R3 愛知県(東海・北陸地区共通)第3章 主な医薬品とその作用(問31-40)

生薬・漢方知識がピンポイントで問われており、多少厄介

問31
グリセリンが配合された浣腸薬の説明に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 本剤を人肌程度に温めておくと、注入時に不快感を生じることが少ない。

b 排便能力が低下している人は、便秘の予防のために本剤を繰り返し使用する必要がある。

c 効果を十分に得るために、薬液を注入した後すぐに排便を試みるとよい。

d 痔出血の症状があるときは、本剤の使用により赤血球の破壊(溶血)を引き起こす、また、腎不全を起こすおそれがあり、使用前に治療を行っている医師等に相談する必要がある。

1(a、c) 2(b、c) 3(b、d) 4(a、d)


グリセリンが配合された浣腸薬の説明に関する問題。
具体的な市販薬としては「イチジク浣腸」をイメージすれば良いでしょう。

a 正しい。
b 誤り。繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなるため、連用しないこととされている。
c 誤り。すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。
d 正しい。
↓イチジク浣腸


正答・・・4


問32
貧血用薬(鉄製剤)に係る相談を受けたときの対応に関する記述のうち、正しいものはどれか。

1 より効果が得られるよう複数の鉄製剤を併用するよう提案する。

2 消化器系への副作用を軽減するには、食後に服用することが望ましいと説明する。

3 緑茶の摂取により鉄の吸収が良くなるので、服用の前後30分に緑茶を摂取するよう勧奨する。

4 食生活を改善し、かつ本剤の使用を2週間程度続けても症状の改善がみられない場合には、別の一般用医薬品である鉄製剤への変更を提案する。


貧血用薬(鉄製剤)に関する問題。

1 誤り。複数の貧血用薬と併用すると、鉄分の過剰摂取となり、胃腸障害や便秘等の副作用が起こりやすくなる。 
2 正しい。
3 誤り。服用の前後30分にタンニン酸を含む飲食物(緑茶、紅茶、コーヒー、ワイン、柿等)を摂取すると、タンニン酸と反応して鉄の吸収が悪くなることがあるので、服用前後はそれらの摂取を控える。
4 誤り。貧血用薬(鉄製剤)の使用を漫然と継続せずに医療機関を受診するよう促す。

正答・・・2


問33
14歳の子供にサリチルアミドが配合されたかぜ薬を使用したいと相談を受けたときの対応に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。

a 本剤は、ウイルスを体内から除去し、かぜの諸症状を緩和する作用があると説明した。

b インフルエンザにかかっている時は、使用を避ける必要があると説明した。

c 本剤の代わりに、副作用の少ないイブプロフェンが配合されたかぜ薬を使用するよう提案した。

d 使用者が過去にアスピリン喘息を発症していないか確認した。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)


サリチルアミドはサリチル酸系解熱鎮痛成分。
市販薬の成分としては、あまり見かけないが、パイロンPL顆粒に配合されている。

a 誤り。あくまで対症療法であり、ウイルスを除去する作用はない。
b 正しい。ここでは、ライ症候群に関する知識が問われている。
まず、「アスピリン(アスピリンアルミニウムも同様)、サザピリンは、(急性脳症の症状がでる)ライ症候群の発生が示唆されており、15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も一般用医薬品として使用してはならない
次に(アスピリンと同じくサリチル酸系の)「エテンザミド及びサリチルアミドについては、水痘(水疱瘡 )又はインフルエンザにかかっている15歳未満の小児に対しては使用を避ける」ことも区別して理解しておく。
c 誤り。イブプロフェンは(一般用医薬品において)15歳未満の小児に対しては、いかなる場合も使用してはならない。
d 正しい。

正答・・・3


問34
生薬成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a ゴミシは、フトモモ科のチョウジの蕾を基原とする生薬で、香りによる健胃作用を期待して用いられる。

b チョウトウコウは、アカネ科のカギカズラ、ウンカリア・シネンシス又はウンカリア・マクロフィラの通例とげを基原とする生薬で、神経の興奮・緊張緩和を期待して用いられる。

c ハンゲは、ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部を基原とする生薬で、鎮咳、去痰、滋養強壮等の作用を期待して用いられる。

d ボウイは、ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓性の茎及び根茎を、通例、横切したものを基原とする生薬で、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる。

  a b c d
1 誤 正 正 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 誤 正


生薬成分に関する問題。

a 誤り。これはチョウジに関する内容。
b 正しい。なお、チョウトウコウ(釣藤鈎)は抑肝散の構成生薬の一つで「カギカズラ」がキーワード。
c 誤り。これはバクモンドウ(麦門冬)に関する内容。なお、バクモンドウは、咳向けの漢方:麦門冬湯の主薬でもある。
d 正しい。

