R3 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識(問11-20)
易しい問題ばかり。全問正答できるように
問11
妊婦又は妊娠していると思われる女性及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざりあう仕組み(血液-胎盤関門)がある。
b 便秘薬には、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。
c 妊娠前後の一定期間に、通常の用量を超えてビタミンA含有製剤を摂取すると、胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされている。
d 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られている。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 誤 正 誤 誤
5 正 誤 正 誤
妊婦・授乳婦への医薬品の使用等に関する問題。
a 誤り。胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)がある。但し、どの程度服用薬の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多い。
b 正しい。例えば、大腸刺激性成分の瀉下薬(センノシド、ピコスルファートナトリウムなど)には、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれについて記載されている。
c 正しい。関連記事:ビタミンA
d 正しい。例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩、ジヒドロコデイン塩酸塩、ロートエキス(乳児の頻脈)、センノシド(乳児の下痢)などは、移行による具体的な影響について第3章・5章で出題されている。
正答・・・3
問12
妊婦又は妊娠していると思われる女性への医薬品の使用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 妊婦が妊娠に伴う不眠症状がある場合、ジフェンヒドラミン塩酸塩を主薬とする催眠鎮静薬(睡眠改善薬)を使用することが推奨される。
b 妊娠の有無やその可能性については、購入者側にとって他人に知られたくない場合もあることから、一般用医薬品の販売等において専門家が情報提供や相談対応を行う際には、十分配慮することが必要である。
c 一般用医薬品において、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。
a b c
1 正 誤 誤
2 誤 正 誤
3 誤 誤 正
4 誤 正 正
5 正 正 誤
妊婦又は妊娠していると思われる女性への医薬品の使用に関する問題。
a 誤り。妊娠に伴う不眠は、睡眠改善薬の適用症状でないため服用しない。
b 正しい。
c 正しい。
正答・・・4
問13
プラセボ効果に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果という。
b プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与して生じると考えられている。
c 一般用医薬品の使用によってもたらされる望ましい反応や変化がプラセボ効果と思われるときは、それを期待して使用を継続するべきである。
d プラセボ効果は、客観的に測定が可能な変化として現れることはなく、主観的な変化だけが現れる。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(b、d)
ほぼ毎年出題されているプラセボ(偽薬効果)に関する問題。
医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。プラセボ効果は、医薬品を使用したことによる楽観的な結果期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与していると考えられている。
a 正しい。
b 正しい。
c 誤り。プラセボ効果は、不確実であり、それを目的として医薬品が使用されるべきではない。
d 誤り。これは最初迷うかもしれない。検査値等で客観的に測定可能な変化として現れることがある。
正答・・・1
問14
医薬品の品質に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 医薬品は、適切な保管・陳列がなされれば、経時変化による品質の劣化は起こらない。
b 一般用医薬品は、購入後、すぐに使用されるとは限らず、家庭における常備薬として購入されることも多いことから、外箱等に記載されている使用期限から十分な余裕をもって販売等がなされることも重要である。
c 医薬品の外箱等に表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。
d 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう(高温、多湿、直射日光等の下に置かれることのないよう)留意する必要がある。
a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 正 誤 正
3 誤 正 誤 誤
4 誤 誤 誤 正
5 正 誤 正 誤
医薬品の品質に関する問題。
a 誤り。適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。
b 正しい。
c 正しい。表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。(出題されないが)例えば、子供向けのかぜ薬シロップの場合、開封後は冷蔵保存で2-3か月が期限の目安とされる。
d 正しい。
正答・・・1
問15
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 症状が重いとき(例えば、高熱や激しい腹痛がある場合、患部が広範囲である場合等)には、まず、一般用医薬品を使用することが適切な対処である。
b 一般用医薬品を一定期間使用しても症状の改善がみられないときには、医療機関を受診して医師の診療を受ける必要がある。
c 一般用医薬品で対処可能な範囲は、医薬品を使用する人によって変わるものではない。
a b c
1 正 正 正
2 誤 正 正
3 誤 誤 正
4 誤 正 誤
5 正 誤 誤
一般用医薬品で対処可能な症状等の範囲に関する問題。
常識的に読み取れば判断できるでしょう。
a 誤り。適切ではない。
b 正しい。
c 誤り。一般用医薬品で対処可能な範囲は、医薬品を使用する人によって変わる。例えば、乳幼児や妊婦等では、通常の成人の場合に比べ、その範囲は限られてくる。
正答・・・4
問16
一般用医薬品の販売時におけるコミュニケーション及び情報提供に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 医薬品の販売に従事する専門家は、生活者のセルフメディケーションに対して支援していくという姿勢で臨むことが基本である。
b 医薬品の販売に従事する専門家は、購入者等が、自分自身や家族の健康に対する責任感を持ち、適切な医薬品を選択して、適正に使用するよう、働きかけていくことが重要である。
c 一般用医薬品の場合、必ずしも情報提供を受けた当人が医薬品を使用するとは限らないことを踏まえ、販売時のコミュニケーションを考える必要がある。
