H28 山形県(北海道・東北)第2章 人体の働きと医薬品(PM 問11-20)

問11(耳)は難しい。問15(汗腺の神経伝達物質の違い)も必ず押さえておく。

問 11 次の記述は、耳に関するものである。正しいものの組み合わせはどれか。

a 外耳道を伝わってきた音は、鼓膜を振動させ、耳管が鼓膜の振動を増幅して内耳へ伝導する。

b 小さな子供では、耳管が太く短くて、走行が水平に近いため、鼻腔からウイルスや細菌が侵入し感染が起こりやすい。

c 蝸牛及び前庭の内部は、いずれもリンパ液で満たされている。

d 内耳にある耳垢腺(汗腺の一種)や皮脂腺からの分泌物に、埃や外耳道上皮の老廃物などが混じって耳垢(耳あか)となる。

1(a、b)  2(a、d)  3(b、c)  4(c、d)

耳に関する問題。細かい知識が問われており、やっかいな問題である。

a 誤り。これは難しい。互いに連結した微細な3つの耳小骨が鼓膜の振動を増幅し、内耳へ伝導する。
b 正しい。そのため小さな子供は中耳炎になり易いと言われる。
c 正しい。
d 誤り。×内耳にある耳垢腺→〇外耳道にある耳垢腺
 
正答・・・3

問 12 外皮系に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 角質層は、角質細胞と細胞間脂質で構成されており、細胞間脂質の主成分は、ケラチンである。

b 皮膚に物理的な刺激が繰り返されると真皮が肥厚して、たこやうおのめができる。

c 汗腺には、腋窩(わきのした)などの毛根部に分布するアポクリン腺(体臭腺)と、手のひらなどの毛根がないところも含め全身に分布するエクリン腺の二種類がある。

d 皮膚の表面に存在する微生物のバランスが崩れたり、皮膚を構成する組織に損傷を生じると、病原菌の繁殖、侵入が起こりやすくなる。

    a b c d
1 誤 誤 誤 正
2 誤 誤 正 正
3 正 誤 誤 誤
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 誤 

外皮系に関する問題。
アポクリン腺(体臭腺)とエクリン腺の違いは毎年出題されると思って学習を。
 
a 誤り。角質細胞の主成分は細胞膜が丈夫な線維性のタンパク質(ケラチン)。一方、細胞間脂質の主成分はセラミド(リン脂質の一種)である。
b 誤り。×真皮→○角質層
c 正しい。アポクリン腺(体臭腺)とエクリン腺の違いは頻出。
汗はエクリン腺から分泌される。体温調節のための発汗は全身の皮膚に生じるが、精神的緊張による発汗は手のひらや足底、脇の下の皮膚に限って起こることも併せて押さえておきたい。
d 正しい。

正答・・・2

問 13 骨格系や筋組織に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 成長が停止した後は、骨の修復(骨形成)は行われず骨の新陳代謝は行われない。

b 骨には、骨格筋の収縮を効果的に体躯の運動に転換する運動機能がある。

c 腱は、筋組織と同様に、筋細胞及び結合組織からできている。

d 心筋は、強い収縮力と持久力を兼ね備えた随意筋である。 
 
    a b c d
1 誤 正 正 誤
2 誤 誤 誤 正
3 正 誤 誤 正
4 誤 正 誤 誤
5 正 誤 正 誤

骨格系や筋組織に関する問題。

a 誤り。骨は生きた組織で、成長停止後も一生を通じて破壊(骨吸収)と修復(骨形成)が行われている。
b 正しい。
c 誤り。腱は結合組織のみでできている。そのため伸縮性はあまりない。
d 誤り。心筋・平滑筋は不随意筋(意識的にコントロールできない筋組織)であり、自律神経系に支配されている。
 
正答・・・4

問 14 脳や神経の働きに関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 延髄は多くの生体の機能を制御する部位であるが、複雑な機能の場合は さらに上位の脳の働きによって制御されている。

b 脳において、血液の循環量は心拍出量の約15%、酸素の消費量は全身の約20%、ブドウ糖の消費量は全身の約75%である。

c 脳の血管は末梢に比べて物質の透過に関する選択性が高く、タンパク質などの大分子や小分子でもイオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しやすい。

d 脳の下部には、自律神経系、ホルモン分泌等の様々な調節機能を担っている部位(視床下部など)がある。 
 
    a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 正 正 正
3 誤 正 誤 誤
4 正 正 誤 正
5 正 誤 正 誤

