H26 福岡県(九州・沖縄) 第3章 主な医薬品とその作用(問81-90)
問82(婦人薬)、問84(皮膚疾患・漢方薬)、 問88(皮膚病薬)、問89(毛髪用薬)、問90(歯槽膿漏薬)と、難問が続く。
問81 女性ホルモンに関する以下の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせを 下から一つ選びなさい。
月経周期は、種々のホルモンの複雑な相互作用によって調節されており、約( ア )と幅がある。加齢とともに( イ )からの女性ホルモンの分泌が減少していき、やがて月経が停止して、妊娠可能な期間が終了することを閉経という。閉経の前後には( ウ )と呼ばれる移行的な時期があり、体内の女性ホルモンの量が大きく変動することがある。
ア イ ウ
1 3~10日 卵巣 更年期
2 3~10日 視床下部 産褥期
3 3~10日 副腎 更年期
4 21~40日 視床下部 産褥期
5 21~40日 卵巣 更年期
女性ホルモンに関する基礎的な知識問題。
ア 月経周囲は約28日という知識が一般的だが、手引きには「約21-40日と幅がある」と記載あり
イ 卵巣。なお、女性ホルモンとしては、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)が有名だが、この試験では、そこまで問われることはない。
ウ 更年期。なお 産褥期(さんじょくき)とは、分娩後、母体が妊娠前の状態に戻っていくための期間を意味する。一般に分娩後6週あるいは8週までとされる。
正答・・・5
問82 婦人薬として用いられる主な漢方処方製剤に関する以下の記述について、正しいものを下から一つ選びなさい。
体力中等度又はやや虚弱で冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、 発汗傾向の著しい人では、不向きとされる。構成生薬としてマオウを含む。
1 四物湯
2 五積散
3 温清飲
4 加味逍遙散
5 桃核承気湯
婦人薬として使われる漢方薬に関する問題だが、かなりの難問。試験直前期なら、解けなくても気にしないように。
正答は2の五積散である。手引きには「婦人薬」の分野に記載されているが、実際のところ婦人薬としては、あまり主流ではなく、腰痛や感冒薬として用いられることが多い。
「五積(ごしゃく)」は「寒・湿・気・血・痰」の5つの邪を意味し、それらの滞りを改善し、諸症状の改善につながるとされる。
構成成分も漢方薬の中でも非常に多く、白シ(ビャクシ)、麻黄(マオウ)、蒼朮(ソウジュツ)、陳皮(チンピ)、当帰(トウキ)、半夏(ハンゲ)、茯苓(ブクリョウ)、甘草(カンゾウ)、桔梗(キキョウ)、枳実(キジツ)、桂皮(ケイヒ)、厚朴(コウボク)、芍薬(シャクヤク)、生姜or乾姜(ショウキョウ)、川きゅう(センキュウ)、大棗(タイソウ)の16種で構成されている。
手引に基づく最大のヒントはマオウ(麻黄)を含む点である。他に更年期障害の他に、「腰痛」「感冒」のキーワードに気付けば選択できるはず。
問83 アレルギー用薬に関する以下の記述のうち、正しいものを下から一つ選びなさい。
1 カルビノキサミンマレイン酸塩は、他のアドレナリン作動成分に比べて中枢神経系に対する作用が強く、副作用として不眠や神経過敏が現れることがある。
2 メチルエフェドリン塩酸塩は、依存性がある抗コリン成分であり、長期間に亘って連用された場 合、薬物依存につながるおそれがある。
3 ベラドンナ総アルカロイドは、鼻腔内の粘液分泌腺からの粘液の分泌を抑えるとともに、鼻腔内の刺激を伝達する交感神経系の働きを抑えることによって、鼻汁分泌やくしゃみを抑える目的で用いられる。
4 サイシンは、ウマノスズクサ科のウスバサイシン又はケイリンサイシンの根及び根茎を基原とする生薬で、鎮痛、鎮咳、利尿等の作用を有するとされ、鼻閉への効果を期待して用いられる。
1 誤り。カルビノキサミンマレイン酸塩は第一世代の抗ヒスタミン成分。「パブロン鼻炎カプセルS」等に含まれる。
2 誤り。メチルエフェドリン塩酸塩はアドレナリン作動性成分。
3 誤り。ベラドンナ総アルカロイドは抗コリン成分
4 正しい。サイシン(細辛)に関する内容である。鼻炎の漢方薬として有名な小青竜湯に含まれている。「エスタック鼻炎カプセル12」には生薬単体で配合されている。
正答・・・4
問84 漢方処方製剤に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 十味敗毒湯は、体力中等度なものの皮膚疾患で、発赤があり、ときに化膿するものの化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期、蕁麻疹 、湿疹・皮膚炎、水虫に適すとされるが、体の虚弱な人 (体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸が弱い人では不向きとされる。
イ 消風散は、体力中等度で冷え症で、皮膚が乾燥するものの湿疹・皮膚炎(分泌物の少ないもの)、痒みに適すとされるが、胃腸が弱く下痢をしやすい人では、胃部不快感、腹痛等の副作用が 現れやすい等、不向きとされる。
ウ 辛夷清肺湯は、体力中等度以上で皮膚の色が浅黒く、ときに手足の裏に脂汗をかきやすく腹壁 が緊張しているものの蓄膿症、慢性鼻炎、慢性扁桃炎、にきびに適すとされるが、胃腸の弱い人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
