R6 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識(問11-20)
薬害は引き続き4題出題あり。C型肝炎訴訟含め確実に解けるように
問11
妊婦又は妊娠していると思われる女性及び母乳を与える女性(授乳婦)への医薬品の使用に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 ビタミンAを含有する医薬品は、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると、胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされている。
2 一般用医薬品において、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が困難であるため、妊婦の使用については、添付文書において「相談すること」としているものが多い。
3 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られている。
4 妊娠の有無やその可能性については、購入者側にとって他人に知られたくない場合もあることから、一般用医薬品の販売等において専門家が情報提供や相談対応を行う際には、十分配慮することが必要である。
5 胎盤には、胎児の血液と母体の血液が混ざりあう仕組み(血液-胎盤関門)がある。
妊婦又は母乳を与える女性(授乳婦)と医薬品に関する問題
前年度とほぼ同じような内容で出題されています。
1 正 関連記事:ビタミンA
2 正
3 正
4 正 医薬品の種類によっては、授乳婦が使用した医薬品の成分の一部が乳汁中に移行することが知られいる。
例えば、ジフェンヒドラミン塩酸塩(乳児の昏睡)、ジヒドロコデイン塩酸塩(乳児のモルヒネ中毒)、ロートエキス(乳児の頻脈)、センノシド(乳児の下痢)などは、移行による具体的な影響について第3章・5章で出題されている。
5 誤 胎盤には、胎児の血液と母体の血液とが混ざらない仕組み(血液-胎盤関門)がある。但し、どの程度服用薬の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多い。
正解・・・5
問12
医療機関で治療を受けている人等への医薬品の使用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 一般用医薬品の購入者等に対して、医療機関で治療を受ける際には、使用している一般用医薬品の情報を医療機関の医師や薬局の薬剤師等に伝えるよう説明することも重要である。
b 生活習慣病等の慢性疾患を持つ者が一般用医薬品を使用しても、その症状が悪化したり、治療が妨げられることはない。
c 医療機関での治療は特に受けていない場合であっても、医薬品の種類や配合成分等によっては、特定の症状がある人が使用するとその症状を悪化させるおそれがある。
a b c
1 正 正 誤
2 正 誤 正
3 正 誤 誤
4 誤 正 正
5 誤 正 誤
医療機関で治療を受けている人等への医薬品の使用に関する問題
bは、これまであまり問われているポイントではないが、常識的に判断できるでしょう。
a 正
b 誤 近年、生活習慣病等の慢性疾患を持ちながら日常生活を送る生活者が多くなっているが、疾患の種類や程度によっては一般用医薬品を使用することで、その症状が悪化したり、治療が妨げられることもある。
c 正
正解・・・2
問13
プラセボ効果(偽薬効果)に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待は関与しないと考えられている。
b 医薬品を使用したときにもたらされる反応や変化には、薬理作用によるもののほか、プラセボ効果によるものも含まれる。
c プラセボ効果は、主観的な変化だけでなく、客観的に測定可能な変化として現れることもあるが、不確実であり、それを目的として一般用医薬品が使用されるべきではない。
d プラセボ効果によってもたらされる反応や変化には、不都合なもの(副作用)はない。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
ほぼ毎年出題されているプラセボ(偽薬効果)に関する問題。
医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。プラセボ効果は、医薬品を使用したことによる楽観的な結果期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与していると考えられている。
a 誤 プラセボ効果は、医薬品を使用したこと自体による楽観的な結果への期待(暗示効果)も関与して生じると考えられている。
b 正
c 正
d 誤 プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)がある。
正解・・・3
問14
医薬品の品質に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 一般用医薬品は、家庭の常備薬として購入されることも多いため、外箱等に表示されている「使用期限」から十分な余裕をもって販売することが重要である。
b 医薬品の外箱等に表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限のことである。
c 医薬品に配合されている成分(有効成分及び添加物成分)には、高温や多湿によって品質の劣化(変質・変敗)を起こしやすいものが多いが、光(紫外線)によって品質の劣化を起こすものはない。
d 医薬品は、適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 正 誤 正 誤
3 正 正 誤 誤
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 誤 正
医薬品の品質に関する問題
a 正
b 正 表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。(出題されないが)例えば、子供向けのかぜ薬シロップの場合、開封後は冷蔵保存で2-3か月が期限の目安とされる。
c 誤 光(紫外線)等によっても、品質の劣化(変質・変敗)を起こしやすいもが多い。
d 正
正解・・・1
問15
医薬品医療機器等法第4条第5項第4号に規定されている一般用医薬品の定義に関する次の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せはどれか。
医薬品のうち、その効能及び効果において人体に対する作用が( a )ものであつて、薬剤師その他の医薬関係者から提供された情報に基づく( b )の選択により使用されることが目的とされているもの(( c )を除く。)をいう。
a b c
1 緩和な / 販売者 / 要指導医薬品
2 著しくない / 需要者 / 薬局医薬品
3 緩和な / 販売者 / 薬局医薬品
4 著しくない / 需要者 / 要指導医薬品
5 緩和な / 需要者 / 要指導医薬品
医薬品医療機器等法に規定されている一般用医薬品の定義に関する問題
なお、要指導医薬品については第4章でも良く出題されますが、特定販売(≒ネット販売)できないことも覚えておきたい。
a 著しくない
b 需要者
c 要指導医薬品
正解・・・4
問16
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションにおいて、医薬品の販売等に従事する専門家として留意すべき事項に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 医薬品の情報提供は、使用する人に誤認が生じないよう正確な専門用語を用い、相手によって表現を変えることのないよう注意して行う。
b 購入者等が、一般用医薬品を使用する状況は随時変化する可能性があるため、販売数量は一時期に使用する必要量とする等、販売時のコミュニケーションの機会が継続的に確保されるよう配慮することが重要である。
