R6 愛知県(東海・北陸地区共通)第1章 医薬品に共通する特性と基本的な知識(問11-20)
頻出ポイントばかり。全問正解できるように
問11
小児の医薬品の使用に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が短く、服用した医薬品の吸収率が相対的に低い。
b 保護者等に対しては、成人用の医薬品の量を減らして小児へ与えるような安易な使用は避け、必ず年齢に応じた用法用量が定められているものを使用するよう説明がなされることが重要である。
c 小児は血液脳関門が未発達であるため、吸収されて循環血液中に移行した医薬品の成分が脳に達しにくい。
d 小児は肝臓や腎臓の機能が未発達であるため、医薬品の成分の代謝・排泄に時間がかかり、作用が強く出過ぎたり、副作用がより強く出ることがある。
1(a、c) 2(b、c) 3(b、d) 4(a、d)
小児の医薬品の使用に関する問題
小児の腸の長さや、肝臓・腎臓・血液脳関門の未発達については頻出。毎年出題されるつもりで学習を
今回出題されていないが、医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項における年齢区分は必ず覚えておくこと。
新生児:生後4週未満、乳児:生後4週以上1歳未満、幼児:1歳以上7歳未満、小児:7歳以上15歳未満
a 誤 「腸が短く」ではなく「腸が長く」である。小児は大人と比べて身体の大きさに対して腸が長く、服用した医薬品の吸収率が相対的に高い。
b 正
c 誤 小児は血液脳関門が未発達なため、循環血液中に移行した医薬品成分が脳に達しやすく、中枢神経系に影響を与える医薬品で副作用を起こしやすい。
d 正
正解・・・3
問12
高齢者の医薬品の使用に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 高齢者の基礎体力や生理機能の衰えの度合いは個人差が大きく、年齢のみから一概にどの程度リスクが増大しているかを判断することは難しい。
b 厚生労働省の通知「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」において、おおよその目安として60歳以上を「高齢者」としている。
c 医薬品の副作用で口渇を生じることがあり、その場合、誤嚥(食べ物等が誤って気管に入り込むこと)を誘発しやすくなるので注意が必要である。
d 高齢者は、持病(基礎疾患)を抱えていることが多く、一般用医薬品の使用によって基礎疾患の症状が悪化したり、治療の妨げとなる場合がある。
a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正
高齢者の医薬品の使用に関する問題
a 正
b 誤 「医療用医薬品の添付文書等の記載要領の留意事項」では、目安として65歳以上を「高齢者」としている。
c 正
d 正
正解・・・2
問13
妊婦又は妊娠していると思われる女性への医薬品の使用等に関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせはどれか。
母体が医薬品を使用した場合に、( a )によって、どの程度医薬品の成分の胎児への移行が防御されるかは、未解明のことも多い。一般用医薬品においても、多くの場合、妊婦が使用した場合における安全性に関する評価が( b )であるため、妊婦の使用については「相談すること」としているものが多い。
さらに、( c )含有製剤のように、妊娠前後の一定期間に通常の用量を超えて摂取すると胎児に先天異常を起こす危険性が高まるとされているものや、便秘薬のように、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあるものがある。
a b c
1 血液-胎盤関門 困難 パントテン酸
2 血液-胎盤関門 困難 ビタミンA
3 血液-胎盤関門 容易 ビタミンA
4 血液-脳関門 困難 ビタミンA
5 血液-脳関門 容易 パントテン酸
妊婦への医薬品の使用等に関する問題
前年も同様な内容の出題があったが、今回は穴埋め形式にかわった。
ビタミンA×胎児の先天異常のリスクに関する知識は頻出です。
なお、便秘薬のように、配合成分やその用量によっては流産や早産を誘発するおそれがあり、例えば、大腸刺激性成分の瀉下薬(センノシド、ピコスルファートナトリウム、ビサコジル等)には、腸の急激な動きに刺激されて流産・早産を誘発するおそれについて記載されている。
a 血液-胎盤関門
b 困難
c ビタミンA
正解・・・2
問14
プラセボ効果(偽薬効果)に関する記述のうち、正しいものはどれか。
1 プラセボ効果とは、医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用による作用を生じることをいう。
2 プラセボ効果は、常に客観的に測定可能な変化として現れる。
3 プラセボ効果によってもたらされる反応や変化は、不都合なもの(副作用)しかない。
4 プラセボ効果を目的として医薬品が使用されるべきではない。
ほぼ毎年出題されているプラセボ(偽薬効果)に関する問題。
医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをプラセボ効果(偽薬効果)という。プラセボ効果は、医薬品を使用したことによる楽観的な結果期待(暗示効果)や、条件付けによる生体反応、時間経過による自然発生的な変化(自然緩解など)等が関与していると考えられている。