脳や神経の働きに関する問題。
数値まで憶える所は少ない試験だが、bの設問の数値はしっかり憶えておくこと。過去にも問われている。
  
a 正しい。
b 誤り。ブドウ糖の消費量が多すぎ。手引きの記載は以下のとおり(少しわかりづらい日本語だが)
「脳における細胞同士の複雑かつ活発な働きのため、脳において、血液の循環量は心拍出量の約15%、酸素の消費量は全身の約20%、ブドウ糖の消費量は全身の約25%と多い。」
c 誤り。これは「血液脳関門」に関する内容。イオン化した物質は血液中から脳の組織へ移行しにくい。
d 正しい。

正答・・・1

問 15 次の記述は、神経の働きに関するものである。正しいものの組み合わせはどれか。

a 自律神経系は、末梢神経系と体性神経系に分類される。

b 交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンであるが、汗腺を支配する交感神経の節後繊維の末端では、例外的に アセチルコリンが伝達物質として放出される。

c 副交感神経系が活発に働く場合、唾液腺では唾液分泌が亢進する。

d 交感神経系が活発に働く場合、腸の運動は亢進する。

1(a、b)  2(a、d)  3(b、c)  4(c、d)

神経の働きに関する問題。
エクリン汗腺とアポクリン汗腺の神経伝達物質は押さえておく。

a 誤り。自律神経系とは呼吸や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う神経系であり、交感神経系と副交感神経系に分けられる。
b 正しい。全身に広く分布するエクリン汗腺を支配する交感神経線維の末端では、例外的にアセチルコリンが伝達物質として放出される。腋窩や陰部等の局所に分布するアポクリン汗腺を支配する交感神経線維の末端ノルアドレナリンが神経伝達物質として放出されます。
c 正しい。
d 誤り。

正答・・・3

問 16 次の記述は、医薬品の吸収、代謝、排泄に関するものである。正しいものの組み合わせはどれか。

a 代謝とは、物質が体内で化学的に変化することであるが、医薬品の有効成分も循環血液中へ移行して体内を循環するうちに徐々に代謝を受けて、分解されたり、体内の他の物質が結合するなどして構造が変化する。

b 鼻腔の粘膜に医薬品を適用する場合、その成分は循環血液中に移行しないため、全身作用を目的とした一般用医薬品の点鼻薬はない。

c 医薬品の体外への排出経路のひとつに母乳があり、有効成分の母乳中への移行は乳児に対する副作用の発現という点で、軽視することはできない。

d ニコチンを含む禁煙補助剤(咀嚼剤)の有効成分は、口腔粘膜から吸収されて、循環血液中に入り、初めに肝臓で代謝を受けて全身に分布する。

1(a、b)  2(a、c)  3(b、d)  4(c、d)

医薬品の吸収、代謝、排泄に関する問題。

a 正しい。代謝に関する基本的知識である。
b 誤り。全身作用を目的とした一般用医薬品の点鼻薬はないが、鼻腔粘膜の下は毛細血管が豊富な為、点鼻薬成分が循環血液中に移行し、全身性の副作用が生じる恐れもある。
c 正しい。
d 誤り。口腔粘膜から吸収された有効成分は、肝臓で代謝を受けることなく全身に分布する。
 
正答・・・2

問 17 次の記述は、剤形に関するものである。正しいものの組み合わせはどれか。

a 軟膏剤は、クリーム剤に比べ患部が乾燥していたり患部を水で洗い流したい場合に用いることが多い。

b カプセル剤は、口の中の唾液で速やかに溶ける工夫がなされているため、水なしで服用することができる。

c 錠剤のように固形状に固めず、粉末状にしたものを散剤、小さな粒状にしたものを顆粒剤という。

d 経口液剤は、有効成分の血中濃度が上昇しやすいため、習慣性や依存性がある成分が配合されているものの場合、本来の目的と異なる不適正な使用がなされることがある。

1(a、b)  2(a、c)  3(b、d)  4(c、d)

