R4 関西広域連合 第2章 人体の働きと医薬品(問71-80)
問71
薬が働く仕組みに関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の作用には、全身作用と局所作用とがあり、外用薬は、すべて局所的な効果を目的としたものである。
b 全身作用を目的とする医薬品では、その有効成分が吸収されて、循環血液中に移行することが不可欠である。
c 内服薬のほとんどは、その有効成分が、主として小腸で吸収される。
d 内服薬の有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物には影響されないが、他の医薬品の作用により影響を受けることがある。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 正 正 正 正
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 正
a 誤り。経皮吸収製剤のように、適用部位から吸収された有効成分が、循環血液中に移行して全身作用を示すものもある。(例:禁煙補助剤のニコチンパッチ)
b 正しい。
c 正しい。
d 誤り。有効成分の吸収量や吸収速度は、消化管内容物や他の医薬品の作用によって影響を受ける。
正解・・・1
問72
薬の代謝、排泄に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 経口投与後、消化管で吸収された有効成分は、全身循環に入る前に肝臓を経由して門脈を通過する。
b 循環血液中に移行した多くの有効成分は、血液中で血漿タンパク質と不可逆的に結合して複合体を形成する。
c 循環血液中に存在する有効成分の多くは、未変化体又は代謝物の形で腎臓から尿中に排泄される。
d 腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用が生じやすくなったりする。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 正 正 誤 誤
5 正 誤 誤 正
a 誤り。(消化管で吸収された有効成分は)全身循環に入る前に門脈という血管を経由して肝臓を通過する。(下図参照)
b 誤り。血漿タンパク質との結合は、速やかかつ可逆的(×不可逆的)である。
c 正しい。
d 正しい。
正解・・・3
問73
医薬品の剤形及びその一般的な特徴に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 腸溶錠は、腸内での溶解を目的として錠剤表面をコーティングしているものである。
b 散剤を服用するときは、飛散を防ぐため、あらかじめ少量の水(又はぬるま湯)を口に含んだ上で服用するなどの工夫をするとよい。
c クリーム剤は、有効成分が適用部位に留まりやすく、一般に、患部を水から遮断したい場合に用いられる。
d 貼付剤は、適用部位に有効成分が一定時間留まるため、薬効の持続が期待できる反面、適用部位にかぶれなどを起こす場合もある。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 正 誤 正 正
a 正しい。
b 正しい。
c 誤り。これはクリーム剤ではなく、軟膏に関する記述。
d 正しい。
正解・・・2
問74
医薬品の副作用として現れる皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 典型的な症状として、いずれも38℃以上の高熱、目の充血、口唇のただれ、喉の痛み、広範囲の皮膚の発赤等が現れる。
b いずれも致命的な転帰をたどることはないが、一旦発症すると、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残ることがある疾患である。
c 症状が持続したり、又は急激に悪化したりする場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、直ちに皮膚科の専門医を受診する必要がある。
d いずれも原因医薬品の使用開始後、2週間以内に起こることは少なく、1ヶ月以上経過してから発症することが多い。
a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 誤 正 正
3 誤 誤 誤 正
4 正 正 誤 誤
5 正 誤 正 誤
重篤な副作用皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)及び中毒性表皮壊死融解症(TEN)の違いはしっかり押さえておく。
a 正しい。
b 誤り。一旦発症すると多臓器障害の合併症等により致命的な転帰をたどることがあり、また、皮膚症状が軽快した後も眼や呼吸器等に障害が残ったりする重篤な疾患である。
c 正しい。
d 誤り。いずれも原因医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いが、1ヶ月以上経ってから起こることもある。
正解・・・5
問75
医薬品の副作用として現れる肝機能障害に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品により生じる肝機能障害は、中毒性のものと、アレルギー性のものに大別される。
b 肝機能障害は、軽度であっても倦怠感や皮膚の掻痒感等の自覚症状が顕著に現れることが多い。
c 黄疸は、ビリルビン(黄色色素)が血液中へ排出されず、胆汁中に滞留することにより生じる。
d 副作用による肝機能障害が疑われるにもかかわらず、漫然と原因と考えられる医薬品を使用し続けると、肝不全を生じ、死に至ることもある。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 誤 正 誤
4 正 正 誤 誤
5 誤 誤 誤 正
a 正しい。
b 誤り。軽度の肝機能障害の場合、自覚症状がない。
c 誤り。「血液中」と「胆汁中」が逆。
黄疸とは、ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じ、皮膚や白眼が黄色くなる病態である。
