漢方薬 本来の服用法・剤形について
漢方薬の名称の末尾は、大抵 「湯」、「散」、「丸」になっています。
エキス製剤が主流の現代ではピンときませんが、これらはそれぞれの漢方薬の本来の服用方法・剤形をあらわしていると考えて、ほぼ差支えありません。
①「湯」・・・湯剤(煎剤)
複数の生薬を水などに浸し、一定時間煎煮したのちに、煎じ液を服用する剤形です。
剤形としては最も主流ですが、個々の患者の症状に合わせて構成生薬の加減もできる利点がありました。
しかし、古代では、煎じ後の持ち運びや保存に不便がありました。
なお、知名度も高くOTCでも販売しやすい感冒用漢方薬には、「麻黄湯」、「葛根湯」、「桂枝湯」、「麻黄附子細辛湯」等、「湯」がついたものが多いありますが、エキス製剤を白湯に溶いて服用すると、本来の服用方法である湯剤に近づき、より効果的であるといわれています。
②「散」・・・散剤
乾燥させた薬物を粉末にして混合したものを、直接もしくは水で煎じて服用する剤形です。
古代では持ち運びが便利というメリットがありました。
代表例では、「五苓散」、「加味逍遥散」、「当帰芍薬散」等があります。
③「丸」・・・丸剤
薬物を粉末にし、はち蜜・水・米糊等を賦形剤として加えることで、固形にしたものです。
特に蜂蜜を用いた蜜丸が多く、代表的なものとして「六味丸」「八味地黄丸」「桂枝茯苓丸」等があげられます。
また、蜂蜜自体も、気を補う作用があるといわれています。
効果も、煎剤に比べて緩和であり、慢性病によく用いられる剤形だったそうです。
↓八味地黄丸(ウチダ)
なお、「桂枝茯苓丸料」というように、「料」で終わっている名称もありますが、これは丸剤や散剤を湯剤として使用していることを意味しています。
④「飲」「飲子」
「飲」は本来冷服するのが好ましい方剤につけられています。さらに「飲子」は経過を見ながら少量ずつ冷服することを表すとされています。
例えば、「温清飲」、「当帰飲子」などの熱症向けの漢方薬につけられていますが、数は多くありません。
OTC販売で説明が求められるレベルではありませんが、知識として押さえておくと良いでしょう。
⑤エキス製剤
医療用、一般用医薬品ともに主流の剤形です。原料生薬から湯剤と同様に抽出液を取り出し、濃縮、乾燥、粉状にしたのち、乳糖やデンプンを加え、顆粒や細粒状にしたものです。
とにかく保存性や携行性が良く、簡単に服用できるため、手軽に漢方薬を服用することができます。一方で構成生薬や処方量が変更できない為、本格的なオーダーメイド治療には不向きです。
一般用医薬品を取り扱う場合、殆どがのエキス製剤ですが、このように本来剤形の意味を知っていると、販売現場でも役立つかもしれません。
(参考資料)
・中医臨床のための方剤学 神戸中医学研究会編著(医歯薬出版)