H30 福岡県(九州地区・沖縄共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問71-80)
問80(外用痔疾患用薬)は幅広い知識が求められる
問71
整腸薬及び止瀉薬に用いられる成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア トリメブチンマレイン酸塩は、抗菌作用を有しており、細菌感染による下痢の症状を鎮めることを目的として用いられる。
イ 乳酸カルシウムは、腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめることにより、腸粘膜を保護する。
ウ ロペラミド塩酸塩は、腸管の運動を低下させる作用を示し、水分や電解質の分泌を抑える作用もあるとされる。
エ ベルべリン塩化物に含まれるベルベリンは、生薬のオウバクやオウレンの中に存在する物質のひとつであり、抗菌作用のほか、抗炎症作用も併せ持つとされる。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 正
2 正 誤 誤 誤
3 誤 正 正 誤
4 誤 誤 正 正
5 誤 誤 誤 正
整腸薬及び止瀉薬に用いられる成分に関する問題。
ア 誤り。トリメブチンマレイン酸塩は消化管(胃及び腸)の平滑筋に直接作用し、消化管の運動を調整する。抗菌作用はない。
イ 誤り。これば収斂成分(ビスマスを含む成分やタンニン酸アルブミンなど)に関する内容である。
ウ 正しい。ロペラミド塩酸塩は代表的な止瀉薬成分。なお、食あたりや水あたりによる下痢(感染性胃腸炎)が疑われる場合は適応対象ではない点は頻出である。市販薬ではトメダインが有名。
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エ 正しい。ベルベリンに関する内容である。
正答・・・4
問72
瀉下薬に用いられる成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア ヒマシ油は、大腸でリパーゼの働きによって生じる分解物が、大腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられている。
イ センノシドは、胃や小腸で消化されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激して瀉下作用をもたらすと考えられている。
ウ カルメロースナトリウムは、大腸のうち特に結腸や直腸の粘膜を刺激して、排便を促すと考えられている。
エ ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は、腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられる。
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
瀉下薬(便秘薬)に用いられる成分に関する問題。
膨潤性瀉下成分(カルメロースナトリウム)の出題頻度は高くないが、他の成分は良く出題されているので正答できるように。
ア 誤り。×大腸→〇小腸。ヒマシ油は小腸刺激性の瀉下成分(但し、現在殆ど使用されることはない)。試験では駆虫薬の分野で良く登場する。
イ 正しい。センノシドは代表的な大腸刺激性瀉下成分。センノシドについては、妊婦又は妊娠していると思われる女性、授乳婦(乳児が下痢する恐れ)は使用を避ける点も押さえておこう。
ウ 誤り。カルメロースナトリウムは膨潤性瀉下成分。腸管内で水分を吸収して腸内容物に浸透し、糞便のかさを増して柔らかくする。
エ 正しい。ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)は腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、糞便中の水分量を増して柔らかくする。
正答・・・3
問73
胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される成分に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 抗コリン成分の副作用として、散瞳による目のかすみや異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛、眠気、口渇、便秘、排尿困難等が現れることがある。
2 オキセサゼインは、消化管の粘膜及び平滑筋に対する麻酔作用による鎮痛鎮痙の効果を期待して、配合されている場合がある。
3 パパベリン塩酸塩は、胃腸の痙攣を鎮める作用を示すほか、胃液分泌を抑える作用を示すとされている。
4 鎮痛鎮痙作用を期待して、エンゴサク、シャクヤクが配合されている場合がある。
胃腸鎮痛鎮痙薬に配合される成分に関する問題。なお、今回は出題されていないがブチルスコポラミン臭化物や、アミノ安息香酸エチルについて問われる事が多い。
1 正しい。
2 正しい。
3 誤り。パパベリン塩酸塩は。抗コリン成分と異なり、胃液分泌を抑える作用はないとされる。
4 正しい。エンゴサク(延胡索)・シャクヤク(芍薬)は、例えば大正漢方胃腸薬(安中散+芍薬甘草湯)に配合されている。
