R6 愛知県(東海・北陸地区共通)第3章 主な医薬品とその作用(問31-40)
標準レベルの問題です
問31
胃の薬及びその配合成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a 消化管内容物中に発生した気泡の分離を促すことを目的として、ソファルコンが配合されている場合がある。
b 胆汁の分泌を促す作用(利胆作用)があるとされるデヒドロコール酸は、肝臓の働きを高める作用もあるとされるが、肝臓病の診断を受けた人ではかえって症状を悪化させるおそれがある。
c 弱った胃の働きを高めること(健胃)を目的に配合される生薬成分は、独特の味や香りを有しており、吐きけを起こすことがあるため、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用することが適当である。
d 安中散、人参湯(理中丸)、平胃散、六君子湯は、胃の不調を改善する目的で用いられる漢方処方製剤であり、いずれも構成生薬としてカンゾウを含む。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、d) 4(c、d)
胃の薬及びその配合成分に関する問題
a 誤 「気泡の分離を促す」から消泡成分のジメチルポリシロキサン(別名ジメチコン)に関する記述である。ソファルコンは胃粘膜保護成分。
b 正
c 誤 これは頻出。生薬成分が配合された健胃薬は、散剤をオブラートで包む等、味や香りを遮蔽する方法で服用されると効果が期待できず、そのような服用の仕方は適当でない。
d 正 関連記事:安中散、平胃散、六君子湯
正解・・・3
問32
腸の薬に配合される成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a トリメブチンマレイン酸塩は、消化管(胃及び腸)の平滑筋に直接作用して、消化管の運動を調整する作用があるとされ、まれに重篤な副作用として肝機能障害を生じることがある。
b 次硝酸ビスマスは、腸粘膜のタンパク質と結合して不溶性の膜を形成し、腸粘膜をひきしめる(収斂)ことにより、腸粘膜を保護することを目的として配合されている場合がある。
c ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、食あたりや水あたりによる下痢の症状に用いられることを目的としている。
d タンニン酸ベルベリンは、収斂作用を持つタンニン酸と抗菌作用を持つベルベリンの化合物であり、消化管内ではタンニン酸とベルベリンに分かれて、それぞれ瀉下に働くことを期待して用いられる。
a b c d
1 誤 誤 正 正
2 正 誤 誤 正
3 正 正 誤 誤
4 正 正 正 誤
5 誤 正 正 正
腸の薬に配合される成分に関する問題
a 正 関連記事:トリメブチンマレイン酸塩
b 正 関連記事:次硝酸ビスマス
c 誤 これは頻出。ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬は、食べすぎ・飲みすぎによる下痢、寝冷えによる下痢の症状に用いられることを目的としており、食あたりや水あたりによる下痢については適用対象でない。
↓ロペラミド塩酸塩が配合された止瀉薬(下痢止め)
d 誤 後半が誤り。タンニン酸ベルベリンは腸内殺菌成分であり、それぞれ「瀉下に働く(≒便を出す・便秘薬)」ではなく「止瀉に働く(≒下痢を抑える・下痢止め)」である。なお、当ブロックでは前年も、木クレオソートで「瀉下」と「止瀉」の違いをひっかけさせる問題がありました。
正解・・・3
問33
登録販売者が行う瀉下薬の販売時における説明に関する記述のうち、誤っているものはどれか。
1 日本薬局方収載の加香ヒマシ油を販売する際に、防虫剤や殺鼠剤を誤って飲み込んだ場合のような脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要があることを説明した。
2 ビサコジルを有効成分として含む腸溶性製剤を販売する際に、胃内でビサコジルが溶け出すおそれがあるため、服用前後1時間以内は制酸成分を含む胃腸薬の服用や牛乳の摂取を避けるように説明した。
