R1 福岡県(九州地区・沖縄共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問71-80)
問71
鎮咳去痰薬に配合される成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア デキストロメトルファン臭化水素酸塩は麻薬性鎮咳成分とも呼ばれ、長期連用や大量摂取によって倦怠感や虚脱感、多幸感等が現れることがあり、薬物依存につながるおそれがある。
イ トリメトキノール塩酸塩は、交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮めることを目的として用いられる。
ウ バクモンドウは、バラ科のホンアンズ、アンズ等の種子を基原とする生薬で、体内で分解されて生じた代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静させる作用を示すとされる。
エ ジプロフィリンは、自律神経系を介さずに気管支の平滑筋に直接作用し、弛緩させ、気管支を拡張させる。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 誤 誤
鎮咳去痰薬に配合される成分に関する問題。
ア 誤り。これは麻薬性鎮咳成分のジヒドロコデインリン酸塩などの内容。デキストロメトルファン臭化水素酸塩は非麻薬性の鎮咳成分。医療用ではメジコンの製品名で知られる。
イ 正しい。トリメトキノール塩酸塩はアドレナリン作動性の気管支拡張成分。OTCではマイナーな成分で含有製品は殆どみかけないが、それなりに出題されている。
ウ 誤り。バクモンドウはユリ科のジャノヒゲの根の膨大部を基原とする生薬で、鎮咳、去痰作用等が期待される。なお、麦門冬湯の主薬でもある。
エ 正しい。ジプロフィリンはキサンチン系の気管支拡張成分。なお、乗物酔い防止薬の分野でも登場し脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させる働きも問われることがある。
正答・・・4
問72
鎮咳去痰薬に配合される去痰成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア カルボシステインは、気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示す。
イ エチルシステイン塩酸塩は、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させる。
ウ グアイフェネシンは、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする。
エ ブロムヘキシン塩酸塩は、気道粘膜からの粘液分泌促進作用・溶解低分子化作用・線毛運動促進作用を示す。
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
鎮咳去痰薬に配合される去痰成分に関する問題。
ア 誤り。カルボシステインは代表的な去痰成分で、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする。医療用では「ムコダイン」として知られる。
イ 正しい。
ウ 誤り。グアイフィネシンは気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示す。
エ 正しい。ブロムヘキシン塩酸塩に関する記述。
正答・・・3
問73
口腔咽喉薬及びうがい薬(含嗽薬)に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア リゾチーム塩酸塩は、鶏卵アレルギーの既往歴がある人では使用を避ける必要がある。
イ 炎症を生じた粘膜組織の修復を促す作用を期待して、セチルピリジニウム塩化物が配合されている場合がある。
ウ ヨウ素系殺菌消毒成分が口腔内に使用される場合、結果的にヨウ素の摂取につながり、バセドウ病や橋本病などの甲状腺疾患の診断を受けた人の治療に悪影響(治療薬の効果減弱など)を生じるおそれがある。
エ ヨウ素は、食品に含まれるビタミンDと反応すると脱色を生じて殺菌作用が失われる。
1(ア、イ) 2(ア、ウ) 3(イ、エ) 4(ウ、エ)
口腔咽喉薬及びうがい薬(含嗽薬)に関する問題。
ア 正しい。リゾチーム塩酸塩とくれば鶏卵アレルギーの内容はすぐ思い出せるように。
イ 誤り。セチルピリジニウム塩化物は殺菌消毒成分。
ウ 正しい。ヨウ素系殺菌消毒成分(イソジンなど)に関する内容。
エ 誤り。×ビタミンD→〇ビタミンC
正答・・・2
問74
胃腸に作用する薬に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 健胃薬、消化薬、整腸薬又はそれらの目的を併せ持つものには、医薬部外品として製造販売されている製品もある。
