指定濫用防止医薬品とは、2026年(令和8年)5月1日から施行された改正薬機法によって、これまでの「濫用等のおそれのある医薬品」という名称が変更され、販売が大幅に規制強化された成分を含む医薬品のことです。

これまでも、依存性・習慣性のある成分を「濫用等のおそれのある医薬品」として販売規制が行われていましたが、近年社会問題となっている若年層(18歳未満)を中心としたオーバードーズ(薬の過剰摂取)の問題により一層対応するため、今回法改正が行われたと理解してよいでしょう。
これにより、法律上の正式名称も「指定濫用防止医薬品」に変わり、薬局や店舗販売業者が守るべき義務がより厳格化されることになりました。

指定濫用防止医薬品の定義

指定濫用防止医薬品は、薬局製造販売医薬品、要指導医薬品、一般用医薬品であって、その濫用をした場合に中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品とされています。

指定成分は6成分から8成分に

指定成分はこれまでの6成分のほか、今回の法改正により新たに2成分(デキストロメトルファン、ジフェンヒドラミン)が追加されました。但し外用薬は除きます(令和8年2月13日 医薬発 0213 第1号)。

以下に掲げるもの、その水和物及びそれらの塩類を有効成分として含有する製剤(外用薬を除く
①エフェドリン
コデイン
ジヒドロコデイン
ジフェンヒドラミン(新規追加)
デキストロメトルファン(新規追加)
プソイドエフェドリン
ブロモバレリル尿素
メチルエフェドリン

指定濫用防止医薬品に関する情報提供等

販売時における情報提供事項として、要指導医薬品等で定められている情報提供の他に、当該指定濫用防止医薬品を濫用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあること等を個別に書面で情報提供することが義務付けられています。

他にも販売時の確認事項として
①年齢
②年齢が18歳未満の場合は氏名
③他の薬剤又は医薬品の使用状況
④他の薬局、店舗における指定濫用防止医薬品の購入状況
⑤大容量製品又は、複数個購入しようとする場合はその理由


などが定められています。なお、これらは今回の法改正以前から行われていましたが、今回の法改正より、より厳しく運用することが求められています。
なお、年齢については(明らかに高齢者など)見た目で18歳以上であることの判断も可されていますが、未成年かどうか微妙な場合は身分証等で確認することが必要となります。

製品の容量(小容量、大容量)の違いによる適応販売ルールの違いについて

今回の法改正により、指定濫用防止医薬品の販売ルールは、製品の「容量(小容量or大容量)」によっても厳格に区別されるようになりました(医薬発0213第2号 令和8年2月13日)。大まかには

かぜ薬、解熱鎮痛薬、鼻炎用内服薬・・・7日分を超えないもの(ちょうど7日分は小容量)
それ以外(鎮咳去痰薬、睡眠改善薬など)・・・5日分を超えないもの(ちょうど5日分は小容量

この範囲内の製品については「小容量」製品、それを超えるものについては「大容量」製品の扱いとなります。

そして、大容量or小容量、18歳未満or18歳以上の場合の販売方法は以下のようになります。

18歳未満(若年者)の場合の販売ルール】
小容量製品: 薬局・店舗等の実店舗では1人につき1包装単位(1個)のみ販売可能です。但し、複数個の販売は禁止
      なお、従来のネット通販は禁止となりますが、ビデオ通話では条件を満たせば可能です。
大容量製品: 販売禁止です。

18歳以上の場合の販売ルール】
小容量・大容量・複数個: 実店舗において、いずれも販売可能ですが、大容量製品や複数個を購入しようとする場合は、薬剤師や登録販売者が「購入理由」を確認し、適正な使用(乱用の疑いがないこと)を判断した上で、その内容を記録する義務があります。
なお、小容量製品を1個なら、従来のネット通販も可能ですが、複数購入しようとする場合は、ビデオ通話で実店舗と同様に適正使用かどうかの確認が必要となります。