正答・・・3
問74
駆虫薬及びその配合成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用し、虫卵や腸管内以外に潜伏した幼虫(回虫の場合)には駆虫作用が及ばない。
イ ピペラジンリン酸塩は、蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされる。
ウ カイニン酸は、回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。
エ 駆除した虫体や腸管内に残留する駆虫成分の排出を促すため、瀉下薬としてヒマシ油を併用することが推奨される。
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
現在は殆ど販売機会のない駆虫薬に関する問題。ヒマシ油と駆虫薬の併用を避ける内容は度々出題されている。
ア 正しい。
イ 誤り。ピペラジンリン酸塩は、アセチルコリン伝達を妨げて、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。
ウ 正しい。カイニン酸に関する内容。
エ 誤り。なぜか頻出の駆虫薬・ヒマシ油に関する内容。現在、駆虫薬・ヒマシ油ともに使用されることは殆どないが、手引きの記載は以下の通りです。
「駆除した虫体や腸管内に残留する駆虫成分の排出を促すため瀉下薬が併用されることがあるが、ヒマシ油を使用すると腸管内で駆虫成分が吸収されやすくなり、副作用を生じる危険性が高まるため、ヒマシ油との併用は避ける必要がある。」
正答・・・2
問75
心臓などの器官や血液に作用する薬及びその配合成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 強心薬は、疲労やストレス等による軽度の心臓の働きの乱れについて、心臓の働きを整えて、動悸や息切れ等の症状の改善を目的とする医薬品である。
イ センソは、ヒキガエル科のシナヒキガエル等の毒腺の分泌物を集めたものを基原とする生薬で、微量で強い強心作用を示す。
ウ ユウタンは、ウシ科のウシの胆嚢中に生じた結石を基原とする生薬で、強心作用のほか、末梢血管の拡張による血圧降下、興奮を静める等の作用があるとされる。
エ 苓桂朮甘湯は、強心作用と尿量増加(利尿)作用が期待される生薬が含まれており、水毒(漢方の考え方で、体の水分が停滞したり偏在して、その循環が悪いことを意味する。)の排出を促す。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
主に強心薬に関する問題。具体的な製品として「救心」や「六神丸」に関するものである。
エの苓桂朮甘湯は細かい点が問われおり、知らなくてもしょうがない。
ア 正しい。これはゴオウ(牛黄)に関する内容。
イ 正しい。センソに関する内容。有効域が比較的狭い成分であり、一般用医薬品での「1日用量5mg 以下」については数字も押さえておく。
ウ 誤り。
エ 誤り。 苓桂朮甘湯には強心作用が期待される生薬は含まれていない。後半部分は手引きのとおり
なお、手引きの記述は以下のとおりで、一般にめまいや耳鳴り向けの漢方薬として知られている。
「体力中等度以下で、めまい、ふらつきがあり、ときにのぼせや動悸があるも のの立ちくらみ、めまい、頭痛、耳鳴り、動悸 、息切れ、神経症、神経過敏に適すとされる。強心作用が期待される生薬は含まれず、主に尿量増加(利尿)作用により、水毒の排出を促すことを主眼とする」
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正答・・・1
問76
高コレステロール改善薬及びその配合成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 高コレステロール改善薬は、結果的に生活習慣病の予防につながるものであるが、ウエスト周囲径(腹囲)を減少させるなどの痩身効果を目的とする医薬品ではない。
イ リボフラビンの摂取によって尿が黄色くなった場合、使用を中止する必要がある。
ウ ビタミンEは、コレステロールの生合成抑制と排泄・異化促進作用、中性脂肪抑制作用、過酸化脂質分解作用を有すると言われている。
エ ポリエンホスファチジルコリンは、コレステロールと結合して、代謝されやすいコレステロールエステルを形成するとされ、肝臓におけるコレステロールの代謝を促す効果を期待して用いられる。
ア イ ウ エ
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 誤 誤 正 誤
5 誤 誤 誤 正
高コレステロール改善薬及びその配合成分に関する問題。
ウ、エは細かい所を聞かれているが、ア・イだけ判断できれば正答できるので容易。
ア 正しい。
イ 誤り。リボフラビン(ビタミンB2)に関する内容。使用の中止を要する副作用等の異常ではない。
ウ 誤り。これはビタミンB2に関する内容。ビタミンEは、コレステロールからの過酸化脂質の生成を抑えるほか、末梢血管における血行を促進する作用があるとされる。
エ 正しい。ポリエンホスファチジルコリンは高コレステロール改善成分。出題頻度・重要度も低いので、時間がなければ深追いしなくて良いでしょう。
