韓国の鶏を使った薬膳料理といえば「参鶏湯(サムゲタン)」が王道ですが、もう一つ忘れてはならない人気の鶏料理「タッカンマリ(닭한마리)」です。

タッカンマリは「鶏(タク)」と「一羽(ハンマリ)」を組み合わせた言葉通り、鶏1羽を丸ごとネギやジャガイモ、トック(韓国のお餅)などと一緒にシンプルに煮込んだ、ソウル発祥と言われる大衆的な水炊き鍋料理です。

一般的なタッカンマリは、鶏ガラにニンニク、長ネギ、生姜といった身近な野菜から澄んだスープ(出汁)をとるため、あまり「薬膳料理」として意識されることはありません。しかし、中には、生薬をふんだんに使用した「韓方(ハンバン)タッカンマリ」を提供するこだわりの専門店も。

そこで今回は、ソウルの中心部から少し離れた場所にありますが、地元で人気の韓方タッカンマリ専門店「サムボッ・ハンバン(韓方)・タッカンマリ(삼복한방닭한마리)」を訪れる機会がありましたので紹介します。

地元民で賑わう慶熙大学近くの薬膳タッカンマリ専門店

お店があるのは、ソウル中心部から地下鉄などを乗り継いで1時間弱ほどの場所にある「回基(フェギ)駅」から徒歩10分ほどで、慶熙(キョンヒ)大学の近くに店を構えています。

なお、看板に書かれた黄色い文字が「韓方(ハンバン 한방)」を意味しています。
店内はそこまで広くありませんが、訪れた金曜日の夜は雨が降っていたにもかかわらず、地元の韓国人のお客さんでほぼ満席でした。
なお、東大門市場のタッカンマリ通り周辺とは異なり、お店には日本人はおらず、ローカルな熱気に包まれていました。

メニューはすべて壁に書かれており、「韓方タッカンマリ 1羽」で38,000ウォン(約4,000円)です。これで2人で食べるのには、ちょうど良いボリューム感です。
なお、写真右にあるポスターをみると、数年前にはNHK BSの番組(突撃!ストリートシェフ)でも取り上げられたことがあるようですね。

12種類以上の生薬が溶け込む「気血」を補う薬膳スープ

そして、さっそく運ばれてきた「韓方タッカンマリ」がこちら

一般的なタッカンマリといえば、透き通ったマイルドなスープが特徴で、卓上で「タテギ(特製唐辛子タレ)」を作ってつけて食べるのが定番です。しかし、ここのスープは通常のタッカンマリとは見た目は全く異なり、生薬を使って煮込んでいるため濃い茶褐色のスープをしています。

お店独自のブレンドのため詳細は公開されていませんが、12種類ほどの生薬が使われているそうです。
韓方ではエネルギーを補う「補気剤」と、血液や滋養を巡らせる「補血剤」を組み合わせ、「気」と「血」の両方をしっかりと補う(気血双補)の考え方が重視されているそうですが、スープの表面に見える「ナツメ(大棗)」のほか、おそらく補気剤としておなじみの黄耆(オウギ)、甘草(カンゾウ)や、補血の当帰(トウキ)といった生薬が使われていると思われます。

なお、これだけスープの色が濃いと「漢方薬のような苦味があったり、クセが強いのでは?」と身構えてしまうかもしれませんが、一口飲んでみるとスープは驚くほどマイルドで、見た目の割に漢方特有の臭みはなく、鶏の旨味と生薬のコクが調和した、非常に美味しいスープに仕上がっています。

また、一般的なタッカンマリは、テーブルに鍋が運ばれてからさらに10分ほど煮込んでから食べ頃になりますが、こちらのお店ではすでに厨房でしっかりと煮込まれた状態で提供されるため、運ばれてすぐ食べることができます。

なお、地元の韓国人の食べ方を見ていると、このスープの味をそのまま楽しむためか「何もつけずにそのまま食べる」という人も。

また、味変を楽しみたい場合は、ニラにヤンニョムが乗ったタレ(タテギ風のもの)を混ぜ合わせ、そこに鶏肉を絡めて食べるのもおすすめです。

そして、個人的に感動したのが「パキムチ(細ネギのキムチ)」。
程よく浸かったネギの辛みと酸味が、鶏肉と相性抜群で、お肉にこのパキムチをくるっと巻いて食べると、まさに絶品となります。


締めは定番「カルグクス」か、健康志向な「黒米雑炊」

そして、鶏肉を堪能した後の楽しみといえば、旨味が凝縮されたスープで作る「締め」です。
定番の「カルグクス(韓国風うどん)」を入れるのも最高ですが、今回はご飯(黒米)と卵を投入して雑炊(チュク)にしてみました。

滋養たっぷりのスープを吸った黒米の雑炊は、優しく体に染み渡る健康志向の締めとなります(但し、このスープの量に対して卵1個だと少し物足りないので、もし行かれる方は卵の追加を検討しても良いかもしれません)。


なかなか提供するお店も限られる「薬膳タッカンマリ」ですが、ソウル中心部(明洞や東大門など)から片道1時間弱かかるため、観光ルートとしては少し足を伸ばす必要がありますが、「わざわざ行って本当に良かった」と思える大満足の一軒でした。

寒さが厳しくなる季節や、旅の疲れが溜まってきたタイミングでの「気血双補」にぴったりな韓方タッカンマリ。ソウルを訪れた際はぜひこの本格的な生薬スープの深みを体験してみてはいかがでしょうか?

訪問日:2026年8月14日
当時のレート:当時のレート:1000ウォン≒110円


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