R5 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問61-70)
生薬(問70)以外は、頻出・標準レベルの内容が多く対応しやすい
問61
かぜ(感冒)及びかぜ薬(総合感冒薬)に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a かぜの約8割は細菌の感染が原因であるが、それ以外にウイルスの感染などがある。
b インフルエンザ(流行性感冒)は、感染力が強く、また重症化しやすいため、かぜとは区別して扱われる。
c かぜ薬は、細菌やウイルスの増殖を抑えたり、体内から除去することにより、咳や発熱などの諸症状の緩和を図るものである。
d かぜの原因となる細菌やウイルスの種類は、季節や時期などによって異なる。
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、d) 5(c、d)
かぜ(感冒)及びかぜ薬(総合感冒薬)に関する問題。
a 誤 かぜの約8割はウイルスの感染が原因であるが、それ以外に細菌の感染や、まれに冷気や乾燥、アレルギーのような非感染性の要因による場合もある。
b 正
c 誤 かぜ薬は、ウイルスの増殖を抑えたり、体内から除去するものではなく、かぜによる咳や発熱など、それら諸症状の緩和を図る対症療法薬である。
d 正
正解・・・4
問62
次の表は、ある一般用医薬品のかぜ薬(総合感冒薬)に含まれている成分の一覧である。
このかぜ薬に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
3錠中
グアイフェネシン 60mg
ジヒドロコデインリン酸塩 8mg
dl-メチルエフェドリン塩酸塩 20mg
アセトアミノフェン 300mg
クロルフェニラミンマレイン酸塩 2.5mg
無水カフェイン 25mg
リボフラビン 4mg
a グアイフェネシンは、鼻汁分泌やくしゃみを抑えることを目的として配合されている。
b ジヒドロコデインリン酸塩は、長期連用や大量摂取によって倦怠感や虚脱感、多幸感等が現れることがある。
c アセトアミノフェンは、主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらすため、末梢における抗炎症作用は期待できない。
d クロルフェニラミンマレイン酸塩は、去痰作用を目的として配合されている。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
かぜ薬(総合感冒薬)に含まれている成分に関する問題。
このように実際にあるような製品の成分一覧表示を使った問題は、今後も増えると思われます。
a 誤 グアイフェネシンは痰の切れを良くする成分(去痰成分)であり、気道粘膜からの粘液の分泌を促進する作用を示す。
b 正 ジヒドロコデインリン酸塩は麻薬性鎮咳成分。第4章 厚生労働大臣が指定する濫用等の恐れのある医薬品も合わせて学習を。
c 正 アセトアミノフェンは主として中枢作用によって解熱・鎮痛をもたらす。他に、「末梢における抗炎症作用は期待できない」「15歳未満の小児でも使用できる」「空腹時でも服用できる」点なども押させておく。
↓アセトアミノフェンが主成分の製品
d 誤 クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミン成分で、鼻汁分泌やくしゃみを抑えることを目的として配合されている。
正解・・・3
問63
かぜ(感冒)の症状緩和に用いられる漢方処方製剤に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 柴胡桂枝湯は、体力中等度又はやや虚弱で、多くは腹痛を伴い、ときに微熱・寒気・頭痛・吐きけなどのあるものの胃腸炎、かぜの中期から後期の症状に適すとされる。
b 香蘇散は、構成生薬としてカンゾウを含まず、体力虚弱で、神経過敏で気分がすぐれず胃腸の弱いもののかぜの初期、血の道症に適すとされる。
c 小青竜湯は、体力中程度又はやや虚弱で、うすい水様の痰を伴う咳や鼻水が出るものの気管支炎、気管支喘息、鼻炎、アレルギー性鼻炎、むくみ、感冒、花粉症に適すとされる。
d 葛根湯は、体力虚弱で、汗が出るもののかぜの初期に適すとされる。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