正答・・・2
問77
貧血用薬に関する以下の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 フマル酸第一鉄は、鉄欠乏性貧血に対して不足している鉄分を補充し、造血機能の回復を図る医薬品である。
2 コバルトは、赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンCの構成成分であり、骨髄での造血機能を高める目的で、硫酸コバルトが配合されている場合がある。
3 鉄製剤を服用し便が黒くなった場合、使用を中止する必要がある。
4 鉄製剤服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が促進される。
貧血用薬に関する問題。基本的な知識ばかりなので、この程度は正答できるように。
1 正しい。
2 誤り。コバルトは赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12 の構成成分である。後半部分は正しい。
3 誤り。鉄製剤を服用すると便が黒くなることがあるが、副作用ではない。
4 誤り。鉄剤とタンニン酸を含む飲食物を時間をあけず摂取すると、タンニン酸を反応して鉄の吸収が悪くなるとされている。(但し、実際には影響は小さく、それ程気にしなくても良いとも言われている。)
正答・・・1
問78
循環器用薬の配合成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア ユビデカレノンは、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける成分で、摂取された栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンCとともに働く。
イ コウカは、末梢の血行を促して鬱血を除く作用があるとされる。
ウ ルチンは、ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。
エ 七物降下湯は、構成生薬としてダイオウを含み、本剤を使用している間は、瀉下薬の使用を避ける必要がある。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 誤
3 誤 正 正 誤
4 誤 誤 正 誤
5 誤 誤 誤 正
循環器用薬に関する問題。一般用医薬品ではピンとこない分野だが、ユビデカレノン(別名:コエンザイムQ10)は頻出。また、三黄瀉心湯、七物降下湯はメジャーな漢方薬ではないので、直前期であれば深追いしない。
ア 誤り。×ビタミンC→〇ビタミンB群
イ 正しい。
ウ 正しい。ルチンはビタミン類似物質。OTCでは「ルチン養命丸」という製品がある。なお機能性表示食品で良く耳にするルテインとは別者なので注意。
エ 誤り。七物降下湯はダイオウを含まない。なお、この分野で登場する三黄瀉心湯はダイオウを含む。
正答・・・3
問79
痔及び痔疾用薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 痔は、肛門付近の血管が鬱血し、肛門に負担がかかることによって生じる肛門の病気の総称である。
イ 歯状線より上部の直腸粘膜にできた痔核を内痔核と呼び、直腸粘膜の知覚神経によって痛みを感じる。
ウ 乙字湯は、体力中等度以上で大便が硬く、便秘傾向のあるものの痔核(いぼ痔)、切れ痔、便秘、軽度の脱肛に適すとされる。
エ 内用痔疾用薬は、比較的緩和な抗炎症作用、血行改善作用を目的とする成分のほか、瀉下・整腸成分等が配合されており、外用痔疾用薬と併せて用いると効果的である。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 誤
3 正 誤 正 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤
痔及び痔疾用薬に関する問題。
ア 正しい。
イ 誤り。前半部分は正しいが、後半が誤り。直腸粘膜には知覚神経が通っていないため、自覚症状が少ない。
ウ 正しい。乙字湯に関する内容。
エ 正しい。なお、内用痔疾用薬としては「内服ボラギノールEP」がある。
正答・・・3
問80
外用痔疾用薬に配合される成分に関する以下の記述のうち、正しいものを一つ選びなさい。
1 リドカイン塩酸塩は、皮膚や粘膜などの局所に適用されると、その周辺の知覚神経に作用して刺激の伝達を不可逆的に遮断する作用を示し、痔に伴う痛みや痒みを和らげる。
2 アラントインは、血管収縮作用による止血効果を期待して配合されるアドレナリン作動成分である。
3 局所への穏やかな刺激によって痒みを抑える効果を期待して、熱感刺激を生じさせるカンフルが配合されることがある。
4 粘膜の保護・止血を目的とするタンニン酸と、鎮痛鎮痙作用を示すロートエキスとを組み合わせて用いられることもある。
外用痔疾用薬に配合される成分に関する問題。幅広い知識が求められている。
1 誤り。リドカインは局所麻酔成分。×不可逆的⇒〇可逆的
2 誤り。アラントインは 組織修復成分。
3 誤り。熱感刺激ならクロタミトン。カンフルは冷感刺激である。
4 正しい。あまり問われてい内容なので消去法的に選べるように。
正答・・・4