H27 新潟県・群馬県・栃木県・長野県・山梨県 第2章 人体の働きと医薬品(問51-60)
例年頻出の重篤な副作用に関する出題がなかった。
代わりに接触性皮膚炎・胃腸・泌尿器系の副作用について問われた。
【問51】 外皮系に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 角質層は、細胞膜が丈夫な線維性のセラミド(リン脂質の一種)でできた板状の角質細胞 と、タンパク質(ケラチン)を主成分とする細胞間脂質で構成されており、皮膚のバリア機能を担っている。
b 汗はエクリン腺から分泌され、体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じるが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下の皮膚に限って起こる。
c メラニン色素は、表皮の最上層にあるメラニン産生細胞(メラノサイト)で産生され、太陽光に含まれる赤外線の熱から皮膚組織を防護する役割がある。
d 毛根の最も深い部分を毛球といい、毛球の下端のへこんでいる部分を毛乳頭という。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d)
外皮系に関する問題
a 誤り。「セラミド(リン脂質の一種)」と「タンパク質(ケラチン)」を入れ替えれば正しい内容。
b 正しい。エクリン線に関してはよく出題されている。
c 誤り。×表皮の最上位→○表皮の最下位 ×赤外線→○紫外線
d 正しい。
正答・・・4
【問52】 骨格系に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 骨の基本構造は、主部となる骨質、骨質表面を覆う骨膜、骨質内部の骨髄、骨の接合部にある骨格筋の四組織からなる。
b すべての骨の骨髄には、赤血球、白血球、血小板を産生して体内に供給する造血機能がある。
c 骨自体は生きた組織ではないが、骨の周囲の細胞の新陳代謝により、破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が行われている。
d 骨組織を構成する無機質は骨に硬さを与え、有機質(タンパク質及び多糖体)は骨の強靱さを保つ。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 誤 誤 正 正
3 誤 誤 誤 正
4 正 正 誤 正
5 正 正 誤 誤
骨格系に関する問題。
a 誤り。骨の基本構造は次のの四組織からなる。(1) 主部となる骨質、(2) 骨質表面を覆う骨膜、(3) 骨質内部の骨髄、(4) 骨の接合部にある関節軟骨
b 誤り。、主に胸骨、肋骨、脊椎、骨盤、大腿骨などが造血機能を担っている。
c 誤り。骨は生きた組織である。成長が停止した後も一生を通じて破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が行われている。代表的な骨粗しょう症の薬の中には、この骨のリモデリングに作用するタイプもある。
d 正しい。
正答・・・3
【問53】 末梢神経系に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 末梢神経系は、随意運動、知覚等を担う自律神経系と、呼吸や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う体性神経系に分類される。
2 交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリンであり、副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンである。
3 交感神経系は瞳孔を収縮させ、副交感神経系は瞳孔を散大させる効果を及ぼす。
4 交感神経系は腸の運動を亢進させ、副交感神経系は腸の運動を低下させる効果を及ぼす。
5 交感神経系は気管支を拡張させ、副交感神経系は気管支を収縮させる効果を及ぼす。
交感神経系と副交感神経系の違いはしっかり把握しておく。
1 誤り。脳や脊髄から体の各部へと伸びている末梢神経系は、随意運動、知覚等を担う体性神経系と、呼吸や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う自律神経系に分類される。
2 誤り。アセチルコリンは副交感神経。ノルアドレナリンは交感神経。
3 誤り。説明が逆。交感神経系は瞳孔を散大させる。
4 誤り。×交感神経→〇副交感神経
5 正しい。
正答・・・5
【問54】 医薬品の作用に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 外用薬は適用部位に対する局所的な効果を目的としたものであり、全身作用を示すことを目的として設計されたものはない。
b 全身作用を目的とする医薬品で局所的な副作用が生じることはあっても、局所作用を目的とする医薬品によって全身性の副作用が生じることはない。
c 全身作用を目的とする医薬品では、その有効成分が消化管等から吸収されて、循環血液中に移行することが不可欠である。
a b c
1 誤 誤 正
2 誤 正 誤
3 誤 誤 誤
4 正 正 誤
5 正 正 正
医薬品の作用に関する問題。
a 誤り。外用薬としてシップや塗り薬ぐらいのイメージしかないと迷う。坐剤、経皮吸収製剤等も外用薬の範疇で考える必要がある。例えば、ニコチン置換療法で使用されるニコチネルパッチは、吸収された有効成分が、循環血液中に移行する。
b 誤り。局所作用を目的とする医薬品によって全身性の副作用が生じる恐れもある。
c 正しい。
正答・・・1
【問55】 坐剤、点鼻薬及び点眼薬に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれ か。
a 坐剤は肛門から医薬品を挿入することにより、小腸内で溶解させ有効成分を吸収させるものである。
b 一般用医薬品の坐剤は、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。
c 一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はない。
d 眼の粘膜に適用する点眼薬は、眼以外の部位で副作用を起こさない。
a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 誤 正
5 誤 正 正 誤
坐剤、点鼻薬及び点眼薬に関する問題。
a 誤り。これはすぐに誤りと気付いたでしょう。
b 正しい。これは基本的知識。直腸の粘膜下には静脈が豊富に分布しており、坐剤の成分は容易に循環血液中に入り、内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる。
c 正しい。