かぜ(感冒)の症状緩和に用いられる漢方処方製剤に関する問題
a 正 柴胡桂枝湯に関する記述である。なお、前年は小柴胡湯が出題されていた。どちらも胃腸症状に関する記述があるので区別しづらいが、柴胡桂枝湯は「かぜの中期から後期」、小柴胡湯は「かぜの後期」の症状に適することを知っていれば対応できる。
b 誤 香蘇散は、構成生薬としてカンゾウ(甘草)を含んでいる。
c 正 小青竜湯は漢方の中では頻出。特に「花粉症」「アレルギー性鼻炎」が特徴的なキーワード
d 誤 葛根湯ではなく、桂枝湯に関する記述である。葛根湯は、「体力中等度以上」「感冒の初期(汗をかいていないもの)」「頭痛、肩こり」などが特徴的なキーワードとなる。
正解・・・2
問64
解熱鎮痛薬及びその配合成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a サザピリンが配合された一般用医薬品の解熱鎮痛薬は、15歳未満の小児に対して使用することができる。
b アスピリンには血液を凝固しにくくさせる作用があり、医療用医薬品として、血栓ができやすい人に対する血栓予防薬の成分としても用いられている。
c ボウイは、ツヅラフジ科のオオツヅラフジの蔓(つる)性の茎及び根茎を、通例、横切したものを基原とする生薬で、鎮痛、尿量増加(利尿)等の作用を期待して用いられる。
d シャクヤクは、発汗を促して解熱を助ける作用を期待して配合されている。
a b c d
1 誤 正 誤 正
2 誤 正 正 誤
3 正 誤 正 誤
4 正 誤 誤 正
5 誤 誤 誤 誤
解熱鎮痛薬及びその配合成分等に関する問題。
生薬の細かい基原や効能が問われると対応しづらい。
a 誤 サリチル酸系解熱鎮痛成分のアスピリン、サザピリン、サリチル酸ナトリウムは(ライ症候群との関連が示唆されているため)一般用医薬品では、小児に対してはいかなる場合も使用しないこととなっている。
b 正
↓医療用として使用されているアスピリン製剤
c 正
d 誤 これはショウキョウ(生姜)、ケイヒ(桂皮)等の記述と思われる。シャクヤク(芍薬)はボタン科のシャクヤクの根を基原とする生薬で、鎮痛鎮痙作用、鎮静作用を示し、内臓の痛みにも用いられる。芍薬の鎮痛作用が特に期待されている漢方薬としては、芍薬甘草湯(こむら返り)、桂枝加芍薬湯(しぶり腹、腹痛)が例としてわかりやすい。
正解・・・2
問65
眠気を促す薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、慢性的に続く睡眠障害の緩和に適している。
b ブロモバレリル尿素を含有する催眠鎮静薬は、胎児に障害を引き起こさないため、妊婦の睡眠障害の緩和に適している。
c 柴胡加竜骨牡蛎湯は、体力中等度以上で、精神不安があって、動悸、不眠、便秘などを伴う高血圧の随伴症状(動悸、不安、不眠)、神経症、更年期神経症、小児夜なき、便秘に適すとされる。
d 酸棗仁湯は、体力中等度以下で、心身が疲れ、精神不安、不眠などがあるものの不眠症、神経症に適すとされる。
a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 正 誤
3 誤 誤 正 正
4 正 正 誤 正
5 誤 誤 誤 誤
眠気を促す薬及びその配合成分に関する問題。
なお、市販の催眠鎮静薬(睡眠改善薬)に使用される抗ヒスタミン薬はジフェンヒドラミン塩酸塩(代表例:ドリエル)です。
a 誤 抗ヒスタミン成分を主薬とする催眠鎮静薬は、睡眠改善薬として一時的な睡眠障害(寝つきが悪い、眠りが浅い)の緩和に用いられるものであり、慢性的に不眠症状がある人や、医療機関において不眠症の診断を受けている人を対象とするものではない。
b 誤 ブロモバレリル尿素は胎児に障害を引き起こす可能性があるため、妊婦又は妊娠していると思われる女性は使用を避けるべきである。(「避けることとされている」「避ける必要がある」と、「避けるべき」のニュアンスに注意。)
そして、これに関する添付文書の「使用上の注意」は、「してはいけないこと」ではなく、「相談すること」として記載されているので注意。
c 正 柴胡加竜骨牡蛎湯のキーワードとしては、「体力中等度以上」(この分野で登場する漢方では、最も実証向け)「高血圧の随伴症状」等を覚えておきたい。