1 誤 プラセボ効果とは、医薬品を使用したとき、結果的又は偶発的に薬理作用によらない作用を生じることをいう。
2 誤 プラセボ効果は、客観的に測定可能な変化として現れることもあるが、不確実である。
3 誤 プラセボ効果によってもたらされる反応や変化にも、望ましいもの(効果)と不都合なもの(副作用)とがある。なお、プラセボ効果の不都合な例としては、例えば副作用が必要以上に強調されて販売された場合に、(実際には薬の作用とは関係ないが)体の不調を訴える等がわかりやすいでしょう。
4 正
正解・・・4
問15
医薬品の品質に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 医薬品に配合されている成分(有効成分及び添加物成分)には、高温や多湿、光(紫外線)等によって品質の劣化を起こしやすいものが多い。
b 医薬品が保管・陳列される場所については、清潔性が保たれるとともに、その品質が十分保持される環境となるよう留意される必要がある。
c 医薬品は、適切な保管・陳列がなされれば、経時変化による品質の劣化を避けることができる。
d 表示されている「使用期限」は、開封状態で保管された場合にも品質が保持される期限である。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)
医薬品の品質に関する問題
a 正
b 正
c 誤 適切な保管・陳列がなされたとしても、経時変化による品質の劣化は避けられない。
d 誤 表示されている「使用期限」は、未開封状態で保管された場合に品質が保持される期限である。(出題されないが)例えば、子供向けのかぜ薬シロップの場合、開封後は冷蔵保存で2-3か月が期限の目安とされる。
正解・・・1
問16
適切な医薬品選択と受診勧奨に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
1 セルフメディケーションのための情報提供は必ずしも医薬品の販売に結びつけるのでなく、医療機関の受診を勧めたり(受診勧奨)、医薬品の使用によらない対処を勧めることが適切な場合がある。
2 一般用医薬品には、スポーツ競技におけるドーピングに該当する成分を含んだものはない。
3 一般用医薬品で対処可能な範囲は、医薬品を使用する人によって変わってくるものであり、乳幼児や妊婦等では、通常の成人の場合に比べ、その範囲は限られてくる。
4 一般用医薬品を使用して体調不良や軽度の症状等に対処した場合であって、一定期間若しくは一定回数使用しても症状の改善がみられない又は悪化したときには、医療機関を受診して医師の診療を受ける必要がある。
適切な医薬品選択と受診勧奨に関する問題
なお、スポーツドーピングは令和4年度の手引き改訂で追加された内容である。
1 正
2 誤 一般用医薬品にも使用すればドーピングに該当する成分を含んだものがある。なお、出題されることはありませんが、一般用医薬品の成分でドーピングに該当するものとしては、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン、麻黄(エフェドリンを含む)等があり、興奮薬として分類されます。
3 正
4 正
正解・・・2
問17
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 医薬品の適正な使用のため必要な情報は、基本的に添付文書や製品表示に記載されているが、それらの記載は一般的・網羅的な内容となっているため、個々の購入者や使用者にとって、どの記載内容が当てはまり、どの注意書きに特に留意すべきなのか等について適切に理解することは必ずしも容易でない。
b 医薬品の販売に従事する専門家からの情報提供は、単に専門用語を分かりやすい平易な表現で説明するだけでなく、説明した内容が購入者等にどう理解され、行動に反映されているか、などの実情を把握しながら行うことにより、その実効性が高まるものである。
c 医薬品の販売に従事する専門家は、購入者側とのコミュニケーションが成立しがたい場合であっても、医薬品の使用状況に係る情報をできる限り引き出し、可能な情報提供を行っていくためのコミュニケーション技術を身につけるべきである。
d 医薬品の販売に従事する専門家においては、購入者等が、自分自身や家族の健康に対する責任感を持ち、適切な医薬品を選択して、適正に使用するよう、働きかけていくことが重要である。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正
一般用医薬品の販売時のコミュニケーションに関する問題
まあ、常識的に読み取れば判断できるでしょう。
なお、医薬品の販売等に従事する専門家が購入者等から確認しておきたい基本的なポイントは以下のような事項がある。
① 何のためにその医薬品を購入しようとしているか(購入者等側のニーズ、購入の動機)
② その医薬品を使用するのは情報提供を受けている当人か、又はその家族等が想定されるか
③ その医薬品を使用する人として、小児や高齢者、妊婦等が想定されるか
④ その医薬品を使用する人が医療機関で治療を受けていないか
⑤ その医薬品を使用する人が過去にアレルギーや医薬品による副作用等の経験があるか
⑥ その医薬品を使用する人が相互作用や飲み合わせで問題を生じるおそれのある他の医薬品の使用や食品を摂取をしていないか
⑦ その医薬品がすぐに使用される状況にあるか
⑧ 症状等がある場合、それはいつ頃からか、その原因や患部等の特定はなされているか
a 正
b 正
c 正
d 正
正解・・・5
問18
