H28 福岡県(九州・沖縄地区共通) 第3章 主な医薬品とその作用(問61-70)
標準的な内容が多いが、問68(去痰薬)は難しい。
問61 かぜ及びかぜ薬に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア かぜ薬は、ウイルスの増殖を抑えたり、ウイルスを体内から除去するものである。
イ かぜとよく似た症状が現れる疾患に、喘息、アレルギー性鼻炎、リウマチ熱、関節リウマチ、肺炎、肺結核、髄膜炎、急性肝炎、尿路感染症等がある。
ウ かぜの原因の約8割は、細菌の感染によるものである。
エ 15歳未満の小児で水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっているときは、サリチルアミド、エテンザミドが配合されたかぜ薬を使用することが適切である。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 誤
5 誤 誤 正 正
かぜ及びかぜ薬に関する一般的知識を問う問題。
ア 誤り。お約束の誤り文。いわゆる市販のかぜ薬は、あくまでかぜの諸症状を緩和するためのものであり、ウイルスや細菌自体の増殖を抑える働きはない。
イ 正しい。
ウ 誤り。これもお約束の誤り文。かぜの原因の約8割は、(細菌ではなく)ウイルスの感染が原因とされる。
エ 誤り。15歳未満の小児で水痘(水疱瘡)又はインフルエンザにかかっているときは、サリチルアミド、エテンザミドは使用を避ける必要がある。理由は、構造が類似しているアスピリンにおいて、ライ症候群の発症との関連性が示唆されているためである。
なお、アスピリン・サザピリンは15歳未満の小児に対して、いかなる場合も一般用医薬品として使用しないこととされている。(アスピリン、サリチルアミド、エテンザミドの微妙な使用制限の違いに注意)
正答・・・4
問62 かぜ薬に配合される成分に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 解熱鎮痛成分として、クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、メキタジンがある。
イ 咳を抑える成分(鎮咳成分)として、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩がある。
ウ 痰の切れを良くする成分(去痰成分)として、グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、エチルシステイン塩酸塩がある。
エ 炎症による腫れを和らげる成分(抗炎症成分)として、ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素がある。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
かぜ薬に配合される成分に関する問題。
エチルシステインはマイナーだが、他はどれも憶えておきたい成分。
ア 誤り。クロルフェニラミンマレイン酸塩、カルビノキサミンマレイン酸塩、メキタジンは、どれも抗ヒスタミン成分です。
イ 正しい。コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩、ノスカピン、チペピジンヒベンズ酸塩は、どれも鎮咳成分。
ウ 正しい。グアイフェネシン、グアヤコールスルホン酸カリウム、ブロムヘキシン塩酸塩、エチルシステイン塩酸塩は、どれも去痰成分。
エ 誤り。ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は鎮静成分で、かぜ薬に配合される場合は鎮痛補助的な役割を示す。
正答・・・3
問63 かぜ薬の副作用及び相互作用に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア かぜ薬の重篤な副作用は、配合されている抗ヒスタミン成分によるものが多い。
イ まれに起きるかぜ薬の重篤な副作用として、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症がある。
ウ かぜ薬には、通常、複数の有効成分が配合されているため、他のかぜ薬や解熱鎮痛薬、鎮咳去痰薬、鼻炎用薬、アレルギー用薬、鎮静薬、睡眠改善薬などが併用されると、同じ成分又は同種の作用を持つ成分が重複して、効き目が強くなりすぎたり、副作用が起こりやすくなるおそれがある。
エ かぜ薬の副作用として、下痢が現れることがある主な成分には、コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩がある。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
かぜ薬の副作用及び相互作用に関する問題。
ア 誤り。×抗ヒスタミン成分→〇解熱鎮痛成分(生薬を除く)
イ 正しい。かぜ薬の重篤な副作用として、ショック(アナフィラキシー)、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症などがある。詳しい内容は第2章でも問われる。
