C型肝炎で議員立法の出題は珍しい。頻出のプラセボ効果の出題は今回無し。

問11 高齢者への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 基礎体力や生理機能の衰えの度合いに個人差はほとんどない。

b 医薬品の取り違えや飲み忘れを起こしやすいなどの傾向があるため、家族や周囲の人(介護関係者等)の理解や協力が重要となる。

c 医薬品の説明を理解するのに時間がかかる場合があり、情報提供や相談対応において特段の配慮が必要となる。

d 医薬品の副作用で口渇を生じることがあり、誤嚥を誘発しやすくなるので注意が必要である。

  a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 正 正
3 正 正 誤 誤
4 誤 正 正 正
5 誤 正 誤 正


高齢者への医薬品の使用に関する問題
なお、「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」では、目安として65歳以上を「高齢者」としている。

a 誤 高齢者の基礎体力や生理機能の衰えの度合いは「個人差はほとんどない」ではなく「個人差が大きい」。
b 正
c 正
d 正

正解・・・4


問12 妊婦又は妊娠していると思われる女性への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざりあう仕組みがあるため、妊婦が医薬品を使用した場合は胎児へ医薬品の成分が容易に移行する。

b 購入者等にとって、妊娠の有無は他人に知られたくない場合もあることから、一般用医薬品の販売等に従事する専門家がその内容について聞き取る必要はない。

c 体の変調や不調に対して、一般用医薬品を使用することにより症状を緩和したいという相談があった場合、一般用医薬品の販売等に従事する専門家は、その対処が適切かどうかを含めて慎重に考慮する必要がある。

d 一般用医薬品において、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 正 誤 誤 正
4 誤 誤 正 正
5 誤 誤 正 誤


妊婦又は妊娠していると思われる女性への医薬品の使用に関する問題

a 誤 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み血液-胎盤関門)がある。母体が医薬品を使用した場合に、血液-胎盤関門によって、どの程度医薬品の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多い。一般用医薬品においても、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。
b 誤 「聞き取る必要はない」が明らかに誤り。情報提供や相談対応を行う際には、十分に配慮することが必要である。
c 正
d 正

正解・・・4


問13 医療機関で治療を受けている人等への医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 生活習慣病等の慢性疾患では、一般用医薬品を使用することでその症状が悪化することはない。

b 医療機関・薬局で交付された薬剤を使用している人について、登録販売者は一般用医薬品との併用の可否を容易に判断できることが多い。

c 疾患の程度や購入しようとする医薬品の種類等に応じて、問題を生じるおそれがあれば使用を避けることができるよう情報提供がなされることが重要である。

d 医療機関での治療を特に受けていない場合であっても、医薬品の種類や配合成分等によっては、特定の症状がある人が使用するとその症状を悪化させるおそれがある。

  a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 正


医療機関で治療を受けている人等への医薬品の使用に関する問題

a 誤 疾患の種類や程度によっては、一般用医薬品を使用することでその症状が悪化したり、治療が妨げられることもある。 
b 誤 医療機関・薬局で交付された薬剤を使用している人については、登録販売者において一般用医薬品との併用の可否を判断することは困難なことが多く、その薬剤を処方した医師若しくは歯科医師又は調剤を行った薬剤師に相談するよう説明する必要がある。
c 正
d 正

正解・・・5


問14 医薬品の品質に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 一般用医薬品は、購入された後すぐに使用されるとは限らないため、外箱等に記載されている「使用期限」から十分な余裕をもって販売することが重要である。

b 医薬品は、高い水準で均一な品質が保証されていなければならない。

c 医薬品の外箱等に記載されている「使用期限」は、開封状態で保管された場合でも品質が保持される期限である。

d 医薬品は、適切な保管・陳列がなされていれば、経時変化による品質の劣化は起こらない。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 正 正 正 誤
3 正 正 誤 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 正


医薬品の品質に関する問題

a 正
b 正
c 誤 表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。(出題されないが)例えば、子供向けのかぜ薬シロップの場合、開封後は冷蔵保存で2-3か月が期限の目安とされる。
d 誤 適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。

