H26 新潟県(北関東・甲信越) 第3章主な医薬品とその作用(問81-90)
問85(胃腸鎮痛鎮痙薬)は難しい。
【問81】 次の漢方処方製剤のうち、胃の不調を改善する目的で用いられるものの組み合わせはどれか。
1 安中散、人参湯、六君子湯
2 牛車腎気丸、八味地黄丸、六味丸
3 疎経活血湯、 釣藤散
4 猪苓湯、 竜胆瀉肝湯
5 温経湯、桂枝茯苓丸、四物湯
漢方薬に関しては、種類が多いので慣れていない人は最初覚えるのが大変だが、これぐらいはすぐに解けるようにしたいレベル。
1 正しい。すべて胃の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤である。安中散は「食べる前に飲む」のキャッチで有名な「大正漢方胃腸薬」に含まれる。六君子湯は一般用医薬品での知名度は高くないが、医療用では良く用いられている。
正答・・・1
【問82】 胃腸に作用する薬とその成分に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 医薬部外品として製造販売されている製品もあるが、それらは人体に対する作用が緩和なものとして、配合できる成分やその上限量が定められている。
b オウバク、ケイヒ等の生薬成分を配合した健胃薬は、味や香りが強いため、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用することが適当である。
c セトラキサート塩酸塩は、体内で代謝されてトラネキサム酸を生じることから、血栓を起こすおそれのある人では、出血傾向が強まるおそれがある。
d ウルソデオキシコール酸は、胆汁の分泌を促す作用があるとされ、消化を助ける効果を期待して用いられる。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)
胃腸薬に関する問題。医薬部外品の知識も問われている。
a 正しい。特に、かつての医薬品から移行したものは「指定医薬部外品」と呼ぶ。具体例としては「エスエス胃腸顆粒」等。ケイヒ末、カンゾウ末、アルジオキサ等が一定量含まれる。コンビニで見かけることもあるでしょう。
b 誤り。一見正しそうだが誤りなので注意。ある程度漢方薬販売に携わったことがあれば知っている知識。漢方生薬には、味覚や嗅覚を刺激して反射的な唾液や胃液の分泌を促すことにより、弱った胃の働きを高めることも期待されるものもある。(健胃薬ではオウバク、オウレン、ケイヒ等)
その為、オブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法は効果上適当でない。(但し、介護・医療現場では無理がある場合も)
c 誤り。なぜか良く出題されているポイント。「セトラキサート塩酸塩は体内で代謝されてトラネキサム酸を生じる」という記述は正しい。後半の出血傾向増加というのは誤り。トラネキサム酸は生じた血栓が分解されにくくする恐れがある。
d 正しい。ウルソデオキシコール酸に関する内容である。
正答・・・3
【問83】 ロペラミド塩酸塩が配合された一般用医薬品の止瀉薬に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 食あたりや水あたりによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢については適用対象ではない。
b 15 歳未満の小児に適用がない。
c 効き目が強すぎて便秘が現れることがあり、まれに重篤な副作用としてイレウス様症状を生じることがある。
d 吸収された成分が乳汁中に移行することはないため、使用期間中に授乳を避ける必要はない。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 誤 正
4 誤 誤 正 正
5 誤 正 正 誤
ロペラミドは頻出の止瀉薬なので、毎年必ず出題されるつもりで学習を。
a 誤り。食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いられ、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない。細菌・ウイルス等の感染性が疑われる時は、水様便は体内に留めず、出した方が良いという考え。
b 正しい。
c 正しい。医療現場でも飲みすぎて便秘した例を聞いたことがある。
d 誤り。ロペラミドは吸収された成分の一部が乳汁中に移行することが知られており、授乳中は使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける。
正答・・・5
【問84】 瀉下成分に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a センノシドは、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激することによって瀉下作用をもたらすと考えられている。
b センナは、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれがあるため、妊婦または妊娠していると思われる女性では、使用を避けるべきである。
