R4 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第2章 人体の働きと医薬品(問31-40)

薬の吸収・分布、血中濃度(問34)は難しい。問32も新傾向

問31
医薬品の有効成分の吸収に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 一般に、消化管からの吸収は、濃度の高い方から低い方へ受動的に拡散していく現象である。

b 一般に、坐剤の有効成分は、直腸内壁の粘膜から吸収され、循環血液中に入り、初めに肝臓で代謝を受けてから全身に分布する。

c 点眼薬は、鼻涙管を通って鼻粘膜から吸収されることがある。

d 内服薬の中には、服用後の作用を持続させるため、有効成分がゆっくりと溶出するように作られているものもある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 誤 誤
4 誤 誤 正 誤
5 正 誤 正 正


医薬品の有効成分の吸収に関する問題。

a 正しい。
b 誤り。坐剤の場合、直腸内壁の粘膜から吸収され容易に循環血液中に入り、肝臓を経由せずに心臓に到るため、初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布する。また、(一般的に)内服の場合よりも全身作用が速やかに現れる特徴がある。
c 正しい。
d 正しい。

正解・・・5


問32
次の医薬品成分のうち、口腔粘膜からの吸収によって効果を発揮する医薬品に用いられている成分として、正しいものの組合せはどれか。

a アセトアミノフェン
b ニトログリセリン
c アスピリン
d ニコチン

1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)


有効成分が口腔粘膜から吸収されて全身作用を現すものとして、抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼剤)が、手引きに記載されている。

正解・・・4


問33
医薬品の有効成分の代謝及び排泄に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 腎機能が低下した人では、正常な人に比べて有効成分の尿中への排泄が早まるため、医薬品の効き目が十分に現れず、副作用も生じにくい。

b 多くの有効成分は血液中で血漿タンパク質と結合して複合体を形成しており、血漿タンパク質との結合は、速やかかつ不可逆的である。

c 消化管で吸収される有効成分を含む医薬品を経口投与した場合、肝機能が低下した人では、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより少なくなり、効き目が現れにくくなる。

d 小腸などの消化管粘膜にも、代謝活性があることが明らかにされている。

  a b c d
1 正 誤 誤 誤
2 誤 正 誤 誤
3 誤 誤 正 誤
4 誤 誤 誤 正
5 誤 誤 誤 誤


医薬品の有効成分の代謝及び排泄に関する問題。

a 誤り。 腎機能が低下した人では、有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。そのため、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすい
b 誤り。血漿タンパク質との結合は、速やかかつ可逆的(×不可逆的)である。
c 誤り。肝機能が低下した人では医薬品を代謝する能力が低いため、正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。
d 正しい。小腸などの消化管粘膜腎臓にも、代謝活性があることが明らかにされている。

正解・・・4


問34
医薬品の体内での働きに関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 循環血液中に移行した有効成分は、多くの場合、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合し、その機能を変化させることで薬効や副作用を現す。

b 血中濃度はある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は低下していくが、これは吸収・分布の速度が代謝・排泄の速度を上回るためである。

c 医薬品が効果を発揮するためには、有効成分がその作用の対象である器官や組織の細胞外液中あるいは細胞内液中に、一定以上の濃度で分布する必要がある。

d 全身作用を目的とする医薬品の多くは、使用後の一定期間、その有効成分の血中濃度が、最小有効濃度と毒性が現れる濃度域の間の範囲に維持されるよう、使用量及び使用間隔が定められている。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 正 正
3 正 誤 正 正
4 正 正 誤 正
5 正 正 正 誤


医薬品の体内での働きに関する問題。

a 正しい。
b 誤り。血中濃度はある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は低下していくが、これは代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回るためである。
c 正しい。
d 正しい。

正解・・・3


問35
医薬品の剤形に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 一般的に、錠剤(内服)は、胃や腸で崩壊し、有効成分が溶出することが薬効発現の前提となる。

b 口腔内崩壊錠は、薬効を期待する部位が口の中や喉に対するものである場合が多く、飲み込まずに口の中で舐めて、徐々に溶かして使用する。

c 経口液剤は、既に有効成分が液中に溶けたり分散したりしているため、服用後、比較的速やかに消化管から吸収されるという特徴がある。

d チュアブル錠は、口の中で舐めたり噛み砕いたりして服用する剤形であり、水なしでも服用できる。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 誤 誤 正 正
3 正 誤 誤 誤
4 誤 正 誤 正
5 正 正 誤 正


医薬品の剤形に関する問題。

a 正しい。
b 誤り。これは、トローチ・ドロップに関する記述。口腔内崩壊錠は、高齢者や乳幼児等が飲みやすいように、 口の中で溶かした後に唾液と一緒に容易に飲み込むことができる剤形。
c 正しい。
d 正しい。関連記事:チュアブル錠

正解・・・1


問36
ショック(アナフィラキシー)に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 発症後の進行が非常に速やかな(通常、2時間以内に急変する。)ことが特徴である。

b 医薬品が原因物質である場合、以前にその医薬品によって蕁麻疹等のアレルギーを起こしたことがある人で起きる可能性が高い。
c 生体異物に対する即時型のアレルギー反応の一種である。

d 発症すると病態は急速に悪化することが多く、適切な対応が遅れるとチアノーゼや呼吸困難等を生じ、死に至ることがある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 正 正
3 正 誤 正 正
4 正 正 誤 正
5 正 正 正 誤