d 正 関連記事:酸棗仁湯
正解・・・3
問66
眠気防止薬の主な有効成分として配合されるカフェインに関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 腎臓におけるナトリウムイオンの再吸収促進作用があり、尿量の増加をもたらす。
b 胃液分泌抑制作用があり、その結果、副作用として胃腸障害(食欲不振、悪心・嘔吐)が現れることがある。
c 反復摂取により依存を形成するという性質がある。
d 眠気防止薬におけるカフェインの1回摂取量はカフェインとして200mg、1日摂取量はカフェインとして500mgが上限とされている。
a b c d
1 誤 正 誤 正
2 誤 誤 正 誤
3 正 正 正 誤
4 正 正 誤 正
5 誤 誤 正 正
眠気防止薬の有効成分として配合されるカフェインに関する問題。
a 誤 カフェインは、腎臓におけるナトリウムイオンの再吸収抑制作用があり、尿量の増加をもたらす効果がある。(経験的に、コーヒーを飲むとトイレが近くなる人も多いでしょう)
b 誤 カフェインには胃液分泌亢進作用があり、その結果、副作用として胃腸障害が現れることがある。
c 正 カフェインには、作用は弱いながら反復摂取により依存を形成する性質があり、「短期間の服用にとどめ、連用しないこと」という注意喚起がなされている。
d 正 この数値は時折出題されているので覚えておくこと。なお、コーヒー100gに含まれるカフェインはおよそ60㎎です。
正解・・・5
問67
次の表は、ある一般用医薬品の鎮暈薬(乗物酔い防止薬)に含まれている成分の一覧である。この鎮暈薬に関する記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
1錠中
ジフェニドール塩酸塩 16.6mg
スコポラミン臭化水素酸塩水和物 0.16mg
無水カフェイン 30.0mg
ピリドキシン塩酸塩 5.0mg
a ジフェニドール塩酸塩は、内耳にある前庭と脳を結ぶ神経(前庭神経)の調節作用のほか、内耳への血流を改善する作用を示す。
b スコポラミン臭化水素酸塩水和物は、消化管からよく吸収され、他の抗コリン成分と比べて脳内に移行しやすいとされる。
c 無水カフェインは、抗めまい成分による眠気の解消を期待して配合されている。
d ピリドキシン塩酸塩は、乗物酔いに伴う頭痛を和らげる作用が期待される。
a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 誤 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 正 正 誤 誤
5 誤 正 正 正
鎮暈薬(乗物酔い防止薬)に含まれている成分に関する問題
a 正 関連記事:ジフェニドール塩酸塩(抗めまい成分)
b 正 スコポラミン臭化水素酸塩水和物は乗り物酔い防止薬として使用される抗コリン成分で、肝臓で速やかに代謝されてしまうため、抗ヒスタミン成分等と比べて作用の持続時間は短い。
また、メクリジン塩酸塩は乗り物酔い防止薬として使用される抗ヒスタミン成分で、他の抗ヒスタミン成分と比べて作用が現れるのが遅く持続時間が長い。もセットで学習を。
↓「トラベルミンファミリー」
c 誤 カフェインやジプロフィリンなどのキサンチン系と呼ばれる成分は、脳に軽い興奮を起こさせて平衡感覚の混乱によるめまいを軽減させることを目的として配合されている。
d 誤 乗り物酔い防止薬には、ピリドキシン塩酸塩、ニコチン酸アミド、リボフラビン等のビタミン成分が補助的に配合されている場合があるが、吐きけの防止に働くことを期待して配合されている。
正解・・・4
問68
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)及びその配合成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合にあっても、生後6ヶ月未満の乳児には使用しないこととなっている。
b 小児鎮静薬には、鎮静と中枢刺激のように相反する作用を期待する生薬成分が配合されている場合もあるが、身体の状態によってそれらに対する反応が異なり、総じて効果がもたらされると考えられている。
c 小児鎮静薬は、夜泣き、ひきつけ、疳の虫等の症状を鎮めることを目的とした医薬品であり、小児における虚弱体質の改善は目的としていない。