正解・・・3


問15 適切な医薬品選択と受診勧奨に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 一般用医薬品は、医療機関での治療を受けるほどではない体調不良や疾病の初期段階、あるいは日常において、生活者が自らの疾病の治療、予防又は生活の質の改善・向上を図ることを目的として用いられる。

b 一般用医薬品の役割の一つに、生活習慣病の治療がある。

c 一般用医薬品であっても、使用すればドーピングに該当する成分を含むものがあるため、スポーツ競技者から相談があった場合は、専門知識を有する薬剤師などへの確認が必要である。

d 乳幼児や妊婦等では、一般用医薬品で対処可能な範囲は、通常の成人の場合に比べ限られてくることがある。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正


適切な医薬品選択と受診勧奨に関する問題
ドーピングは令和4年度手引き改訂で追加された内容です。

a 正
b 誤 「生活習慣病の治療」は、一般用医薬品の役割の範疇を超えている。あくまで「生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防」としての役割である。

一般用医薬品の役割としては、以下の6つがある。
(1) 軽度な疾病に伴う症状の改善
(2) 生活習慣病等の疾病に伴う症状発現の予防
(3) 生活の質(QOL)の改善・向上
(4) 健康状態の自己検査
(5) 健康の維持・増進
(6) その他保健衛生

c 正 なお、出題されることはありませんが、一般用医薬品の成分でドーピングに該当するものとしては、メチルエフェドリンプソイドエフェドリン麻黄(エフェドリンを含む)等があり、興奮薬として分類されます。
d 正

正解・・・3


問16 一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 登録販売者は、全ての一般用医薬品の販売、情報提供等を担う観点から、一般の生活者のセルフメディケーションに対して支援していくという姿勢で臨むことが基本となる。

b 購入者等が自分自身や家族の健康に対する責任感を持ち、適切な医薬品を選択して、適正に使用するよう働きかけていくことが重要である。

c 購入者側に情報提供を受けようとする意識が乏しい場合は、情報提供を行うためのコミュニケーションを図る必要はない。

d 購入者等が医薬品を使用する状況は随時変化する可能性があるため、販売数量は一時期に使用する必要量とする等、販売時のコミュニケーションの機会を継続的に確保するよう配慮することが重要である。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 正 誤 誤
4 誤 誤 正 誤
5 誤 正 誤 正


一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する問題

a 誤 「全ての一般用医薬品」ではなく「第二類医薬品及び第三類医薬品」である。ひっかけ問題なので注意
b 正
c 誤 常識的におかしいとわかるでしょう。、購入者側から医薬品の使用状況に係る情報をできる限り引き出し、可能な情報提供を行っていくためのコミュニケーション技術を身につけるべきである。
d 正

なお、医薬品の販売等に従事する専門家が購入者等から確認しておきたい基本的なポイントは以下のような事項がある。

① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等側のニーズ、購入の動機)
② その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
③ その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
④ その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
⑤ その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
⑥ その医薬品を使用する人が相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品を摂取をしていないか
⑦ その医薬品がすぐに使用される状況にあるか
⑧ 症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか

正解・・・5


問17 サリドマイド及びサリドマイド訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 解熱鎮痛薬として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生した。

b サリドマイドの血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体のうち、一方の異性体のみが有する作用であるため、もう一方の異性体を分離して製剤化すれば避けることができる。

c 妊娠している女性がサリドマイドを摂取した場合、サリドマイドは血液-胎盤関門を通過して胎児に移行する。

d 1961年11月、西ドイツ(当時)のレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発し、西ドイツでは製品が回収されたことに伴い、日本でも、同年中に速やかに販売停止及び回収措置が取られた。

  a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 正 正 正 誤
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 正


薬害関連の問題は、前年より1問増えて、計4問に戻りました。

サリドマイド訴訟とは、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤妊娠している女性が使用し、出生児に四肢欠損等の先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟である。

a 誤 サリドマイド製剤は「解熱鎮痛薬」ではなく「睡眠鎮静剤等」として販売されていた。
b 誤
まず、サリドマイドの副作用である血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体(R体、S体)のうち、S体のみが有する作用である点を知っておく必要がある。もう一方の異性体(R体)には血管新生を妨げる作用はなく、また、求められている鎮静作用はR体のみが有するとされている。