2 生薬成分が配合された健胃薬は、味や香りが強いものが多いため、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮断する方法で服用するのが適当である。
3 アルジオキサやスクラルファートはアルミニウムを含む成分であるため、透析を受けている人では使用を避ける必要がある。
4 セトラキサート塩酸塩は、血栓のある人、血栓を起こすおそれのある人が服用すると、生じた血栓が分解されにくくなることがある。
胃腸に作用する薬に関する問題。
1 正しい。医薬部外品を参照。
2 誤り。生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽して服用すると効果が期待できず、適当でない。(香りも薬効の一つと考えられている)
3 正しい。アルジオキサ、スクラルファートは胃粘膜保護・修復成分。アルミニウムを含み、「透析療法中の方は使用を避ける」内容は頻出ポイント。
4 正しい。5章でもよく出題されている内容。
「相談すること」に「血栓のある人(脳血栓、心筋梗塞、血栓静脈炎等)、血栓症を起こすおそれのある人」の記載がある成分は、抗炎症成分のトラネキサム酸と胃粘膜保護・修復成分のセトラキサート塩酸塩である。
セトラキサート塩酸塩は、体内で代謝されてトラネキサム酸を生じることから、この記載がある。
(但し、セトラキサート塩酸塩は現在殆ど市販薬として使用されていない。)
正答・・・2
問75
止瀉薬及び瀉下薬に配合される成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、食あたりや水あたりによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢については適用対象でない。
イ ピコスルファートナトリウムは、胃や小腸で分解され、大腸への刺激作用を示すようになる。
ウ 酸化マグネシウムは、腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、大腸を刺激して排便を促すことを目的として配合される。
エ マルツエキスは、主成分である麦芽糖が腸内細菌によって分解(発酵)して生じるガスによって便通を促すとされ、瀉下薬としては比較的作用が強いため、乳幼児の便秘への適用はない。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 誤
3 正 誤 誤 正
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤
止瀉薬及び瀉下薬に配合される成分に関する問題。
ア 誤り。ロペラミド塩酸塩は代表的な止瀉薬成分。なお、食あたりや水あたりによる下痢(感染性胃腸炎)が疑われる場合は適応対象ではない点は頻出である。市販薬ではトメダインが有名。
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イ 誤り。ピコスルファートナトリウムは、胃や小腸では分解されないが、大腸に生息する腸内細菌に分解され大腸への刺激作用を示す。
ウ 正しい。酸化マグネシウムは腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増やす。
エ 誤り。マルツエキスは乳幼児受けの便秘薬として知られる。前半部分は正しい。
正答・・・5
問76
強心薬に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 センソは、有効域が比較的狭い成分であり、1日用量中センソ5mgを超えて含有する医薬品は劇薬に指定されており、一般用医薬品では、1日用量が5mg以下となるよう用法・用量が定められている。
2 センソは、皮膚や粘膜に触れると局所麻酔作用を示し、センソが配合された内服固形製剤は、口中で噛み砕くと舌が麻痺することがあるため、噛まずに服用することとされている。
3 ジャコウは、シカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とする生薬で、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる作用があるとされる。
4 レイヨウカクは、シカ科のマンシュウアカジカ又はマンシュウジカの雄のまだ角化していない、若しくは、わずかに角化した幼角を基原とする生薬で、強心作用の他、強壮、血行促進の作用があるとされる。
強心薬に関する問題。具体的な製品として「救心」や「六神丸」に関するものである。
