R5千葉県(東京・神奈川・埼玉共通) 第3章 主な医薬品とその作用 (問81-90)

問83(婦人用薬のカンゾウ有無)は難しい

問81
痔の薬及びその配合成分等に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a プレドニゾロン酢酸エステルが配合された坐剤及び注入軟膏では、その含有量によらず長期連用を避ける必要がある。

b クロルヘキシジン塩酸塩は、痔に伴う痛み・痒みを和らげることを期待して配合されている。

c セイヨウトチノミは、トチノキ科のセイヨウトチノキ(マロニエ)の種子を用いた生薬で、主に抗炎症作用を期待して用いられる。

d コウカは、マメ科のエンジュの蕾を基原とする生薬で、主に止血効果を期待して用いられる。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)


痔の薬及びその配合成分等に関する問題

a 正 プレドニゾロン酢酸エステルはステロイド性抗炎症成分であり、長期連用を避ける必要がある。

b 誤 クロルヘキシジン塩酸塩は殺菌消毒成分であり、痔疾患に伴う局所の感染を防止する。
c 正
d 誤 これはコウカ(紅花)ではなく、カイカに関する記述。コウカは、キク科のベニバナの管状花をそのまま又は黄色色素の大部分を除いたもので(中略)、末梢の血行を促してうっ血を除く作用があるとされる。 コウカを煎じて服用する製品は、冷え症及び血色不良に用いられる。
コウカの生薬画像


正解・・・2



問82
泌尿器用薬及びその配合成分等に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a サンキライは、クワ科のマグワの樹皮を基原とする生薬で、利尿作用のほかに、経口的に摂取した後、尿中に排出される分解代謝物が抗菌作用を示し、尿路の殺菌消毒効果を期待して用いられる。

b 日本薬局方収載のカゴソウは、煎薬として残尿感、排尿に際して不快感のあるものに用いられる。

c 竜胆瀉肝湯は、体力中等度以上で、下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛、残尿感、尿の濁り、こしけ(おりもの)、頻尿に適すとされる。

d 猪苓湯は、体力に関わらず使用でき、排尿異常があり、ときに口が渇くものの排尿困難、排尿痛、残尿感、頻尿、むくみに適すとされる。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 正 誤 誤 正
3 誤 正 正 正
4 正 正 誤 誤
5 誤 誤 正 誤


泌尿器用薬及びその配合成分等に関する問題

a 誤 サンキライは、ユリ科の Smilax glabra Roxburgh の塊茎を基原とする生薬で、利尿作用を期待して用いられる。
b 正 
c 正 竜胆瀉肝湯の特徴的なキーワードは「下腹部に熱感や痛みがあるものの排尿痛」「こしけ(おりもの)」。なお、当試験で出題される漢方の中で、こしけ(おりもの)のキーワードがあるのは、婦人用薬の温経湯と、泌尿器用薬の竜胆瀉肝湯のみです。
d 正 関連記事:猪苓湯

正解・・・3


問83
婦人薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a エチニルエストラジオールは、人工的に合成された女性ホルモンの一種であり、妊娠中の女性ホルモンの補充のために用いられる。

b 女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる主な漢方処方製剤として、温経湯、加味逍遙散、柴胡桂枝乾姜湯があり、これらは構成生薬としてカンゾウを含む。

c 桃核承気湯は、体力中等度以上で、のぼせて便秘しがちなものの月経不順、月経困難症、月経痛、月経時や産後の精神不安、腰痛、便秘、高血圧の随伴症状(頭痛、めまい、肩こり)、痔疾、打撲症に適すとされ、構成生薬としてダイオウを含む。

d 五積散は、体力中等度又はやや虚弱で、冷えがあるものの胃腸炎、腰痛、神経痛、関節痛、月経痛、頭痛、更年期障害、感冒に適すとされ、構成生薬としてマオウを含む。

  a b c d
1 正 正 誤 誤
2 正 誤 正 正
3 誤 正 誤 誤
4 誤 正 正 正
5 誤 誤 正 誤


婦人薬及びその配合成分に関する問題
なお、東京・南関東ブロックは婦人用薬の漢方については頻出で、さらにカンゾウ(甘草)の有無を問う問題が2年連続で続いたが、前年はカンゾウ(甘草)を含まない婦人用の漢方として当帰芍薬散が問われていた。