c ヒマシ油は、小腸でリパーゼによって生じる分解物が、小腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられている。
d ヒマシ油は、主に誤食・誤飲等による中毒の場合など、腸管内の物質をすみやかに体外に排除する場合に用いられるが、防虫剤や殺鼠剤等の脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要がある。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 誤
3 誤 正 誤 正
4 誤 誤 正 誤
瀉下成分に関する問題。
a 正しい。代表的な大腸刺激性瀉下成分の一つ。センノシドは胃や小腸で消化されないが、大腸に生息する腸内細菌によって分解され、分解生成物が大腸を刺激して瀉下作用をもたらすと考えられている。
b 正しい。センナ・センノシドは妊婦に控える他、乳汁移行するため、授乳中も控えることも一緒に覚えておく。
c 正しい。なぜかヒマシ油は頻出である。小腸刺激性瀉下成分であり、一般用医薬品での適応は「腸内容物の急速な排除」となっている。
d 正しい。ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出して、中毒症状を増悪させるおそれがある。他に駆虫薬と一緒に使用してはいけない点も良く問われている。
正答・・・1
【問85】 胃腸鎮痛鎮痙薬に用いられる抗コリン成分に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、鎮痛鎮痙作用を示す。
2 排尿困難の症状がある人に使用すると、症状を悪化させるおそれがある。
3 抗コリン成分が配合された医薬品を使用した後は、眠気等が現れることがあるため、自動車の運転を避ける必要がある。
4 メチルオクタトロピン臭化物は、吸収された成分の一部が母乳中に移行する。
5 抗コリン成分には、ブチルスコポラミン臭化物、ジサイクロミン塩酸塩、パパベリン塩酸塩がある。
胃腸鎮痛鎮痙薬に用いられる抗コリン成分に関する問題。
ここでは、ブチルスコポラミン臭化物、パパベリン塩酸塩はしっかり学習を
1 正しい。
2 正しい。抗コリン作用による副作用として、散瞳による目のかすみや異常な眩しさ、顔のほてり、頭痛眠気、口渇、便秘、排尿困難等は押さえておく。特に高齢者で緑内障や排尿困難(前立腺肥大等)の基礎疾患をもつ方には注意が必要である。
3 正しい。
4 正しい。メチルオクタトロピン臭化物は、医療用では「バルピン」の商品名で存在したが、すでに販売休止。OTCでも含有する商品の存在は不明で、かなりマイナー。直前期なら深追いしない。
5 誤り。手引では、パパベリン塩酸塩の「抗コリン成分と異なり、胃液分泌を抑える作用がない」は頻出。ブチルスコポラミン臭化物は頻出。代表商品は「ブスコパン」。ジサイクロミンは深追いしない。
正答・・・5
【問86】 浣腸薬に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 便秘になりやすい食生活等の生活習慣の改善が図られることが重要であり、浣腸薬の使用は一時的なものにとどめるべきである。
b 繰り返し使用すると直腸の感受性が高まり効果が強くなる。
c 薬液を注入した後すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。
d 注入剤について、半量等を使用する場合、残量を後で再使用してもよい。
1(a、c) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
浣腸薬に関する問題。これは常識的に判断すればよい。
a 正しい。
b 誤り。明らかにおかしな記述。繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなる恐れががある。
c 正しい。また「薬液が漏れ出しそうな場合は肛門を脱脂綿等で押さえておくとよい。」との記述もある。
d 誤り。残量を再利用すると感染のおそれがあるので使用後は廃棄する。
正答・・・1
【問87】 次の表はある制酸薬に含まれている成分の一覧である。
3包中
水酸化マグネシウム 450 mg
合成ヒドロタルサイト 780 mg
沈降炭酸カルシウム 900 mg
ホップ乾燥エキス-Q 33.2 mg(ホップとして 471.5 mg)
アルジオキサ 150 mg
ピレンゼピン塩酸塩水和物 46.9 mg
この制酸薬を購入しようとしている 60 歳代の女性に対する説明の趣旨の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 緑内障の診断を受けた人は、使用する前に、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談してください。
b 自動車を運転する方でも安心して服用できます。
c 有効成分の水酸化マグネシウムは、腸内容物の浸透圧を下げることで糞便中の水分量を減らし、便秘を引き起こすことがあります。