ショック(アナフィラキシー)に関する問題。

a 正しい。
b 正しい。
c 正しい。
d 正しい。

正解・・・1


問37
偽アルドステロン症に関する以下の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組合せはどれか。

体内に( a )と水が貯留し、体から( b )が失われることによって生じる病態である。( c )からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態となることから、偽アルドステロン症と呼ばれている。
主な症状に、手足の脱力、( d )、筋肉痛、こむら返り、倦怠感、手足のしびれ、頭痛、むくみ(浮腫)、喉の渇き、吐きけ・嘔吐等があり、病態が進行すると、筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣等を生じる。

  a b c d
1 カリウム  ナトリウム  副腎皮質  血圧上昇
2 ナトリウム  カリウム  副腎皮質  血圧上昇
3 カリウム  ナトリウム  副腎皮質  血圧低下
4 ナトリウム  カリウム  副腎髄質  血圧低下
5 カリウム  ナトリウム  副腎髄質  血圧低下


偽アルドステロン症に関する問題。関連するカンゾウ(甘草)も合わせて学習しておきたい。

a ナトリウム
b カリウム
c 副腎皮質
d 血圧上昇

正解・・・2


問38
精神神経系に現れる医薬品の副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用、乳幼児への適用外の使用等の不適正な使用がなされた場合に限らず、通常の用法・用量でも発生することがある。

b 医薬品の副作用が原因の無菌性髄膜炎は、同じ医薬品を使用しても再発することはない。

c 精神神経障害では、中枢神経系が影響を受け、物事に集中できない、落ち着きがなくなる等のほか、不眠、不安、震え(振戦)、興奮、眠気、うつ等の精神神経症状を生じることがある。

d 心臓や血管に作用する医薬品の使用により、頭痛やめまい、浮動感、不安定感等が生じることがある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 正 正
3 正 誤 正 正
4 正 正 誤 正
5 正 正 正 誤


精神神経系に現れる医薬品の副作用に関する問題。

無菌性髄膜炎は髄膜炎のうち、髄液に細菌が検出されないものをいう。大部分はウイルスが原因と考えられている。主な症状は、急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等。近年は毎年出題されている。

a 正しい。
b 誤り。再度、同じ医薬品を使用することにより再発し、急激に症状が進行する場合がある。
c 正しい。
d 正しい。

正解・・・3


問39
循環器系及び泌尿器系に現れる医薬品の副作用に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a 心不全の既往がある人は、薬剤による心不全を起こしやすい。

b 不整脈の発症リスクは、代謝機能の低下によって高まることがあるので、腎機能や肝機能の低下、併用薬との相互作用等に留意するべきである。

c 排尿困難や尿閉の症状が現れるのは、前立腺肥大の基礎疾患のある男性に限られる。

d 排尿困難や尿閉の症状は、多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止するだけでは改善しにくい。

1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(b、d)


循環器系及び泌尿器系に現れる医薬品の副作用に関する問題。

a 正しい。
b 正しい。
c 誤り。男性に限らず女性においても報告されている。
d 誤り。多くの場合、原因となる医薬品の使用を中止することで症状は速やかに改善するが、医療機関における処置を必要とする場合もある。 
なお、医薬品の副作用による排尿困難・尿閉の記載のある成分としては、アドレナリン作動成分(前立腺肥大による排尿困難・尿閉)のプソイドエフェドリン塩酸塩や、マオウ含有漢方、クロルフェニラミンマレイン酸のような古いタイプの抗ヒスタミン成分、スコポラミン臭化水素酸塩水和物などの抗コリン成分などがある。

正解・・・1


問40
皮膚に現れる医薬品の副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 接触皮膚炎は、原因と考えられる医薬品の使用を中止すれば症状は治まり、再びその医薬品に触れても再発することはない。

b 外用薬による光線過敏症が現れた場合は、原因と考えられる医薬品の使用を中止して、皮膚に医薬品が残らないよう十分に患部を洗浄し、遮光して速やかに医師の診療を受ける必要がある。

c 薬疹は、あらゆる医薬品で起きる可能性があり、特に、発熱を伴って眼や口腔粘膜に異常が現れた場合は、急速に皮膚粘膜眼症候群や、中毒性表皮壊死融解症等の重篤な病態へ進行することがある。

d 薬疹は、それまで薬疹を経験したことがない人であっても、暴飲暴食や肉体疲労が誘因となって現れることがある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 正 誤 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 誤 誤 誤 正
5 誤 正 正 正


皮膚に現れる医薬品の副作用に関する問題。
接触皮膚炎は、いわゆる「肌に合わない」という状態で、医薬品が触れた皮膚の部分にのみ生じ、正常な皮膚との境界がはっきりしているのが特徴(例:一般的な湿布かぶれ)。なお、アレルギー性皮膚炎は発症部位は医薬品の接触部位に限定されない

a 誤り。手引きでは「通常は1週間程度で症状は治まるが、再びその医薬品に触れると再発する」と記載されており誤り。
b 正しい。なお、光線過敏症の恐れのある成分としてケトプロフェンも合わせて押さえておきたい。
c 正しい。なお、重篤な副作用皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)及び中毒性表皮壊死融解症(TEN)の違いはしっかり押さえておく。
d 正しい。

正解・・・5

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