指定濫用防止医薬品の陳列方法

陳列方法についても、従来より厳しくなりました。
基本的な考え方として、購入している様子を薬剤師、登録販売者が確認できない場所には陳列してはいけないというルールになりました。
具体的な陳列場所(第二類、第三類)の場合は以下のとおりです。

①かぎをかけた陳列設備内
②レジカウンターの内部など、購入者が直接手に取れない場所
③情報提供場所から7メートル以内の範囲(但し、実務に従事する薬剤師又は登録販売者を継続的に配置する必要がある)


特に③「情報提供場所」については、基本的にトイレ等以外は常に薬剤師又は登録販売者が配置されていなければならないルールになっているので、現実的には空箱を陳列して、実物は②の方法で陳列する薬局、店舗が多いかと思います。

薬局又は店舗における掲示について

リスク区分に応じた情報提供又は相談対応の実効性を高めるため、薬局又は店舗に関する情報を、当該薬局又は店舗の見やすい位置に掲示板で掲示することとされていますが、今回の法改正により、「指定濫用防止医薬品の販売に関する情報」を合わせて掲示することが求められます。

特定販売(ネット通販、テレビ通販など)における表示について

また、特定販売に関しても、インターネットを利用する場合はホームページに、その他の広告方法を用いる場合は当該広告に、「指定濫用防止医薬品の販売に関する情報」を見やすく表示することが求められます。

容器・外箱等への「要確認」の文字記載の義務化

また、容器・外箱等への規定も変更となり、指定濫用防止医薬品にあっては、内容量が規定の数量以下(大容量製品にあたらない)の指定濫用防止医薬品については「要確認」の字句、その他(大容量)の指定濫用防止医薬品については、「要確認」の「要」を丸囲み又は四角囲みにした字句を記載することと定められました。
なお、この表示に関して経過措置期間は3年間で、当面はシール等による対応も可となっています。

指定濫用防止医薬品 販売等手順書の作成について

薬局、店舗等において指定濫用防止医薬品を販売する場合は、必要な手順を記載した指定濫用防止医薬品販売等手順書を作成しなければならないとされています。具体的には以下のような内容を盛り込むことになっています。

①販売又は授与の方法に関する手順について
②情報提供及び確認に関する手順について
③陳列に関する手順について
④頻回購入・多量購入を希望する購入希望者への対応の手順について

なお、大阪府が公開している資料が大変わかりやすいのでリンクをしておきます。

登録販売者試験の出題されやすいポイント

これまでも「濫用等の恐れのある医薬品」は、第4章では頻出でしたので、手引きの改訂で追加された令和8年以降も頻出の傾向はまず変わらないでしょう。
ここでは、問題作成の手引き(令和8年度改訂版)から、出題されそうなポイントを確認します(手引きの内容は一部改変)。

【指定濫用防止医薬品の定義】
指定濫用防止医薬品は、法第36条の11第1項において、次の①~③の医薬品であって、その濫用をした場合に中枢神経系の興奮若しくは抑制又は幻覚を生ずるおそれがあり、その防止を図る必要がある医薬品として厚生労働大臣が薬事審議会の意見を聴いて指定する医薬品とされている。

① 薬局開設者が当該薬局における設備及び器具をもって製造し、当該薬局において直接需要者に販売し、又は授与する医薬品(体外診断用医薬品を除き、厚生労働大臣の指定する有効成分以外の有効成分を含有しない医薬品に限る。)
② 要指導医薬品
③ 一般用医薬品


⇒①の説明がわかりづらいですが、これは「薬局製造販売医薬品」のことだと理解すればよいでしょう。薬局で手作りしている医薬品ですが、イメージがわかない方はリンク記事で確認を

また、指定濫用防止医薬品として法第36条の11第1項の規定に基づき厚生労働大臣が指定する医薬品(令和8年厚生労働省告示第32号)は、次に掲げるもの、その水和物及びそれらの塩類(以下「指定成分」という。)を有効成分として含有する製剤とされている。

