R6 千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問81-90)
中黄膏(問89)の出題は珍しい
問81
次の表は、ある一般用医薬品の貧血用薬に含まれている成分の一覧である。この貧血用薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
1日量(1錠)中
溶性ピロリン酸第二鉄 79.5mg
ビタミンC 50mg
ビタミンE酢酸エステル 10mg
ビタミンB12 50μg
葉酸 1mg
a 鉄分の吸収は、空腹時のほうが高いため、食前に服用することが望ましい。
b 本剤に配合されている葉酸は、正常な赤血球の形成に働くことを期待して配合されている。
c 本剤に配合されているビタミンB12は、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として用いられている。
d 鉄欠乏性貧血を予防するため、貧血の症状がみられる以前から継続的に本剤を使用することが適当である。
a b c d
1 正 正 正 誤
2 正 誤 誤 正
3 誤 誤 正 正
4 誤 正 誤 誤
5 誤 正 正 正
貧血用薬に関する問題
a 誤 鉄分の吸収は空腹時のほうが高いとされているが、消化器系への副作用を軽減するには、食後に服用することが望ましい。
b 正 なお、ビタミンB12も正常な赤血球の形成に働くとされています。
c 誤 ビタミンC(アスコルビン酸等)は、消化管内で鉄が吸収されやすい状態に保つことを目的として用いられる。
d 誤 貧血の症状がみられる以前から予防的に貧血用薬(鉄製剤)を使用することは適当でない。
正解・・・4
問82
次の医薬品成分のうち、痔疾用薬に用いられるステロイド性抗炎症成分はどれか。
1 トコフェロール酢酸エステル
2 デカリニウム塩化物
3 ナファゾリン塩酸塩
4 プレドニゾロン酢酸エステル
5 クロルフェニラミンマレイン酸塩
痔疾用薬に用いられるステロイド性抗炎症成分に関する問題
この中でステロイド性抗炎症成分なのはプレドニゾロン酢酸エステルである。
正解・・・4
問83
次の記述にあてはまる漢方処方製剤として、最も適切なものはどれか。
体力中等度以下で、疲れやすくて、四肢が冷えやすく、尿量減少又は多尿でときに口渇があるものの下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者のかすみ目、痒み、排尿困難、残尿感、夜間尿、頻尿、むくみ、高血圧に伴う随伴症状の改善(肩こり、頭重、耳鳴り)、軽い尿漏れに適すとされるが、胃腸の弱い人、下痢しやすい人では、食欲不振、胃部不快感、腹痛、下痢の副作用が現れるおそれがあるため使用を避ける必要があり、また、のぼせが強く赤ら顔で体力の充実している人では、のぼせ、動悸等の副作用が現れやすい等、不向きとされる。
1 温清飲
2 八味地黄丸
3 五積散
4 猪苓湯
5 竜胆瀉肝湯
「夜間尿」「軽い尿漏れ」のキーワードから八味地黄丸と判断したい。(どちらのキーワードも八味地黄丸のみ記載されている)
特に男性の前立腺肥大による排尿トラブル(夜間頻尿、尿の切れが悪い等)に用いられる漢方薬として知られているが、最近はテレビ通販CMでも見かけることがある。
なお、猪苓湯、竜胆瀉肝湯(尿の濁り、こしけ)も泌尿器用薬として登場する漢方だが、「夜間尿」「軽い尿漏れ」のキーワードを拾えれば判断は難しくないでしょう。
正解・・・2
問84
婦人薬及びその適用対象となる体質・症状に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 月経の約10~3日前に現れ、月経開始と共に消失する腹部膨満感、頭痛、乳房痛などの身体症状や感情の不安定、抑うつなどの精神症状を主体とするものを、月経前症候群という。
b 桃核承気湯は、体力中等度又はやや虚弱で、冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされ、構成生薬としてマオウを含む。
c 四物湯は、体力虚弱で、冷え症で皮膚が乾燥、色つやの悪い体質で胃腸障害のないものの月経不順、月経異常、更年期障害、血の道症、冷え症、しもやけ、しみ、貧血、産後あるいは流産後の疲労回復に適すとされる。
d 女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤として、温経湯、柴胡桂枝乾姜湯があるが、これらは構成生薬としてカンゾウを含んでいる。
a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 正 正 正
3 正 誤 正 正
4 正 正 誤 正
5 正 正 正 誤
婦人薬及びその適用対象となる体質・症状に関する問題
a 正
b 誤 これは桃核承気湯ではなく、五積散に関する記述である。
桃核承気湯は、婦人用薬で登場する漢方の中で唯一ダイオウ(大黄)を含んでいることから、「体力中等度以上」「のぼせて便秘しがちなものの月経不順」「便秘」といった記述があることを覚えておくと良い。
