R3 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問81-90)
幅広い知識がないと迷うが、マイナー成分はの登場は少ない。
問81
循環器用薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a ユビデカレノンは、心筋の酸素利用効率を高めて収縮力を高めることによって血液循環の改善効果を示すとされ、軽度な心疾患により日常生活の身体活動を少し越えたときに起こる動悸、息切れ、むくみの症状に用いられる。
b ルチンは、ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。
c コウカ(キク科のベニバナの管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたもので、ときに圧縮して板状としたものを基原とする生薬)には、末梢の血行を促して鬱血を除く作用があるとされる。
d 七物降下湯は、体力中等度以上で、のぼせ気味で顔面紅潮し、精神不安、みぞおちのつかえ、便秘傾向などのあるものの高血圧の随伴症状(のぼせ、肩こり、耳なり、頭重、不眠、不安)、鼻血、痔出血、便秘、更年期障害、血の道症に適すとされる。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 正 正 正 誤
3 正 誤 誤 正
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 正 正
循環器用薬及びその配合成分に関する問題。一般用医薬品ではピンとこない分野だが、ユビデカレノン(別名:コエンザイムQ10)は頻出。
a 正しい。
b 正しい。関連記事:ルチン
c 正しい。関連記事:コウカ(紅花)
d 誤り。この分野では(高血圧に伴う随伴症状向けに)三黄瀉心湯や七物降下湯の2種類の漢方製剤が登場するが、こちらは「体力中等度以上」向けの三黄瀉心湯に関する内容。
一方で、七物降下湯のしばり表現等は以下のように記載されています。
「体力中等度以下で、顔色が悪くて疲れやすく、胃腸障害のないものの高血圧に伴う随伴症状(のぼせ、肩こり、耳鳴り、頭重)に適すとされるが、胃腸が弱く下痢しやすい人では、胃部不快感等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。また、小児向けの漢方処方でなく、15歳未満の小児への使用は避ける必要がある。」
実際、どちらの漢方製剤も市販薬で対応するような分野ではないが、三黄瀉心湯の「三黄」は構成生薬(黄連、黄ごん、大黄)から名付けられており、便秘薬にもなる大黄を含んでいるので、わりと実証向け(体力中等度以上、便秘に関する記述アリ)と理解しても良いでしょう。
正答・・・2
問82
痔、痔疾用薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 痔は、肛門付近の血管が鬱血し、肛門に負担がかかることによって生じる肛門の病気の総称である。
b トコフェロール酢酸エステルは、血管を収縮する働きがあるとされ、止血効果を期待して用いられる。
c 殺菌消毒成分であるアラントインは、痔疾患に伴う局所の感染を防止することを目的として配合される。
d 乙字湯は、体力中等度以上で大便が硬く、便秘傾向のあるものの痔核(いぼ痔)、切れ痔、便秘、軽度の脱肛に適すとされ、構成生薬としてカンゾウを含む。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 正 誤 誤 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 正 正 正
痔、痔疾用薬及びその配合成分に関する問題。
a 正しい。過去問であまり問われたことがなかった文面ですが、手引きどおりで正しい内容です。
b 誤り。トコフェロール酢酸エステルはビタミンEのことで、末梢血管での血行促進を期待して用いられる。血管収縮で止血効果を期待するのはアドレナリン作動成分(メチルエフェドリン塩酸塩など)。
c 誤り。アラントインは 組織修復成分に分類される。この分野の殺菌消毒成分としては、クロルヘキシジン塩酸塩、セチルピリジニウム塩化物、ベンザルコニウム塩化物など。
d 正しい。関連記事:乙字湯
正答・・・2
問83
婦人薬及びその配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a エストラジオールを含有する婦人薬は、一般用医薬品では内服薬のみが認められている。
b エチニルエストラジオールは、長期連用することにより、血栓症を生じるおそれがある。
c 桂枝茯苓丸は、体力虚弱なものの月経不順や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤であり、特に重篤な副作用は知られていない。
d 桃核承気湯は、体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症に適すとされ、構成生薬としてカンゾウを含む。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
婦人薬及びその配合成分に関する問題。
a 誤り。一般用医薬品では、膣粘膜又は外陰部に適用されるものがあるが内服薬はない。これらの成分は適用部位から吸収されて循環血液中に移行する。