ⅰ)エフェドリン。ただし、外用剤を除く。
ⅱ)コデイン。ただし、外用剤を除く。
ⅲ)ジヒドロコデイン。ただし、外用剤を除く。
ⅳ)ジフェンヒドラミン。ただし、外用剤を除く。
ⅴ)デキストロメトルファン。ただし、外用剤を除く。
ⅵ)プソイドエフェドリン。ただし、外用剤を除く。
ⅶ)ブロモバレリル尿素。ただし、外用剤を除く。
ⅷ)メチルエフェドリン。ただし、外用剤を除く。


→令和8年度施行の法改正により、ジフェンヒドラミンとデキストロメトルファンが追加になっています。

【容器・外箱等への記載事項】
(m) 指定濫用防止医薬品にあっては、内容量が規則第159条の18の6第1項に規定する数量以下
(つまり小容量製品のこと)の指定濫用防止医薬品については「要確認」の字句、その他つまり大容量の製品のことの指定濫用防止医薬品については、「要確認」の「要」を丸囲み又は四角囲みにした字句

容器・外箱等への法定表示事項は出題頻度の高い分野ですが、あらたに指定濫用防止医薬品の「要確認」の字句が追加されました。

指定濫用防止医薬品に関する情報提供等】
薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、指定濫用防止医薬品の適正な使用のため、指定濫用防止医薬品を販売し、若しくは授与し、又は配置する場合には、(中略)従事する薬剤師又は登録販売者に、規則で定める事項を記載した書面(電磁的記録の映像出力も含む)を用いて必要な情報を提供させなければならないとされている。

薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、(中略)指定濫用防止医薬品の情報の提供の方法について、要指導医薬品、一般用医薬品又は薬局製造販売医薬品に係る情報の提供の方法のほか、下記に掲げる方法により、(薬局、店舗、配置販売に従事する)薬剤師又は登録販売者に行わせなければならないこととされている(規則第159条の18の2)。

当該薬局等の情報の提供を行う場所において行わせること
② 当該指定濫用防止医薬品を濫用した場合に保健衛生上の危害が発生するおそれがあること等の情報を、当該指定濫用防止医薬品を購入等しようとする者又は当該指定濫用防止医薬品を使用しようとする者の状況に応じて個別に提供させること
③ 情報の提供を受けた者が当該情報の提供の内容を理解したこと及び質問の有無について確認させること

【指定濫用防止医薬品販売時の確認事項】
指定濫用防止医薬品の販売又は授与時の確認事項については、要指導医薬品等でそれぞれ定められている事項のほか、次の①~⑥に掲げる事項とする(一部改変)。

年齢
18歳未満である場合は当該者の氏名
③ 当該指定濫用防止医薬品を使用しようとする者の当該指定濫用防止医薬品及び当該指定濫用防止医薬品以外の指定濫用防止医薬品の購入又は譲受けの状況
数量を超えて当該指定濫用防止医薬品を購入等する場合はその理由
⑤ 当該指定濫用防止医薬品の適正な使用を目的とする購入等であることを確認するために必要な事項

⑥ その他規定による情報の提供を行うために確認が必要な事項

いわゆる小容量、大容量について
厚生労働大臣が定める数量(令和8年厚生労働省告示第33号)は、指定濫用防止医薬品ごとに、一包装であって、かつ、次の各欄に掲げる指定濫用防止医薬品ごとに、当該指定濫用防止医薬品の用法及び用量からみて次表の右欄に掲げる日数分の数量を超えないものとされている

