甘草(カンゾウ)に関する出題ポイント(登録販売者試験)
甘草(カンゾウ)は、マメ科のウラルカンゾウ又はグリキルリザ・グラブラの根及びストロンを基原とする生薬です。
その名のとおり、生薬を嗅ぐと甘い匂いが漂い、実際かじってみると甘い味がします。この甘さ由来の成分はグリチルリチン酸であり、砂糖の30~50倍の甘さを持つとされています。
↓煎じ薬用に用いられる甘草の刻み
中医学では「補気薬」に分類されますが、特に脾胃虚弱への補気・補益目的に使用されます。(例えは六君子湯)
また、こむら返りの漢方薬として有名な芍薬甘草湯には、カンゾウが多く含まれています。この場合は止痛作用が期待されています。
他に、ステロイドと構造が似ているグリチルリチン酸を含有することから抗炎症作用も期待されます。その為、総合感冒薬に、喉の痛みの軽減目的で配合されている場合もあります。
他に、止咳や気道粘膜からの分泌を促す等の作用も期待されます。総合感冒薬では「ジキニン」ブランドに良く含まれており、カンゾウの働きとして「鎮咳・去痰作用」が書かれています。
そして、カンゾウには「調和薬」としての用途もあります。具体的には、性質の異なる薬物を調和させたり、薬物の偏性を軽減したり、緩和するような働きが期待されます。また、その甘い味から漢方薬の味をまろやかにし飲みやすくしてくれます。
その為、甘草(カンゾウ)は実に多くの漢方薬に含まれています。正確に調べた訳ではありませんが、漢方薬のうち、7-8割はカンゾウを含んでいると言っても大袈裟ではないでしょう。
さらに、炮製(生薬の加工処理)に関する知識も付け加えておきます。
カンゾウは炙する(=炒める)ことで、補気・補益作用が強まると言われています。その為、漢方薬局や専門医院で煎じ薬として調合される場合、炙甘草が用いられることが多いです。(甘草をフライパンで炒めて使う)
なお、桔梗湯(甘草・桔梗)に含まれる場合のように、清熱解毒目的で使用される場合は生用の方が適するとされています。
登録販売者試験に関しては、超頻出・超重要知識になります。
そもそも、なぜカンゾウ(甘草)が良く問われているかと言うと、様々な薬効をもつこと以外に、「カンゾウを大量に摂取するとグリチルリチン酸の大量摂取につながり、偽アルドステロン症を起こすおそれがある」という注意点がある為です。
これは医薬品販売上、必ず知っておくべき重要な知識である為、出題ポイントになっていると理解してください。(但し、実際のOTC販売の現場で現在それ程問題になっている訳ではありませんが)
なお、偽アルドステロン症の具体的な症状としては、水分・ナトリウムの過剰な再吸収、カリウムの再吸収抑制を招き、体の水分量が増えて、浮腫みや血圧上昇が現れたり、酷いと筋肉低下、歩行困難等も招きます。
次に「カンゾウを有無を問う」問題について。
先程触れたように、調和目的も含め、多くの漢方薬にはカンゾウが含まれています。その為、試験対策としてはカンゾウ(甘草)を含まない漢方薬名を憶えて下さい。(全ての漢方薬のカンゾウの有無を憶えるのは無理!無駄!)
半夏厚朴湯(咽喉・食道部に異物感、のどにつかえ感)
呉茱萸湯(ごしゅゆとう・頭痛)
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう・便秘するものの蕁麻疹・口内炎・皮膚の痒み)
特に上記2つは、今まで頻繁に出題されています。
また、平成28年 東京・南関東地区 問82-dでは、以下の漢方薬のカンゾウの有無が問われています。
当帰芍薬散(更年期障害、月経不順、冷え症、産前産後 代表的な婦人向け漢方)
四物湯(更年期障害、月経不順、冷え症 血虚の基本処方)
温清飲(皮膚炎・湿疹、月経不順 四物湯と黄連解毒湯の合剤)
出題の手引きを読むと、これらの漢方薬には間接的にカンゾウを含んでいないことがわかりますが、ここまで学習するのはちょっとつらいですが。
最後に、カンゾウは、甘味料として一般食品にも広く使用されている点も押せておきます。
他にも、カンゾウに関する出題ポイントはいくつかありますが、全て挙げるとキリがなく今回はこれまでとします。以上、カンゾウに関する出題ポイントでした。