d 誤り。点眼薬は、鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある。従って、眼以外の部位に到達して副作用を起こすことがある。
正答・・・5
【問56】 医薬品の有効成分とその代謝、排泄に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過する。
b 最近の研究により、小腸などの消化管粘膜や腎臓にも、かなり強い代謝活性があることが明らかにされている。
c 腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。
d 血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成している有効成分は、腎臓で濾過されないため、有効成分が長く循環血液中に留まることとなる。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 誤 誤 誤 正
3 正 正 誤 誤
4 正 正 正 正
医薬品の有効成分とその代謝、排泄に関する問題。
幅広く学習していないと結構迷う。
肝初回通過効果(first-pass effect)は、実務でも大変重要な知識。しっかり理解しておく。
a 正しい。経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、消化管の毛細血管から血液中へ移行するが、その血液は全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過する。そして、吸収された有効成分は、まず肝臓に存在する酵素の働きにより代謝を受ける。その為、全身循環に移行する有効成分量は、消化管で吸収された量よりも、肝臓で代謝を受けた分だけ少なくなる(これを肝初回通過効果(first-pass effect) という)
b 正しい。
c 正しい。
d 正しい。
正答・・・4
【問57】 薬の体内での働きに関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 循環血液中に移行した有効成分は、多くの場合、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、 トランスポーターなどのタンパク質と結合し、その機能を変化させることで薬効を現す。
b 十分な間隔をあけずに追加摂取するなどして医薬品の血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり、有害な作用(副作用や毒性)も現れにくくなる。
c 全身作用を目的とする医薬品の多くは、使用後の一定期間、その有効成分の血中濃度が、 最小有効濃度未満の濃度域と、毒性が現れる濃度域の間の範囲に維持されるよう、使用量及び使用間隔が定められている。
a b c
1 誤 正 正
2 正 誤 正
3 正 正 誤
4 誤 誤 正
5 誤 正 誤
薬の体内での働きに関する問題。
a 正しい。
b 誤り。常識的におかしいとわかるでしょう。
c 正しい。
正答・・・2
【問58】 医薬品の副作用による胃腸症状に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 消化性潰瘍は、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなる、消化管出血に伴って糞便が黒くなるなどの症状が現れる。
2 消化性潰瘍は、自覚症状が乏しい場合があり、貧血症状(動悸や息切れ等)の検査時や突然の吐血・下血によって発見されることもある。
3 イレウス様症状(腸閉塞様症状)は、悪化すると、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する可能性がある。
4 イレウス様症状(腸閉塞様症状)は、発症のリスクが高齢者では高いが、小児では低い。
医薬品の副作用による胃腸症状に関する問題。
1 正しい。
2 正しい。
3 正しい。
4 誤り。イレウスに関しては「小児や高齢者のほか、普段から便秘傾向のある人は、発症のリスクが高い」との記述がある。
正答・・・4
【問59】 泌尿器系に現れる副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれ か。
a 腎障害では、むくみ(浮腫)、倦怠感、尿が濁る・赤みを帯びる(血尿)等の症状が現れる。
b 交感神経系の機能を抑制する作用がある成分が配合された医薬品を使用すると、膀胱の排尿筋の収縮が抑制され、尿が出にくい、尿が少ししか出ない等の排尿困難の症状を生じることがある。
c 排尿困難が進行すると、尿意があるのに尿が全く出なくなったり(尿閉)、下腹部が膨満して激しい痛みを感じるようになるが、これらは男性特有の症状である。
d 膀胱炎様症状では、尿の回数増加(頻尿)、排尿時の疼痛、残尿感等の症状が現れる。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 誤 誤
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 誤 正
泌尿器系に現れる副作用に関する問題。
a 正しい。
b 誤り。×交感神経→〇副交感神経 抗コリン薬や一部の抗ヒスタミン薬を考えれば良い。
市販の総合感冒薬に含まれる抗ヒスタミン成分(鼻水を抑える)で、高齢者が尿閉になることもあるので、特に前立腺肥大の方は注意が必要。
c 誤り。男性に限らず女性においても報告されている。
d 正しい。
正答・・・2
【問60】 医薬品の副作用による接触皮膚炎に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしている。
b 原因となる医薬品と接触してから発症するまでの時間は様々である。
c 発症後、原因と考えられる医薬品の使用を中止すれば、通常は1週間程度で症状は治まり、 再びその医薬品に触れても再発することはない。
a b c
1 正 正 誤
2 誤 誤 正
3 誤 正 正
4 正 誤 正
5 誤 正 誤
接触性皮膚炎に関する問題。光線過敏症との違いも押さえておく。
a 正しい。接触皮膚炎は医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴。なお、アレルギー性皮膚炎の場合は、発症部位は医薬品の接触部位に限定されない。
今回問われていないが、光線過敏症との違いも押さえておく。 光線過敏症は太陽光線にさらされることをきっかけに起きるかぶれ症状。その症状は医薬品が触れた部分だけでなく、全身へ広がって重篤化する場合があるのが特徴。湿布薬に使用されるケトプロフェンによる光線過敏症も合わせて憶えておきたい。
る
b 正しい。
c 誤り。「通常は1週間程度で症状は治まり」は正しいが、後半が誤り。再びその医薬品に触れると再発する。
正答・・・1
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