牛車腎気丸(腎虚:特に腰痛やしびれに)

試験対策としては「八味地黄丸」との違いに注意

(あくまで試験対策向けに作成している記事です。効能効果等を推奨するような記事ではありません。)
牛車腎気丸は、八味地黄丸と並び「腎虚」向けの方剤として知られています。
(腎虚については八味地黄丸の記事をご覧ください)

この牛車腎気丸は、8種類の生薬で構成されるに八味地黄丸に、「牛膝」「車前子」の2種類の生薬を加えたものです。
その為、どちらも腎虚に関連した様々な効能効果がありますが、八味地黄丸は主に尿トラブル向け、そして牛車腎気丸は、主に腰痛やしびれ、冷えの改善向けの漢方薬として良く知られているようです。
なお、テレビ通販でも良く見かける八味地黄丸に比べると、一般の方への知名度は低めかもしれません。

構成生薬は以下の通りで、八味地黄丸に、さらに腎気を補う(補腎)ような「牛膝」と、さらに水分の巡りを良くする(利水)ような「車前子(いわゆるオオバコ)」を加えた構成になっています。
なお、八味地黄丸は中国では「腎気丸」と呼ばれており、追加された各生薬の名称をとって「牛車腎気丸」と名付けられています。

  三補 三瀉 体を温める 補腎
利水
補足
特に使用される症状
六味丸 地黄 山茱萸 山薬 沢瀉 茯苓 牡丹皮     腎陰虚向け
(体のほてり等)
八味地黄丸

地黄 山茱萸 山薬 沢瀉 茯苓 牡丹皮 附子
桂皮
  腎陽虚向け
(尿トラブル)

牛車腎気丸 地黄 山茱萸 山薬 沢瀉 茯苓 牡丹皮 附子
桂皮
牛膝
車前子
腎陽虚向け
(腰痛・しびれ)

*地黄、山茱萸、山薬(いわゆる山芋)3種類の組みあわせは「三補」と呼ばれ、滋養効果、体力を補うような働きがあるイメージ。沢瀉、茯苓、牡丹皮の組合せは「三瀉」と呼ばれ、水や血のめぐりをよくするような働きがあるイメージを持つと良いでしょう。詳しくは八味地黄丸の記事でも確認を。


登録販売者試験では、それなりに出題されており、問題作成の手引き(令和6年)の記載は以下のとおり

体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少し、むくみがあり、ときに口渇があるものの下肢痛腰痛しびれ、高齢者のかすみ目、痒み、排尿困難、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人、のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人では、胃部不快感、腹痛、のぼせ、動悸等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。 まれに重篤な副作用として、肝機能障害、間質性肺炎を生じることが知られている。」 

試験対策としては、「八味地黄丸」と同じようなしばり表現・効能効果となっていることから、その微妙な違いがポイントとなります。
「八味地黄丸」の手引きの記載は以下の通りです。

「体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、痒み、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れに適すとされるが、胃腸の弱い人、下痢しやすい人では、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢の副作用が現れるおそれがあるため使用を避ける必要があり、また、のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人では、のぼせ、動悸等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。」

このように、9割程度は同じ内容ですが、違いとしては、八味地黄丸の方が「夜間尿」「軽い尿漏れ」といった尿トラブル系の効能が多くなっています。
そのため、もし選択肢の中に牛車腎気丸と八味地黄丸両方がある場合は、この「夜間尿」「軽い尿漏れ」の有無が鑑別のキーワードになります。

なお、副作用について、牛車腎気丸の方にだけ稀な副作用として「肝機能障害間質性肺炎」が記載されていますが、(詳細未確認ですが)牛膝・車前子由来という訳ではなく、過去にそのような副作用報告があったことに基づくもののようです。

また、六味丸、八味地黄丸、牛車腎気丸は、どれも「胃部不快感、腹痛、下痢等」の副作用に関する注意がありますが、これは胃腸症状がでやすいと言われている「地黄」に関連したものと思えば良いでしょう。地黄は補血薬で、婦人用薬にも良く使用されていますが、同様な注意が記載されていますので、余裕のある方は確認してみると良いでしょう。
↓熟地黄


参考: ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用) インタビューフォーム
    中医臨床のための方剤学(神戸中医学研究会編著 医歯薬出版)

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