a 誤 妊娠中の女性ホルモン成分の摂取によって胎児の先天性異常の発生が報告されており、妊婦又は妊娠していると思われる女性では使用を避ける。
なお、一般用医薬品の女性ホルモン製剤としては、エチニルエストラジオール、エストラジオールを含有する軟膏剤「ヒメロス」を知っておくと良い。
「ヒメロス」は不感症や冷感症、婦人更年期障害(のぼせ、ほてり、冷え、イライラ等)に効能を持つ外用薬。ヒメロスを、直接膣粘膜・外陰部に塗布することで、女性ホルモン(卵胞ホルモン)を補充し、諸症状の改善が期待でされもちられる。この場合、外陰部への局所的な働きのほか、粘膜から吸収されることで全身的な作用も期待されている。

b 正 カンゾウ(甘草)の有無を問う問題自体は珍しくないが、婦人科用薬の分野で問われると難易度は高くなる。
婦人用薬で登場する温経湯加味逍遙散、柴胡桂枝乾姜湯はすべてカンゾウ(甘草)を含んでいる。

なお、試験対策としては、カンゾウ(甘草)を含む漢方は約7割~8割程度あるので、カンゾウ(甘草)を含まない漢方を覚える。
まず、過去問(特に平成時代)でカンゾウを含まない漢方薬の定番は、以下の3つ(特に上記2つ)

半夏厚朴湯(咽喉・食道部に異物感、のどにつかえ感)
呉茱萸湯(ごしゅゆとう・頭痛)
茵蔯蒿湯(いんちんこうとう・便秘するものの蕁麻疹・口内炎・皮膚の痒み)

また、手引きの婦人薬分野で登場する以下の3つもカンゾウを含みません。
(上記3つとは異なり、手引きには間接的に書かれているのが厄介)

当帰芍薬散(更年期障害、月経不順、冷え症、産前産後 代表的な婦人向け漢方)
四物湯(更年期障害、月経不順、冷え症 血虚の基本処方)
温清飲(皮膚炎・湿疹、月経不順 四物湯と黄連解毒湯の合剤)

例えば、平成28年 東京・南関東地区 問82-dでも、同様に婦人用薬の有無が問われていました。
 「女性の月経や更年期障害に伴う諸症状の緩和に用いられる漢方処方製剤として、四物湯 、温清飲 、当帰芍薬散があり、これらは構成生薬としてカンゾウを含まない。」⇒〇

全ての漢方薬で、カンゾウ(甘草)や、他にも有無が問われるマオウ(麻黄)ダイオウ(大黄)の有無を一つずつ覚えるのはナンセンス(無理)なので、とりあえず良く出題されるもの、試験で出たものを覚えていく学習法で良いでしょう。

c 正 桃核承気湯は、婦人用薬の中で「打撲」や「便秘」のキーワードがある点がポイント。
d 正 関連記事:五積散

正解・・・4


問84
内服アレルギー用薬に用いられる抗ヒスタミン成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 内服薬として摂取された抗ヒスタミン成分は、吸収されて循環血流に入り全身的に作用する。

b メキタジンは、まれに重篤な副作用としてショック(アナフィラキシー)、肝機能障害、血小板減少を生じることがある。

c ジフェンヒドラミン塩酸塩は、吸収されたジフェンヒドラミンの一部が乳汁に移行して乳児に昏睡を生じるおそれがあるため、母乳を与える女性は使用を避けるか、使用する場合には授乳を避ける必要がある。

d 抗ヒスタミン成分は、ヒスタミンの働きを抑える作用以外に、抗アドレナリン作用も示すため、起立性低血圧、めまい、ふらつきが現れることがある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 誤 誤 正 正
3 誤 正 誤 誤
4 正 誤 誤 正
5 正 正 正 誤


内服アレルギー用薬に用いられる抗ヒスタミン成分に関する問題

a 正
b 正 メキタジンは抗ヒスタミン成分で、これらの副作用に関する内容で問われることが多い。
c 正 ジフェンヒドラミン塩酸塩は抗ヒスタミン成分で、この授乳中の服用回避に関する内容は良く出題されています。
d 誤 抗ヒスタミン成分は、ヒスタミンの働きを抑える作用以外に抗コリン作用も示すため、排尿困難や口渇、便秘等の副作用が現れることがある。参考記事:抗ヒスタミン薬の抗コリン作用

