この記事では、海外の市販薬(OTC)について紹介していますが、成分が同じでも、日本とは用法用量が異なりますし、もしもの場合の医薬品副作用被害救済制度も対象外です。その為、各自の責任にてご参照ください。
なお、記載されている価格は2025.3の参照現地価格。当時のレートは1円≒20元で計算しています。
総合感冒薬も迷ったらTYLENOL🄬ブランドが選びやすい
前回は、中国本土のドラックストアでは市販薬は販売しておらず、薬局で購入することが一般的であること、そして代表的な解熱鎮痛薬を紹介しましたが、今回は風邪の諸症状(発熱、咳、鼻水など)を和らげる成分が複数配合された総合感冒薬(感冒药 Gǎnmào yào)について紹介します。
中国本土においても、日本の製品ほど配合成分の数は多くありませんが、総合感冒薬(感冒药 Gǎnmào yào)も販売されています。
中国本土で販売されている総合感冒薬は、日本の製品ほど配合成分は多くはなく、せいぜい3~4種類位の配合ですが、解熱鎮痛薬と同様に、外箱のパッケージは殆ど中国語で記載されているため、外国人にはどのような効果が期待できるのは非常にわかりづらくなっています。
そこで、今回は日本でも使用されている成分と同じものが配合されている製品を2つ紹介します。
TYLENOL🄬 COLD
まず一つ目は、外国人には馴染みのあるタイレノール(TYLENOL🄬)ブランドの総合感冒薬です。解熱鎮痛成分、咳止め、鼻水や鼻づまりを和らげる成分が配合されていますが、1箱20錠入りで15.49元(約310円)と値段は安価です。



配合されている成分は、外箱に中国語だけではなく、英語でも記載されており、1錠あたりの含有量は以下の通りです。
・アセトアミノフェン(对乙酰氨基酚)325mg
・プソイドエフェドリン塩酸塩(盐酸伪麻黄碱)30mg
・デキストロメトルファン臭化水素酸塩(氢溴酸右美沙芬)15mg
・クロルフェニラミンマレイン酸塩(马来酸氯苯那敏)2mg
アセトアミノフェンは解熱鎮痛成分で、熱を下げたり、頭痛や咽頭痛などを和らげる効果が期待されます。
プソイドエフェドリン塩酸塩はアドレナリン作動成分で、主に鼻づまりを和らげる効果があります。
そして、デキストロメトルファン臭化水素酸塩は非麻薬性鎮咳成分(咳止め薬)、クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミン成分で、主に鼻水やくしゃみを抑える働きがあります。
そして、対象は12歳となっていますが、どれも日本の総合感冒薬にも良く配合されている成分で、1錠あたりに配合されいる量も日本の大人量と同程度です。
但し、用法用量を見ると、「1回1錠で6時間毎に服用(1日4回まで)」「1回2錠で6時間毎に服用(1日3回服用まで)」と記載されており、後者の1回2錠の飲み方だと、日本の市販薬の一般的な服用量に比べ倍ぐらいとなります。
なお、日本ではプソイドエフェドリン塩酸塩を含有する総合感冒薬や鼻炎薬は、交感神経系に影響を与え病状が悪化する恐れがあることから、「心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能障害の診断を受けた人、前立腺肥大による排尿困難の症状がある人では、症状を悪化させる」おそれがあり、そのような方は「使用を避ける」とされています。
また、中国語で書かれた当製品の添付文書にも、これらの基礎疾患を持った人は必ず医師の指導の下で服用することと書かれています。
なお、日本の総合感冒薬では、プソイドエフェドリン塩酸塩よりもメチルエフェドリン塩酸塩が配合されている方が圧倒的に多く、この場合、心臓病、高血圧、糖尿病・・・に関する記載は、表現が和らいで「注意すること」への記載となります。
海外の感冒薬は、日中用・夜用で成分が異なる場合がある。
次に紹介するのは、日本ではまず見かけない「日中用・夜用」で異なる成分が配合された総合感冒薬です。
なお、ドイツの製薬企業・バイエル社の商標が書かれていますが、残念ながら外箱に英語での説明が記載されていないので、外国人には少し中身がわかりづらいです。値段は2シートで16.5元(約330円) と、やはりこちらも安価です。

当製品には、白と黒の2種類の錠剤があり、日中服用錠(白色錠)には、はじめに紹介した感冒薬にも登場した3種類の成分が配合され、夜以外の1日2回服用となっています。
そして、夜服用錠(黒色錠)には、さらに抗ヒスタミン成分のジフェンヒドラミン塩酸塩(盐酸苯海拉明, Diphenhydramine hydrochloride)が配合されているのが大きな特徴となっています。
このジフェンヒドラミン塩酸塩は鼻水やくしゃみを抑える効果の他、副作用として眠気がでやすいことがが知られていますが、これにより夜中しっかり眠って休息を取り、体力を回復させることも期待して配合されています。
(このようなタイプの総合感冒薬は、香港や台湾でも販売されています。)
配合成分 |
日中服用錠 |
夜服用錠 |
325mg |
325mg |
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30mg |
30mg |
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15mg |
15mg |
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25mg |
用法用量は、12歳以上が対象となっており、1日に1~2錠で服用と記載されています。
こちらの製品も、1回2錠で飲むと日本の市販薬の一般的な服用量に比べ倍ぐらいとなります。
なお、現在日本ではジフェンヒドラミン塩酸塩は総合感冒薬には殆ど配合されていませんが、睡眠改善薬として使用されています(ドリエル🄬が代表例)。
プソイドエフェドリン含有製品の購入には身分証が必要?
今回紹介した総合感冒薬に配合されていたプソイドエフェドリン塩酸塩は、特に鼻閉症状に効果を発揮する成分ですが、日本では「厚生労働大臣が定める濫用等の恐れのある医薬品」に指定されており、含有する総合感冒薬や鼻炎薬は、若年者に販売する場合は年齢確認を行ったり、一度に複数個販売しないことなどが定められています。
そして、中国本土においても同様に、しっかりした運営を行っている薬局では、このプソイドエフェドリン塩酸塩を含有した市販薬の購入の際は、外国人は身分証としてパスポートの提示が求められたり、購入数も原則一度に1個しか買えないとのことでした。(私が購入したところは確認を求められましたが、他の薬局でどこまで厳密に行われているかは不明)
↑エフェドリン(麻黄碱 Máhuáng jiǎn)系を含む製品は陳列で区別されている薬局もある。
なお、日本の総合感冒薬ではよく使用されている麻薬性鎮咳成分のジヒドロコデインリン酸塩、コデインリン酸塩も、濫用等の恐れのある医薬品に指定されていますが、中国ではこれらを含有した総合感冒薬や鎮咳薬は販売されていないようです。
このように、中国本土での総合感冒薬は、旅行者や現地駐在員にとってもわかりづらいだけでなく、現地の添付文書どおりの服用量だと、日本の感冒薬より効き目が強い場合もあり、さらに含有成分によっては高血圧や糖尿病等の基礎疾患のある方も服用しづらい面がありますので、やはり日本から常備薬を持っていく方が安心かと思います。