なお、この問題はエチニルエストラジオール、エストラジオールを含有する軟膏剤「ヒメロス」の存在を知っていれば容易に判断できる。
「ヒメロス」は不感症や冷感症、婦人更年期障害(のぼせ、ほてり、冷え、イライラ等)に効能を持つ外用薬。ヒメロスを、直接膣粘膜・外陰部に塗布することで、女性ホルモン(卵胞ホルモン)を補充し、諸症状の改善が期待でされもちられる。この場合、外陰部への局所的な働きのほか、粘膜から吸収されることで全身的な作用も期待されている。
b 正しい。
c 誤り。桂枝茯苓丸が、虚証向けが多い婦人用薬の中でも「比較的体力がある」(実証)向けの漢方薬であることを知っていれば、容易に誤りと判断できる。また、後半のような記述がくれば大抵誤りだが、手引きには、まれに重篤な副作用として「肝機能障害」の記載がある。
d 正しい。桃核承気湯は、婦人用薬の中で「打撲」や「便秘」のキーワードがある点がポイント。
正答・・・4
問84
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものはどれか。
体力中等度又はやや虚弱で冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされるが、体の虚弱な人(体力の衰えている人、体の弱い人)、胃腸の弱い人、発汗傾向の著しい人では、不向きとされる。構成生薬としてマオウを含む。
1 加味逍遙散
2 柴胡桂枝乾姜湯
3 四物湯
4 五積散
5 当帰芍薬散
漢方処方製剤に関する問題。
加味逍遙散、当帰芍薬散以外は、特徴的なキーワードが少なく、やや難しかったでしょう。
これは、「腰痛、神経痛」の他に、「感冒」向けから、五積散と判断したい。
正答・・・4
問85
内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 皮膚感染症(たむし、疥癬等)により、湿疹やかぶれ等に似た症状が現れた場合、アレルギー用薬によって一時的に痒み等の緩和を図ることは適当でなく、皮膚感染症そのものに対する対処を優先する必要がある。
b パーキンソン病の治療のため医療機関でセレギリン塩酸塩等のモノアミン酸化酵素阻害剤が処方されて治療を受けている人が、プソイドエフェドリン塩酸塩が配合された鼻炎用内服薬を使用した場合、副作用が現れやすくなるおそれが高く、使用を避ける必要がある。
c 一般用医薬品には、アトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療に用いることを目的とするものがある。
d メキタジンは、肥満細胞から遊離したヒスタミンが受容体と反応するのを妨げることにより、ヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
a b c d
1 誤 誤 正 誤
2 誤 正 正 正
3 正 正 誤 誤
4 正 誤 正 正
5 正 正 誤 正
内服アレルギー用薬及びその配合成分に関する問題。
a 正しい。しっかり読み取れば、常識的に判断できるでしょう。
b 正しい。プソイドエフェドリン塩酸塩は超頻出だが、ここ数年パーキンソン病治療薬の「モノアミン酸化酵素阻害剤」との併用に関する問題が各地域で見られる。
c 誤り。一般用医薬品においては、アトピー性皮膚炎や慢性疾患は対象外。
d 正しい。メキタジンは抗ヒスタミン成分。なお、あとで登場するクロモグリク酸ナトリウムとの作用の違いについては区別できるように。
正答・・・5
問86
鼻に用いる薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 鼻粘膜が腫れてポリープ(鼻茸)となっている場合には、一般用医薬品のスプレー式鼻炎用点鼻薬の使用が適当である。
b 一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲は、急性又はアレルギー性の鼻炎及びそれに伴う副鼻腔炎並びに蓄膿症である。
c アドレナリン作動成分が配合された点鼻薬は、過度に使用されると鼻粘膜の血管が拡張して二次充血を招き、鼻づまり(鼻閉)がひどくなりやすい。
a b c
1 正 正 正
2 正 誤 誤
3 誤 正 誤
4 誤 正 正
5 誤 誤 正
鼻に用いる薬に関する問題。bが迷う。
a 誤り。医療機関における治療が必要となる。
b 誤り。一般用医薬品の鼻炎用点鼻薬の対応範囲は、急性又はアレルギー性の鼻炎及びそれに伴う副鼻腔炎であり、蓄膿症などの慢性のものは対象となっていない。(但し、葛根湯加川きゅう辛夷などの漢方製剤には、蓄膿症や慢性鼻炎の効能が記載されているものがあり、区別しておく。)
c 正しい。関連記事:ナファゾリン塩酸塩
正答・・・5
問87
眼科用薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a コンドロイチン硫酸ナトリウムは、結膜や角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いられる。
b クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト(室内塵)等による目のアレルギー症状及びアレルギー性でない結膜炎に対して有効である。
c イプシロン-アミノカプロン酸は、抗菌作用を示し、細菌感染(ブドウ球菌や連鎖球菌)による結膜炎やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的として用いられる。