正解・・・5


問85
内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)及びその配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a 鼻炎用内服薬では、鼻粘膜の炎症を和らげることを目的として、トラネキサム酸が配合されている場合がある。

b 皮膚感染症(たむし、疥癬等)により、湿疹やかぶれ等に似た症状が現れた場合、皮膚感染症そのものに対する対処よりも、アレルギー用薬を使用して一時的に痒み等の緩和を図ることを優先する必要がある。

c 鼻炎用内服薬では、鼻腔内の粘液分泌腺からの粘液の分泌を抑えるとともに、鼻腔内の刺激を伝達する副交感神経系の働きを抑えることによって、鼻汁分泌やくしゃみを抑えることを目的として抗コリン成分が配合されている場合がある。

d 一般用医薬品には、アトピー性皮膚炎による慢性湿疹等の治療に用いることを目的とするものがある。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)


内服アレルギー用薬(鼻炎用内服薬を含む。)及びその配合成分に関する問題

a 正
b 誤 アレルギー用薬によって一時的に痒み等の緩和を図ることは適当でなく、皮膚感染症そのものに対する対処を優先する必要がある。 
c 正 ベラドンナ総アルカロイドヨウ化イソプロパミド等の抗コリン成分が配合されている場合がある。 
d 誤 一般用医薬品には、慢性湿疹の治療を目的としたものはない。(一般用医薬品は、基本的に慢性疾患には用いない)

正解・・・2


問86
鼻炎用点鼻薬及びその配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 鼻炎用点鼻薬は、急性鼻炎、アレルギー性鼻炎又は副鼻腔炎による諸症状のうち、鼻づまり、鼻みず、くしゃみ、頭重の緩和を目的として、鼻腔内に適用される外用液剤である。

b 鼻炎用点鼻薬は、鼻粘膜の充血を和らげる成分が主体となり、抗ヒスタミン成分や抗炎症成分を組み合わせて配合されており、それらは、鼻粘膜から吸収されて循環血流に入り全身的な作用を目的としている。

c アドレナリン作動成分は、副交感神経系を刺激して鼻粘膜を通っている血管を拡張することにより、鼻粘膜の充血や腫れを和らげることを目的として配合される。

d クロモグリク酸ナトリウムは、肥満細胞からヒスタミンの遊離を抑える作用を示し、花粉、ハウスダスト等による鼻アレルギー症状の緩和を目的として、通常、抗ヒスタミン成分と組み合わせて配合される。

  a b c d
1 誤 正 正 正
2 正 正 誤 誤
3 誤 正 正 誤
4 正 誤 正 誤
5 正 誤 誤 正


鼻炎用点鼻薬及びその配合成分に関する問題

a 正
b 誤 全身的な作用を目的とした医薬品ではなく、鼻腔内における局所的な作用を目的としている。
c 誤 アドレナリン作動成分は交感神経(×副交感神経)を刺激して、鼻粘膜を通っている血管を収縮させる。
d 正 なお、クロモグリク酸ナトリウムはアレルギー性でない鼻炎や副鼻腔炎に対しては「無効」である。

正解・・・5


問87
眼科用薬に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a 洗眼液は、涙液成分を補うことを目的とするもので、目の疲れや乾き、コンタクトレンズ装着時の不快感等に用いられる。

b 抗菌性点眼薬は、抗菌成分が配合され、結膜炎やものもらい、眼瞼炎等に用いられるものである。

c 人工涙液は、目の洗浄、眼病予防に用いられるもので、主な配合成分として抗菌成分のほか、抗炎症成分、抗ヒスタミン成分等が用いられる。

  a b c
1 正 正 正
2 誤 誤 正
3 正 正 誤
4 誤 正 誤
5 正 誤 誤


眼科用薬に関する問題
一般用医薬品の点眼薬は、その主たる配合成分から、人工涙液一般点眼薬抗菌性点眼薬アレルギー用点眼薬に大別される。(コンタクトレンズ装着液は点眼薬ではない)

