H30 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第3章 主な医薬品とその作用 問81-90
過去問対策だけでは対応困難な問題も
問81 痔及び痔疾用薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 痔瘻は、肛門に存在する細かい血管群が部分的に拡張し、肛門内にいぼ状の腫れが生じたもので、一般に「いぼ痔」と呼ばれる。
b 裂肛は、肛門の出口からやや内側の上皮に傷が生じた状態であり、一般に「切れ痔」 (又は「裂け痔」)と呼ばれる。
c 乙字湯 、 芎帰膠艾湯のいずれも、構成生薬としてカンゾウを含む。
a b c
1 正 誤 正
2 正 正 誤
3 誤 正 正
4 正 誤 誤
5 誤 正 誤
痔及び痔疾用薬に関する問題。
痔の主な病態としては、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔) 、痔瘻がある。時折出題されているので、その違いは押さえておこう。
a 誤り。これは「痔核」に関する内容。痔瘻は、肛門内部に存在する肛門腺窩と呼ばれる小さなくぼみに糞便の滓が溜まって炎症・化膿を生じた状態をいう。
b 正しい。
c 正しい。。乙字湯 、 芎帰膠艾湯に関してカンゾウ(甘草)の有無を問われたのは初めてかもしれない。どちらもカンゾウを含んでいる。
正答・・・3
問82 泌尿器用薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a カゴソウは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。
b 竜胆瀉肝湯は、体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛、残尿感、 尿の濁り、こしけ(おりもの)、頻尿に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、胃部不快感、下痢等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
c 猪苓湯は、体力に関わらず、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる。
a b c
1 正 正 正
2 誤 誤 正
3 誤 正 正
4 正 誤 誤
5 誤 正 誤
泌尿器用薬に関する問題。カゴソウの判断が正誤判断の分かれ目。aをウワウルシと判断してしまうと誤りなので難問である。b、cの漢方薬については、判断できるように。
a 正しい。この分野では尿路消毒成分のウワウルシが頻出であったが、利尿成分のカゴソウが問われるのは珍しい。
b 正しい。竜胆瀉肝湯に関する内容。「尿の濁り」「こしけ(おりもの)」がキーワードとなる。
c 正しい。猪苓湯に関する内容。
正答・・・1
問83 婦人薬及びその配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a コウブシは、鎮静、鎮痛のほか、女性の滞っている月経を促す作用を期待して配合されている場合がある。
b 温経湯は、体力中等度以下で、手足がほてり、唇が乾くものの月経不順、月経困難、 こしけ(おりもの)、更年期障害、不眠、神経症、湿疹 ・皮膚炎、足腰の冷え、しもやけ、 手あれに適すとされ、構成生薬としてカンゾウを含む。
c 五積散は、体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの月経不順、月経困難症、 月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症に適すとされ、構成生薬としてダイオウを含む。
d 桃核承気湯は、体力中等度又はやや虚弱で冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、 関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされ、構成生薬としてマオウを含む。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、d) 5(c、d)
婦人薬に関する問題。
コウブシ(香附子)、桃核承気湯は、出題頻度が高くなかったので迷った受験生も多かったでしょう。
a 正しい。
b 正しい。温経湯も「こしけ(おりもの)」がキーワード。
c 誤り。これは桃核承気湯に関する内容。この試験で「打撲症」のキーワードがあれば桂枝茯苓丸か桃核承気湯。さらに「便秘」の記述もあることから桃核承気湯に絞りこめるように。
d 誤り。これは五積散に関する内容。五積散は婦人薬というより、腰痛や神経痛等の整形外科領域の漢方薬としての方が知名度は高い。
正答・・・1
問84 内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a アゼラスチンは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
b ベラドンナは、ナス科の草本で、その葉や根に、交感神経系の働きを抑える作用を示すアルカロイドを含む。
c サイシンは、ウマノスズクサ科のウスバサイシン又はケイリンサイシンの根及び根茎を基原とする生薬で、鼻閉への効果を期待して用いられる。
d ヨウ化イソプロパミドは、皮膚や鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として配合され ている。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 誤 正 正 正
4 正 正 誤 誤
5 正 誤 正 誤
内服アレルギー用薬に関する問題。
a 正しい。アゼラスチンは抗ヒスタミン成分である。なお、抗ヒスタミン成分とクロモグリク酸ナトリウム(肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える)の作用の違いも押させておこう。
b 誤り。×交感神経→〇副交感神経。ベラドンナ総アルカロイドは鼻炎薬に用いられる抗コリン成分である。
c 正しい。
d 誤り。ヨウ化イソプロパミドは抗コリン成分。
正答・・・5
問85 内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)として用いられる漢方処方製剤のうち、構成生薬としてマオウを含むものはどれか。
1 茵蔯蒿湯
2 十味敗毒湯
3 消風散
4 当帰飲子
5 葛根湯加川芎辛夷
内服アレルギー用薬として用いられる漢方薬に関する問題。
これは過去にも類似の出題があり。感冒向けの代表的な葛根湯にマオウ(麻黄)が含まれていることを知っていれば、鼻づまり向けの葛根湯加川芎辛夷にもマオウ(麻黄)を含むことは容易に判断できる。
正答・・・5
問86 鼻炎用点鼻薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a クロモグリク酸ナトリウムは、鼻粘膜を清潔に保ち、細菌による二次感染を防止することを目的として配合されている。