c 正 四物湯に関する記述である。
d 正 当ブロックでは、婦人用薬でのカンゾウ(甘草)の有無を問う問題が毎年のように出題されているが、温経湯、柴胡桂枝乾姜湯はカンゾウ(甘草)を含んでいるので正しい記述となる。(前年も同じ漢方で出題あり)
なお、カンゾウ(甘草)を含む漢方は約7割~8割程度あるので、試験対策としてはカンゾウ(甘草)を含まない漢方を覚えると良い。
まず、過去問(特に平成時代)でカンゾウを含まない漢方薬の定番は、以下の3つ(特に上記2つ)
半夏厚朴湯(咽喉・食道部に異物感、のどにつかえ感)
呉茱萸湯(ごしゅゆとう・頭痛)
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう・便秘するものの蕁麻疹・口内炎・皮膚の痒み)
また、手引きの婦人薬分野で登場する以下の4つもカンゾウを含みません。
(上記3つとは異なり、手引きには間接的に書かれているのが厄介)
当帰芍薬散(更年期障害、月経不順、冷え症、産前産後 代表的な婦人向け漢方)
四物湯(更年期障害、月経不順、冷え症 血虚の基本処方)
温清飲(皮膚炎・湿疹、月経不順 四物湯と黄連解毒湯の合剤)
桂枝茯苓丸(月経不順、更年期障害、頭重、打ち身(打撲症) 比較的体力のある向け)
例えば、平成28年 東京・南関東地区 問82-dでも、同様に婦人用薬の有無が問われていました。
「女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤として、四物湯 、温清飲 、当帰芍薬散があり、これらは構成生薬としてカンゾウを含まない。」⇒〇
但し、全ての漢方薬で、カンゾウ(甘草)や、他にも有無が問われるマオウ(麻黄)、ダイオウ(大黄)の有無を一つずつ覚えるのはナンセンス(無理)なので、とりあえず良く出題されるもの、試験で出たものを覚えていく学習法で良いでしょう。
正解・・・3
問85
内服アレルギー用薬に配合される次の成分のうち、抗ヒスタミン成分の組合せはどれか。
a ヨウ化イソプロパミド
b ロラタジン
c グリチルリチン酸
d ケトチフェンフマル酸塩
1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(b、d)
内服アレルギー用薬に配合される成分に関する問題
a 誤 ヨウ化イソプロパミドは抗コリン成分である。
b 正 ロラタジンは抗ヒスタミン成分である。
c 誤 グリチルリチン酸は抗炎症成分である。
d 正 ケトチフェンフマル酸塩は抗ヒスタミン成分である。
正解・・・5
問86
鼻炎用点鼻薬の配合成分とその配合目的の組合せの正誤について、正しい組合せはどれか。
配合成分 配合目的
a クロモグリク酸ナトリウム ―――――― 鼻粘膜を清潔に保ち、細菌による二次感染を防止する
b テトラヒドロゾリン塩酸塩 ―――――― 鼻粘膜の充血や腫れを和らげる
c リドカイン塩酸塩 ―――――――――― 鼻粘膜の過敏性や痛みや痒みを抑える
d クロルフェニラミンマレイン酸塩 ――― ヒスタミンの働きを抑えることにより、くしゃみや鼻汁等の症状を緩和する
a b c d
1 誤 誤 正 誤
2 正 誤 正 誤
3 正 正 誤 誤
4 誤 正 正 正
5 誤 誤 誤 正
鼻炎用点鼻薬の配合成分とその配合目的に関する問題
a 誤 クロモグリク酸ナトリウムは抗アレルギー成分で、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト(室内塵)等による鼻アレルギー症状の緩和を目的として配合される。
b 正 テトラヒドロゾリン塩酸塩はアドレナリン作動成分
c 正 リドカイン塩酸塩は局所麻酔成分
d 正 クロルフェニラミンマレイン酸塩は抗ヒスタミン成分
正解・・・4
問87
眼科用薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a 一般的に、点眼薬の1滴の薬液量は、結膜嚢の容積より少ない。
b 点眼後は、数秒間、眼瞼(まぶた)を閉じて、目頭を押さえると、薬液が鼻腔内へ流れ込み、効果的とされる。
c 洗眼薬は、目の洗浄、眼病予防(水泳のあと、埃や汗が目に入ったとき等)に用いられるもので、主な配合成分として涙液成分のほか、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分等が用いられる。
d 人工涙液は、涙液成分を補うことを目的とするもので、目の疲れやコンタクトレンズ装着時の不快感等には用いられない。
a b c d
1 正 誤 誤 誤
2 誤 正 誤 正
3 誤 誤 正 誤
4 正 誤 正 正
5 正 正 誤 誤
眼科用薬に関する問題
一般用医薬品の点眼薬は、その主たる配合成分から、人工涙液、一般点眼薬、抗菌性点眼薬、アレルギー用点眼薬に大別される。(コンタクトレンズ装着液は点眼薬ではない)
