この記事では、海外の市販薬(OTC)について紹介していますが、成分が同じでも、日本とは用法用量が異なりますし、もしもの場合の医薬品副作用被害救済制度も対象外です。その為、各自の責任にてご参照ください。
なお、記載されている価格は2025.3の参照現地価格(上海)。当時のレートは1円≒20元で計算しています。
これまで、中国本土のドラックストアでは市販薬は販売しておらず、薬局で購入することが一般的であること、そして代表的な中国の解熱鎮痛薬や、総合感冒薬について紹介しましたが、今回は、消化器症状に用いられる市販薬(OTC)の代表的なもの、具体的には胃薬や吐き気止め、下痢止め、便秘薬などを紹介します。
胃薬:中国ではプロトンポンプ阻害剤(PPI)が市販薬(OTC)として販売されている
まず最初に、胃痛・胸やけ、むかつきといった胃の症状に用いられる市販薬です。
現在、日本の医療現場では、PPI(プロトンポンプ阻害薬)と呼ばれる、胃薬の中でも特に強く胃酸分泌を抑えてくれる薬剤が、胃や十二指腸の潰瘍、逆流性食道炎などの治療も含め、胃酸過多による様々な症状に広く用いられていますが、2025.6現在、まだ日本ではスイッチOTC化されていません。(2025年度中に、やっと日本でもOTC化される予定)
一方中国本土では、以前より一部OTC化されて販売されているものがあり、薬局で購入することができます。例えば、オメプラゾール(omeprazole)がその一例です。

オメプラゾール(omeprazole)は中国語だと奥美拉唑(Ào měi lā zuò)と表記されます。肠溶片(cháng róng piàn)は腸溶錠のことです。1日1回1錠で服用しますが、一箱7錠入りで34.6元(約700円)と、割と安価です。

なお、オメプラゾール(omeprazole)は、S体とR体という2つの光学異性体が混ざったものです(例えるなら、右手と左手が同じように見えても、重なりあうことはなく、それぞれ別の「形」をしているようなもの)。
そして、このS体とR体のうち、S体の方が、胃酸を抑える効果がより強く、効果の個人差も少ないことがわかっていますが、このS体のみで製剤化したエソメプラゾール(Esomeprazole)という成分があります。
こちらは中国本土では要処方薬の扱いになってますが、薬局によっては処方箋なしで購入することが出来ることがあります。

エソメプラゾールを中国語で言うと、埃索美拉唑 (āi suǒ měi lā zuò)
耐信 (Nàixìn)は商品名:ネキシウムの音訳(当て字)
こちらも1日1回1錠で服用しますが、一箱7錠入りで65.95元(約1,320円)
なお、中国本土での要処方薬の購入については、薬局によって対応が様々で、どこまで厳密に行われているかも不明ですが、販売名簿への氏名や電話番号等の記載が求められることが多いので、外国人だと購入が難しい可能性があります。
また、処方箋なしでの販売についても、規制が強化されつつあるそうなので、現状の販売状況がそのまま維持されるかも不透明です。
吐き気:中国ではドンペリドン(Domperidone)が市販されている。
ドンペリドン(Domperidone) は、消化器系の症状を改善するために使われる薬で、胃腸運動機能改善薬(消化管運動促進薬) に分類され、吐き気を軽減したり、食後の膨満感、胃もたれの改善を期待して用いられます。
日本では、ナウゼリン🄬の販売名でも知られ、特に吐き気を抑える目的で良く処方されていますがスイッチOTC化はされていません。
一方、中国ではOTCとして販売されており、薬局で購入することができます。

ドンペリドン(Domperidone)は、中国語では多潘立酮(Duō pān lì tóng)と表記します。
1錠あたり10㎎と日本の大人量と同じです。42錠りで20元(400円)という安さです。
なお、日本ではドンペリドン(Domperidone)は、臨床用量の約 65倍投与された動物実験のデータから、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性」には投与しないことと、先発医薬品(ナウゼリン🄬)の製造販売承認時より妊婦禁忌に設定されていました。
一方で、悪心・嘔吐などの症状でドンペリドンを服用した後に妊娠が判明し、その症状がつわりであった場合、本薬が妊婦禁忌であることを知った女性が不安を抱えることや、これまでの疫学調査結果から、日本産科婦人科学会、日本神経学会より、妊婦禁忌の解除を希望する要望書が提出され、2025.5に電子添文が改訂され、妊婦禁忌が解除されました。
但し、つわりの症状への適応はなく、「妊婦又は妊娠している可能性のある女性には、治療上の有益性が危険性を上回ると判断される場合にのみ投与すること。」の注意喚起が記載されています。
止瀉薬では、正露丸(大幸薬品)が販売されている
日本では市販の止瀉薬としては有名な正露丸ですが、中国でも販売されています。成分は詳しく確認していませんが、恐らく一緒だと思います。

なお、有効成分である木クレオソートは、中国語では木馏油(mù liú yóu)と表記します。
次に紹介するのは中国では良く知られている止瀉薬(下痢止め)で、主成分はモンモリロナイト(Montmorillonite)という、天然に産出する粘土鉱物の一種で、その吸着作用で原因物質に吸着して体外へ排出させたり、消化管粘膜の保護作用や、過剰な水分の吸収作用もあると言われています。

蒙脱石散(měng tuō shí sǎn) 1箱で24.8元(約500円)
便秘薬:ビサコジルは日本でも使用されている成分
また、便秘薬としては日本でもコーラック🄬ブランドで良く使用されているビサコジル(Bisacodyl)が、わりと見つけやすいでしょう。

ビサコジル(Bisacodyl)は中国語では比沙可啶と表記します。
5㎎錠 16錠入りで29.6元(約600円) 錠数も少なく、日本製品よりも割高です。
なお、1錠あたりのビサコジルの含有量は、「コーラック🄬」と同じです。
ちなみに、ビサコジルは便秘薬としては効果が期待しやすい一方で、初めて服用する方は注意した方が良いでしょう。
急に便意を催して我慢がきかない場合があるので、特にトイレ事情も異なる海外では注意する必要があります。
以上、中国で購入できる胃腸薬、止瀉薬、便秘薬を紹介しましたが、やはりこの分野においても、なかなか日本人には現地の医薬品を購入して服用するには、ちょっと勇気がいりますので、心配な人は、やはり日本から使い慣れた医薬品を持参する方が安心です。