b テトラヒドロゾリン塩酸塩は、局所麻酔成分であり、鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑えることを目的として配合されている。
c リドカインは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑えることを目的として配合されて いる。
d ナファゾリン塩酸塩は、鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として用いられる。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 誤 誤 正
3 正 誤 正 正
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 誤
鼻炎用点鼻薬に関する問題。
a 誤り。クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える作用を示し、花粉、 ハウスダスト等による鼻アレルギー症状を抑える(抗アレルギー成分)。なお、「通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合される」のフレーズも良く問われている。
b 誤り。テトラヒドロゾリン塩酸塩はアドレナリン作動性成分。
c 誤り。リドカインは局所麻酔成分。
d 正しい。ナファゾリン塩酸塩はアドレナリン作動性成分。
正答・・・2
問87 眼科用薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a イプシロン‐アミノカプロン酸は、新陳代謝を促し、目の疲れを改善する目的で用いられる。
b スルファメトキサゾールは、眼粘膜のタンパク質と結合して皮膜を形成し、外部の刺激から保護する目的で用いられる。
c ホウ酸は、洗眼薬として用時水に溶解し、結膜嚢の洗浄・消毒に用いられる。
d コンドロイチン硫酸ナトリウムは、結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いら れる。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)
眼科用薬に関する問題。例年2問出題されていた分野だが、今年は1問だけでした。
a 誤り。これはアスパラギン酸に関する内容。イプシロン‐アミノカプロン酸は炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
b 誤り。スルファメトキサゾールは抗菌成分(サルファ剤)。細菌感染による結膜炎やものもらいなどの化膿性の症状の改善を目的に使用される。
c 正しい。ホウ酸に関する内容。古典的な薬だが、最近は既に点眼タイプになった便利な製品も登場している。
d 正しい。コンドロイチンは角膜保護成分として配合されている。
正答・・・5
問88 外皮用薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ヒドロコルチゾンは、末梢組織(患部局所)における炎症を抑える作用を示すが、副作用として、細菌、真菌、ウイルス等による皮膚感染や持続的な刺激感が現れることが ある。
b イブプロフェンピコノールは、吹き出物に伴う皮膚の発赤や腫れを抑えるほか、吹き出物(面皰 )の拡張を抑える作用があるとされる。
c デキサメタゾンは、分子内に副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)と共通する化学構造を持たずに抗炎症作用を示す非ステロイド性抗炎症成分である。
d カプサイシンは、創傷面に浸透して、その部位を通っている血管を収縮させることによる止血効果を期待して用いられる。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)
外皮用薬に関する問題。
a 正しい。ステロイド外用薬を、細菌、真菌やウイルス感染部位に使用しないのは基本的知識(免疫力が低下するため)。OTCの場合、例えば水虫やヘルペス部位には原則使用しない。
b 正しい。イブプロフェンピコノールは主にニキビ治療薬として用いられる。例えばペアアクネクリーム(ライオン)など。なお、イブプロフェンの誘導体であるが、鎮痛効果は殆ど期待できない(平成28年)
c 誤り。これは平成28年にも同様の出題があり。 デキサメタゾンはステロイド性抗炎症成分である。(非ステロイドではない)
d 誤り。カプサイシンは温感刺激成分。血行促進のため、いわゆる「温タイプ」の湿布に配合されていて、「トウガラシエキス」と記載されていることが多い。
↓アマゾンサイト
正答・・・1
問89 外皮用薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a ウフェナマートは、湿疹、皮膚炎、かぶれ、あせも等による皮膚症状の緩和を目的として用いられる。
b フェルビナクは、抗炎症作用に加え、殺菌作用もあるため皮膚感染症の改善を目的としても用いられる。
c 喘息を起こしたことがある人では、インドメタシンが配合された外皮用薬の使用を避ける必要がある。
a b c
1 正 正 誤
2 正 誤 正
3 誤 正 正
4 誤 正 誤
5 誤 誤 正
外皮用薬に関する問題。
a 正しい。 ウフェナマートは非ステロイド性抗炎症成分で、皮膚の炎症や痒み向けの成分。おむつかぶれにも使用できるような「ノンステロイド」を訴求した商品に良く使用されている。
b 誤り。フェルビナクは非ステロイド性抗炎症成分で、筋肉痛、関節痛、打撲、捻挫等による鎮痛等を目的にした湿布によく配合されている。
c 正しい。
↓インドメタシンが配合された湿布薬の使用上の注意。喘息に関する記述がある。
正答・・・2
問90 角質軟化薬及び化膿性皮膚疾患用薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 硫酸フラジオマイシン(フラジオマイシン硫酸塩)は、細菌のタンパク質合成を阻害することによる抗菌作用を目的として用いられる。
b スルファジアジンは、細菌のDNA合成を阻害することによる抗菌作用を目的として用いられる。
c グリセリンは、皮膚の角質層を構成するケラチンを変質させることによる角質軟化作用を目的として用いられる。
d 尿素は、角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善することを目的として用いられる。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 誤 正
角質軟化薬及び化膿性皮膚疾患用薬の配合成分に関する問題。
a 正しい。フラジオマイシン硫酸塩は外用薬に用いられる抗菌成分。
b 正しい。
c 誤り。これは角質軟化作用よりサリチル酸に関する内容。これは角質軟化作用でも「ケラチン」の記述もあるのでイオウに関する内容。(2020/8/15訂正)
d 正しい。保湿成分としては尿素の他、グリセリンやオリーブ油、ワセリン、ヘパリン類似物質がある。
正答・・・2