R5 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第2章 人体の働きと医薬品(問31-40)

容易に「誤り」と判断できる極端な表現の選択肢が多く、易しめである。

問31
脳や神経系の働きに関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a 脊髄には、心拍数を調節する心臓中枢、呼吸を調節する呼吸中枢がある。

b 延髄は、多くの生体の機能を制御する部位であるが、複雑な機能の場合はさらに上位の脳の働きによって制御されている。

c 末梢神経系は、随意運動、知覚等を担う体性神経系と、消化管の運動や血液の循環等のように生命や身体機能の維持のため無意識に働いている機能を担う自律神経系に分類される。

d 副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はノルアドレナリンである。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)


脳や神経系の働きに関する問題
関連記事:末梢神経系(自律神経、体性神経系)で、交感神経・副交感神経系や、神経伝達物資の違いなどを確認を。

交感神経系=体が闘争や恐怖等の緊張状態に対応した態勢をとるように働く
副交感神経=体が食事や休憩等の安息状態となるように働く

a 誤 「脊髄」ではなく「延髄」に関する記述である。
b 正
c 正
d 誤 「副交感神経」ではなく「交感神経」に関する記述である。なお、副交感神経の節後線維の末端から放出される神経伝達物質はアセチルコリンである。

正解・・・3


問32
医薬品の有効成分の吸収及び代謝に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 内服以外の用法で使用される医薬品には、適用部位から有効成分を吸収させて、全身作用を発揮させることを目的とするものがある。

b 鼻腔粘膜の下には毛細血管が豊富なため、点鼻薬の成分は循環血液中に移行しやすく、初めに肝臓で代謝を受けて全身に分布する。

c 咽頭の粘膜に適用する含嗽薬(うがい薬)は、その多くが唾液や粘液によって食道へ流れてしまうため、咽頭粘膜からの吸収が原因で全身的な副作用が起こることは少ない。

d 有効成分が皮膚から浸透して体内の組織で作用する医薬品の場合は、浸透する量は皮膚の状態、傷の有無やその程度による影響を受けない。

  a b c d
1 正 誤 正 誤
2 誤 誤 誤 正
3 誤 正 正 誤
4 正 誤 誤 誤
5 正 正 誤 正


医薬品の有効成分の吸収及び代謝に関する問題

a 正 なお、有効成分が口腔粘膜から吸収されて全身作用を現すものとして、抗狭心症薬のニトログリセリン(舌下錠、スプレー)や禁煙補助薬のニコチン(咀嚼剤)が、手引きに記載されている。
b 誤 一般用医薬品には全身作用を目的とした点鼻薬はなく、鼻腔粘膜への局所作用を目的として用いられるが、点鼻薬の成分は循環血液中に移行しやすく、(坐剤等の場合と同様に)初めに肝臓で代謝を受けることなく全身に分布するため、全身性の副作用を生じることがある
c 正
d 誤 浸透する量は皮膚の状態、傷の有無やその程度などによって影響を受ける。 

正解・・・1


問33
医薬品の有効成分の代謝及び排泄に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 医薬品の有効成分が代謝を受けると、作用を失ったり(不活性化)、作用が現れたり(代謝的活性化)、あるいは体外へ排泄されやすい脂溶性の物質に変化したりする。

b 肝機能が低下した人では、医薬品を代謝する能力が低いため、一般的には正常な人に比べて全身循環に到達する有効成分の量がより多くなり、効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする。

c 医薬品の有効成分は未変化体のままで、あるいは代謝物として、体外に排出されるが、肺から呼気中に排出されることはない。

d 腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が早まるため、医薬品の効き目が十分に現れず、副作用も生じにくい。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 誤 正 誤 誤
5 正 誤 誤 正


医薬品の有効成分の代謝及び排泄に関する問題

a 誤 後半部分が誤り。代謝により、体外へ排泄されやすい「水溶性」の物質に変化したりする。
b 正
c 誤 医薬品の有効成分は、肺から呼気中に排出されることもある。
d 誤 腎機能が低下した人では、正常の人よりも有効成分の尿中への排泄が遅れ、血中濃度が下がりにくい。そのため、医薬品の効き目が過剰に現れたり、副作用を生じやすくなったりする

