H29 新潟県(北関東・甲信越) 第3章 主な医薬品とその作用 (問81-90)
問81 ジサイクロミンの登場は珍しい。問85(パパベリン)も難しい。
【問81】 次の表は、ある胃腸鎮痛鎮痙薬に含まれている成分の一覧である。
1包(1 g)中
ジサイクロミン塩酸塩 5 mg
乾燥水酸化アルミニウムゲル 400 mg
酸化マグネシウム 200 mg
この胃腸鎮痛鎮痙薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a ジサイクロミン塩酸塩は、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、胃痛、腹痛を鎮める。
b 乾燥水酸化アルミニウムゲルは、消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として配合されている。
c 酸化マグネシウムは中和反応によって胃酸の働きを弱めることを目的として配合されている。
a b c
1 正 正 正
2 正 誤 正
3 誤 正 正
4 誤 正 誤
胃腸鎮痛鎮痙薬に関する問題。具体的な商品としては「コランチルA顆粒」が考えられる。
↓アマゾンサイト
この分野の抗コリン成分としては、ロートエキス、ブチルスコポラミン臭化物が頻出だが、ジサイクロミン塩酸塩の出題は珍しい。知らなかった受験生も多かったでしょう。
a 正しい。
b 誤り。感想水酸化アルミニウムゲルは制酸成分である。中和反応によって胃酸の働きを弱めること(制酸)を目的に配合される。消化管内容物中に発生した気泡の分離を促す成分はジメチルポリシロキサン(ジメチコン)。
c 正しい。酸化マグネシウムも制酸成分である。販売現場では、便秘薬としての方が知られている。
正答・・・2
【問82】 次の表は、ある制酸薬に含まれている成分の一覧である。
1包(1.3 g)中
炭酸水素ナトリウム 200 mg
ケイ酸アルミン酸マグネシウム 300 mg
ロートエキス3倍散 30 mg
(ロートエキスとして 10 mg)
ソファルコン 100 mg
この制酸薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 腎臓病の診断を受けた人では、ナトリウム、マグネシウム等の無機塩類の排泄が遅れたり、体内に貯留しやすくなるため、使用する前にその適否につき、治療を行っている医師等に相談すべきである。
b ロートエキスは、吸収された成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が遅くなるおそれがある。
c ソファルコンは、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
a b c
1 正 正 正
2 誤 正 正
3 正 誤 正
4 正 誤 誤
5 誤 正 誤
制酸薬に関する問題。
具体的な製品としては「アバロンS」が考えられる。
a 正しい。
b 誤り。。ロートエキスの母乳中への移行は頻出。成分の一部が母乳中に移行して乳児の脈が速くなる (頻脈)おそれがあり、授乳中は使用を避ける。「除脈」という表現で、ひっかけ問題の場合もあるので注意。
c 正しい。
正答・・・3
【問83】 次の表は、ある瀉下薬に含まれている成分の一覧である。
3包(6 g)中
プランタゴ・オバタ種皮 2,100 mg
センノシド(センノシドA・Bとして 36 mg) 55.4 mg
ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS) 100 mg
この瀉下薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a プランタゴ・オバタ種皮は、主成分である麦芽糖が腸内細菌によって分解(発酵)して生じるガスによって便通を促すとされている。
b センノシドは、小腸でリパーゼの働きによって生じる分解物が、小腸を刺激することで瀉下作用をもたらすと考えられている。
c ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)には、腸内容物に水分が浸透しやすくする作用があり、糞便中の水分量を増して柔らかくすることによる瀉下作用を期待して用いられる。
a b c
1 正 正 正
2 正 正 誤
3 正 誤 誤
4 誤 正 正
5 誤 誤 正
瀉下薬(いわゆる便秘薬)に関する問題。
a 誤り。これは乳幼児用便秘薬のマルツエキスに関する内容。
b 誤り。これはヒマシ油に関する内容。なお、センノシドは頻出の刺激性便秘薬である。
c 正しい。ジオクチルソジウムスルホサクシネート(DSS)に関する内容。
正答・・・5
【問84】 止瀉薬に含まれる成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 次没食子酸ビスマスは、腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめる(収斂)ことにより、腸粘膜を保護することを目的として用いられる。
b ロペラミド塩酸塩は、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない。
c 木クレオソートは、腸管内の異常発酵等によって生じた有害な物質を吸着させることを目的として用いられる。
a b c
1 正 誤 誤
2 正 誤 正
3 誤 正 誤
4 正 正 誤
5 誤 誤 正
止瀉薬(いわゆる下痢止め)に関する問題。この分野でロペラミド塩酸塩は超頻出成分。市販薬ではトメダインが有名。
↓興和公式チャンネル
a 正しい。ビスマスを含む成分は収斂作用のほか、腸内で発生した有毒物質を分解する作用も持つとされる。
なお、次没食子酸ビスマスを含む製品は少なくマイナーな成分。(ミヤリッチぐらい?)