3 酸化マグネシウムを有効成分として含む製剤を販売する際に、腎臓病の診断を受けた人では、高マグネシウム血症を生じるおそれがあることを説明した。
4 センナを有効成分として含む製剤を販売する際に、妊婦では使用を避ける必要があるが、吸収された成分は乳汁中に移行しないため、母乳を与える女性では使用を避ける必要はないことを説明した。
登録販売者が行う瀉下薬の販売時における説明に関する問題
1 正 小腸刺激性瀉下成分のヒマシ油は、誤飲等による中毒の場合など、腸管内の物質をすみやかに体外に排除させなければならない場合に用いられるが、防虫剤や殺鼠剤のような脂溶性の物質による中毒には使用を避ける必要がある(ナフタレンやリン等がヒマシ油に溶け出して、中毒症状を増悪させる)。なお、(ヒマシ油ではなく)加香ヒマシ油として出題されるのは珍しいが、試験内ではその違いを意識する必要はない。
↓ヒマシ油(医療用)
2 正 なお、ビサコジルは大腸刺激性瀉下成分で、大腸のうち特に結腸や直腸の粘膜を刺激して、排便を促すと考えられています。
3 正 酸化マグネシウムは無機塩類で、腸内容物の浸透圧を高めることで糞便中の水分量を増し、また、大腸を刺激して排便を促すことを目的として使用されます。
4 誤 後半が誤り。センナ、センノシド、ダイオウについては、吸収された成分の一部が乳汁中に移行し、乳児に下痢を生じるおそれがあり、母乳を与える女性では使用を避けるか、使用期間中の授乳を避ける必要がある。
正解・・・4
問34
浣腸薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 浣腸薬は、繰り返し使用すると直腸の感受性が高まり、効果が強くなるため、連用しないこととされている。
b ビサコジルは、直腸内で徐々に分解して炭酸ガスの微細な気泡を発生することで直腸を刺激する作用を期待して用いられる。
c ソルビトールは、浸透圧の差によって腸管壁から水分を取り込んで直腸粘膜を刺激し、排便を促す効果を期待して用いられる。
d グリセリンが配合された浣腸薬では、排便時に血圧低下を生じて、立ちくらみの症状が現れるとの報告があり、そうした症状は体力の充実している人で特に現れやすく、体力の衰えている高齢者では現れにくい。
a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 誤 正 誤 正
4 正 誤 正 誤
5 誤 正 誤 誤
浣腸薬及びその配合成分に関する問題
a 誤 繰り返し使用すると直腸の感受性の低下(いわゆる慣れ)が生じて効果が弱くなり、使用に頼りがちになるため、連用しないこととされている。
b 誤 ビサコジルではなく炭酸水素ナトリウムの坐剤に関する記述である。なお、ビサコジルは大腸刺激性瀉下成分で、内服薬ではコーラックの成分として知られる。
↓炭酸水素ナトリウムの坐剤(医療用)
c 正
d 誤 後半が誤り。立ちくらみ等の症状は体力の衰えている高齢者や心臓に基礎疾患がある人で特に現れやすい。
↓グリセリンの浣腸薬
正解・・・2
問35
胃腸鎮痛鎮痙薬及びその配合成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a オキセサゼインは、局所麻酔作用のほか、胃液分泌を抑える作用もあるとされ、胃腸鎮痛鎮痙薬と制酸薬の両方の目的で使用される場合もある。
b メチルオクタトロピン臭化物は、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示す。
c パパべリン塩酸塩は、抗コリン成分と異なり、胃液分泌を抑える作用は見出されず、眼圧を上昇させる作用はない。
d アミノ安息香酸エチルが配合されている場合、痛みが感じにくくなることで重大な消化器疾患や状態の悪化等を見過ごすおそれがあり、長期間にわたって漫然と使用することは避けることとされている。
1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)
胃腸鎮痛鎮痙薬及びその配合成分に関する問題。
メチルオクタトロピン塩酸塩は、殆ど出題されておらず、試験まで時間が無ければ無視してよい。
パパベリン塩酸塩は頻出で、消化管の平滑筋に直接働いて胃腸の痙攣を鎮める作用を示すとされるが、「胃酸分泌を抑える作用はない」「(抗コリン成分には分類されないが)眼圧を上昇させる作用を示す」点が良く問われている。