正解・・・4


問34
医薬品の体内での働きに関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 医薬品を十分な間隔をあけずに追加摂取して血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり、有害な作用(副作用や毒性)も現れにくくなる。

b 有効成分の血中濃度は、ある時点でピーク(最高血中濃度)に達し、その後は低下していくが、これは代謝・排泄の速度が吸収・分布の速度を上回るためである。

c 全身作用を目的とする医薬品の多くは、使用後の一定期間、その有効成分の血中濃度が、最小有効濃度と毒性が現れる濃度域の間の範囲に維持されるよう、使用量及び使用間隔が定められている。

d 循環血液中に移行した有効成分は、血流によって全身の組織・器官へ運ばれて作用するが、多くの場合、標的となる細胞に存在する受容体、酵素、トランスポーターなどのタンパク質と結合し、その機能を変化させることで薬効や副作用を現す。

  a b c d
1 誤 誤 誤 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 誤
4 正 正 誤 誤
5 誤 正 正 正


医薬品の体内での働きに関する問題

a 誤 後半部分が誤り。(一度に大量の医薬品を摂取する等)血中濃度を高くしても、ある濃度以上になるとより強い薬効は得られなくなり、薬効は頭打ちとなるが、一方で、有害な作用(副作用や毒性)は現れやすくなる
b 正
c 正
d 正
なお、トランスポーターとは、細胞膜に埋め込まれて存在する膜貫通タンパク質で、細胞膜の外側から内側へ物質を選択的に運ぶ働きを持ちます。医薬品の有効成分について、血漿タンパク質と結合した複合体の状態では、このトランスポーターで輸送されないとされています。

正解・・・5


問35
医薬品の剤形及び適切な使用方法に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 錠剤(内服)は、胃や腸で崩壊し、有効成分が溶出することが薬効を発現する前提となるため、例外的な場合を除いて、口中で噛み砕いて服用してはならない。

b トローチ剤は、有効成分が口腔内や咽頭部に行き渡るよう、口中に含み、噛まずにゆっくり溶かすようにして使用される。

c 外用局所に適用する剤形のうち、一般的に適用部位を水から遮断したい場合には、クリーム剤ではなく軟膏剤を用いることが多い。

d カプセル剤は、カプセル内に薬剤を充填した剤形であり、水なしで服用すると、カプセルの原材料として広く用いられているゼラチンが喉や食道に貼り付くことがある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 誤 正 誤
3 正 正 誤 正
4 正 誤 誤 誤
5 誤 誤 正 正


医薬品の剤形及び適切な使用方法に関する問題

a 正 なお、口の中で噛み砕く剤形としてチュアブル錠がある。
b 正 なお、ドロップも同様である。
c 正 水から遮断したい場合は軟膏が適する。軟膏とクリーム剤の違いを参照を
d 正 なお、ゼラチンはカプセルの原材料として広く用いられているため、アレルギーを持つ人は使用を避けるなどの注意が必要である。

正解・・・1


問36
皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)及び中毒性表皮壊死融解症(TEN)に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 皮膚粘膜眼症候群は、発症機序の詳細が不明であり、また、発症の可能性がある医薬品の種類も多いため、発症の予測は極めて困難である。

b 皮膚粘膜眼症候群は、38℃以上の高熱を伴って、発疹・発赤、火傷様の水疱等の激しい症状が比較的短時間のうちに全身の皮膚、口、眼等の粘膜に現れる病態である。

c 皮膚粘膜眼症候群又は中毒性表皮壊死融解症の前兆として、両眼に現れる急性結膜炎(結膜が炎症を起こし、充血、目やに、流涙、痒み、腫れ等を生じる病態)は、皮膚や粘膜の変化とほぼ同時期又は半日~1日程度先行して生じることが知られている。

d 皮膚粘膜眼症候群と中毒性表皮壊死融解症は、原因医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多く、1ヶ月以上経ってから起こることはない。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 誤 正 誤 正
3 正 正 正 誤
4 正 誤 誤 誤
5 誤 誤 正 誤


全身的に現れる医薬品の副作用に関する問題。
重篤な副作用皮膚粘膜眼症候群(スティーブンス・ジョンソン症候群)及び中毒性表皮壊死融解症(TEN)の違いはしっかり押さえておく。

a 正
b 正 なお、中毒性表皮壊死融解症は(皮膚粘膜眼症候群と関連のある病態と考えられており)、38℃以上の高熱を伴って広範囲の皮膚に発赤が生じ、全身の10%以上に火傷様の水疱、皮膚の剥離、びらん等が認められ、かつ、口唇の発赤・びらん、眼の充血等の症状を伴う病態で、症例の多くが皮膚粘膜眼症候群の進展型とみられている。
c 正
d 誤 後半部分が誤り。いずれも原因医薬品の使用開始後2週間以内に発症することが多いが、1ヶ月以上経ってから起こることもある。 