d プラノプロフェンは、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
眼科用薬の配合成分に関する問題。
a 正しい。
b 誤り。クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からのヒスタミン遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト等による目のアレルギー症状の緩和に用いるが、アレルギー性でない結膜炎等に対しては無効である。
c 誤り。イプシロン-アミノカプロン酸は抗炎症成分。目薬の抗菌成分としてはサルファ剤のスルファメトキサゾールを押さえておく。
d 正しい。プラノプロフェンは点眼薬に用いられる非ステロイド性抗炎症成分。
↓プラノプロフェン含有目薬のパッケージ
正答・・・2
問88
きず口等の殺菌消毒成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a ヨードチンキは、ヨウ素及びヨウ化カリウムをエタノールに溶解させたもので、化膿している部位の消毒に用いる。
b アクリノールは、黄色の色素で、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示す。
c エタノール(消毒用エタノール)は、皮膚刺激性が強いため、患部表面を軽く清拭するにとどめ、脱脂綿やガーゼに浸して患部に貼付することは避けるべきとされている。
a b c
1 正 正 誤
2 正 誤 正
3 正 正 正
4 誤 正 誤
5 誤 誤 正
きず口等の殺菌消毒成分に関する問題。
現在殆ど使用されていないヨードチンキの細かい知識が問われていて判断に迷ったでしょう。
a 誤り。前半部分は正しいが、手引きによると、ヨードチンキは化膿している部位では、かえって症状を悪化させるおそれがある。
b 誤り。アクリノールの「黄色の色素」は正しいが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。
c 正しい。
正答・・・5
問89
外皮用薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a イブプロフェンピコノールは、吹き出物に伴う皮膚の発赤や腫れを抑えるほか、吹き出物(面皰)の拡張を抑える作用があるとされる。
b ケトプロフェンが配合された外皮用薬を使用している間及び使用後も当分の間は、天候にかかわらず、戸外活動を避けるとともに、日常の外出時も塗布部を衣服、サポーター等で覆い、紫外線に当たるのを避ける必要がある。
c ステロイド性抗炎症成分をコルチゾンに換算して1g又は1mL中に0.025mgを超えて含有する外皮用薬では、特に長期連用を避ける必要がある。
d 主なステロイド性抗炎症成分としては、デキサメタゾン、プレドニゾロン吉草酸エステル酢酸エステル、ピロキシカム等がある。
a b c d
1 正 正 正 正
2 正 正 正 誤
3 正 誤 誤 正
4 誤 正 誤 誤
5 誤 誤 正 正
外皮用薬及びその配合成分に関する問題。
細かい知識も問われており、やや迷う。
a 正しい。関連記事:イブプロフェンピコノール
b 正しい。ケトプロフェンの光線過敏症に関する内容は、5章でも頻出。
c 正しい。ここ5年位の過去問にはあまり登場してこなかったが、以前はよく出題されていた内容です。
d 誤り。最後のピロキシカムは非ステロイド性抗炎症成分である。
正答・・・2
問90
皮膚に用いる薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a サリチル酸は、角質成分を溶解することにより角質軟化作用を示す。
b 尿素は、角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善することを目的として用いられる。
c 酸化亜鉛は、患部のタンパク質と結合して皮膜を形成し、皮膚を保護する作用を示すため、患部が浸潤又は化膿している場合に用いられる。
d ヘパリン類似物質は、血液凝固を抑える働きがあるため、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症など)の診断を受けた人では、使用を避ける必要がある。
a b c d
1 正 正 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 正 正 誤
4 誤 誤 正 誤
5 正 誤 誤 正
皮膚に用いる薬の配合成分に関する問題。
酸化亜鉛は昨年に続き出題された。
a 正しい。なお、サリチル酸は、いわゆる「イボコロリ」にも使用されている成分。
b 正しい。尿素はOTCでは代表的な保湿成分であり、角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善する。
c 誤り。前半部分は正しいが、後半が誤り。患部が浸潤又は化膿している場合、傷が深いときなどには、表面だけを乾燥させてかえって症状を悪化させるおそれがあり、使用を避けることとされている。
d 正しい。ヘパリン類似物質は血行促進や保湿を目的に用いられる(医療用ではヒルドイドが超有名)。血液凝固を抑える働きがあるため、出血しやすい人、出血が止まりにくい人、出血性血液疾患(血友病、血小板減少症、紫斑症など)の診断を受けた人では、使用を避ける。
正答・・・1