R5 関西広域連合 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識(問11-20)

「誓いの碑」の詳細な出題は珍しい

問11
高齢者への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、おおよその目安として65歳以上を「高齢者」としている。

b 高齢者は、持病(基礎疾患)を抱えていることが多いが、一般用医薬品の使用によって基礎疾患の症状が悪化することはない。

c 高齢者は、生理機能の衰えの度合いに個人差が小さいため、年齢から副作用を生じるリスクがどの程度増大しているか判断することができる。

d 高齢者は、喉の筋肉が衰えて飲食物を飲み込む力が弱まっている場合があり、内服薬を使用する際に喉に詰まらせやすい。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 正
4 正 誤 誤 正
5 誤 正 誤 正


高齢者と医薬品に関する問題。
「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」では、目安として65歳以上を「高齢者」としている。

a 正
b 誤 基礎疾患が悪化する場合もある。
c 誤 高齢者において、基礎体力や生理機能の衰えの度合いは個人差が大きく、年齢のみからリスク増大の程度を判断することは難しい。
d 正

正解・・・4


問12
妊婦又は妊娠していると思われる女性及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、母乳を介して乳児が医薬品の成分を摂取することになる場合がある。

b 多くの一般用医薬品は、妊婦が使用した場合における胎児への安全性に関する評価は困難とされている。

c 便秘薬には、配合成分やその用量によっては、流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。

d ビタミンAは、胎児にとって非常に重要な成分の一つであるため、妊婦に対して特に妊娠初期(妊娠3か月以内)のビタミンA含有製剤の過剰摂取には留意する必要はない。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正


妊婦及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用等に関する問題。
 
a 正 例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩(乳児の昏睡)、ジヒドロコデイン塩酸塩(モルヒネ中毒)、ロートエキス(乳児の頻脈)、センノシド(乳児の下痢)などは、乳汁中への移行による具体的な影響について第3章・5章で出題されている。
b 正 なお、多くの場合、安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。
c 正 例えば、大腸刺激性成分の瀉下薬(センノシドピコスルファートナトリウムなど)には、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれについて記載されている。
d 誤 ビタミンA含有製剤は、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされている。

正解・・・1


問13
プラセボ効果に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)は関与しないと考えられている。

b プラセボ効果によってもたらされる反応や変化は、望ましいもの(効果)であり、不都合なもの(副作用)はない。

c プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることがある。

d 医薬品の使用によってプラセボ効果と思われる反応や変化が現れたときには、それを目的として使用の継続が推奨される。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 正 誤 誤 正
4 誤 誤 正 正
5 誤 誤 正 誤


ほぼ毎年出題されているプラセボ(偽薬効果)に関する問題。

医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。プラセボ効果は、医薬品を使用したことによる楽観的な結果期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与していると考えられている。

a 誤 医薬品を使用したことによる楽観的な結果期待(暗示効果)も関与していると考えられている。
b 誤 プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)とがある。
c 正
d 誤 それを目的として医薬品が使用されるべきではない。

正解・・・5


問14
医薬品の品質に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 医薬品の有効成分には、高温や多湿により品質劣化を起こすものはあるが、光(紫外線)による品質劣化を起こすものはない。

b 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう留意する必要がある。

c 品質が承認等された基準に適合しない医薬品、その全部又は一部が変質・変敗した物質から成っている医薬品は販売が禁止されている。

d 一般用医薬品は家庭の常備薬として購入されることも多いため、外箱等に表示されている使用期限から十分な余裕をもって販売することが重要である。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 正
4 正 誤 誤 正
5 誤 正 誤 正


医薬品の品質に関する問題。
常識的に読み取れば判断できるでしょう。

a 誤 光(紫外線)によって劣化するものもある。
b 正
c 正
d 正

正解・・・3


問15
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 一般用医薬品の役割として、健康の維持・増進があるが、健康状態の自己検査は含まれない。

b 科学的・合理的に効果が期待できるものであれば、生活習慣病の治療も一般用医薬品の役割として含まれる。

c 乳幼児や妊婦等では、通常の成人の場合に比べ、一般用医薬品で対処可能な範囲は限られる。

d 一般用医薬品にも使用すればドーピングに該当する成分を含んだものがあるため、スポーツ競技者から相談があった場合は、専門知識を有する薬剤師などへの確認が必要である。

  a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 正


一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する問題

一般用医薬品の役割としては
(1) 軽度な疾病に伴う症状の改善
(2) 生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防
(3) 生活の質(QOL)の改善・向上
(4) 健康状態の自己検査
(5) 健康の維持・増進
(6) その他保健衛生
の6つがある。

a 誤 「健康状態の自己検査」も含まれる。
b 誤 「生活習慣病の治療」ではなく「生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防」である。
c 正
d 正 なお、ドーピングは令和4年度手引き改訂で追加された内容です。