b 正しい。ロペラミド塩酸塩は、食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いることはできるが、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象外。例えば、外国の衛生状況の良くない地域で下痢になった場合、使用は好ましくない。
c 誤り。木クレオソートは「正露丸」の主成分として知られるが、吸着成分ではない。吸着成分としては、炭酸カルシウム、沈降炭酸カルシウム等がある。
正答・・・4
【問85】 胃腸鎮痛鎮痙薬に含まれる成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a アミノ安息香酸エチルは、メトヘモグロビン血症を起こすおそれがあるため、6歳未満の小児への使用は避ける必要がある。
b 抗コリン成分であるパパベリン塩酸塩は、副作用として、自律神経系を介して眼圧を上昇させる作用を示す。
c オキセサゼインは、局所麻酔作用のほか、胃液分泌を抑える作用もあるとされ、胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される。
a b c
1 正 正 正
2 正 誤 正
3 正 正 誤
4 誤 誤 正
胃腸鎮痛鎮痙薬に含まれる成分に関する問題。
パパベリン塩酸塩については、かなり「重箱の隅」的な細かい点が問われている。
a 正しい。局所麻酔成分アミノ安息香酸エチルの「メトヘモグロビン血症の恐れ」「6歳未満の小児への使用は避ける」は良く出題されている。第5章でも問われます。
b 誤り。手引きには「(パパベリン塩酸塩は)抗コリン成分と異なり自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られている」と書かれている。
c 正しい。オキセサゼインは局所麻酔作用のほか、胃液分泌を抑える作用もあるとされている。OTCでは「サクロンQ」ぐらい。妊婦又は妊娠していると思われる女性、15歳未満の小児では使用を避けることも合わせて押さえておきたい。
正答・・・2
【問86】 浣腸薬(注入剤)及びその成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 注入する薬液は十分冷やしておくと、不快感を生じることが少ない。
b 半量を使用するような場合、残量を再利用すると感染のおそれがあるので使用後は廃棄する。
c グリセリンは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生することで直腸を刺激する作用を期待して用いられる。
d 薬液を注入した後すぐに排便を試みると、薬液のみが排出されて効果が十分得られないことから、便意が強まるまでしばらく我慢する。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 正 正 誤
3 誤 正 誤 正
4 誤 誤 正 正
5 誤 誤 誤 誤
浣腸薬(注入剤)及びその成分に関する問題。
グリセリンは便秘時用の浣腸薬に使用される代表的成分。有名な「イチジク浣腸」もグリセリンが使用されている。
a 誤り。人肌程度に温めた方が不快感は少ない。
b 正しい。
c 誤り。これはグリセリンではなく、炭酸水素ナトリウム坐剤に関する内容。代表品はレシカルボン坐剤。
d 正しい。
正答・・・3
【問87】 駆虫薬及びその成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 駆虫薬は腸管内に生息する虫体にのみ作用し、虫卵には駆虫作用は及ばない。
b 複数の駆虫薬を併用することで駆虫効果が高まる。
c ピペラジンリン酸塩は、アセチルコリン伝達を妨げて回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させることを目的として用いられる。
d パモ酸ピルビニウムは蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされる。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 誤 正 正
3 誤 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 正 誤 誤