正答・・・3


問35
カンゾウに関する記述について、( )の中に入れるべき字句の正しい組み合わせはどれか。なお、同じ記号の( )内には同じ字句が入る。

カンゾウは、マメ科のウラルカンゾウ又はグリキルリザ・グラブラの根及びストロンで、ときには周皮を除いたもの(皮去りカンゾウ)を基原とする生薬であり、含有する( a )による抗炎症作用のほか、気道粘膜からの分泌を促す等の作用も期待される。
カンゾウを大量に摂取すると( a )の大量摂取につながり、( b )を起こすおそれがあるため、( c )等のカンゾウを含有する医薬品には、注意が必要である。

  a b c
1 グリチルリチン酸 偽アルドステロン症 麻黄湯
2 グリチルリチン酸 偽アルドステロン症 半夏厚朴湯
3 グリチルリチン酸 血圧低下 麻黄湯
4 トラネキサム酸 血圧低下 半夏厚朴湯
5 トラネキサム酸 偽アルドステロン症 呉茱萸湯


当試験頻出のカンゾウ(甘草)に関する問題。
なお、半夏厚朴湯呉茱萸湯は、カンゾウを含まない漢方として頻出である。

a グリチルリチン酸
b 偽アルドステロン症
c 麻黄湯

正答・・・1


問36
第1欄の記述は、生薬成分に関するものである。該当する生薬成分は第2欄のどれか。

第1欄
キク科のベニバナの管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧縮して板状としたものを基原とする生薬であり、末梢の血行を促して鬱血を除く作用があるとされる。

日本薬局方収載のこの生薬成分を煎じて服用する製品は、冷え症及び血色不良に用いられる。

第2欄
1 ウイキョウ
2 オウヒ
3 オウレン
4 コウカ
5 セキサン


生薬成分に関する問題。

「ベニバナの管状花」「冷え性及び血色不良」からコウカ(紅花)を選べるように。
↓コウカの生薬画像


正答・・・4


問37
1~5で示される漢方処方製剤のうち、マオウが含まれないものはどれか。

1 葛根湯
2 小青竜湯
3 五虎湯
4 麦門冬湯
5 薏苡仁湯


マオウ(麻黄)を含まない漢方処方製剤に関する問題。
まず、マオウ(麻黄)は鎮咳効果があることを知っていれば、感冒症状・咳に対応する葛根湯小青竜湯五虎湯は除外しやすいでしょう。
麦門冬湯も咳向けの漢方薬だがマオウを含んでいない。慢性の呼吸器疾患にも用いられるイメージを持っていれば憶えやすいかもしれない。

正答・・・4


問38
漢方処方製剤とその作用との関係の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

 (漢方処方製剤) (作用)
a 小建中湯  ―  かぜの症状を緩和する。
b 芍薬甘草湯 ―  痛みを鎮める。
c 平胃散   ―  胃の不調を改善する。
d 抑肝散陳皮半夏 ―  痰を出しやすくする。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 誤 誤 誤 正
5 正 誤 誤 誤


漢方処方製剤とその作用との関係に関する問題。

a 誤り。関連記事: 小建中湯
b 正しい。
c 正しい。
d 誤り。関連記事:抑肝散 ・抑肝散加陳皮半夏

正答・・・2

 


問39
第1欄の記述は、鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤に関するものである。該当する漢方処方製剤は第2欄のどれか。

第1欄
体力中等度で痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛に適すとされるが、消化器系の副作用(食欲不振、胃部不快感等)が現れやすい等の理由で、胃腸が弱く下痢しやすい人には不向きとされる。

第2欄
1 香蘇散
2 柴胡加竜骨牡蛎湯
3 疎経活血湯
4 白虎加人参湯
5 麻杏甘石湯


鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤に関する問題。

「しびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛」あたりがキーワードで、疎経活血湯を選ぶ。

正答・・・3


問40
三黄瀉心湯に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。

a 本剤は、胃の不調を改善する目的で用いられる。
b 高血圧の患者は、本剤を使用できない。
c 本剤を使用している間は、瀉下薬の使用を避ける必要がある。
d 本剤は、ダイオウを含むため、母乳を与える女性では使用を避けるか、又は使用期間中の授乳を避ける必要がある。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 誤 誤 誤 正
5 正 誤 誤 誤


三黄瀉心湯については、2022.5現在、一般用医薬品での販売はあるものの、決して広く販売・知られているような漢方薬ではない。その為、扱いにくい問題と言って良いでしょう。なお、令和3年は関西広域 問41でも出題されている。

手引きでは、「循環器用薬」の分野で登場します。
循環器用薬と言うとわかりづらいですが、のぼせ気味で顔が赤いとか、鼻血がでやすい、血圧があがると体調が悪くなる人向け、などと言われます。
なお、三黄瀉心湯の「三黄」は構成生薬(黄連、黄ごん、大黄)から名付けられており、便秘薬にもなる大黄を含んでいるので便秘症状にも対応していると憶えると理解しやすいです。

「体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症に適す。」

a 誤り。胃の不調向けではない。
b 誤り。高血圧の随伴症状(のぼせ等)に用いられる。
c 正しい。
d 正しい。ダイオウ(大黄)を含んでいる。

正答・・・3

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