d 正しい。
正解・・・2
問76
精神神経系に現れる医薬品の副作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 医薬品の副作用として現れる精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用等の不適正な使用がなされた場合に限って発生し、通常の用法・用量の使用で現れることはない。
b 混合性結合組織病、関節リウマチ等の基礎疾患がある人では、医薬品による無菌性髄膜炎の発症リスクが高い。
c 副作用としての無菌性髄膜炎の発症は、多くの場合緩やかで、頭痛、発熱、吐きけ、意識混濁等の症状が徐々に現れる。
d 心臓や血管に作用する医薬品の使用により、頭痛やめまい、浮動感(体がふわふわと宙に浮いたような感じ)の症状が現れることがある。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 正
a 誤り。通常の用法・用量でも発生することがある。
b 正しい。
c 誤り。無菌性髄膜炎は髄膜炎のうち、髄液に細菌・真菌が検出されないものをいう。大部分はウイルスが原因と考えられている。主な症状は、急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等。
d 正しい。
正解・・・4
問77
消化器系に現れる医薬品の副作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 副作用による消化性潰瘍になると、胃のもたれ、食欲低下、胸やけ、吐きけ、胃痛、空腹時にみぞおちが痛くなるなどの症状が生じるが、自覚症状が乏しい場合もある。
b イレウスとは、腸の粘膜組織が傷害されて、その一部が粘膜筋板を超えて欠損する状態をいう。
c イレウス様症状では、嘔吐がない場合でも、腹痛などの症状のために水分や食物の摂取が抑制され、脱水状態となることがある。
d 浣腸剤や坐剤の使用によって現れる一過性の症状に、肛門部の熱感等の刺激、排便直後の立ちくらみなどがある。
a b c d
1 正 誤 正 誤
2 正 誤 正 正
3 正 正 誤 誤
4 誤 正 正 正
5 誤 正 誤 正
イレウスとは腸内容物の通過が阻害された状態で、一般に「腸閉塞」と呼ばれる状態。医薬品の作用によって腸管運動が麻痺して生じる場合もある。
a 正しい。
b 誤り。これは「消化性潰瘍」に関する記述。
c 正しい。
d 正しい。
正解・・・2
問78
呼吸器系に現れる医薬品の副作用に関する記述の正誤について、正しい組合せを一つ選べ。
a 間質性肺炎を発症すると、体内は低酸素状態となり、息切れ・息苦しさ等の呼吸困難、空咳(痰の出ない咳)、発熱等の症状が現れる。
b 間質性肺炎は、病態が進行すると軽労作時にも息切れが感じられるようになり、その際必ず発熱を伴う。
c 間質性肺炎は、悪化すると肺線維症(肺が線維化を起こして硬くなる状態)に移行することがある。
d 副作用として現れる喘息は、原因となる医薬品の使用後、短時間(1時間以内)で症状が現れ、それらの症状は、時間とともに悪化することがある。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 正 誤 正 正
間質性肺炎は肺の中で肺胞と毛細血管を取り囲んで支持している組織(間質)が炎症を起こした状態。発症すると、肺胞と毛細血管の間のガス交換効率が低下して、体内は低酸素状態となる。そのため、息切れ・息苦しさ等の呼吸困難、空咳、発熱等の症状を呈する。
a 正しい。
b 誤り。必ずしも発熱は伴わない
c 正しい。
d 正しい。
正解・・・5
問79
泌尿器系に現れる医薬品の副作用に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 副交感神経系の機能を亢進する作用がある成分が配合された医薬品を使用すると、膀胱の排尿筋の収縮が抑制され、尿が出にくい等の症状を生じることがある。
b 医薬品を使用して生じる尿閉は、前立腺肥大の基礎疾患がある人に特有に現れることが知られている。
c 医薬品の使用により、尿の回数増加(頻尿)、排尿時の疼痛、残尿感等の膀胱炎様症状が現れることがある。
d 外国から個人的に購入した医薬品(生薬・漢方薬)又はそれらと類似する健康食品(健康茶等)の摂取によって、重篤な腎障害を生じた事例が報告されている。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)
a 誤り。×副交感神経系の機能を亢進→〇副交感神経系の機能を抑制。
b 誤り。医薬品を使用して生じる尿閉の症状は前立腺肥大等の基礎疾患がない人でも現れることが知られ、男性に限らず女性においても報告されている。
c 正しい。
d 正しい。
正解・・・4
問80
皮膚に現れる医薬品の副作用に関する記述について、正しいものの組合せを一つ選べ。
a 塗り薬を皮膚に塗布したあと、その薬の配合成分に皮膚が反応して、発赤、腫れ等の激しい炎症症状が生じることがある。
b 接触皮膚炎は、外来性の物質が皮膚に接触することで現れる炎症であるため、同じ医薬品に接触した人のすべてに現れる炎症症状である。
c 接触皮膚炎の症状は、通常1週間程度で治まり、再びその医薬品に触れても再発することはない。
d 薬疹は、過去に薬疹を経験したことがない人であっても、暴飲暴食や肉体疲労が誘因となって現れることがある。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(c、d)
皮膚に現れる医薬品の副作用に関する問題。
接触皮膚炎は、いわゆる「肌に合わない」という状態で、医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴(例:一般的な湿布かぶれ)。なお、アレルギー性皮膚炎は発症部位は医薬品の接触部位に限定されない。
a 正しい。
b 誤り。発症するか否かはその人の体質によって異なる。
c 誤り。手引きでは「通常は1週間程度で症状は治まるが、再びその医薬品に触れると再発する」と記載されており誤り。
d 正しい。
正解・・・2