(鎮咳成分)。医療用では「フスタゾール糖衣錠10mg」という薬が存在するが、かなりマイナーな存在である。H26現在、含有するOTC薬もわからず。
b 誤り。ジメモルファンリン酸塩も、中枢性非麻薬性鎮咳成分の一つ。こちらもOTCではマイナーで、含有している薬を探すのは難しい。「新パブロンせき止め液」ぐらいか。
c 正しい。リゾチームは、登録販売者試験では頻出
炎症を生じた鼻粘膜や喉の組織の修復に寄与するほか、痰の粘り気を弱め、また、気道粘膜の線毛運動を促進して痰の排出を容易にする作用を示す。他に、鶏卵の卵白から抽出したタンパク質であるため、「鶏卵アレルギーがある人に対しては使用を避ける」ことも頻出。
d 正しい。セミアルカリプロティナーゼもマイナーな成分だが、試験では割と登場する。。

正答・・・3

問 23
次の表は、あるかぜ薬に含まれる成分の一部である。このかぜ薬に含まれる成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

1日量の成分
イブプロフェン 450 mg
ジヒドロコデインリン酸塩 24 mg
プソイドエフェドリン塩酸塩 135 mg
クロルフェニラミンマレイン酸塩 7.5 mg
無水カフェイン 75 mg

a イブプロフェンは、プロスタグランジンの産生を促すことで消化管粘膜の防御機能を低下させるため、消化管に広範に炎症を生じる疾患である胃・十二指腸潰瘍、潰瘍性大腸炎又はクローン氏病の既往歴がある人では、それら疾患の再発を招くおそれがある。

b ジヒドロコデインリン酸塩は、非麻薬性鎮咳成分とも呼ばれ、延髄の咳嗽中枢に作用する。

c プソイドエフェドリン塩酸塩は、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させることによって鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として配合される。

d クロルフェニラミンマレイン酸塩は、くしゃみや鼻汁を抑えることを目的として配合される。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)

合格点を取るには正答が求められるレベルで、全てしっかり押さえておくべき成分である。特に、クロルフェニラミンマレイン酸ジヒドロコデインリン酸塩に関する記述は超頻出。
a 誤り。イブプロフェンのような解熱鎮痛剤はプログラスタンジンの産生を抑える。後半部分は正しい。
b 誤り。コデインリン酸塩ジヒドロコデインリン酸塩については、モルヒネと同じ基本構造を持ち、依存性がある成分であり、麻薬性鎮咳成分とも呼ばれる。
c 正しい。プソイドエフェドリン塩酸塩は、鼻炎用内服薬として使用され、交感神経系を刺激して鼻粘膜の血管を収縮させることによって鼻粘膜の充血や腫れを和らげる。第5章でも頻出である。
d 正しい。クロルフェニラミンマレイン酸塩は市販薬で使用される代表的抗ヒスタミン成分。総合感冒薬にも多用されている。

正答・・・4

問 24
次のうち、サリチル酸系解熱鎮痛成分として正しいものの組み合わせはどれか。

a エテンザミド
b イソプロピルアンチピリン
c サザピリン
d アセトアミノフェン

1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)

サリチル酸系解熱鎮痛成分に関する問題。サザピリンはマイナー成分で迷うかもしれないが、消去法で判断できる。
アスピリン(別名アセチルサリチル酸)、サザピリンエテンザミドサリチルアミド等を総称してサリチル酸系解熱鎮痛成分という。
イソプロピルアンチピリンはOTC唯一のピリン系。
アセトアミノフェンはアニリン系と呼ばれることがあるが、試験で問われることはない。