現在殆ど販売機会はない駆虫薬に関する問題。
現在も販売されている駆虫薬は殆どないが、パモ酸ピルビニウムは今でも販売されているので、直前期でも最低限押さえておきたい。ヒマシ油との併用は避ける点も、何故か良く問われるので合わせて憶えておきたい。
a 正しい。
b 誤り。複数の駆虫薬を併用しても駆虫効果が高まることはなく、副作用が現れやすくなり、組合せによってはかえって駆虫作用が減弱することもある。
c 正しい。ピペラジンリン酸塩に関する内容。なお、現在市販薬としての販売されているかは不明。
d 正しい。
正答・・・2
【問88】 外用痔疾用薬及びその成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 外用痔疾用薬は局所に適用されるものであるが、坐剤及び注入軟膏では、成分の一部が直腸粘膜から吸収されて循環血流中に入りやすく、全身的な影響を生じることがある。
b 痔による肛門部の創傷の治癒を促す効果を期待して、デカリニウム塩化物のような組織修復成分が用いられる。
c 粘膜表面に不溶性の膜を形成することによる、粘膜の保護・止血を目的として、タンニン酸が配合されている場合がある。
d 痔疾患に伴う局所の感染を防止することを目的として、アラントインのような殺菌消毒成分が配合されている場合がある。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 誤 誤 正 正
4 正 誤 正 誤
5 正 正 正 正
外用痔疾用薬及びその成分に関する問題。
a 正しい。
b 誤り。デカリニウム塩化物は殺菌消毒成分。
c 正しい。
d 誤り。アラントインは組織修復成分である。痔の薬に用いられる殺菌消毒成分としてはクロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物、デカリニウム塩化物等がある。
正答・・・4
【問89】 内用痔疾用薬及びその成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 肛門周囲の末梢血管の血行を促して、鬱血を改善する効果を期待して、ビタミンDが配合されている場合がある。
b カルバゾクロムは、毛細血管を補強、強化して出血を抑える働きがあるとされている。
c 乙字湯 、芎帰膠艾湯のいずれも、構成生薬としてカンゾウを含む。
a b c
1 正 正 正
2 誤 正 正
3 誤 誤 誤
4 正 正 誤
内用痔疾用薬及びその成分に関する問題。
a 誤り。×ビタミンD→〇ビタミンE。血行改善のビタミンときたらビタミンEである。
b 正しい。カルバゾクロムは止血成分。血管を強化して出血を抑えることが期待される。医療用では「アドナ」で知られる。OTCはあまり含有製品はみかけない。
c 正しい。乙字湯(おつうじとう)が痔疾患向けであることは憶えておきたい。直前期なら芎帰膠艾湯は深追いしない。
正答・・・2
【問90】 眼科用薬に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
1 点眼の際に容器の先端が眼瞼(まぶた)や 睫毛(まつげ)に触れると、雑菌が薬液に混入して汚染を生じる原因となるため、触れないように注意しながら点眼する。
2 一度に何滴も点眼しても効果が増すわけではなく、むしろ鼻粘膜や喉から吸収されて、副作用を起こしやすくなる。
3 点眼後は、数秒間、眼瞼(まぶた)を閉じて薬液を結膜嚢内に行き渡らせるが、その際、目頭は押さえない方が効果的とされる。
4 一般用医薬品の点眼薬には、緑内障の症状を改善できるものはなく、配合されている成分によっては、緑内障の悪化につながるおそれがある。
5 コンタクトレンズをしたままでの点眼は、ソフトコンタクトレンズ、ハードコンタクトレンズに関わらず、添付文書に使用可能と記載されてない限り行うべきでない。
眼科用薬に関する問題は通常2問登場します。これはサービス問題でしょう。
1 正しい。
2 正しい。
3 誤り。目頭を押さたほうが、薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされている。
4 正しい。
5 正しい。
正答・・・3
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