a 正 オキセサゼインは局所麻酔作用のほか、胃液分泌を抑える作用もあるとされている。なお、市販薬で配合されているのは「サクロンQ」ぐらい。5章でも出題されることがあり、妊婦又は妊娠していると思われる女性、15歳未満の小児では使用を避けることも合わせて押さえておきたい。
b 誤 メチルオクタトロピン臭化物は抗コリン成分で、副交感神経の伝達物質であるアセチルコリンと受容体の反応を妨げることで、胃腸の過剰な動き(痙攣)を抑える。
c 誤 後半が誤り。パパベリン塩酸塩は抗コリン成分と異なり自律神経系を介した作用ではないが、眼圧を上昇させる作用を示すことが知られている。
d 正 なお、アミノ安息香酸エチルは局所麻酔成分。
正解・・・4
問36
駆虫薬の配合成分とその作用との関係の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
(配合成分)(作用)
a カイニン酸 ― 回虫に痙攣を起こさせる作用を示し、虫体を排便とともに排出させる。
b パモ酸ピルビニウム ― 回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに排出させる。
c サントニン ― 蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされる。
d ピペラジンリン酸塩 ― アセチルコリン伝達を妨げて、回虫及び蟯虫の運動筋を麻痺させる作用を示し、虫体を排便とともに排出させる。
a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤
駆虫薬の配合成分とその作用に関する問題
a 正 カイニン酸は回虫を対象としている。
b 誤 パモ酸ピルビニウムは 蟯虫の呼吸や栄養分の代謝を抑えて殺虫作用を示すとされる。なお、出題される4種類の駆虫薬のうち、現在でも一般用医薬品として購入可能なのはパモ酸ピルビニウムのみである。
c 誤 サントニンは回虫の自発運動を抑える作用を示し、虫体を排便とともに排出させる作用を示す。
d 正 ピペラジンリン酸塩は、回虫及び蟯虫を対象としている。
正解・・・1
問37
強心薬及びその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 心筋に直接刺激を与え、その収縮力を高める作用(強心作用)を期待して、生薬成分であるジャコウが用いられる。
b 微量で強い強心作用を示すセンソは、有効域が比較的狭い成分であり、一般用医薬品では、1日用量が5mg以下となるよう用法・用量が定められている。
c 苓桂朮甘湯は、主に利尿作用により、水毒(漢方の考え方で、体の水分が停滞したり偏在して、その循環が悪いことを意味する。)の排出を促すことを主眼としている。
d 強心薬は一般に、5~6日間使用して症状の改善がみられない場合には、心臓以外の要因、例えば、呼吸器疾患、貧血、高血圧症、甲状腺機能の異常等のほか、精神神経系の疾患も考えられる。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 正
4 誤 正 正 正
5 正 正 正 正
強心薬及びその配合成分等に関する問題
この分野の具体的な製品としては「救心」や「六神丸」を思い浮かべればよい。
a 正 ジャコウ(麝香)はシカ科のジャコウジカの雄の麝香腺分泌物を基原とする生薬で、強心作用のほか、呼吸中枢を刺激して呼吸機能を高めたり、意識をはっきりさせる等の作用がある。
b 正 センソ(蟾酥)はヒキガエル科のアジアヒキガエル等の耳腺の分泌物を集めたものを基原とする生薬で、微量で強い強心作用を示す。
c 正 苓桂朮甘湯は(手引きでは強心薬の分野で登場するが)強心作用が期待される生薬は含まれず、主に利尿作用により、水毒(漢方では、体の水分が停滞・偏在して、その循環が悪いことを意味する)の排出を促すことで、動悸・息切れ等への効果が期待される。
d 正
正解・・・5
問38