d 医薬品の情報提供は、使用する人に誤認が生じないよう正確な専門用語を用い、相手によって表現を変えることのないよう注意して行う。
a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 正 正 誤
3 誤 誤 正 誤
4 誤 正 誤 誤
5 正 誤 誤 正
一般用医薬品の販売時におけるコミュニケーション及び情報提供に関する問題。
a 正しい。「一般用医薬品」の販売なので「セルフメディケーション」の支援をする姿勢でOKです。
b 正しい。
c 正しい。
d 誤り。常識的におかしいとわかるでしょう。
正答・・・2
問17
一般用医薬品の販売時におけるコミュニケーション及び情報提供に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 購入者等が一般用医薬品を使用する状況は随時変化する可能性があるため、販売数量は一時期に使用する必要量とする等、販売時のコミュニケーションの機会が継続的に確保されるよう配慮することも重要である。
b 購入者側に情報提供を受けようとする意識が乏しい場合であっても、購入者側から医薬品の使用状況に係る情報をできる限り引き出し、可能な情報提供を行っていくためのコミュニケーション技術を身につけるべきである。
c 「何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者側のニーズ、購入の動機)」は、一般用医薬品の販売等に従事する専門家が購入者から確認しておきたい基本的ポイントのひとつである。
a b c
1 正 正 正
2 正 誤 正
3 誤 正 誤
4 誤 誤 誤
5 正 正 誤
一般用医薬品の販売時におけるコミュニケーション及び情報提供に関する問題。
これも、常識的に読み取れば判断できるでしょう。
a 正しい。
b 正しい。
c 正しい。
正答・・・1
問18
サリドマイド及びサリドマイド訴訟に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a サリドマイド訴訟は、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
b サリドマイド訴訟は、1963年6月に製薬企業を被告として、さらに翌年12月には国及び製薬企業を被告として提訴され、1974年10月に和解が成立した。
c サリドマイドの光学異性体のうち、R体のサリドマイドを分離して製剤化することで催奇形性を避けることができる。
d サリドマイドによる薬害事件は、我が国のみならず世界的にも問題となったため、WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 正 誤 正
3 誤 誤 正 正
4 誤 誤 誤 誤
5 正 正 正 誤
例年通り、1章後半は薬害に関する問題です。例年薬害関連は4問出題されていたが、今回は3問でした。
まずはサリドマイド訴訟に関する問題。
これは、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用し、出生児に四肢欠損等の先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
a 正しい。
b 正しい。
c 誤り。
まず、サリドマイドの副作用である血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体(R体、S体)のうち、S体のみが有する作用である点を知っておく必要がある。もう一方の異性体(R体)には血管新生を妨げる作用はなく、また、求められている鎮静作用はR体のみが有するとされている。
さらに「R体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。」点も出題されるので、知識はセットで押さえておこう。
ちなみに、光学異性体とは、分子の化学的配列(炭素原子や水素原子等がどう並んでいるか)は同じだが、その分子構造が鏡像関係(鏡に映ったように左右対称の関係)にあり、互いに重ね合わせることができないものを言います。例としては、右手と左手の関係がわかりやすい。
なお、R体とS体が分離されていない混合体を「ラセミ体」と呼ぶことがある(手引きにも記載あり)。
d 正しい。
正答・・・2
問19
HIV訴訟に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a HIV訴訟は、血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された免疫グロブリン製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b HIV訴訟を契機として、医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図るため、医薬品副作用被害救済制度が創設された。
c HIV訴訟の和解を踏まえ、国は、HIV感染者に対する恒久対策として、エイズ治療研究開発センター及び拠点病院の整備や治療薬の早期提供等の様々な取り組みを推進してきている。
d HIV訴訟を契機に、血液製剤の安全確保対策として検査や献血時の問診の充実が図られた。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)
HIV訴訟に関する問題。
これは、血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟。
a 誤り。×免疫グロブリン製剤→〇血液凝固因子製剤
b 誤り。医薬品副作用被害救済制度は、サリドマイド訴訟やスモン訴訟を契機として、1979年に創設された。
c 正しい。
d 正しい。
正答・・・5
問20
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及びCJD訴訟に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a CJDは、認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。
b CJD訴訟は、脳外科手術等に用いられていたウシ乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
c CJDは、ウイルスの一種であるプリオンが脳の組織に感染することによって発症する。
a b c
1 正 正 正
2 正 誤 正
3 正 誤 誤
4 誤 正 誤
5 誤 誤 正
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関する問題。
これは、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)訴訟を一因として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構により、生物由来製品による感染等被害救済制度の創設等がなされた。なお、医薬品副作用被害救済制度は、サリドマイド訴訟やスモン訴訟を契機として、1979年に創設された。区別して憶えておこう。
a 正しい。CJDは、プリオンが脳の組織に感染し、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。
b 誤り。ウシ乾燥硬膜⇒〇ヒト乾燥硬膜(前年、前々年も問われています)
c 誤り。CJDは、細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種であるプリオンが原因とされている。
正答・・・3