正解・・・3


問37
医薬品の副作用として現れる肝機能障害に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 医薬品により生じる肝機能障害は、有効成分又はその代謝物の直接的肝毒性が原因で起きる中毒性のものと、有効成分に対する抗原抗体反応が原因で起きるアレルギー性のものに大別される。

b 黄疸は、ビリルビン(黄色色素)が血液中へ排出されず、胆汁中に滞留することにより生じる。

c 軽度の肝機能障害の場合、自覚症状がなく、健康診断等の血液検査(肝機能検査値の悪化)で初めて判明することが多い。

d 肝機能障害が疑われた場合、原因と考えられる医薬品を使用し続けても、不可逆的な病変(肝不全)を生じることはない。

  a b c d
1 正 正 正 誤
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 正 正 誤 正
5 誤 誤 正 正


医薬品の副作用として現れる肝機能障害に関する問題

a 正
b 誤 黄疸とは、ビリルビン(黄色色素)が胆汁中へ排出されず血液中に滞留することにより生じる、皮膚や白眼が黄色くなる病態である。
c 正
d 誤 漫然と原因と考えられる医薬品を使用し続けると、不可逆的な病変(肝不全)を生じ、死に至ることもある。

正解・・・3


問38
医薬品の副作用として現れる偽アルドステロン症に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加することにより生じる。

b 主な症状に、手足の脱力、血圧上昇、筋肉痛、こむら返り、手足のしびれ、むくみ(浮腫)等がある。

c 病態が進行すると、筋力低下、起立不能、歩行困難、痙攣等を生じる。

d 複数の医薬品や、医薬品と食品との間の相互作用によって起きることがある。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 誤 正 誤 正
3 誤 誤 正 誤
4 正 正 誤 誤
5 誤 正 正 正


偽アルドステロン症に関する問題。関連するカンゾウ(甘草)も合わせて学習しておきたい。
偽アルドステロン症とは、体内に塩分(ナトリウム)と水が貯留し、体からカリウムが失われることによって生じる病態である。
副腎皮質からのアルドステロン分泌が増加していないにもかかわらずこのような状態となることから、アルドステロン症と呼ばれている。

a 誤 上記のとおり。
b 正
c 正
d 正

正解・・・5


問39
医薬品の副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 医薬品の使用が原因で血液中の白血球(好中球)が減少し、細菌やウイルスの感染に対する抵抗力が弱くなって、突然の高熱、悪寒、喉の痛み、口内炎、倦怠感等の症状を呈することがある。

b 医薬品の使用が原因で血液中の血小板が減少し、鼻血、歯ぐきからの出血、手足の青あざ(紫斑)等の症状が現れることがある。

c 精神神経症状は、医薬品の大量服用や長期連用、乳幼児への適用外の使用等の不適正な使用がなされた場合に限られ、通常の用法・用量では発生しない。

d 無菌性髄膜炎は、大部分はウイルスが原因と考えられているが、マイコプラズマ感染症やライム病、医薬品の副作用等によって生じることもある。

  a b c d
1 誤 誤 正 正
2 誤 正 正 正
3 正 誤 正 誤
4 正 正 誤 正
5 正 正 誤 誤


医薬品の副作用に関する問題

a 正
b 正
c 誤 通常の用法・用量でも発生することがある。なお、これに関連して出題される成分として、止瀉成分のビスマスも確認しておきたい。
d 正 無菌性髄膜炎は髄膜炎のうち、髄液に細菌が検出されないものをいう。大部分はウイルスが原因と考えられている。主な症状は、急性で、首筋のつっぱりを伴った激しい頭痛、発熱、吐きけ・嘔吐、意識混濁等。近年は毎年のように出題されている。

正解・・・4


問40
循環器系に現れる副作用に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a うっ血性心不全とは、心筋の自動性や興奮伝導の異常が原因で心臓の拍動リズムが乱れる病態である。

b 息切れ、疲れやすい、足のむくみ、急な体重の増加、咳とピンク色の痰などを認めた場合は、うっ血性心不全の可能性が疑われる。

c 医薬品を適正に使用している場合は、動悸(心悸亢進)や一過性の血圧上昇、顔のほてりを生じることはない。

d 心不全の既往がある人は、薬剤による心不全を起こしやすい。

  a b c d
1 正 誤 正 正
2 正 正 正 誤
3 誤 誤 誤 正
4 正 正 誤 誤
5 誤 正 誤 正


循環器系に現れる副作用に関する問題

a 誤 これは「うっ血性心不全」ではなく「不整脈」に関する記述である。
b 正
c 誤 医薬品を適正に使用していても、動悸などを生じることがある。
d 正

正解・・・5

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