サリドマイドに関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a サリドマイド訴訟は、鎮咳去痰薬として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
b サリドマイドが摂取されると、互いに光学異性体にあるR体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。
c サリドマイドによる薬害事件は、日本のみならず世界的にも問題となったため、市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
d サリドマイドは、副作用として血管新生を促進する作用がある。
1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)
後半は例年どおり薬害訴訟に関する問題。なお、問題数は計4問→3問に減少したが、後半2問は複合タイプの問題で、5つの薬害訴訟全て問われています。
サリドマイド訴訟とは、催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用し、出生児に四肢欠損等の先天異常が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
a 誤 サリドマイド製剤は「鎮咳去痰薬」ではなく「睡眠鎮静剤等」として販売されていた。
b 正
まず、サリドマイドの副作用である血管新生を妨げる作用は、サリドマイドの光学異性体(R体、S体)のうち、S体のみが有する作用である点を知っておく必要がある。もう一方の異性体(R体)には血管新生を妨げる作用はなく、また、求められている鎮静作用はR体のみが有するとされている。
さらに「R体とS体は体内で相互に転換するため、R体のサリドマイドを分離して製剤化しても催奇形性は避けられない。」点も出題されるので、知識はセットで押さえておこう。
ちなみに、光学異性体とは、分子の化学的配列(炭素原子や水素原子等がどう並んでいるか)は同じだが、その立体的な分子構造が鏡像関係(鏡に映ったように左右対称の関係)にあり、互いに重ね合わせることができないものを言います。例としては、右手と左手の関係がわかりやすい。
なお、R体とS体が分離されていない混合体を「ラセミ体」と呼ぶことがある(手引きにも記載あり)。
c 正
d 誤 「血管新生を促進する作用」ではなく「血管新生を妨げる作用」である。
正解・・・2
問19
スモン訴訟及びC型肝炎訴訟に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a スモン訴訟は、整腸剤として販売されていたキノホルム製剤を使用したことにより、亜急性脊髄視神経症に罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
b スモン訴訟などを契機として、医薬品の訴訟に係る迅速な救済を図るため、医薬品訴訟迅速救済制度が創設された。
c C型肝炎訴訟は、出産や手術での大量出血などの際に特定のフィブリノゲン製剤や血液凝固第Ⅸ因子製剤の投与を受けたことにより、C型肝炎ウイルスに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
d C型肝炎訴訟などを契機として取りまとめられた「薬害再発防止のための医薬品行政等の見直しについて(最終提言)」を受け、医薬品等行政評価・監視委員会が設置された。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正
スモン訴訟及びC型肝炎訴訟に関する問題。
C型肝炎訴訟は令和4年度手引き改訂で追加された薬害です。
a 正
b 誤 「医薬品訴訟迅速救済制度」ではなく「医薬品副作用被害救済制度」である。サリドマイド訴訟、スモン訴訟を契機として、1979年、医薬品の副作用による健康被害の迅速な救済を図るため、医薬品副作用被害救済制度が創設された。
c 正
d 正
正解・・・3
問20
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)訴訟及びCJD(クロイツフェルト・ヤコブ病)訴訟に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
1 HIV訴訟は、血友病患者が、HIVが混入した原料血漿から製造されたインターフェロン製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟である。
2 HIV訴訟の和解を踏まえ、国は、エイズ治療・研究開発センター及び拠点病院の整備や治療薬の早期提供等の様々な取り組みを推進してきている。
3 CJD訴訟は、脳外科手術等に用いられていたヒト乾燥硬膜を介してCJDに罹患したことに対する損害賠償訴訟である。
4 CJD訴訟の和解の後、ヒト乾燥硬膜の移植の有無を確認するための患者診療録の長期保存等の措置が講じられるようになった。
HIV訴訟及びCJD訴訟に関する問題
HIV訴訟は、血友病患者がヒト免疫不全ウイルス(HIV)が混入した原料血漿から製造された血液凝固因子製剤の投与を受けたことにより、HIVに感染したことに対する損害賠償訴訟。
1 誤 「インターフェロン製剤」ではなく「血液凝固因子製剤」である。
2 正
3 正 なお、CJDは、細菌でもウイルスでもないタンパク質の一種であるプリオンが原因とされている点も良く出題されます。
4 正 「患者診療録の長期保存」はこれまで殆ど問われてこなかったが、正しい記述です。
正解・・・1