医薬品の剤形に関する問題。
軟膏・クリーム剤の違いはしっかり押さえておく。
 
a 誤り。これはクリーム剤に関する内容。軟膏は、適応部位を水から遮断したい場合に適するとされる。
b 誤り。
c 正しい。
d 正しい。不適切な例として、コデインリン酸塩を含む咳止めのイッキ飲みが問題視されたことがある。
 
正答・・・4

 問 18 重篤な皮膚粘膜障害を伴う副作用に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)は、38℃以上の高熱を伴って、発疹 ・発赤、火傷様の水疱等の激しい症状が比較的短期間のうちに全身の皮膚、口、眼等の粘膜に現れる病態である。

b 皮膚粘膜眼症候群の症例の多くが中毒性表皮壊死融解症(TEN)の進展型とみられている。

c 両眼に急性結膜炎のような症状が現れた場合は、皮膚粘膜眼症候群又は中毒性表皮壊死融解症の前兆である可能性を疑うことが重要である。

d 皮膚粘膜眼症候群及び中毒性表皮壊死融解症は、多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあるが、皮膚症状が軽快した後は眼や呼吸器等に障害が残ることはない。 
 
    a b c d
1 誤 誤 正 正
2 誤 正 正 誤
3 正 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 誤

重篤な副作用である皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)と中毒性表皮壊死融解症(TEN)に関連する問題。難しく感じる内容だが、出題のポイントは限られるので、苦手意識を持たないように。

中毒性表皮壊死融解症(TEN)の多くは皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)の進展型とみられている。

a 正しい。なお、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)の発生頻度は、人口100万人当たり年間1~6人と報告されている。発症機序の詳細は不明で、発症の可能性がある医薬品の種類も多く予測は極めて困難である。
b 誤り。中毒性表皮壊死融解症(TEN)の症例の多くが皮膚粘膜眼症候群の進展型とみられる。発生頻度は人口100万人当たり年間0.4~1.2人と報告されており、皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)よりも少ない。こちらも発症機序の詳細は不明で、予測は困難である。
c 正しい
d 誤り。皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残る場合がある。
 
正答・・・4

問 19 次の記述は、精神神経系に現れる医薬品の副作用に関するものである。正しいものの組み合わせはどれか。

a 精神神経症状は、医薬品を通常の用法・用量で使用していれば発生するおそれはない。

b 無菌性髄膜炎は、医薬品の副作用が原因の場合、全身性エリテマトーデ ス、混合性結合組織病、関節リウマチ等の基礎疾患がある人で発症リスクが高い。

c 過去に無菌性髄膜炎の軽度の症状を経験した人は、再度同じ医薬品を使用しても抗体ができているため再発はしない。

d 医薬品の副作用によって中枢神経系が影響を受け、興奮、眠気、うつ等 の精神神経症状を生じることがある。

1(a、b)  2(a、c)  3(b、d)  4(c、d)

精神神経系に現れる医薬品の副作用、無菌性髄膜炎に関する問題。

a 誤り。
b 正しい。
c 誤り。再度、同じ医薬品を使用することにより再発し、急激に症状が進行する場合がある。
d 正しい。
 
正答・・・3

問 20 体の局所に現れる医薬品の副作用に関する以下の記述の正誤について、 正しい組み合わせはどれか。

a イレウス様症状が悪化すると、腸内細菌の異常増殖によって全身状態の衰弱が急激に進行する可能性がある。

b 間質性肺炎の症状は、かぜや気管支炎の症状と区別が容易であり、それらの鑑別には細心の注意は必要ない。

c 喘息の症状は、外用薬で誘発されることはない。

d 消化性潰瘍の症状は、消化管出血に伴って糞便が黒くなることがある。
 
  a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 誤 誤
4 正 誤 正 誤
5 正 誤 正 正

体の局所に現れる医薬品の副作用に関する問題
幅広い内容を問われているが、判断は容易。

a 正しい。
b 誤り。
c 誤り。例えば、痛み止めの湿布等でも誘発される恐れがある。
d 正しい。

正答・・・2
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