パイロンPL顆粒・・・高い知名度が強み。咳止め成分は入っていません。
冬のシーズンは、特に総合感冒薬のCMを多く見かける時期ですが、今シーズンは2017年8月にシオノギヘルスケア(株)から発売された「パイロンPL顆粒」も、注目の新製品です。
長年、医療用医薬品の感冒薬の代表格として培われてきた「PL顆粒」のブランド力を活かし、OTC医薬品としててブランド拡張されました。その知名度の高さもあり、ドラックストア等の店頭でPOPに力を入れている店舗も見かけます。(現在、医療用「PL顆粒」は「PL配合顆粒」と名称変更されています)
また、「パイロン」とは、元々シオノギ製薬のOTCブランド名で、PLの名前の由来にもなっています。
以前、総合感冒薬に関する記事の中でも触れたことがありますが、実際には、各商品に配合されている成分にそれ程違いはなく、各社とも商品認知度を向上・定着させ他社製品と差別化し顧客の探索行動において有利に立てるよう、マーケティング活動を行っています。特にマーケティング効果の高いテレビCMでは、イメージキャラクターの選定の他、キャッチーなフレーズやメロディを使い、いかに印象を高めるかも重視されます。
すでに定着化しているものとしては、「効いたよね。早めのパブロン♪」「食べる前に飲む!」「痛くなったらすぐセデス♪」等がありますが、ここ数年では、広瀬すずさんのCMで流れる「のどが痛い♪ 熱がでた♪ 狙いうち!」が特にインパクトが大きかったでしょうか。
そして、このパイロンPL顆粒のCM中のキャッチフレーズは・・・
「あっ!このかぜ薬」
ここで敢えて「あっ!」のフレーズを入れたのは、50年以上に渡り、医療用の風邪薬として培われてきた「PL顆粒」の知名度・潜在的な認知度を利用したものだと思われます。
市販薬と異なり、医療用では総合感冒薬の製品数はとても少なく、その中でPL顆粒は、医療用感冒薬としてはダントツの知名度を誇っています。(次はぺレックス顆粒?)
また、生活習慣病等で通院していると、定期薬の他に、PL顆粒が1週間分ほど毎回セットで処方されるような方もいます。その為、(本来は絶対ダメですが)使いきらなかったPL顆粒を家族内で使用しているケースも考えられ、普段病医院に罹らない現役世代にも、一定以上の潜在的な認知度が見込まれます。
恐らく、この「あっ!このかぜ薬」のフレーズには、単なる喚起だけでなく、若者や現役世代も含めた広い年齢層を対象に、潜在的な記憶を思い起こさせ、購買行動に結びつける効果も狙っているかもしれません。但し、何年もこのフレーズを続けることは難しいでしょうが・・
次に、配合成分について触れたいと思います。
配合されている成分も医療用の「PL配合顆粒」と同じです。但し、1包あたりの量は、医療用(1g)の80%(0.8g)と若干少なくなっています。(顆粒単位あたりの含量は同じ)
パイロンPL顆粒1包=0.8g中
解熱鎮痛成分:サリチルアミド 216mg
解熱鎮ツ成分:アセトアミノフェン 120mg
鎮痛補助成分:無水カフェイン 48mg
抗ヒスタミン成分:プロメタジンメチレンジサリチル酸塩 10.8mg
(1包あたりの含有量は医療用「PL配合顆粒」の80%)
1包あたりの用量を2割減にしているのはOTCとしての様々な配慮かと思いますが、顆粒量を単に減らすだけで対応できるので、(著者の勝手な推測ですが)恐らく生産ノウハウや生産ラインが流用でき、製造コスト的なメリットもあるかもしれません。
次に、他の代表的な総合感冒薬と違いとして、「咳止めや去痰成分が全く含まれていない」点があります。一見、他のナショナルブランドの総合感冒薬より価格設定が低め(実勢価格1350円)ですが、その点は販売サイド、購入する側も注意が必要です。
他に、プロメタジンメチレンジサリチル酸という抗ヒスタミン成分は、他の市販薬には(恐らく)存在せず、定番のクロルフェニラミンマレイン酸と比べ、効果や副作用(眠気・口渇・高齢男性の尿閉など)がどう違うかが、販売側も説明・判断が難しいかもしれません。
総合的に考えると、総合感冒薬としては含有成分が限られているものの、価格面や世代を超えた広い知名度といった強みがあり、店内POP等をうまく活かせれば、高いリーチ率も可能な製品かと思います。