トラネキサム酸(抗炎症成分)
トラネキサム酸は、抗炎症作用、抗出血・抗アレルギー作用のある成分であり、その薬理作用から抗プラスミン剤とも呼ばれます。
プラスミンとは、炎症を引き起こす起炎物質キニンなどの遊離を促進したり、血管内では、血液凝固に関わるフィブリンの分解に関わるタンパク分解酵素です。(プラスミンやプラスミノゲンは血栓の溶解(線溶系)に働きますが、トラネキサム酸はそれらのリジン結合部位(LBS)と強く結合することで、プラスミンやプラスミノゲンが、血栓においてフィブリンに結合するのを阻止し、血栓の溶解を妨げると考えられています。)
トラネキサム酸は、このプラスミンの働きを抑えることで、例えば喉の腫れや炎症を抑えたり、血液凝固への関与から、鼻血や血尿時の止血剤(医療用のみ)として用いられることこともあります。
日本の製薬メーカーにより開発され、1965年より販売されている薬ですが、処方薬としても、特に感冒時の喉の症状を抑える抗炎症作用成分として小児から高齢者まで幅広く用いられています。
一般用医薬品としては、主に喉の腫れや赤みを抑える目的で使われています。総合感冒薬の抗炎症成分としてはリゾチームと並び良く使用されています。
また口内炎向け製品にも使用されています。
他に知っておきたいのは、「肝斑(かんぱん)」の治療薬として、L-システイン、アスコルビン酸(ビタミンC)等と一緒に使用されている点です。製品名は「トランシーノⅡ」。この場合、トランサミン酸は色素沈着抑制効果を期待され、ビタミン剤との併用で、より効果が高まると言われています。
このように、トラネキサム酸は、喉の症状の緩和の他にも、止血剤(医療用のみ)や、肝斑、シミの改善等、様々な場面で使われている成分です。
登録販売者試験では頻出医薬品の一つです。出題されるポイントは3つ。
①抗炎症作用をもつ(一般用医薬品分野の出題なので、その他の作用は問われません)
②「凝固した血液を溶解されにくくする働きもあるため、血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓性静脈炎等)や血栓を起こすおそれのある人に使用する場合」注意が必要。
③セトラキサート塩酸塩は、体内で代謝されてトラネキサム酸を生じるため、血栓のある人には注意が必要。
②は出題の手引きに書かれいる内容ですが、怖い薬なの?と思う方もいるかもしれません。しかし、トラネキサム酸は、第三類医薬品扱いでもあり、基本的に安全性の高い薬です。
過去の傾向をみると、③も何故か出題されています。なお、セトラキサート塩酸塩は胃粘膜保護・修復成分ですが、あまり使われていません。
(参考)ある口内炎向け内服薬の写真ですが、血栓症に関する注意がかかれていることがわかります。