a 誤 1滴の薬液の量は約50μL に対して、結膜嚢の容積は30μL 程度とされており、一度に何滴も点眼しても効果が増すわけではない。
b 誤 、目頭を押さえると、薬液が鼻腔内へ流れ込むのを防ぐことができ、効果的とされる。
c 正
d 誤 後半が誤り。人工涙液は、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。
↓ソフトコンタクトレンズ使用中でも使用できる人工涙液
正解・・・3
問88
外皮用薬及びその配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。
a 湿疹か皮膚糸状菌による皮膚感染かはっきりしない場合、抗真菌成分が配合された医薬品を使用することが適当である。
b フェルビナクは、殺菌作用があり、皮膚感染症に対して使用されている。
c イブプロフェンピコノールは、にきび治療薬に用いられるが、外用での鎮痛作用はほとんど期待されない。
d 非ステロイド性抗炎症成分のケトプロフェンは、妊婦又は妊娠していると思われる女性では、使用を避けるべきである。
1(a、b) 2(a、d) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)
外皮用薬及びその配合成分に関する問題
a 誤 湿疹か皮膚糸状菌による皮膚感染かはっきりしない場合に、抗真菌成分が配合された医薬品を使用することは適当でない。
b 誤 フェルビナクは非ステロイド性抗炎症成分で、筋肉痛、関節痛、打撲、捻挫等による鎮痛等を目的として用いられる。
c 正 イブプロフェンピコノールは、(解熱鎮痛成分の)イブプロフェンの誘導体であるが、外用での鎮痛作用はほとんど期待されない。吹き出物に伴う皮膚の発赤や腫れを抑え、専らにきび治療薬として用いられる。
d 正 なお、ケトプロフェンにおける副作用として光線過敏症は頻出で第5章でも良く出題されている。
正解・・・5
問89
外皮用薬及びその配合成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。
a カシュウは、タデ科のツルドクダミの塊根を基原とする生薬で、頭皮における脂質代謝を高めて、余分な皮脂を取り除く作用を期待して用いられる。
b 尿素は、角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善することを目的として用いられる。
c バシトラシンは、細菌のDNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
d 中黄膏は、急性化膿性皮膚疾患(腫れ物)の初期、打ち身、捻挫に適すとされ、湿潤、ただれ、火傷又は外傷のひどい場合、傷口が化膿している場合、患部が広範囲の場合には不向きとされている。
a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 誤 正 正
3 正 正 誤 正
4 正 正 正 誤
5 正 正 正 正
外皮用薬及びその配合成分等に関する問題
a 正 関連記事:カシュウ(何首烏)
b 正 尿素はOTCでは代表的な保湿成分であり、角質層の水分保持量を高め、皮膚の乾燥を改善する。
c 誤 バシトラシンは、細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
d 正 中黄膏の出題は珍しい。
正解・・・3
問90
外皮用薬に配合されるサリチル酸メチルの作用に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
1 副腎皮質ホルモン(ステロイドホルモン)と同様の化学構造(ステロイド骨格)を持つ化合物として、抗炎症作用をもたらす。
2 主として局所刺激により患部の血行を促し、また、末梢の知覚神経に軽い麻痺を起こすことにより、鎮痛作用をもたらすと考えられている。
3 肥満細胞から遊離したヒスタミンとその受容体タンパク質との結合を妨げることにより、患部局所におけるヒスタミンの働きを抑える作用を示す。
4 末梢組織(適用局所)においてアセチルコリンに類似した作用(コリン作用)を示し、血管の拡張による血行促進作用をもたらす。
5 患部のタンパク質と結合して皮膜を形成し、皮膚を保護する作用を示す。
外皮用薬に配合されるサリチル酸メチルの作用に関する問題
サリチル酸メチルは(広い意味では非ステロイド性抗炎症成分され)末梢組織(患部局所)におけるプロスタグランジンの産生を抑える作用も期待されるが、主として局所刺激により患部の血行を促し、また、末梢の知覚神経に軽い麻痺を起こすことにより、鎮痛作用をもたらすと考えられている。なお、サリチル酸メチルは「サロンパス」の主成分としても知られる。
1 誤 これはステロイド性抗炎症成分に関する記述である。
2 正
3 誤 これは抗ヒスタミン成分に関する記述である。
4 誤 これはカルプロニウム塩化物に関する記述である。
5 誤 これは酸化亜鉛に関する記述である。
正解・・・2