エ 当帰飲子は、体力中等度以上の人の皮膚疾患で、痒みが強くて分泌物が多く、ときに局所の熱感があるものの湿疹 ・皮膚炎、蕁 麻疹 、水虫、あせもに適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰 えている人、体の弱い人)、胃腸が弱く下痢をしやすい人では、胃部不快感、腹痛等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 誤 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 正
漢方に関する問題。それぞれの漢方薬の特徴をある程度把握していないので正答できないので、難問である。
すべての内容を覚えるのは得策ではないので、まずは最低限のキーワードを押さえておきたい。
ア 正しい。十味敗毒湯は「化膿性皮膚疾患」がキーワード
イ 誤り。これは「当帰飲子」に関する内容。
ウ 誤り。これは「荊芥連翹湯」に関する内容
エ 誤り。これは「消風散」に関する内容。
それぞれキーワードと以下の点を挙げますが、ここまで憶えるのはかなり大変。
消風散は、「痒みが強くて分泌物が多く」「局所の熱感がある湿疹」
辛夷清肺湯は「濃い鼻汁が出て、ときに熱感を伴う鼻づまり」
当帰飲子は「冷え症で、皮膚が乾燥するものの湿疹」
正答・・・3
問85 鼻炎用点鼻薬に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 鼻炎用点鼻薬は、鼻づまり、鼻みず(鼻汁過多)、くしゃみ、頭重(頭が重い)の緩和を目的として、鼻腔内に適用される外用液剤であるが、花粉症に適用する医薬品ではない。
イ 点鼻薬は局所(鼻腔内)に適用されるものであるが、成分が鼻粘膜を通っている血管から吸収されて循環血液中に入りやすく、全身的な影響を生じることがある。
ウ 鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑えることを目的として、リドカイン塩酸塩が配合されている場合がある。
エ ヒスタミンの働きを抑えることにより、くしゃみや鼻水等の症状を緩和することを目的として、 セチルピリジニウム塩化物が配合されている場合がある。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
鼻炎用点鼻薬に関する問題。
ア 誤り。あまり点鼻薬のテレビCMの馴染みはないが、花粉症にも点鼻薬は用いられる。但し、知識がある人ほど解釈に迷うかもしれない。医薬品では「花粉症」という呼び方は、正式には使わない。
例えば、ザジテンAL鼻炎スプレーの効果・効能には
「花粉、ハウスダスト(室内塵)などによる次のような鼻のアレルギー症状の緩和:くしゃみ、鼻みず(鼻汁過多)、鼻づまり」と書かれてあり、「花粉症」という表現ではなく、「花粉などによる鼻のアレルギー症状」と言う。
イ 正しい。
ウ 正しい。リドカインは代表的な局所麻酔成分であり、点鼻薬にも使用されている製品がある。
エ 誤り。セチルピリジニウム塩化物は殺菌消毒成分として点鼻薬に用いられる。登録販売者試験では頻出であり、トローチや口内炎薬など、幅広い分野で出題される。
正答・・・3
問86 眼科用薬に配合される医薬品成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア イプシロン‐アミノカプロン酸は、眼粘膜のタンパク質と結合して皮膜を形成し、外部の刺激から保護する作用を期待して用いられる。
イ コンドロイチン硫酸ナトリウムは、結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いられる。
ウ クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト(室内塵 )等による目のアレルギー症状の緩和を目的として用いられる。
エ スルファメトキサゾールは、ウイルスや真菌の感染に対する効果はなく、細菌感染(ブドウ球菌 や連鎖球菌)による結膜炎やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的として用いられる。
ア イ ウ エ
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 正 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤
眼科用薬に関する問題。
ア 誤り。これは収斂成分の硫酸亜鉛の説明。イプシロン‐アミノカプロン酸は、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
イ 正しい。コンドロイチン硫酸ナトリウム
ウ 正しい。クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー症状の緩和に用いられる。
エ 正しい。スルファメトキサゾールはサルファ剤であり、ものもらい等に使用できる。ウイルスや真菌の感染には効果はない。
正答・・・3
問87 皮膚に用いられる医薬品成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア ヨードチンキは、皮膚刺激性が弱く、粘膜(口唇等)や目の周りの部位に使用できるが、化膿している部位への使用は避けるべきである。
イ アクリノールとオキシドールは、いずれも一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの 化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示す。