c 一般用医薬品については、必ずしも情報提供を受けた当人が医薬品を使用するとは限らないことを踏まえ、販売時のコミュニケーションを考える必要がある。
d 購入者等の状況を把握するため購入者等に尋ねる場合は、一般用医薬品の使用状況のみを簡潔に確認するよう努める必要がある。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 誤 誤 正
4 誤 正 正 誤
5 正 正 誤 誤
一般用医薬品の販売時におけるコミュニケーション及び留意事項に関する問題。
医薬品の販売等に従事する専門家が購入者等から確認しておきたい基本的なポイントは以下のような事項がある。
① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等側のニーズ、購入の動機)
② その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
③ その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
④ その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
⑤ その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
⑥ その医薬品を使用する人が相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品を摂取をしていないか
⑦ その医薬品がすぐに使用される状況にあるか
⑧ 症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか
a 誤 専門用語を分かりやすい平易な表現で伝えるなどの適切な情報提供を行う。
b 正
c 正
d 誤 一般用医薬品の使用状況のみではなく、購入の動機や、実際に使用する人は家族等も想定されるかなど、可能な限り、購入者等の個々の状況の把握に努めることが重要となる。
正解・・・4
問17
サリドマイド及びサリドマイド訴訟に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a サリドマイド訴訟は、サリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
b サリドマイド製剤は、一般用医薬品として販売されていたことはない。
c 1961年11月、西ドイツ(当時)のレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発し、日本では、同年中に速やかに販売停止及び回収措置が行われた。
d サリドマイドによる薬害事件をきっかけとして、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
薬害関連の問題は、前年に引き続き計4問出題されています。(2年前は3題)
まずはサリドマイド訴訟に関する問題。
これは、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用し、出生児に四肢欠損等の先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
a 正
b 誤 サリドマイド製剤、(スモン訴訟の)キノホルム製剤については、過去に一般用医薬品として販売されていた。
c 誤 日本では1961年12月に西ドイツ企業から勧告が届いており、翌年もその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視された。
d 正
正解・・・2
問18
スモン及びスモン訴訟に関する次の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せはどれか。
スモン訴訟は、( a )として販売されていた( b )を使用したことにより、( c )に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
a b c
1 整腸剤 キノホルム製剤 中毒性表皮壊死融解症
2 整腸剤 ペニシリン製剤 亜急性脊髄視神経症
3 解熱鎮痛剤 キノホルム製剤 亜急性脊髄視神経症
4 整腸剤 キノホルム製剤 亜急性脊髄視神経症
5 解熱鎮痛剤 ペニシリン製剤 中毒性表皮壊死融解症
次はスモン訴訟に関する問題。
整腸剤として販売されていたキノホルム製剤を使用したことにより、亜急性脊髄視神経症(スモン)に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
a 整腸剤
b キノホルム製剤
c 亜急性脊髄視神経症
正解・・・4
問19
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)訴訟に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 悪性貧血患者が、HIVが混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b HIV訴訟は、国のみを被告として提訴された。
c HIV訴訟の和解を踏まえ、国は、HIV感染者に対する恒久対策として、エイズ治療・研究開発センター及び拠点病院の整備や治療薬の早期提供等の様々な取り組みを推進してきている。
a b c
1 正 正 正
2 正 正 誤
3 正 誤 正
4 誤 誤 正
5 誤 正 誤
HIV訴訟に関する問題。
これは、血友病患者が、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
a 誤 「悪性貧血患者」ではなく「血友病患者」である。
b 誤 HIV訴訟は、国及び製薬企業を被告として提訴され、その後和解が成立した。
c 正
正解・・・4
問20
C型肝炎及びC型肝炎訴訟に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a C型肝炎訴訟は、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介して、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
b C型肝炎訴訟は、国及び製薬企業を被告として複数の地裁で提訴されたが、判決は、国及び製薬企業が責任を負うべき期間等について判断が分かれていた。
c C型肝炎ウイルス感染者の早期・一律救済の要請にこたえるべく、2008年1月に議員立法による特別措置法が制定、施行された。
d 「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」(平成22年4月28日薬害肝炎事件の検証及び再発防止のための医薬品行政のあり方検討委員会)を受け、医師、薬剤師、法律家、薬害被害者などの委員により構成される医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。
a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 誤 誤
4 正 正 誤 正
5 誤 誤 正 正
最後は、前年に出題されていなかったC型肝炎訴訟に関する問題(これはR4手引き改訂で追加された薬害です)
C型肝炎訴訟は出産や手術での大量出血などの際に特定のフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
なお、今回はクロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関してはメインで出題されなかったが、誤り選択肢として関連知識が登場している。
a 誤 これはC型肝炎訴訟ではなく、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)に関する内容である。
b 正
c 正 なお、C型肝炎訴訟については、現在、和解を進めている状況であることも覚えておくこと。出題される4つの薬害の中で、唯一C型肝炎訴訟だけ、和解が成立していない。
d 正
正解・・・1