d ジャコウは、緊張や興奮を鎮め、また、血液の循環を促す作用等を期待して用いられる。
a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 誤 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 正 正 誤 誤
5 誤 正 誤 正
小児の疳を適応症とする生薬製剤・漢方処方製剤(小児鎮静薬)に関する問題
現代では、小児鎮静目的で漢方薬が購入されるケースは少ないが、関連する漢方薬として以下の記事も参照を。
関連記事:抑肝散 ・抑肝散加陳皮半夏、 小建中湯、柴胡加竜骨牡蠣湯
a 誤 漢方処方製剤は、用法用量において適用年齢の下限が設けられていない場合であっても、生後3ヶ月未満の乳児には使用しないこととされている。
b 正
c 誤 小児鎮静薬は、それらの症状を鎮めるほか、小児における虚弱体質、消化不良などの改善を目的とする医薬品(生薬製剤・漢方処方製剤)である。例えば、小建中湯には「小児虚弱体質」への適応がある。
d 正 関連記事:ジャコウ(麝香)
正解・・・5
問69
鎮咳去痰薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a カルボシステインは、気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮めることを目的として用いられる。
b トリメトキノール塩酸塩水和物は、抗炎症作用のほか、気道粘膜からの粘液の分泌を促進することを目的として用いられる。
c メトキシフェナミン塩酸塩は、心臓病、高血圧、糖尿病又は甲状腺機能亢進症の診断を受けた人では、症状を悪化させるおそれがある。
d コデインリン酸塩水和物は、妊娠中に摂取された場合、吸収された成分の一部が血液-胎盤関門を通過して胎児へ移行することが知られている。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
鎮咳去痰薬の配合成分に関する問題
a 誤 カルボシステインは去痰成分であり、痰の中の粘性タンパク質を溶解・低分子化して粘性を減少させたり、粘液成分の含量比を調整し痰の切れを良くする作用を示す。なお、医療用では「ムコダイン」の製品名で良く知られている。
b 誤 トリメトキノール塩酸塩水和物はアドレナリン作動成分であり、交感神経系を刺激して気管支を拡張させる作用を示し、呼吸を楽にして咳や喘息の症状を鎮めることを目的として用いられる。
c 正 メトキシフェナミン塩酸塩はアドレナリン作動成分である。
d 正 コデインリン酸塩水和物は麻薬性鎮咳成分である。
↓ジヒドロコデインリン酸塩やグアイフェネシンを含有した鎮咳去痰薬シロップ
正解・・・5
問70
鎮咳去痰薬に配合される生薬成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a ゴミシは、マツブサ科のチョウセンゴミシの果実を基原とする生薬で、鎮咳作用を期待して用いられる。
b キキョウは、ユリ科のジャノヒゲの根の膨大部を基原とする生薬で、鎮咳、去痰、滋養強壮等の作用を期待して用いられる。
c セキサンは、ヒガンバナ科のヒガンバナ鱗茎を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。
d バクモンドウは、ヒメハギ科のイトヒメハギの根を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。
1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
鎮咳去痰薬に配合される生薬成分に関する問題
生薬の基原や作用を覚えるのは、大変なわりに出題頻度が読めないので、直前期の場合はある程度割り切って学習を
a 正
b 誤 これはバクモンドウ(麦門冬)に関する記述である。キキョウ(桔梗)はキキョウ科のキキョウの根を基原とする生薬で、痰又は痰を伴う咳に用いられる。
c 正
d 誤 これはオンジ(遠志)に関する記述と思われる。オンジ(遠志)はヒメハギ科のイトヒメハギの根及び根皮(令和4年手引き改訂で「根皮」も追加された)を基原とする生薬で、去痰作用を期待して用いられる。
正解・・・2