d 腎臓病の診断を受けた人は、使用する前に、治療を行っている医師又は処方薬の調剤を行った薬剤師に相談してください。
a b c d
1 誤 誤 誤 正
2 正 正 誤 誤
3 誤 正 正 正
4 正 誤 誤 正
5 正 正 正 誤
当該製品は「パンシロンキュアa」と思われる。
出題頻度は高くないピレンゼピン塩酸塩水和物の知識が求められ難易度は高い。胃液の分泌を抑える作用を示すとされる。
他にピレンゼピンを含んだOTCには「ガストール」(エスエス)があり、「M1ブロッカー」のキャッチコピーで思い出す人も多いはず。
a正しい。ピレンゼピン塩酸塩は消化器以外では一般的な抗コリン作用を示し、緑内障には注意が必要。
b 誤り。ピレンゼピン塩酸塩は、消化管以外での一般的な抗コリン作用のため、排尿困難、動悸、目のかすみの副作用を生じることがある。
c 誤り。腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また、大腸を刺激して排便を促す。
d 正しい。腎臓病の診断をうけた人は、アルジオキサではアルミニウムの体内貯留、水酸化マグネシウム はマグネシウム血症を生じるおそれに注意する。他に、透析患者は服用を避ける点も押さえておく。
正答・・・4
【問88】 外用痔疾用薬に含まれる成分と、その主な配合目的に関する次の組み合わせの正誤について、正しい組み合わせはどれか。
成分 主な配合目的
a グリチルレチン酸 - 局所麻酔作用
b クロタミトン - 抗炎症作用
c アラントイン - 組織修復作用
d 酸化亜鉛 - 収斂保護止血作用
a b c d
1 誤 誤 正 誤
2 誤 誤 正 正
3 正 正 誤 誤
4 正 誤 誤 誤
5 誤 正 誤 正
外用痔疾用薬に含まれる成分に関する問題。
a 誤り。グリチルレチン酸は抗炎症作用である。局所麻酔成分としてはリドカインなど。
b 誤り。クロタミトンは局所刺激成分。局所への穏やかな刺激によって痒みを抑える効果を期待して、熱感刺激を生じさせる。
c 正しい。アラントインは組織修復成分。
d 正しい。酸化亜鉛は収斂保護止血成分。
正答・・・2
【問89】 きず口等の殺菌消毒成分に関する次の記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a アクリノールは、黄色の色素で、一般細菌類の一部に対する殺菌消毒作用を示し、真菌、結核菌、ウイルスに対しても効果を示す。
b オキシドールは、過酸化水素の分解に伴って発生する活性酸素による酸化、及び発生する酸素による泡立ちによる物理的な洗浄効果により、真菌、結核菌、ウイルスに対して効果を示す。
c 殺菌消毒薬に配合されるポビドンヨードは、口腔咽喉薬や含嗽薬として用いられる場合より高濃度で配合されているため、誤って原液を口腔粘膜に適用しないよう注意する必要がある。
d ベンザルコニウム塩化物は、石鹸との混合によって殺菌消毒効果が低下するので、石鹸で洗浄した後に使用する場合には、石鹸を十分に洗い流す必要がある。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)
きず口等の殺菌消毒成分に関する問題。
a 誤り。アクリノール=黄色の色素は正しい。一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。
b 誤り。オキシドール(過酸化水素水)は真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。
c 正しい。ポビドンヨード濃度は、用途ごとに違いがある。
d 正しい。ベンザルコニウム塩化物に関する内容である。医療機関などでの手指消毒液や、目薬の添加物としても知られている。
正答・・・5
【問90】 外皮用薬に用いられる成分に関する次の記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a ヒドロコルチゾンは、末梢組織の免疫機能を低下させる作用を示し、水痘やみずむしの症状を悪化させるおそれがある。
b インドメタシンは、皮膚の下層にある骨格筋や関節部まで浸透してプロスタグランジンの産生を促す。
c メントールは、皮膚表面に冷感刺激を与え、軽い炎症を起こして反射的な血管の拡張による患部の血行を促す効果を期待して配合されている場合がある。
d へパリン類似物質は、血液凝固を促す働きがある。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 誤
3 正 正 誤 正
4 誤 誤 正 正
外皮用薬に用いられる成分に関する問題。
a 正しい。ヒドロコルチゾンはステロイド成分である。
b 誤り。プロスタグランジンの産生を抑える作用を示す。
c 正しい。メントールは冷感刺激成分。一方で、温感刺激成分のノニル酸ワニリルアミドやトウガラシエキスも押さえておきたい。
d 誤り。ぺパリン類似物質は血行促進物質である。外用薬での使用ではまず問題にならないが、血液凝固を抑える働きがある。医療用では「ヒルドイド」ブランドで有名。
正答・・・2
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