正解・・・5


問16
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 一般用医薬品では、情報提供を受けた当人のみが医薬品を使用するとして、販売時のコミュニケーションを考える。

b 一般用医薬品の購入者は、使用者の体質や症状等を考慮して製品を事前に調べて選択しているのでなく、宣伝広告や販売価格等に基づき漠然と製品を選択していることがあることにも留意しなければならない。

c 登録販売者は、生活者のセルフメディケーションに対して、第二類医薬品及び第三類医薬品の販売、情報提供等を担う観点から、支援する姿勢が基本となる。

d 登録販売者からの情報提供は、説明内容が購入者等にどう理解されたかなどの実情を把握しながら行う必要はなく、専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでよい。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 誤 誤 誤 正
5 正 誤 誤 誤


一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する問題

a 誤 一般用医薬品では、必ずしも情報提供を受けた当人が医薬品を使用するとは限らないことを踏まえ、販売時のコミュニケーションを考える必要がある。
b 正
c 正
d 誤 常識的におかしいとわかるでしょう。専門家からの情報提供は、単に専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでなく、説明した内容が購入者等にどう理解され、行動に反映されているか、などの実情を把握しながら行う。 

正解・・・2


問17
医薬品の販売等に従事する専門家が、一般用医薬品の購入者から確認しておきたい基本的なポイント(事項)としての正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等のニーズ、購入の動機)。
b その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか。
c その医薬品を使用する人がアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか。
d その医薬品がすぐに使用される状況にあるか(その医薬品によって対処しようとする症状等が現にあるか)。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正


医薬品の販売等に従事する専門家が購入者等から確認しておきたい基本的なポイントは以下のような事項がある。

① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等側のニーズ、購入の動機)
② その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
③ その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
④ その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
⑤ その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
⑥ その医薬品を使用する人が相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品を摂取をしていないか
⑦ その医薬品がすぐに使用される状況にあるか
⑧ 症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか

a 正
b 正
c 正
d 正

正解・・・5


問18
厚生省(当時)は、悲惨な被害を再び発生させることのないように、その決意を銘記した「誓いの碑」を建立した。この「誓いの碑」の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを一つ選べ。

「誓いの碑」には、「命の尊さを心に刻みサリドマイド、スモン、( a )のような( b )による悲惨な被害を再び発生させることのないよう( c )の確保に最善の努力を重ねていくことをここに銘記する 千数百名もの感染者を出した『( d )』事件 このような事件の発生を反省しこの碑を建立した平成11年8月 厚生省」と刻まれている。


薬害関連の問題は、前年より1問減少し、計3問出題されました。
まずはHIV訴訟に関連した問題だが、「誓いの碑」に関して、ここまで詳細に出題されることは珍しい。
但し、一通り薬害に関する学習をしていれば、選択肢は選びやすいでしょう。

a HIV感染
b 医薬品
c 医薬品の安全性・有効性
d 薬害エイズ

正解・・・3


問19
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及びCJD訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a CJD訴訟とは、脳外科手術等に用いられていたウシ原料由来の人工硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。

b CJDは、細菌の一種であるプリオンが原因とされている。

c 本訴訟では、輸入販売業者及び製造業者が被告として提訴されたが、国は提訴されなかった。

d 本訴訟を一因として、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設された。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 誤
4 誤 誤 誤 正
5 正 正 誤 正


クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関する問題。
これは、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)訴訟を一因として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構により、生物由来製品による感染等被害救済制度の創設等がなされた。なお、医薬品副作用被害救済制度は、サリドマイド訴訟スモン訴訟を契機として、1979年に創設された。区別して憶えておこう。

a 誤 これは良くあるひっかけ。「ウシ原料由来の人工硬膜」ではなく「ヒト乾燥硬膜」である。
b 誤 CJDは、細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種であるプリオンが原因とされている。
c 誤 輸入販売業者及び製造業者だけでなく、国も提訴された。
d 正

正解・・・4


問20
C型肝炎及びC型肝炎訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。

a C型肝炎訴訟とは、ウイルスに汚染された注射器(注射針や注射筒)が連続使用されたことが原因で、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。

b 国及び製薬企業を被告として、複数の地裁で提訴されたが、判決は、国及び製薬企業が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。

c C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、2008年1月に議員立法による特別措置法が制定、施行された。

d 「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」を受け、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正


C型肝炎訴訟に関する問題。これははR4手引き改訂で追加された薬害です。
C型肝炎訴訟は出産や手術での大量出血などの際に特定のフィブリノゲン製剤血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。

a 誤 C型肝炎訴訟とは、出産や手術での大量出血などの際に特定のフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b 正
c 正
d 正

正解・・・4

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