ウ 正しい。
エ 誤り。コデインリン酸塩、ジヒドロコデインリン酸塩で良く知られた副作用に便秘がある。
正答・・・3
問64 鎮痛の目的で用いられる漢方処方製剤に関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 芍薬甘草湯は、体力に関わらず、筋肉の急激な痙攣を伴う痛みのあるもののこむらがえり、筋肉の痙攣 、腹痛、腰痛に適する。
2 疎経活血湯は、体力中等度で痛みがあり、ときにしびれがあるものの関節痛、神経痛、腰痛、筋肉痛に適する。
3 釣藤散は、体力中等度で、慢性に経過する頭痛、めまい、肩こりなどがあるものの慢性頭痛、 神経症、高血圧の傾向のあるものに適する。
4 呉茱萸湯は、体力虚弱で、汗が出、手足が冷えてこわばり、ときに尿量が少ないものの関節痛、神経痛に適する。
鎮痛の目的で使用される漢方薬に関する問題。
特に芍薬甘草湯は頻出だが、他の漢方薬も憶えておく。
1 正しい。芍薬甘草湯は「こむら返り」「筋肉のけいれん」の漢方薬として有名。カンゾウ含有量が多いことでも知られ、偽アルドステロン症の知識もセットで押さえておく。
2 正しい。疎経活血湯のキーワードは「しびれがある神経痛、関節痛、腰痛」。
3 正しい。釣藤散は「慢性頭痛」「高血圧傾向」がキーワード。
4 誤り。これは桂枝加朮附湯に関する内容。呉茱萸湯は「頭痛」の漢方薬として知られるが、そのキーワードがないことから容易に判断したい。
正答・・・4
問65 眠気を促す薬に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として、慢性的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)の緩和に用いられる。
イ 小児及び若年者では、抗ヒスタミン成分により、眠気とは反対の神経過敏や中枢興奮などが現れることがある。
ウ ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は、反復して摂取すると依存を生じることがある。
エ ブロモバレリル尿素は、胎児に対する安全性が確立されているため、妊婦又は妊娠していると思われる女性でも使用が可能である。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
眠気を催す薬に関する問題。今回成分名は登場していないが、一般用医薬品の睡眠改善成分ジフェンヒドラミンの知識も合わせて押さえておく。
ア 誤り。「慢性的に」とあれば、通常OTCの対象外。容易に判断できるように。
イ 正しい。ジフェンヒドラミン塩酸塩に関する内容で、良く出題されている。
ウ 正しい。ブロモバレリル尿素、アリルイソプロピルアセチル尿素は依存性がある。特にブロモバレリル尿素は、かつて不眠症や不安緊張状態の鎮静を目的に濫用されていた時期もあった。
エ 誤り。ブロモバレリル尿素は、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避ける。
正答・・・3
問66 カフェインに関する以下の記述のうち、誤っているものを一つ選びなさい。
1 カフェインは、脳に軽い興奮状態を引き起こし、一時的に眠気や倦怠感を抑える効果がある。
2 カフェインの作用として、腎臓におけるカリウムイオン(同時に水分)の再吸収抑制があり、尿量の増加(利尿)をもたらす。
3 カフェインには、作用は弱いながら反復摂取により依存を形成するという性質があるため、「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」という注意喚起がなされている。
4 カフェインを過量に摂取すると、中枢神経系や循環器系への作用が強く現れるおそれがある。
毎年のように出題されているカフェインに関する問題。
1 正しい。
2 誤り。×カリウムイオン→〇ナトリウムイオン
3 正しい。
4 正しい。
正答・・・2
問67 乗物酔い(動揺病)及び鎮暈薬(乗物酔い防止薬)に関する以下の記述のうち、正しいものの組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 乗物酔いは、主に胃が体の平衡を感知し、消化管の機能を低下させることにより、吐きけ、頭痛を引き起こすものである。
イ 抗めまい成分、抗ヒスタミン成分、抗コリン成分及び鎮静成分には、いずれも眠気を促す作用がある。
ウ ジフェニドール塩酸塩は、副作用として、頭痛、排尿困難、眠気、散瞳による異常な眩しさ、口渇のほか、浮動感や不安定感が現れることがある。
エ メクリジン塩酸塩は、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが早く持続時間が長い。
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
乗り物酔い薬防止薬に関する問題。
ア 誤り。体の平衡を感知しているのは、主に内耳の平衡器官である。
イ 正しい。