正答・・・2

問 25
解熱鎮痛薬に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 発熱に発疹や痒みなどの皮膚症状等を伴っている場合や、発熱が1週間以上続いているような場合には、自己判断で一般用医薬品である解熱鎮痛薬を用いて安易に熱を下げることは、かえって発熱の原因である病気の診断を困難にさせ、また、病態を悪化させるおそれがある。

b 通常、38℃以下の発熱であっても、ひきつけや著しい体力消耗のおそれがあることから、平熱になるまで解熱鎮痛薬を使用する必要がある。

c 解熱鎮痛薬は、頭痛の症状が軽いうちに服用すると効果的であるほか、症状が現れないうちに予防的に使用することも適切である。

d 解熱鎮痛成分と酒類(アルコール)との相互作用については、アルコールの作用による胃粘膜の荒れがアスピリン等による胃腸障害を増強するという事実が報告されている。

    a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 誤

dがはっきりわからなくても、a、b、cは常識的に判断できれば正答できる。

d アルコールの作用による胃粘膜の荒れがアスピリンアセトアミノフェンイブプロフェンイソプロピルアンチピリン等による胃腸障害を増強するという報告がある。他に、アルコールにより、アセトアミノフェンによる肝機能障害も起こりやすくなることも憶えておく。

正答・・・1

問 26
漢方処方製剤に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

1 芍薬甘草湯は、体力虚弱で、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり、筋肉の痙攣、腹痛、腰痛に適すとされ、症状が見られなくなった後も、1ヶ月程度継続して服用すべきとされる。

2 麻黄湯は、体力充実して、かぜのひきはじめで、寒気がして発熱、頭痛があり、咳が出て身体のふしぶしが痛く汗が出ていないものの感冒等に適すとされるが、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、悪心、胃部不快感、発汗過多、全身脱力感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。

3 半夏厚朴湯は、体力中等度をめやすとして、幅広く応用できる。気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感に適すとされる。

4 麦門冬湯は、体力中等度以下で、痰が切れにくく、ときに強く咳こみ、又は咽頭の乾燥感があるもののから咳、気管支炎、気管支喘息、咽頭炎、しわがれ声に適すとされるが、水様痰の多い人には不向きとされる。

すべて、代表的漢方薬で、OTC,医療用ともによく使われている漢方薬である。
文章が多く、一見幅広い正確な知識が求められそうだが、芍薬甘草湯の記述が明らかに誤りと気付きたい。
芍薬甘草湯に関する手引の内容は
「体力に関わらず、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり筋肉の痙攣、腹痛、腰痛に適すとされる。ただし、症状があるときのみの服用にとどめ、連用は避ける。」

連用をさける理由は、(カンゾウ)甘草による偽アルドステロン症(むくみ、血圧上昇など)が出現しやすくなるためである。
麦門冬湯は「咽頭の乾燥感があるもののから咳」、半夏厚朴湯は「食道部に異物感、のどのつかえ感」などのキーワードも押さえておこう

正答・・・1

問 27
催眠鎮静薬に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

1 小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分により眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがある。

2 ブロムワレリル尿素は、反復して摂取すると依存を生じることが知られている。

3 ブロムワレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けるべきである。

4 生薬成分のみからなる鎮静薬は、作用が緩和なため、長期連用に適している。

睡眠鎮静薬に関する問題。
今回登場していないが、市販の睡眠改善薬に使用される抗ヒスタミン薬ジフェンヒドラミン塩酸塩も押さえておこう。
 
1 正しい。
2,3 正しい。ブロムワレリル尿素に関する依存性や、妊娠中での注意は必ず押さえておきたい。
4  誤り。手引きの「眠気を促す生薬成分」に関する記述は以下のとおり
「神経の興奮・緊張緩和を期待してチョウトウコウ、サンソウニン、カノコソウ、チャボトケイソウ、ホップ等の生薬成分が複数配合されている製品がある。生薬成分のみからなる鎮静薬であっても、複数の鎮静薬の併用や、長期連用は避けるべきである。」

正答・・・4

問 28
眠気防止薬に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 眠気を抑える成分として、チアミン塩化物塩酸塩やニコチン酸アミドが配合されることがある。

b かぜ薬やアレルギー用薬などを使用したことによる眠気を抑えるために眠気防止薬を使用するのは適切ではない。

c カフェインは、胃液の分泌を減少させる作用があり、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがある。

d 吸収されて循環血液中に移行したカフェインの一部は、血液‐胎盤関門を通過することはない。
    a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤

眠気を抑える薬に関する出題。カフェインについては毎年問われるつもりで学習を。

a 誤り。 ビタミンB1(チアミン硝化物、チアミン塩化物塩酸塩等)、ビタミンB2(リボフラビンリン酸エステルナトリウム等)、パントテン酸カルシウム等、ビタミンB6(ピリドキシン塩酸塩等)、ビタミンB12(シアノコバラミン等)、ニコチン酸アミド、アミノエチルスルホン酸(タウリン)等は眠気を抑える成分ではないが、眠気による倦怠感を和らげる補助成分としても用いられている。

b 正しい。 常識的に考えてればよい
c 誤り。「カフェインは胃酸分泌を胃液分泌亢進作用があり、その結果、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがある」。カフェイン・胃酸分泌の関係については頻出問題である。

d 誤り。循環血液中に移行したカフェインの一部は、血液-胎盤関門を通過して胎児に到達することが知られており、胎児の発達に影響を及ぼす可能性がある。また、摂取されたカフェインの一部は乳汁中に移行する。

正答・・・2

問 29
鎮暈薬(乗物酔い防止薬)の配合成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a メクリジン塩酸塩は、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが早く持続時間が短い。

b ジフェニドール塩酸塩は、胃粘膜への麻酔作用によって嘔吐刺激を和らげ、乗物酔いに伴う吐きけを抑えることを目的として配合される。

c ジメンヒドリナートは、不安や緊張などを和らげることで、心理的な要因による乗物酔いの発現を抑える。

d スコポラミン臭化水素酸塩は、乗物酔い防止に古くから用いられている抗ヒスタミン成分で、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗コリン成分等と比べて作用の持続時間は短い。
    a b c d
1 誤 誤 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 誤 正 誤 誤
4 正 誤 誤 誤
5 誤 誤 誤 誤

鎮暈薬(乗物酔い防止薬)に関する問題。知識レベルは難問の部類である。

a 誤り。 メクリジン塩酸塩は、抗ヒスタミン作用で脳の中枢や内耳の自律神経の働きを抑え、めまいや吐き気を起きにくくする。他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く持続時間が長く、専ら乗物酔い防止薬に配合されている。
(以下は試験とは直接関係ない知識)
 メクリジンが配合された市販薬としては「センパア」、「トラベルミンファミリー」等がある。

なお、最近「低身長」への治療薬として研究発表がなされているが、実務では購入者からの質問に対して安易な回答や販売をしないように注意が必要である。

b 誤り。ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。(医療用でも「セファドール」の商品名で広く用いられている)
c 誤り。 ジメンヒドリナートは、専ら乗物酔い防止薬に配合される抗ヒスタミン成分。抗ヒスタミン成分は、延髄にある嘔吐中枢への刺激や内耳の前庭における自律神経反射を抑える作用を示す。
不安や緊張などの心理的な要因を和らげる為、ブロムワレリル尿素アリルイソプロピルアセチル尿素のような鎮静成分が配合されている場合がある。

d 誤り。スコポラミン臭化水素酸塩は、乗物酔い防止に古くから用いられている抗コリン成分(×抗ヒスタミン)。 消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされるが、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗ヒスタミン成分等と比べて作用の持続時間は短い

正答・・・5

問 30
鎮咳去痰薬に配合される生薬成分に関する記述のうち、誤っているものはどれか。

1 ゴミシは、マツブサ科のチョウセンゴミシの果実を基原とする生薬で、鎮咳作用を期待して用いられる。

2 オウヒは、バラ科のヤマザクラ又はその他近縁植物の、通例、周皮を除いた樹皮を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。

3 セキサンは、ヒメハギ科のイトヒメハギの根を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。

4 キョウニンは、バラ科のホンアンズ、アンズ等の種子を基原とする生薬で、体内で分解されて生じた代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静させる作用を示すとされる。

深い知識が求められる難問。「セキサン」自体が相当マイナーな生薬で、使用されているOTC薬も不明。「五味子」「杏仁」は憶えておきたい。受験直前期なら深入りせず、頻出対策を優先。

1 正しい。 漢字では「五味子」。小青竜湯に含まれており、酸っぱい味を生み出している。
2 正しい。漢字では「桜皮」
3 誤り。「セキサンはヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。セキサンのエキスは、別名を白色濃厚セキサノールとも呼ばれる。(手引きより)」
4 正しい。漢字では「杏仁」。含有する代表薬は「麻杏甘石湯・五虎湯」。

正答・・・3
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