広東地域(広東省、香港、マカオ)の人々は、一年を通じた高温多湿な気候から、体調や気候に応じた薬膳食材を巧みに組み合わせて毎日養生スープを飲むことで、体内の「湿(湿邪)」や「熱(熱邪)」を取り除き、病気を未然に防いで、身体を整えるという、「医食同源」に基づいた考え方・文化があります。
また、日常的に養生スープを飲むことは、「老火湯(ラオフォータンLǎohuǒtāng)」という言葉でも表され、広州市では、特にこの「老火湯」を提供するお店が沢山存在します。
そこで、今回はその中でも特に日本人にはインパクトのある薬膳食材を使ったスープを提供するお店を紹介しますが、訪れたのは、広州市中心部にある信行丰炖品皇(光孝路店)という1979年創業の老舗店で、特にサソリを使った養生スープがお薦めと、中国のウェブサイトでも紹介されていました。

ここでは、店頭のお品書きの札の多さからわかるとおり、様々な養生スープが提供されていますが、その中でも、土茯苓瘦肉炖龟蝎(亀とサソリの薬膳煮込みスープ)は、いわゆるゲテモノ系と思われがちなサソリや亀を使用したスープですが、これらは中医学の考えのもと使用されている薬膳食材です。
なお、亀については、主にクサガメなどの食用ガメが用いられていますが、肉だけでなく、亀の腹部(亀板)もスープの中に含まれています。

また、サソリはスープの中に5匹程入っており、恐る恐るかじって味見してみましたが、特別味は感じませんでした。なお、一緒に訪れたガイドさんの話だと、スープを飲むことが重要なので、食べる必要はないそうです。
スープ自体はわりと美味で何の抵抗もなく飲むことができましたが、色々なダシが効いているのか、飲むといかにも体にイイ感じはしてきます(個人の感想)。
なお、価格は2025.9訪問時で30元(約600円)と、こちらのお店の数あるメニュ―の中では割と高価なものになります。


ただし、スープの材料としては、なかなかグロテスクなので、やはり抵抗のある方は多いと思いますし、実際中国人の方でも苦手な方はいるそうです。
改めて、使用されている食材を確認しますが、主要な食材は4つあり
•土茯苓(ドブクリョウ): サルトリイバラ科の植物の根茎
•瘦肉(ショウロウ): 脂身の少ない豚の赤身肉
•龟(カメ): 食用ガメ(主にクサガメなど)の肉と亀板(甲羅ではなく腹側)
•全蝎(サソリ):乾燥させた食用サソリ
そのうち、土茯苓と亀については、いわゆる亀ゼリー(龟苓膏 guīlíng gāo)にも使用されている食材で、土茯苓は体内の余分な湿気を取り除き、亀(亀板)は滋養強壮や体を冷やす(清熱)効果があると言われています。
また、全蝎(サソリ)については、キョクトウサソリなどの毒を無毒化(茹でるなど)して乾燥させたもので、中医学では鎮痙・抗痙攣作用が最も代表的な薬効とされ、体内の「風(ふう)の邪気」を取り除く(去風)作用があるとされてます。
また、ガイドさんによると、夜中に何度もトイレにいくような方にも良いらしいです。なお、AIに聞くと、『広東の薬膳では「毒を以て毒を制する」という考えから、解毒やリウマチなどの関節痛、皮膚トラブルの改善によく使われる伝統的な食材です。』といった回答でしたが、但し、正直何に効果があるのか、イマイチわかりづらい生薬ですね。
ちなみに、サソリだけはどうしても苦手だという方には、この店には他にも様々な養生スープメニューがありますので、他のスープを頼んでみてもいいでしょう。どのメニューもお手頃価格ですので、薬膳料理に興味のある方には、個人的にはお勧めのお店です。