ウ 正しい。ジフェニドール塩酸塩は「抗めまい成分」に分類されるが、抗ヒスタミン、抗コリン様の作用も示す。
エ 誤り。メクリジン塩酸塩は乗物酔い防止薬に使用される成分。他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く持続時間が長い特徴がある。なお、OTCでは「トラベルミンファミリー」に配合されている。
正答・・・3
問68 咳止め・痰を出しやすくする薬(鎮咳去痰薬)に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 鎮咳作用を期待して、ゴミシのような生薬成分が配合されている場合がある。
イ デキストロメトルファンフェノールフタリン塩は、主にトローチ剤・ドロップ剤に配合される。
ウ メチルエフェドリン塩酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩等のアドレナリン作動成分は、交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮めることを目的として用いられる。
エ 痰の切れを良くする成分(去痰成分)として、気道粘膜からの粘液分泌を促進する目的で、カルボシステインが配合されている場合がある。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 誤
5 誤 誤 正 正
鎮咳去痰薬に関する問題。これは細かい知識が問われていて難しい。
ア 正しい。ゴミシ(五味子)
イ 正しい。かなり細かい知識である。
ウ 正しい。特にメチルエフェドリン塩酸塩は、総合感冒薬に良く配合されている。メトキシフェナミン塩酸塩は市販薬ではマイナーな成分だが、試験ではわりと出題されている。
エ 誤り。カルボシステインは「痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させる」タイプである。「気道粘膜からの分泌を促進するタイプ」の去痰成分としては、グアイフェネシンがある。
去痰成分のタイプは色々あり対策が大変だが、過去問に登場するものは最低限押さえておくように。
正答・・・1
問69 咳止めや痰を出しやすくする目的で用いられる漢方処方製剤及び生薬成分に関する以下の記述の正誤について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
ア 半夏厚朴湯は、体力中等度をめやすとして、幅広く応用できる。気分がふさいで、咽喉・食道部に異物感があり、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴う不安神経症、神経性胃炎、つわり、咳、しわがれ声、のどのつかえ感に適する。
イ 柴朴湯は、体力中等度で、気分がふさいで、咽喉、食道部に異物感があり、かぜをひきやすく、ときに動悸、めまい、嘔気などを伴うものの小児喘息、気管支喘息、気管支炎、咳、不安神経症に適すが、むくみの症状のある人等には不向きである。
ウ キョウニンは、バラ科のホンアンズ、アンズ等の種子を基原とする生薬で、体内で分解されて生じた代謝物の一部が延髄の呼吸中枢、咳嗽中枢を鎮静させる作用を示す。
エ バクモンドウは、ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部を基原とする生薬で、鎮咳 、去痰 、滋養強壮等の作用を期待して用いられる。
ア イ ウ エ
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 正 誤
5 誤 誤 誤 正
鎮咳去痰目的で用いられる漢方薬に関する問題。キョウニン(杏仁)の知識が分かれ目。
ア 正しい。半夏厚朴湯の特徴的なキーワードは「のどのつかえ感、異物感」。
イ 正しい。。柴朴湯が小柴胡湯と半夏厚朴湯の合剤であることを知っている必要がある。柴朴湯はかつて喘息向けの漢方薬として知られるが、キーワードとしては「小児喘息、気管支喘息、気管支炎」とともに、半夏厚朴湯にまつわる「食道部に異物感」「不安神経症」が一緒になっている。
ウ 正しい。
エ 正しい。バクモンドウ(麦門冬)は麦門冬湯の主薬である。
正答・・・1
問70 胃腸に作用する医薬品成分とその期待される作用の関係について、正しい組み合わせを下から一つ選びなさい。
成分 作用
ア スクラルファート - 唾液や胃液の分泌を抑制する
イ オウバク - 胃酸の働きを弱める
ウ グリチルリチン酸二カリウム - 胃粘膜の炎症を和らげる
エ ピレンゼピン塩酸塩 - 胃液の分泌を抑制する
1(ア、イ) 2(ア、エ) 3(イ、ウ) 4(ウ、エ)
胃腸に作用する成分に関する問題。
ア 誤り。スクラルファートは胃粘膜保護・修復成分。
イ 誤り。オウバク(黄柏)は、抗菌作用や抗炎症作用、収斂作用があるとされている。
ウ 正しい。グリチルリチン酸二カリウムは抗炎症成分。
エ 正しい。ピレンゼピン塩酸塩は、消化管の運動にはほとんど影響を与えずに胃液の分泌を抑える作用を示すとされている。
正答・・・4
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