医療用の去痰薬として頻用されている
L-カルボシステインは、去痰成分であり、粘液構成成分を正常化し、痰や膿の粘度の低下や、痰のすべりの改善、線毛細胞の修復作用を持つとされています。
感冒時には痰が増えて、ねばつく感じになり、痰が絡んで咳が出やすくなりますが、「痰の粘度を下げる」ことで症状を和らげるイメージを持つと良いでしょう。
また、鼻の奥の方に溜まっている鼻水が、喉に落ちてきて痰が絡む時にも、痰の排出をスムーズにして症状を楽にしてくれます。
なお、痰や膿の粘度低下は、SH基をもつカルボシステインが、ムコ蛋白のジスルフィド結合(-S-S-)を切断し低分子化することにより、粘度を低下させると言われています。
医療用では元々「ムコダイン」の販売名で良く知られ、現在はジェネリック医薬品が主流ですが、小児から老人まで、感冒時だけでなく、呼吸器科、耳鼻科領域など幅広く用いられています。
また、気道粘膜のすべりを良くするタイプの去痰成分アンブロキソール塩酸塩(ムコソルバン・ムコサール)と同時処方されることもあります。
なお、通常大人では1回500mg・1日3回服用しますが、医薬品の中では結構大きい錠剤になります。
そして、スイッチOTCされたのは1988年と割と早かったものの、一般用医薬品の中での存在感は暫く高くはありませんでした。
それでも近年は、医療用での処方と同様に、「気道粘膜潤滑タイプ」の去痰成分であるアンブロキソール塩酸塩とのW処方の製品も登場しています。
例えば、「パブロンSゴールドW錠」(大正製薬)では、L-カルボシステインを「気道粘膜リペア成分」、アンブロキソール塩酸塩を「気道粘膜クリア成分」と表現し、「気道粘膜バリアをWケアするクリア&リペアのW処方」のキャッチフレーズが用いられています。
なお、当製品におけるL-カルボシステインの含有量は、1回250㎎と医療用の半分ですが、それでも市販薬の中では結構大きな錠剤になります。
さらに、2024年3月1日には「ムコダイン®去たん錠Pro500」が販売され、単剤製品として医療用と全く同じもの(1回量も500㎎)が一般用医薬品として販売開始されています。
登録販売者試験でも、良く出題されています。問題作成の手引き(令和6年版)には
「(去痰成分としては)痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させるもの(エチルシステイン塩酸塩、メチルシステイン塩酸塩、カルボシステイン等)、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くするもの(カルボシステイン)、さらに、分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示すもの(ブロムヘキシン塩酸塩)などがある。」
という表現で薬効が記載されています。
なおアンブロキソール塩酸塩については、出題の手引きに記載はなく、今のところ出題されません。(2011年末に第1類→2類にされたが、令和6年版手引きでも掲載なし)