レイヨウカク(羚羊角)

レイヨウカク(羚羊角)は、ウシ科のサイガレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角を粉末にした生薬で、緊張や興奮を鎮める作用等を期待して用いられる生薬です。
(なお、中医学では平肝熄風薬(へいかんそくふうやく)に分類され、非常にわかりづらい概念ですが、精神や自律神経の安定に関わるとされる「肝」の乱れから起こる脳神経系の様々な症状(頭痛、めまい、痙攣など)を抑えるような薬に分類されます)

身近な例では、宇津救命丸(レイヨウカクには解熱作用、抗痙攣作用もあると言われている)や救心などの生薬製剤に使用されています。
 

なお、サイガ(Saiga tatarica)は、ユーラシア大陸の幅広い地域に生息していたそうですが、生息地の開発や、食用目的や角を薬に使用するために乱獲が行われたため、徐々に生息地は減少し、現在は主にカザフスタン、モンゴル、ロシア、ウズベキスタン、トルクメニスタン等の中央アジアの草原(ステップ)に生息しています。(西ヨーロッパや中国では絶滅)

特に、角の採取を目的とした乱獲については、1980年に犀角(サイの角)の国際取引が禁止されたことから、その代替として、レイヨウカク(羚羊角)の需要が高まったことが影響していると言われています。
↓レイヨウカク(羚羊角) 香港にて


このように生息数が減少してしまったサイガは、2024.12現在、国際自然保護連合(IUCN)が作成した絶滅のおそれのある野生生物のリストでは、NT(準絶滅危惧)に分類されています。

そのため、サイガの角を粉末にしたレイヨウカク(羚羊角)は、今後入手が困難になるのではないかと言われています。これに関連して厚生労働省からも通知がでており、今後スイギュウカク(水牛角)への代替が進む可能性があります
「レイヨウカクを含有する一般用医薬品の取扱い等について」の一部改正について(令和3年3月12日 薬生薬審発 0312第1号)

但し、実際に変更された製品はまだ一部に限られ、救心や宇津救命丸、六神丸など、主な生薬製剤は引き続きレイヨウカクが配合されていますが、ジャコウのように国内在庫が無くなれば、今後代替が進むかもしれません。

なお、独特な形をした鼻が特徴的(YouTubeサムネを参照)サイガですが、これは吸い込んだ空気中の砂埃をろ過したり、温度を調節してから肺に届ける役目をしていると考えられているそうですね。

 

登録販売者試験では、小児鎮静薬及び(強心作用は期待されていませんが)強心薬の分野において記載がありますが、それほど出題頻度は高くありません。なお、問題作成の手引き(令和6年度)にはサイガ(saiga)ではなく、サイカと記載されており、問題文もこちらが使用されています。

(レイヨウカクは)ウシ科のサイカレイヨウ(高鼻レイヨウ)等の角を基原とする生薬で、緊張や興奮を鎮める作用等を期待して用いられる。→薬効(緊張や興奮を鎮める)については宇津救命丸に使用されていることと結びつけると覚えやすいでしょう。

また、手引きの脚注部分にレイヨウカクの入手困難の可能性について触れられています。
レイヨウカクは、絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約による規制により、今後は本邦において入手が困難となることが予想される。そのため、レイヨウカクを含有する強心薬のうち、センソ又はゴオウを主体とする一般用医薬品(いわゆる「六神丸」又は「感応丸」)においては、スイギュウカクへ代替する医薬品もある。

→スイジュウガクへの代替に関して覚えておくとよいでしょう。

 

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