ウ プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステルは、外用の場合は末梢組織(患部局所)における炎症を抑える作用を示し、特に、痒 みや発赤などの皮膚症状を抑えることを目的として用いられる。
エ ブフェキサマクは、炎症を生じた組織に働いて、細胞膜の安定化、活性酸素の生成抑制などの作用により、抗炎症作用を示す。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
皮膚に用いられる薬に関する問題。
ア 誤り。ヨードチンキは皮膚刺激性が強く、粘膜(口唇等)や目の周りへの使用は避ける必要がある。また、化膿している部位では、かえって症状を悪化させるおそれがある。
イ 正しい。アクリノールに関する内容。
ウ 正しい。OTCでは代表的なステロイド性抗炎症成分である。
エ 誤り。これはウフェナマートに関する説明。なおブフェキサマクは現在発売されていない。
正答・・・3
問88 皮膚に用いられる医薬品に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア インドメタシンを主薬とする外皮用薬では、11歳未満の小児向けの製品はない。
イ 温感刺激成分を主薬とする貼付剤では、貼付部位を電気毛布等の保温器具で温めることが望まし い。
ウ イブプロフェンピコノールは、吹き出物に伴う皮膚の発赤や腫れを抑えるほか、吹き出物(面皰 めんぼう ) の拡張を抑える作用があるとされ、専らにきび治療薬として用いられる。
エ イミダゾール系抗真菌成分は、皮膚糸状菌の細胞膜を構成する成分の産生を妨げたり、細胞膜の 透過性を変化させることにより、その増殖を抑える。
ア イ ウ エ
1 正 正 誤 正
2 正 誤 正 正
3 正 誤 誤 誤
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 正 正
ある程度広い知識がないと難しい問題。
ア 正しい。重箱の隅をつつくような知識が問われている。
手引きには「インドメタシンを主薬とする外皮用薬では、11歳未満の小児(インドメタシン含量1%の貼付剤では15歳未満の小児)、その他の成分を主薬とする外用鎮痛薬では、15歳未満の小児向けの製品はない。」と記載があり、含有濃度には触れられておらず、広義で解釈すれば正しい。
↓インドメタシン含有タイプの湿布薬 「使用上の注意」に「11歳未満の小児」は使用しないことが記載されている。
イ 誤り。低温やけどの恐れがあるので注意する必要がある。
ウ 正しい。イブプロフェンピコノールは、イブプロフェンの誘導体でNSAIDであるが、鎮痛作用は期待せず、ニキビの薬として使用される。代表商品に「フキディア」(小林製薬)、「フレッシングアクネクリーム」(久光)等がある。
エ 正しい。イミダゾール系の代表成分にラノコナゾール、ミコナゾール等がある。
正答・・・2
問89 毛髪用薬に関する以下の記述のうち、正しいものを下から一つ選びなさい。
1 カルプロニウム塩化物は、末梢組織(適用局所)においてアドレナリンに類似した作用を示し、 頭皮の血管を拡張、毛根への血行を促すことによる発毛効果を期待して用いられる。
2 エストラジオール安息香酸エステルは、男性ホルモン成分の一種であり、脱毛抑制効果を期待し て配合される。
3 チクセツニンジンは、ウコギ科トチバニンジンの根茎を、通例、湯通ししたものを基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。
4 ヒノキチオールは、抗菌、血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる。
あまり、出題されることのない毛髪用薬に関する問題。リアップや、医療用の内服薬(プロペシア)が登場している現在では、存在価値は薄れている。
1 誤り。カルプロニウム塩化物に関する問題。×アドレナリン→〇アセチルコリン
2 誤り。エストラジオール安息香酸エステルは、×男性ホルモン→〇女性ホルモン成分の1種。
3 誤り。チクセツニンジンは、血行促進、抗炎症などの作用を期待して用いられる。頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられるのはカシュウ(何首烏)である。
4 正しい。ヒノキチオール
正答・・・4
問90 歯槽膿漏薬に配合されている成分と配合目的の関係について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
成分 配合目的
ア カルバゾクロム ― 歯周組織からの出血を抑える
イ フィトナジオン ― 歯周組織の炎症を和らげる
ウ チモール ― 歯肉溝での細菌の繁殖を抑える
エ グリチルレチン酸 ― 歯周組織の修復を促す
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
これも難問。グリチルレチン酸はしっかり押さえておきたい。他はマイナーな成分ばかり。
ア 正しい。カルバゾクロムは止血成分。
イ 誤り。フィトナジオン(ビタミンK)は止血成分。
ウ 正しい。チモールは殺菌消毒成分。
エ 誤り。グリチルレチン酸は頻出医薬品。歯周組織の炎症を和らげる。
正答・・・2
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