さらに「R体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない」点も出題されるので、知識はセットで押さえておこう。

ちなみに、光学異性体とは、分子の化学的配列(炭素原子や水素原子等がどう並んでいるか)は同じだが、その立体的な分子構造が鏡像関係(鏡に映ったように左右対称の関係)にあり、互いに重ね合わせることができないものを言います。例としては、右手と左手の関係がわかりやすい
なお、R体とS体が分離されていない混合体を「ラセミ体」と呼ぶことがある(手引きにも記載あり)。
c 正
d 誤 日本では1961年12月に西ドイツ企業から勧告が届いており、翌年もその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視された。

正解・・・2


問18 HIV訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a 血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された免疫グロブリン製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。

b 本訴訟の和解を踏まえ、国は、薬害の再発を防止するための様々な取り組みを推進したが、その後、サリドマイド訴訟、スモン訴訟が相次いで起こった。

c 本訴訟を踏まえ、医薬品の副作用等による健康被害の再発防止に向けた取り組みの一つとして、製薬企業に対し、感染症報告の義務づけ等を内容とする薬事法の改正が行われた。

d 本訴訟を契機に、血液製剤の安全確保対策として検査や献血時の問診の充実が図られた。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 誤 正 正
3 誤 誤 誤 正
4 正 正 誤 誤
5 正 誤 正 誤


次はHIV訴訟に関連した問題。前年は「誓いの碑」に関して出題されたが、今回はオーソドックスな内容で出題されています。
HIV訴訟は、血友病患者がヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。

a 誤 「免疫グロブリン製剤」ではなく「血液凝固因子製剤」である。
b 誤 HIV訴訟は1996年3月に大阪、東京両地裁で和解が成立したが、サリドマイド訴訟は1963年~、スモン訴訟は1971年~であり、誤りである。
c 正
d 正

正解・・・2


問19 クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)及びCJD訴訟に関する記述の正誤について、正しい組合せを選べ。

a CJD訴訟とは、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。

b CJD訴訟は、生物由来製品による感染等被害救済制度が創設等される契機のひとつとなった。

c CJDは、次第に認知症に類似した症状が現れ、死に至る重篤な神経難病である。

d CJDは、細菌でもウイルスでもない脂質の一種であるプリオンが原因とされている。

  a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 正 正 正 誤
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 正


クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関する問題。
これは、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。

クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)訴訟を一因として、独立行政法人医薬品医療機器総合機構により、生物由来製品による感染等被害救済制度の創設等がなされた。なお、医薬品副作用被害救済制度は、サリドマイド訴訟スモン訴訟を契機として、1979年に創設された。区別して憶えておこう。

a 正
b 正
c 正
d 誤 これは頻出。プリオンは「脂質」ではなく、「タンパク質」の一種である。

正解・・・3


問20 C型肝炎訴訟に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せを選べ。なお、複数箇所の( b )内は同じ字句が入る。

出産や手術での大量出血などの際に特定の( a )や血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。( b )を被告として、2002年から2007年にかけて、5つの地裁で提訴されたが、判決は( b )が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。このような中、C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、( c )によって、2008年1月に特別措置法が制定、施行された。
  a b c
1 アルブミン製剤    国及び製薬企業  議員立法
2 アルブミン製剤 国及び医療機関 厚生労働省
3 フィブリノゲン製剤   国及び医療機関   議員立法
4 フィブリノゲン製剤   国及び製薬企業   厚生労働省
5 フィブリノゲン製剤   国及び製薬企業   議員立法


C型肝炎訴訟は、令和4年の手引き改訂で追加された内容です。
C型肝炎訴訟は出産や手術での大量出血などの際に特定のフィブリノゲン製剤血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。

a フィブリノゲン製剤
b 国及び製薬企業
c 議員立法

議員立法」は他ブロックも含め、ほぼ問われてこなかった内容なので、難易度は高かったと思われます。

正解・・・5

(Visited 7 times, 1 visits today)

Follow me!