a 誤 これは人工涙液に関する記述である。

b 正
c 誤 これは洗眼液に関する記述である。

正解・・・4


問88
眼科用薬の配合成分に関する次の記述の正誤について、正しい組合せはどれか。

a スルファメトキサゾールは、細菌感染による結膜炎やものもらい、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的として用いられるが、すべての細菌に対して効果があるわけではない。

b ホウ酸は、洗眼薬として用時水に溶解し、結膜嚢の洗浄・消毒に用いられる。

c イプシロン-アミノカプロン酸は、角膜の乾燥を防ぐことを目的として用いられる。

d アスパラギン酸マグネシウムは、新陳代謝を促し、目の疲れを改善する効果を期待して配合されている場合がある。

  a b c d
1 正 正 正 正
2 正 正 誤 正
3 正 誤 正 誤
4 誤 正 誤 誤
5 誤 誤 正 誤


眼科用薬の配合成分に関する問題
 
a 正 スルファメトキサゾール細菌感染(×ウイルスや真菌)による結膜炎やものもらい(麦粒腫)、眼瞼炎などの化膿性の症状の改善を目的に用いられる。


b 正 なお、ホウ酸はの抗菌作用による防腐効果を期待して、点眼薬の添加物防腐剤)として配合されていることもある。
↓ホウ酸を主成分とした点眼薬

c 誤 イプシロン-アミノカプロン酸は、炎症の原因となる物質の生成を抑える作用を示し、目の炎症を改善する効果を期待して用いられる。
d 正 

正解・・・2


問89
きず口等の殺菌消毒成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a アクリノールは黄色の色素で、一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)、真菌に対する殺菌消毒作用を示すが、結核菌、ウイルスに対しては効果がない。

b オキシドールの作用は、過酸化水素の分解に伴って発生する活性酸素による酸化、及び発生する酸素による泡立ちによる物理的な洗浄効果であるため、作用の持続性は乏しく、また、組織への浸透性も低い。

c ポビドンヨードに含まれるヨウ素は、その酸化作用により、結核菌を含む一般細菌類、真菌類に対して殺菌消毒作用を示すが、ウイルスに対しては効果がない。

d クロルヘキシジングルコン酸塩は、一般細菌類、真菌類に対しては比較的広い殺菌消毒作用を示すが、結核菌やウイルスに対する殺菌消毒作用はない。

1(a、b) 2(a、c) 3(b、c) 4(b、d) 5(c、d)


きず口等の殺菌消毒成分に関する問題

a 誤 アクリノール黄色の色素で、一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示すが、真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない

b 正  オキシドール(過酸化水素水)一般細菌類の一部(連鎖球菌、黄色ブドウ球菌などの化膿菌)に対する殺菌消毒作用を示す。(「真菌、結核菌、ウイルスに対しては効果がない」とも書かれていたが、令和4年手引き改訂で記載が削除された)
c 誤 ポビドンヨードは、ヨウ素系殺菌消毒成分で、ヨウ素による酸化作用により、結核菌を含む一般細菌類、真菌類、ウイルスに対して殺菌消毒作用を示す
d 正

正解・・・4


問90
皮膚に用いる薬の配合成分に関する次の記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a 皮膚に温感刺激を与え、末梢血管を拡張させて患部の血行を促す効果を期待して、ニコチン酸ベンジルエステルが配合されている場合がある。

b ノニル酸ワニリルアミドは、きり傷、擦り傷等の創傷面の痛みや、湿疹、皮膚炎等による皮膚の痒みを和らげる局所麻酔成分として配合されている場合がある。

c バシトラシンは、細菌のDNA合成を阻害することにより抗菌作用を示す。

d サリチル酸は、角質成分を溶解することにより角質軟化作用を示す。

1(a、b) 2(a、c) 3(a、d) 4(b、c) 5(c、d)


皮膚に用いる薬の配合成分に関する問題
出題頻度、重要性ともに低い成分が問われており、難易度は高い。

a 正
b 誤 ノニル酸ワニリルアミド温感刺激成分で、皮膚に温感刺激を与え、末梢血管を拡張させて患部の血行を促す効果を期待して用いられる。(いわゆる「温シップ」と言われるような湿布に配合されている)
c 誤 バシトラシンは、細菌の細胞壁合成を阻害することにより抗菌作用を示す。
d 正 なお、サリチル酸は、いわゆる「イボコロリ」にも使用されている成分。

正解・・・3

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