貧血用薬(鉄製剤)及びその配合成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a マンガンは、赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分であり、骨髄での造血機能を高める目的で、硫酸マンガンが配合されている場合がある。
b 貧血の症状がみられる以前から予防的に貧血用薬(鉄製剤)を使用することが適当である。
c 鉄製剤を服用すると便が黒くなることがあるが、服用前から便が黒い場合は貧血の原因として消化管内で出血している場合もあるため、服用前の便の状況との対比が必要である。
d ヘモグロビン産生に必要なビタミンB6や、正常な赤血球の形成に働く葉酸などが配合されている場合がある。
1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)
貧血用薬(鉄製剤)及びその配合成分に関する問題
a 誤 「マンガン・硫酸マンガン」ではなく、「コバルト・硫酸コバルト」である。コバルトは赤血球ができる過程で必要不可欠なビタミンB12の構成成分である。
b 誤 予防的に貧血用薬(鉄製剤)を使用することは適当でない。
c 正
d 正 貧血用薬にはへモグロビン産生に必要なビタミンB6、正常な赤血球の形成に働くビタミンB12や葉酸などのビタミン成分が配合されている場合がある。
正解・・・3
問39
コレステロール及び高コレステロール改善薬とその配合成分に関する記述の正誤について、正しい組み合わせはどれか。
a 血液中の高密度リポタンパク質(HDL)が多く、低密度リポタンパク質(LDL)が少ないと、コレステロールの運搬が末梢組織側に偏ってその蓄積を招き、心臓病や肥満、動脈硬化症等の生活習慣病につながる危険性が高くなる。
b ポリエンホスファチジルコリンは、コレステロールと結合して、代謝されやすいコレステロールエステルを形成するとされ、肝臓におけるコレステロールの代謝を促す効果を期待して用いられる。
c 高コレステロール改善薬は、ウエスト周囲径(腹囲)を減少させるなどの痩そう身効果を目的とした医薬品である。
d ビタミンEは、コレステロールからの過酸化脂質の生成を抑えるほか、末梢血管における血行を促進する作用があるとされ、血中コレステロール異常に伴う末梢血行障害(手足の冷え、痺れ)の緩和等を目的として用いられる。
a b c d
1 正 誤 誤 正
2 誤 正 誤 誤
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 正
5 誤 誤 正 誤
コレステロール及び高コレステロール改善薬に関する問題
a 誤 低密度リポタンパク質(LDL)と高密度リポタンパク質(HDL)が逆になっている。なお、前年は脂質異常症の診断検査値(LDLが140mg/dL 以上等)の穴埋め問題が出題されていた。
b 正
c 誤 高コレステロール改善薬は、結果的に生活習慣病の予防につながるものであるが、ウエスト周囲径(腹囲)を減少させるなどの痩身効果を目的とする医薬品ではない。
d 正 関連記事:ビタミンE
正解・・・4
問40
循環器用薬及びその配合成分に関する記述のうち、正しいものの組み合わせはどれか。
a ヘプロニカートは、肝臓や心臓などの臓器に多く存在し、エネルギー代謝に関与する酵素の働きを助ける成分で、摂取された栄養素からエネルギーが産生される際にビタミンB群とともに働く。
b 三黄瀉心湯を使用している間は、瀉下薬の使用を避ける必要がある。
c 生薬成分であるコウカには、末梢の血行を促してうっ血を除く作用があるとされる。
d ユビデカレノンは、ビタミン様物質の一種で、高血圧等における毛細血管の補強、強化の効果を期待して用いられる。
1(a、b) 2(b、c) 3(c、d) 4(a、d)
循環器用薬及びその配合成分に関する問題
この分野では(高血圧に伴う随伴症状向けに)三黄瀉心湯、七物降下湯の2種類の漢方製剤が登場します。
a 誤 ヘプロニカートではなく、ユビデカレノン(別名コエンザイムQ10)に関する記述である。
b 正 理由は構成生薬として瀉下作用のあるダイオウ(大黄)を含むためです。なお、三黄瀉心湯の「三黄」は構成生薬(黄連、黄ごん、大黄)から名付けられています。
c 正 関連記事:コウカ(紅花)
d 誤 ユビデカレノンではなく、ルチンに関する記述である。
正解 2