1 正しい。センソ(蟾酥)はヒキガエル科のシナヒキガエル等の毒腺の分泌物を集めたものを基原とする生薬。有効域が比較的狭い成分であり、一般用医薬品での「1日用量5mg 以下」については数字も押さえておく。
2 正しい。
3 正しい。ジャコウ(麝香)に関する内容。
4 誤り。これはロクジョウ(鹿茸)に関する内容。
正答・・・4
問77
血中コレステロールに関する以下の記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
コレステロールは細胞の構成成分で、( ア )や胆汁酸等の生理活性物質の産生に重要な物質である。
コレステロールは水に( イ )物質であるため、血液中では血漿タンパク質と結合したリポタンパク質となって存在する。リポタンパク質は比重によっていくつかの種類に分類されるが、そのうち( ウ )は、コレステロールを肝臓から末梢組織へと運ぶリポタンパク質である。
ア イ ウ
1 副腎皮質ホルモン 溶けやすい 高密度リポタンパク質
2 副腎皮質ホルモン 溶けにくい 低密度リポタンパク質
3 副腎皮質ホルモン 溶けにくい 高密度リポタンパク質
4 副腎髄質ホルモン 溶けにくい 低密度リポタンパク質
5 副腎髄質ホルモン 溶けやすい 高密度リポタンパク質
血中コレステロールに関する問題。
ア 副腎皮質ホルモン
イ 溶けにくい
ウ 低密度リポタンパク質(いわゆるLDL=悪玉コレステロール)
正答・・・2
問78
貧血及び貧血用薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 鉄分は、赤血球が酸素を運搬する上で重要なヘモグロビンの産生に不可欠なミネラルであり、鉄分の摂取不足を生じると、ただちに貧血の症状が現れる。
イ 銅は、ヘモグロビンの産生過程で、鉄の代謝や輸送に重要な役割を持つため、補充した鉄分を利用してヘモグロビンが産生されるのを助ける目的で、貧血用薬に硫酸銅が配合されている場合がある。
ウ マンガンは、糖質・脂質・タンパク質の代謝をする際に働く酵素の構成物質であり、エネルギー合成を促進する目的で、貧血用薬に硫酸マンガンが配合されている場合がある。
エ 貧血には、ビタミン欠乏性貧血や鉄欠乏性貧血があるが、鉄製剤でいずれの貧血も改善できる。
ア イ ウ エ
1 正 正 誤 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 正
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 誤 正
貧血及び貧血用薬に関する問題。
鉄以外にコバルトやマンガン、銅に関連する知識が問われると難易度はあがる。
ア 誤り。ただちに貧血の症状は現れない。
イ 正しい。
ウ 正しい。
エ 誤り。貧血のうち鉄製剤で改善できるのは、鉄欠乏性貧血のみ。ビタミン欠乏性や腎性貧血は改善できない。
正答・・・4
問79
痔及び痔疾用薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 痔瘻は、肛門内部に存在する肛門腺窩と呼ばれる小さなくぼみに糞便の滓が溜まって炎症・化膿を生じた状態で、体力低下等により抵抗力が弱まっているときに起こりやすい。
イ 痔に伴う痛み・痒みを和らげることを目的として、ジブカイン塩酸塩のような局所麻酔成分が用いられる。
ウ シコンは、ムラサキ科のムラサキの根を基原とする生薬で、新陳代謝促進、殺菌、抗炎症等の作用を期待して用いられる。
エ 痔による肛門部の炎症や痒みを和らげる成分として、プレドニゾロン酢酸エステルのようなステロイド性抗炎症成分が配合されている場合がある。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 正
2 正 誤 正 誤
3 誤 正 正 誤
4 誤 正 誤 誤
5 誤 誤 誤 正
痔及び痔疾用薬に関する問題。
痔の主な病態として、痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔) 、痔瘻がある。時折出題されているので、その違いは押さえておこう。
ア 正しい。
イ 正しい。ジブカイン塩酸塩やリドカイン塩酸塩のような局所麻酔成分が使用される。
ウ 正しい。
↓痔疾患用薬ではないが、シコン(紫根)が配合された外用薬。ムラサキ色が特徴的。
エ 正しい。
正答・・・1
問80
以下の記述にあてはまる泌尿器用薬の漢方処方製剤として、最も適切なものを下から一つ選びなさい。
体力に関わらず、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる。
1 大黄牡丹皮湯
2 大柴胡湯
3 桂枝茯苓丸
4 猪苓湯
5 桃核承気湯
泌尿器用薬の漢方処方製剤に関する問題。
この中で泌尿器用薬の分野で登場するのは猪苓湯のみなので容易に判断できるはず。
正答・・・4