1.エフェドリン。
ただし、外用剤を除く。
5日
2.コデイン。
ただし、外用剤を除く。
5日
3.ジヒドロコデイン。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、かぜ薬としての効能又は効果を有する
と認められる製剤にあっては7日。
4.ジフェンヒドラミン。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、かぜ薬としての効能又は効果を有する
と認められる製剤にあっては7日。
5.デキストロメトルファン。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、かぜ薬としての効能又は効果を有すると認められる製剤にあっては7日。
6.プソイドエフェドリン。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、かぜ薬又は鼻炎用内服薬としての効能
又は効果を有すると認められる製剤にあっては7日。
7.ブロモバレリル尿素。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、解熱鎮痛薬としての効能又は効果を有
すると認められる製剤にあっては7日。
8.メチルエフェドリン。
ただし、外用剤を除く。
5日。ただし、かぜ薬又は鼻炎用内服薬としての効能
又は効果を有すると認められる製剤にあっては7日。

→この「厚生労働大臣が定める量」とは、前半に説明した小容量製品に該当する量のことです。そして、この表は小容量製品、大容量製品かを、どこで区別するかの日数について示した表になります。
例えば、デキストロメトルファンを含有した製品で、5日分相当のものなら小容量製品の扱いになるということです。また、もし5日分を超えて(5.5日分など)いる製品であれば、大容量扱いとなり、18歳未満では、理由問わず販売不可となります。

【指定濫用防止医薬品の陳列】
薬局開設者又は店舗販売業者は、指定濫用防止医薬品を陳列する場合には、指定濫用防止医薬品の適正な使用を確保するよう、指定濫用防止医薬品(第二類医薬又は第三類医薬品に限る。)を次に掲げるいずれかの方法により陳列しなければならないとされている。

①指定濫用防止医薬品陳列区画の内部の陳列設備に陳列すること。ただし、鍵をかけた陳列設備その他医薬品を購入し、若しく(中略)医薬品を使用する者が直接手の触れられない陳列設備に陳列する場合は、この限りでない。

② 薬局等構造設備規則に規定する情報を提供するための設備から7メートル以内の範囲に陳列し、当該設備にその薬局又は店舗において薬事に関する実務に従事する薬剤師又は登録販売者を継続的に配置すること。


⇒「陳列」については良く問われるポイントですが、①または②のいづれかの方法で陳列することになっています。
①については要指導医薬品、第一類医薬品と同様だと理解すればいいですが、②については、情報提供設備(ドラックストアに行けばそれらしい場所があります)から7m以内の範囲、かつ薬剤師or登録販売者が継続的に配置すること。「継続的」というワードが試験では狙われやすい部分かと思います。

【指定濫用防止医薬品販売等手順書の作成】
薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、指定濫用防止医薬品を販売等する場合においては、次の①~④の手順を記載した指定濫用防止医薬品販売等手順書を作成しなければならないこととし、薬局開設者、店舗販売業者又は配置販売業者は、指定濫用防止医薬品を販売し、又は授与する場合においては、(中略)従事する薬剤師又は登録販売者に、指定濫用防止医薬品販売等手順書に基づき、適正な方法により指定濫用防止医薬品の販売等に係る業務を行わせなければならないとされている


① 販売又は授与の方法に関する手順
② 指定濫用防止医薬品を購入し、又は譲り受けようとする者への情報提供及び(販売時の確認事項)に掲げる事項に関する確認に関する手順
③ 陳列に関する手順
④ 厚生労働大臣が定める数量を超えて指定濫用防止医薬品を購入し、又は譲り受けようとする場合、当該数量以下の数量の指定濫用防止医薬品を頻繁に購入し、又は譲り受けようとする場合であって適正な使用を確保することができないと認められる場合その他これに類する場合の対応に関する手順
⑤ その他適正な販売又は授与に関し必要と考えられる事項に関する手順


→とりあえず、手順書を作成しなければならないところは最低限押さえておきましょう。

以上、全てはピックアップできませんでしたが、出題されやすそうなところを挙げてみました。
令和8年度以降、毎年のように出題されると思われますが、まずはその定義と追加された2成分を含めた8成分は必ず覚えておくようにしましょう。

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