医薬品の購入等に関する記録等(H30.3改訂で追加)
H30.3の手引き改定により、「医薬品の購入等に関する記録等」に関する内容が追加されました。
なぜこのような内容が追加された背景が全く見えてこない受験生が殆どだと思いますが、2017年1月に起きた、いわゆる「ハーボニー偽物事件」が契機になったと思って差し支えないでしょう。
「ハーボニー」とはC型肝炎治療薬で、1錠あたりの薬価が5万円以上する高価な薬ですが、2017年1月に奈良の調剤薬局で偽物が患者に渡り、日本の医薬品流通の歴史の中で前代未聞の大事件となりました。(ハーボニーは通常1日1錠を12週服用する)
厚生労働省HP「C型肝炎治療薬「ハーボニー配合錠」の偽造品について
日本経済新聞「ハーボニー偽造 なぜ起きた?」
この際流通してしまった偽物が、薬局が正規の大手卸業者からではなく、いわゆる「現金問屋」と言われる、ちょっとグレーな流通経路から購入した薬剤に混入していたため起きた事件です。
どうも個人から持ち込まれた薬剤が、複数の流通業者を巡り巡って調剤薬局、さらに患者にまで渡ってしまったようですが、この際の業者間の販売記録が不明瞭であるため、①偽物がいつまでも流通経路に乗り続けてしまった、②さらにだれが最初に持ち込んだかが良く調べられなかった、という背景があります。
これを契機に、業界内では販売記録の厳格化(ロット、使用期限の記録)及び、取引先が合法的に取引できる相手であるか(許可書の確認)を、しっかり確かめることの再通知がなされています。
このような背景を知っているだけでも、ポイントを理解する際の一助になるかと思います。
手引の内容(薬局に関するもののみ抜粋)は以下の通りです。(一部割愛)
(a) 薬局
薬局開設者は、医薬品を購入し、又は譲り受けたとき及び薬局開設者、医薬品の製造販売業者、製造業者若しくは販売業者又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設者に販売し、又は授与したときは、次に掲げる事項を書面に記載しなければならない。ただし、④(氏名又は名称以外の事項に限る。)及び⑤については、薬局開設者と医薬品を購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者(以下「購入者等」という。)が常時取引関係にある場合を除くこと。また、⑥については、購入者等が自然人であり、かつ、購入者等自らが医薬品の取引の任に当たる場合を除くこと。(規則第14条)
① 品名
② 数量
③ 購入若しくは譲受け又は販売若しくは授与の年月日
④ 購入若しくは譲り受けた者又は販売若しくは授与した者の氏名又は名称、住所又は所在地、及び電話番号その他の連絡先
⑤ ④の事項を確認するために提示を受けた資料
⑥ 医薬品の取引の任に当たる自然人が、購入者等と雇用関係にあること又は購入者等から取引の指示を受けたことを示す資料
また、薬局開設者は、購入者等が常時取引関係にある場合を除き、①から⑥までの事項を書面に記載する際に、購入者等から、薬局開設、医薬品の製造販売業、製造業若しくは販売業又は病院、診療所若しくは飼育動物診療施設の開設の許可に係る許可証の写し(以下単に「許可証の写し」という。)その他の資料の提示を受けることで、購入者等の住所又は所在地、電話番号その他の連絡先を確認しなければならないこと。なお、この確認ができない場合は、医薬品の譲受及び譲渡を行わないこと。
また、医療用医薬品については、①から⑥までの事項に加え、ロット番号(ロットを構成しない医薬品については製造番号又は製造記号)及び使用の期限を記載する必要があること。
なお、ロット番号(ロットを構成しない医薬品については製造番号又は製造記号)及び使用の期限については、医療用医薬品(体外診断用医薬品を除く。)以外の医薬品(以下「一般用医薬品等」という。)についても、偽造医薬品の流通防止に向けた対策の観点から、併せて記載することが望ましいこと。
→医療用医薬品に関してはロット番号・使用期限の記載は「必要」(義務!)、一般用医薬品等に関しては「望ましい」となっています。